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ミステリ感想-『原島弁護士の愛と悲しみ』小杉健治

2017年07月11日 | ミステリ感想
~収録作品とあらすじ~
原島弁護士はかつて妻子を事故死させた男を弁護し、母子殺害事件で無罪を勝ち取らせた。しかし被害者の夫は釈放された男を殺し…原島弁護士の愛と悲しみ
強盗殺人の容疑者は当初の供述を翻し無罪を主張。事件の様相は、取り調べる刑事の幼少期の記憶とリンクし…赤い記憶
恋人が死に、上司が死に、恋人の兄が死んだ。3人の死は意外な連関を見せる…冬の死
轢き逃げを起こした恋人をかばい交通刑務所に入った女は、恋人の裏切りを知り無実を訴える…愛の軌跡
病没した精神鑑定人の残したノートには、彼が最後に診断した男の記録が残されており…牧原博士、最後の鑑定書


~感想~
2時間ドラマじみた発端や事件から、バリバリの(死語)本格ミステリ的な飛躍した真相に至る短編集。
表題作は大仕掛けすぎて逆に設定だけで真相が見え見えになってしまったが、これも伏線は露骨なものの過去の事件が複雑な連関を見せる「赤い記憶」はまるで横山秀夫さながら。
自殺に思われた3人の死からやりすぎな真相が浮かび上がる「冬の死」は、逆にありがちな構図を目くらましにしており、「愛の軌跡」は都合よく偶然が重なるきらいはあるが、その真相の飛躍っぷりはお見事。
そしてラストの「牧原博士、最後の鑑定書」は、そこしかない着地点に向かって収束し、余韻を持たせる結末で、各編に共通した探偵役はおろか登場人物すらいない中で、これだけミステリ的な飛躍と解決を備え、安定した質を保ったのは素晴らしい。
一方でデビュー初期の作品とあってか、目を疑うほど酷い文章やくどいほどの繰り返しがまま見られるのが玉に瑕。一例を挙げると、

「確かに、課長は元気がないようでした。でも、自殺するような心あたりはありません」
私は、そう答えたが、最近の課長は元気がなかったことを思い出した。


とはいえミステリ的には文句のない、意外性と発想の飛躍を味わえる、粒揃いの好短編集である。


17.7.10
評価:★★★ 6
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