欧州雑派

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「ゴリオ爺さん」書評 ~「ゴリオ爺さん」読書メモ その2~

2016-12-09 | フランス文学

ゴリオ爺さんは中盤後半まで脇役で、終盤にかけてスポットライトを浴びてくる。悲しいと言えば悲しい物語であり、愚かと言えば愚かな父親の物語である。

ゴリオ爺さん (古典新訳文庫)
中村 佳子
光文社

読了後、感じたのは、その後のラスティニャック、そしてヴォートランはどうなったのだろうか?ということだった。

ダウントン・アビー シーズン1 バリューパック [DVD]
ヒュー・ボネヴィル,エリザベス・マクガヴァーン,マギー・スミス,ミシェル・ドッカリー,ローラ・カーマイケル
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン

これはまるで評判の高いドラマ(例えば、ダウントン・アビーのようなドラマ)を観た後で、ああ、早く続きを観たいな、、という感じに近い。要するに、娯楽的な要素がかなり強いのである。バルザックの作風を一言で言えばそんな感じの作風なのである。それほどまでに、「ゴリオ爺さん」は面白い。

このバルザックの作風は今こうして読んでいてもかなり夢中になるから、娯楽の限られていた19世紀の欧州では相当受け入れられたことは間違いないだろう。

前回、視座を多様に置くことのできる物語、と書いた。それは間違いないが、マネーという視座で見てしまう、と書いたことは適切でないような気がしてならない。

トマ・ピケティも『21世紀の資本』の随所でバルザックの「ゴリオ爺さん」を引用しているそうだ。しかし、その視座で読むと、この物語の本筋から外れるような気がする。この物語の本質とは「娯楽性」にあり、視座をどこかに置こうと試みるのは、後世の我々が複雑な社会環境に身を置いているからに過ぎないのかもしれない。そのように考え方を改めた。

「トマ・ピケティ」の画像検索結果

バルザックは「ゴリオ爺さん」で、単に(当時の)フランスの貴族社会を描き、そこから起因派生していく俗人たちの喜悲劇を描いてみせたに過ぎない。そのように思えてならないのである。つまり、流行りのドラマを狙って脚本を書いた可能性が高いのだ。それがバカ売れした。

21世紀の資本
山形浩生,守岡桜,森本正史
みすず書房

だから、教養主義的な見方(視座)から大上段にことを構え、解釈解読する姿勢は、この1冊を読んだだけで行うことは妥当でないと思える。

文庫の解説によると、その後、バルザックは人間喜劇シリーズとして多くの作品を生み出していく。今風に言えば、スピンオフ・ドラマを量産していった。

だから、この小説は真の文学と言うよりも単なる風俗小説に過ぎない。しかし、風俗小説にこそ真の文学性が潜んでいると言う真実から言えば、まさしく、そのことを証明してくれる偉大な作品であるわけだ。

今、僕は壮大な大河ドラマのさわりを見せれた感じがしている。もう腹いっぱいなんだけど、それでも、早く、次の作品を読みたいなぁ、、この映画の続きを観たいなぁ、、とワクワクしているのである。そして、バルザックの書いたスピンオフ・ドラマを全て鑑賞してみたいと思うのである。そのように僕を強く誘惑して止まない大傑作である。

素晴らしい翻訳をされた中村佳子さんに改めて感謝したい。

評価:☆☆☆☆☆

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