欧州雑派

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「ある島の可能性」読書メモ 10 ~ ダニエルの傷心を歌うスティング、それは、ニーチェからの批判か?

2017-04-20 | ウエルベック

現在、p427/537まで読了。今日は殆ど読んでいない。でも、昨日、書きたかったことがあるので、そのことについて書きたい。

ある島の可能性 (河出文庫)
Michel Houellebecq,中村 佳子
河出書房新社

ダニエル1/20(p361-p376)について、書いてみたい。

ダニエル1/20とは、人間ダニエルの人生記の第20回(の箇所)という意味である。第20回はダニエルの失恋記になっている。

このダニエル1/20を読んでいくと、ポルノ小説か?と思わせるほどの性描写が多い。美貌でセクシーな恋人エステルとのセックス描写が続く。その二人は別れることになる。ネタバレになるのでその原因については書かないことにする。

美貌で床上手で若い恋人、そして優しい恋人に捨てられる展開。その恥ずかしい程、悲しい男の弱さを露呈させていく描写が続く。大好きな女性に捨てられた経験のある男には、痛い程(ダニエルの)気持ちがわかるだろう。

僕は、このセックス描写を読みながら、同時に傷心している初心な男の気持ちにも同化していた。そして、その時、僕の頭の中で聞こえていたのは、スティング(ポリス)の「見つめていたい」だった。

見つめていたい
ポリス
Universal Music International Ltda.

下のYouTubeには日本語訳があるので、歌詞が分かりやすい。


ポリス (The Police) は、1970年代後半~1980年代半ばにかけて大活躍したUKロックバンドだ。そのヴォーカル兼ベーシストがスティングだった。つまり、ポリス=スティングであった。この「見つめていたい」は、ポリスの最高傑作だろう。

この歌詞は、まさに、「ある島の可能性」の主人公ダニエルの失恋に伴う傷心を歌い上げているように、僕には思えてならない。

普通の小説であれば、それで終わるのだが、しかし、ウエルベックは全くことなる展開をとるのである。


ウエルベックは「愛」なんて、ニーチェに言うところの「同情」と同じだ(p374)と書いている。これは本当だろうか?ウエルベックのこのような論理展開は、ニーチェを読みこなしていないと分かりにくい。

ウエルベックは物語の展開上、愛なんて同情と同じと書いたのだろうが、少し、無理があるような気がするが、、、。その言い訳のように、(最初の恋人)イザベルは快楽を嫌ったが、エステルは愛を嫌う(p372)と書いている。

ニーチェ全集〈7〉曙光 (ちくま学芸文庫)
Friedrich Nietzsche,茅野 良男
筑摩書房

ニーチェは「曙光」で、同情批判を書いている。これを読むと、分ったような気がするが、僕は未だにフラフラしている。「曙光」を読みこなそうとするよりも、神崎繁さんの「ニーチェ―どうして同情してはいけないのか」を読んだ方がしっくりくる。

ニーチェ―どうして同情してはいけないのか (シリーズ・哲学のエッセンス)
神崎 繁
日本放送出版協会

愛は虚構であるという虚しいロジックを(未来人に向けて)正当化させようと、ウエルベックは企てているのだろうか?

このあたりを読んでいると、ポルノ小説ような過剰な性描写が、哲学へと昇華していくような気配を漂わせてくるのである。

続く。

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