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ミステリ感想-『小暮写眞館』宮部みゆき

2017年06月14日 | ミステリ感想


~あらすじ~
高校生の花菱英一の変わり者の両親は、潰れた写真館を外装そのままに新居に建て替えた。
すると写真館が再開したと勘違いした女子高生が、ここで現像されたという心霊写真を英一に渡し……。

2010年このミス8位、文春7位


~感想~
作者得意のSF的要素として今回は心霊写真が登場。あらかじめ断っておくと、ミステリ的なトリックの凝らされたものではなくマジモンの心霊写真であり、それに応じた解決がもたらされる。
全体として見れば特にこれといった長所があるわけではなく、あっと驚く意外な展開や目を見張るような謎もトリックもない。地道な聞き込みと、交友関係を活かした情報網による、英一の心霊ハンターさながらの活躍もあまりに地味過ぎるのだが、しかし宮部みゆきの手にかかれば物語そのものが実に面白く、ページをめくる手が止まらない。
脇を固める面々は一人残らずキャラ立ちし、そしてごく一部を除き掛け値なしの良い人揃い。そのごく一部が出る作品を間違えているんじゃなかろうかというレベルのゲス野郎ではあるのだが、最高のラストシーンとあいまって読後感はきわめて良好である。

心霊ハンター第一話から、まさかの続編となる第二話。そして期待通りの第三話で変化球を投じ、最終話はミステリからも心霊からも猛ダッシュで離れていくのはちと残念ながら、三年間の軌跡と英一の成長譚、なによりも花菱家の物語の決着としては素晴らしいもので、文句のあろうはずもない。
読了後、巷間よく囁かれる作中人物との別れを惜しむ気持ちに珍しく駆られた。続編は無理としても外伝的な短編集など出してくれないものだろうか。


上巻 17.6.9
下巻 17.6.13
評価:★★★★ 8

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