神戸RANDOM句会

シニアの俳句仲間の吟行・句会、俳句紀行、句集などを記録する。

2014=国宝太山寺句会

2014-11-28 | 吟行句会

 今回は第20回神戸RANDOM句会です。

 「11月の後半に太山寺安養院の石庭が公開されますので、太山寺を吟行し、なでしこの湯で食事と句会をする予定です」だっくすさんのメールの後、10月末に播町さんから案内はがきも届きました。 

 ここ数十年のニュータウン開発や有料道路の建設で、太山寺周辺はすっかり都会化されましたが、55.9haの自然景観が「太山寺風致地区」として保護され、境内の内外に原生林が残されています。 

 6月につきひさんの『時の濃縮』、7月にだっくすさんの『裏六甲』、8月にさくらさんの『花季(はなごよみ)』と、ネット句集が発行されました。今回のまとめは、句集の中の句をサブタイトルにいただきました。 

太山寺へなでしこの神戸に咲きて逞しく『花季』

 平成26年11月28日(金)、 ぽかぽか陽気で雲一つない青空です。午前10時、神戸市営地下鉄学園都市駅西口の「なでしこの湯シャトルバス乗場」が集合場所。

 世話役の一風さんが改札でお待ちで、バス乗場に行くと、もう数人が待っています。

  爺々婆々の小春の句会太山寺  ひろひろ②◎

                        …数字は句会獲得点、◎は特選句

 学園都市を抜け、バスは晩秋の田園風景を走ります。

  赤とんぼ故郷の空連れてくる  ろまん亭①

  たんぼ毎巻き寿しひろげ村祭り  ろまん亭 

 ろまん亭さんの心は懐かしい故郷(神戸市北区)へ。「なでしこの湯」の案内板と、原生林の山を背景にした天台宗寺院、三身山太山寺の堂塔が見え、まもなく到着。

  太山寺威風堂々里の秋  一風②

 受付ロビーで本日のスケジュールを全員で確認します。

 参加者(敬称略)は、さくら、つきひ、へるめんと女性3名。男性は一風、蛸地蔵、播町、ひろひろ、見水、弥太郎、ろまん亭の7名で総勢10名。

 ひさびさに参加の“うんちく王”弥太郎さんと、学園都市・太山寺間を毎月歩いているという一風さん、二人の太山寺をめぐる“うんちく合戦”が今回の呼び物です。

 

 川沿いの道から参道に。畑では大根や白菜や葱が育っています。

  のんびりと伊川の野路に秋惜しむ  さくら①

  三重の塔が見下ろす葱畑  見水② 

安養院-我が庭へ天界からの朴落葉『時の濃縮』-

 

 安養院はかつて41ヵ坊あった太山寺の支院の一つ。桃山時代の枯山水名園が国の名勝に指定されています。今回の一般公開は貴重なチャンスです。

  閑かさや紅葉且散る石の庭  へるめん

  石の庭紅葉重なり色彩えて  ひろひろ①

  石の庭枯枝越しに見える塔  弥太郎①

 

 わが句会のメンバー10人のほか数人の見学者が座敷に坐って枯山水の風情に浸りかけていると、御住職さんがお出ましになり、庭園の由来などを詳しく説明。

  紅葉散る石庭(にわ)に和尚の声響く  一風②

  冬晴れへ苔むす石の屹立す  播町①

  石庭の鶴と亀にももみじ散る  蛸地蔵①

  冬紅葉蓬莱の岩鎮まれり  弥太郎②

 広い庭ではありませんが、石の巧みな組み合わせと紅葉の老木、堂塔や原生林の借景で、壮大な宇宙を感じました。

 

  枯山水紅葉散るまま欲しいまま  つきひ①

 元の建物(庫裏)が朽ちたため、淡河の古い農家を移築し、屋根は東北・北上川のヨシを葺いているとのこと。燻されて黒光りする建物内も見学し、安養院を出ました。

  紅葉散る葭葺屋根の重たさに  へるめん 

境内へ-木守柿峡に一軒だけの家『裏六甲』-

 

 石ただみの参道を進み、石段を上がり境内へ。

  石段を登れば紅葉塔を染め  一風②

  国宝を包む全山紅葉かな  つきひ②

 正面に、鎌倉時代の1300年頃に建立され、700年の栄枯盛衰を見てきた本堂。昭和39年に大修理されてからも、50年経っています。内部は延暦寺の根本中堂と同様、外陣と内陣を格子戸で分け、内陣に薬師如来像を安置。 

