黄金色の日々(書庫)

海外ミドルエイジ俳優に萌えたり愛でたりするブログ

ヒューゴの不思議な発明

2012-03-06 21:51:12 | 映画感想
映画とは、優しく儚く、そして強い

まず始めに言いたいのは、日本語タイトルは余計だということ。余計というか偽りあり(笑)
原題の『HUGO』だけでは何の話か伝わりにくいということだろうが。
ヒューゴ少年は発明はしていない。彼は修理する。
その“修理”こそが、この映画のキーでもある。

時計職人である父を火事で失くしたヒューゴは、パリの駅構内の時計台に住んでいる。一人ぼっちの彼の唯一の支えは、父が亡くなる前まで修理していた精巧な機械人形。
駅の時計を修理する仕事を叔父から受け継ぎこなしながらも、人形の部品を掠め取っていた玩具屋の主人や鉄道公安官から逃れる日々。ある日その玩具屋の主人ジョルジュに父の人形修理のノートを取り上げられてしまう。家にまで追いかけていったヒューゴは、ジョルジュ夫妻の養女イザベルと出会う。


ストーリーは少年の冒険活劇かと思うと違うので、タイトルには惑わされぬよう。後半にはヒューゴもそれなりに活劇するけど。機械人形も入口にすぎない。登場人物をつなぐのは、“映画”である。
スコセッシ監督の映画創世記へのオマージュと、“映画の父”と呼ばれたジョルジュ・メリエスという実在の人物へのリスペクトでもある。
そこら辺が琴線に触れる通なら、たまらないつくりのようだ。私は門外漢なのだが楽しめた。ほぼ駅構内のシーンだが、1930年代のパリの雰囲気が伝わってくる。映像もとても美しい。

父の形見の機械人形を修理し動かすことで、自分が一人になってしまったことの意味を見つけ出そうとするヒューゴ。
奇しくも前回見た『ものすごくうるさくて ありえないほど近い』のオスカー少年も、父からのメッセージを見出すため“鍵穴”を探すが、ヒューゴは鍵の方を求めてる。少年が目指す対象であった父親を亡くし、残された自分の存在意義を見つけ出そうとするところは同じだ。
ヒューゴは機械人形を修理することで、自分自身を修理している。完全に直したと思ったのに動かない人形。それはヒューゴ自身でもある。ハート型の鍵穴のキーとそれを持っていたイザベルと出会うことで、心を打ち明けられる友達を得た。キーにより動き出した人形と同じく、ヒューゴの心も開かれるのだ。
そしてさらに、他者の心を開くことになっていく。

パパ・ジョルジュも、戦争で脚を負傷した公安官も、自分の“古い傷”にこだわり続けていた。それを手放した時、彼ら自身も“修理”され、新しい人生に踏み出すことができた。
「世界が一つの機械だとしたら、いらない部品はないんだ。あるものは全部、必要な部品なんだ」
機械少年らしいヒューゴの言葉は、彼自身にも、親を亡くしてジョルジュ夫妻の養女となったイザベルも癒す優しい比喩だ。
人生の意味は、探すのではなく創りあげていくもの。
人を楽しませ、夢を与える映画という発明に囚われたスコセッシ監督自身の思いも込められた美しい作品。





今年は本当に少年子役と犬の当たり年(笑) 主役ヒューゴを演じたエイサ・バターフィールド君もまた、良い。
ブルーの瞳が寂しさをたたえて、それでも一人で苦境に耐え生きていこうとする意地も見せる。最近の子供はもう、自分が体験していないことでも表現できるようになっている。スピ系でいうところのクリスタル・チルドレンなんだろうなと(スルー推奨)。
一部の男性の圧倒的支持を受ける(笑)、クロエ・グレース=モレッツ嬢。『キック・アス』のヒット・ガールのような活躍は今回はなく、極めてスタンダードな可愛らしい少女だ。レトロな感じと元気でしっかりしたところが上手くミックスしていた。エイサ君より背があるのがイイ。こういう話では少年は小柄であるべし(笑)
パパ・ジョルジュはサー・ベン・キングスレー。私にはガンジー(笑) 脇役がなにげに豪華なイギリス俳優で占められている。ハリポタ出演陣も多い。クリストファー・リー御大や、ヒューゴの父はジュード・ロウ。出番はわずかだけど。
流石スコセッシの名は豪華。しかし、当たり前だが全員フランス人の役で英語を話しているのは・・・しょうがないね(^。^;)

ヒューゴが時計台に暮らしているというのも、何かのオマージュなのだろうが。私は同じくパリが舞台の『レ・ミゼラブル』のガブローシュ少年を思い出した。カーニバルの名残の張りぼて巨大象の中に住んでいる。性格は全然違うけれど、パリの子供はみな逞しく命を輝かせる。

スコセッシが12歳の娘さんのために作ったという作品。だから監督には珍しく子供も楽しめる話。
というより、子供でも楽しめる大人のための寓話だ。映画を愛する人々に向けて。
映画創世記の下りの貴重さが今ひとつピンとこない素人なのが申し訳ないが、3Dも飛び出るというより奥行があるように見えて、初めてその意義を感じた。


機械人形が絵を描くシーンが素晴らしくうつくしかった・・・。

2 コメント

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カフェに行きたくなりました (ペコラ)
2012-03-08 17:42:47
こんばんは、山吹さん!
春休みで子供向けにしたかったからか、こんな邦題なのでしょうが...。せめて「ヒューゴと不思議な発明」なら...うーん。
うしろのバ...若いカップルはむずかしくてワケわかんなかったーなんか不思議な冒険があるかと思ったのにーとこぼしてましたが、まあ逆に、子供につきそって見てみたら、思いがけなくおもしろかったと感じてる大人たちがいっぱいいるといいんですけどね。
映画館に足を運んでいる大人なら、よりこの映画のおもしろさを感じ取れると思うので...。
犬好きとしては、マキシミリアンもかわいかったな~。入浴シーンに萌え萌え。サシャ・バロン・コーエンも作品を見たことがまだなくて胡散臭いおっさんくらいにしか思ってなかったけど、この映画の鉄道公安官は鬱陶しく感じる手前くらいで、しかも彼にも彼の物語がしっかりあって、最後はかっこよくさえ見えてしまいました!
しあわせな気持ちになれた2時間でした~。
しかし、ママ・ジャンヌの方の意外な若さにびっくりですヨ...。デイム・ヘレン・ミレンくらいのお年かと思っていました...。
セピアのかほり (山吹@パソコンクラッシュ…)
2012-03-08 20:41:19
ペコラさん、こんばんはv

うん、おっしゃるとおり「と」ならまだしもですね。日本語便利(笑)
大人向けですよね。スコ監督の娘さんて12才でこのレベルなのか。さすが血。

公安官は始め憎たらしく、花売り娘との恋模様あたりで厚みが出てきましたね。彼もまた…という事情がニクい。
わんこ、もうパルムドックだけでなく、アカデミー賞も動物部門を設けるべきだよね(笑)

そんなお若いんですか!? 私はハリポタに出てた女子高校長のあの方と教師のあのおじ様のラブがヒットでした。フランスらしいよvv

絶対若いカップル向けではないぜ。パンフは買わないんですが、こんな記事をみつけましたよ。
http://images2.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-e969.html

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