欧州雑派

欧州各国の小説などの書評、映画評、音楽評、美術評、欧州旅行記など。

「終わりなき夜に生まれつく」書評

2017-05-05 | 英米小説・文学

クリスティーの「終わりなき夜に生まれつく」を一気に読み終えた。

哀しい話なのだが、ウエルベックが指摘するところの「老化に関するテーマ」とは何ら関係がなかった。僕は「ある島の可能性」繋(つな)がりで、この小説を読み始めたが、それについては間違っていたようだ。別の作品だった。

しかし、得るものは沢山あった。要約すると2つに絞られる。それについて書いてみたい。

ある島の可能性 (河出文庫)
Michel Houellebecq,中村 佳子
河出書房新社

以下、簡単な書評。

終りなき夜に生れつく (クリスティー文庫)
矢沢 聖子
早川書房

2つのことを感じ、そして、考えた。

まず、人は、ある人を見て、その人に潜む「邪悪性」を瞬時に見抜くことが出来るのだろうか?何となく厭だな、、と感じる自分の感覚を大事にすべきなのだろうか?しかし、純度の高い人間ほど、それを見抜くことが出来ないかもしれない。邪悪な人間は己の正体を隠し、善人としてすり寄ってくる。この物語のように、孤独な人間であればあるほど、その正体が見えなくなるようだ。

そうであれば、人の本性を見抜くことのできる人間になるには、いろいろなタイプの人間に接してみることしか術はないのだろうか?だが、人が一生のうち、出会える人間の数には限りがある。

やはり、己の感性・感覚を磨くことに励むしかないのだろうか? では、どのようにして、人はその直感力を磨けば良いのだろうか?

「アガサ・クリスティー」の画像検索結果

2つ目のこと。それは、作家という職業の凄さだ。ペンの力で、この小説のように、読者を錯乱させることが可能なのである。作家というより、特別な作家、と言い改める方が適切だ。

アガサ・クリスティーの筆力に唸るばかりだった。言葉を駆使し、言葉で世界を構築し、そして、最後にその世界を破壊して見せる。言葉を並べるだけで世界が動き出す。そして変容していくのだ。

この恐ろしいほど哀しい物語に、僕は完全に打ちのめされた。

評価:☆☆☆☆   

『本』 ジャンルのランキング
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 「アジフライ定食」の秘密  | トップ | 「パンセ」や「エティカ」で... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

英米小説・文学」カテゴリの最新記事