  落剝の本堂の朱と紅葉の朱  見水

  紅葉晴れ昏さの中の薬師さま  へるめん②

  鐘鳴れば紅葉散るなり太山寺  播町

  小春日や古き寺にも色映える  蛸地蔵

 本堂の東に三重塔、西に阿弥陀堂。建物はいずれも300年余り前の江戸初期に建立。安置されている阿弥陀像は、高さ274㎝で宇治平等院の阿弥陀像とほぼ同じ大きさ。鎌倉時代初期のもので重要文化財です。

  暗き中今年も終える阿弥陀仏  蛸地蔵

  坐す阿弥陀もみじと塔は朱を競う  播町

 

 今年の紅葉の時期は長く、太山寺の冬紅葉は実に見事です。

  チリチリと火傷して散る紅葉かな  さくら②

  落葉ふみ心静かに古刹かな  ろまん亭

  古刹の塔落葉散らして佇みぬ  蛸地蔵

 

 境内の入口あたりで、木守柿を発見。

  柿落葉熟れた実ひとつ残りけり  ひろひろ①

  いつまでも迷ってばかり柿一つ  ろまん亭②

 阿弥陀堂の前に「息游軒遺趾」の碑があります。寺のパンフレットに記述がなく、案内板もないので「これなんやろ」と通り過ぎる人もいました。

  この碑は、江戸時代初期の陽明学者、熊沢蕃山の閉居跡があったことを示す碑です。

  幽閉の身にも紅葉の華やいで  見水① 

奥の院-蓑笠を被り地蔵も冬支度『花季』-

 熊沢蕃山が51歳から10年間幽閉されていた奥の院に向います。奥の院は太山寺川の橋を渡った対岸で、地蔵堂や稲荷社があります。訪ねる人も少なそうな原生林のジャングル。

 熊沢蕃山は、岡山藩で零細農民の救済、治山・治水、日本初の庶民の学校「閑谷学校」の前身の起草などの改革を行いましたが、その大胆さのため藩を追われ、京都に移って私塾を開きますが京都からも追放され、幕命により明石藩主・松平日向守信之の預かりとなります。松平日向守は、領民に慕われたあの名君です。

  ―ウィキペディア・熊沢蕃山より―

 蕃山には幽閉という不幸な晩年の始まりですが、ここ太山寺で著述に専念し、『集義和書』、『集義外書』を著しています。松平日向守父子は、国替えで大和郡山藩・下総国古河藩へと移り、蕃山も同行し、反骨の学者が71歳で病没すると、手厚く葬ったそうです。

 蕃山の思想は、幕末に藤田東湖や吉田松陰に影響を与え、倒幕の原動力となり、没後200年経て、明治政府は、学問を興隆させた功績で名誉を回復しています。

  

 川の上流に鎌倉時代の不動明王の磨崖仏があるというので、近くまで行ってみようとしましたが、川沿いには道はなく、川の流れも激しく、断念。磨崖仏は300m上流の滝の近くにあり、太山寺の裏の道から見れるようですが、今年の夏の水害でその道も通行止めになっているとのことでした。原生林の谷間では、風が吹くたびに色とりどりの紅葉が降り注いでいました。

  寒禽や瀬音のさそふ奥の院  へるめん②

  太山寺伊川の瀬音小春日に  ひろひろ②

  枯葉舞う越路ふぶきのシャンソンに  ひろひろ 

仁王門-木偏の字思ひ出しつつ掃く落葉『時の濃縮』-

 

 境内の散策を終え、石だたみの参道を山門まで歩きます。かつてここに41ヵ坊も支院があったというのが納得できる距離です。

  石だたみ少し先行く鰯雲  ろまん亭②

  参道をのぼりくだりて鄙の秋  見水②

 重要文化財の仁王門にたどり着きましたが、千社札が貼られ格別の趣き。営業はしていないようですが「おみやげ」の看板も。今はバス停もあるが、明石から歩いてお参りしていた頃には、宿屋もあったらしい。寅さん映画に出てきそうな風景です。境内でも写真を撮っていた外人男性が、落葉を踏みしめながら写真を撮っています。

  落葉踏み見上げる仁王暗き門  弥太郎

  仁王門に仁王立ちして懐手  播町

  年越の寅に遭いそな仁王門  見水

 仁王門から、なでしこの湯まではあとわずか。途中で野菜の直売所を覗くと、冬野菜が並んでいました。

  なでしこの湯大根並ぶ直売所  弥太郎 

なでしこの湯-風花や色の褪せたる湯屋のれん『花季』

   温泉の入口には足湯があり、ぽかぽか陽気の中、気持ちよさそうに足を温めています。 

  寛ぎし足湯に一礼小春の日  さくら

  冬の日に足湯する人背をまるめ  一風①

  いつからが晩年足湯に湯冷めして  播町①

 昼食まで30分あり、温泉入浴券とタオルセットも配られているので、それまでに一風呂、と急ぎます。境内や仁王門で熱心に写真を撮っていた外人男性が湯に浸かっていたので、ちょっとびっくり。露天風呂も快適でした。

昼の宴-新米の水ひかえめに炊きにけり『裏六甲』-

 12:30 昼食場所の1階「さくらの間」に集合。  

今回の句会は第20回目。全員10歳以上齢を重ね、予備軍から本当の高齢者に。

弥太郎さんの発声でビールの乾杯。

  二十回の句会称へて紅葉酒  さくら

 

 綺麗に盛られた料理をいただきます。御飯は30分羽釜で炊いてくださいとのこと。新米の白御飯です。

 話題は最近亡くなった知人や有名人のこと。11月10日に亡くなった俳優・高倉健さんで盛り上がりました。

 

 13:30になったので食事を終え、吟行で作った各自5句を短冊に書いて提出。

 短冊をバラし、手分けして清書し選句表を完成させます。 

句 会 -家中の時計合はすも年用意 『裏六甲』-

 午後2時、2階に会場を移し句会スタート。

 

 今回の趣向として、播町さんから句会20回の総まとめの資料配付と、実践的俳句上達法―「中七」こそ名句の決め手―の10分間講義。名講義に全員納得。ついでに最近テレビのバラエティ番組に出ている松山の俳人・夏井いつきさんの毒舌俳句添削の話題にも及びました。

 全員に選句表を配付し、各自、気に入った句を選句。自作以外の6句を選び、特選1句2点、その他5句は1点で、各人の持ち点は計7点。参加者10名の総点数70点の争奪戦です。

 つきひさんの進行で、順番に特選句から発表し、作者も明かされます。

 本日、高得点を獲得した句は、

 

 歳月を石に留めてもみじ散る   蛸地蔵⑥

   安養院石庭が見てきた歳月と毎年散る紅葉の対比が見事です。

 もの言わぬ石の声聞く冬ぬくし  弥太郎⑤

   石庭の石たちの歴史に想いを馳せ心温かくなりました。

 一山を吟行地とす冬日和     へるめん④

   スケールのでかい今日の吟行地・太山寺への挨拶句。

 人を寄せ人を拒みて冬の庭    つきひ④

   枯山水は不器用な「故・高倉健」のような庭でした。 

 恋の詩(うた)紅葉挿みし昔事   さくら③

   色と形の綺麗な紅葉を見つけたら栞に。

 年毎に偲ぶ人増ゆ冬紅葉     つきひ③

   親しかった人が今年も。年賀欠礼の葉書の多いこと。

 仁王さん歩き出しそな冬日和   一風③

   気持ちのいい小春日和なら、きっと。

 小春日や足湯しながら書を読める つきひ③

   内容もよく頭に入ることでしょう。

 

 メンバーの得点と各賞・賞品は以下のとおり(敬称略)。

1位 優 勝         つきひ  (13点) 牡蠣汁+四湯物語

2位 準優勝         一風   (10点) なでしこの湯クッキー

3位 殊勲賞         へるめん (8点) 牡蠣汁

3位 敢闘賞         弥太郎  (8点) しじみ汁

5位 技能賞         蛸地蔵  (7点) しじみ汁

6位 太山寺賞       さくら  (6点) 黒豆茶 

6位 安養院賞      ひろひろ(6点) 黒豆茶

8位 伊川谷賞    ろまん亭(5点) 黒豆コーヒー

8位 なでしこの湯賞 見水  (5点) 黒豆コーヒー

10位 逆引き技能賞 播町  (2点) 四湯物語 

 総点数70点の行方は、女性軍3名の得点が27点、男性軍7名の得点が43点。と今回は男性軍もなかなかの健闘。つきひさんと一風さんは出句した句すべて得点し、パーフェクトでした。

 毎回下位に低迷していた男性軍の某氏、某々氏、某々々氏に多くの票が集まりました。これはパワースポット太山寺薬師如来の御利益か、それとも天然ラジウム温泉なでしこの湯の効能でしようか。 

帰 路 -二次会に付き合ふ元気忘年会 『時の濃縮』-

 学園都市駅行のシャトルバスは補助席まで満員。夕日がまぶしい。いい天気にめぐまれ、楽しい吟行でした。

 16:10学園都市駅で解散。反省会(忘年会)組は夕暮れの街へ。 

 もうすぐ歳末。あっという間に新年がやって来そうです。今年の3句集から年越に元気の出る句を引用します。

 新しき夢を紡いで年忘      『花季』

 初詣干支の土鈴を買ふならひ 『裏六甲』

 老といふ豊かなる未知初暦  『時の濃縮』

 

 今回やむをえず欠席の“毎回名幹事”だっくすさんに代わって、至れり尽くせりの一風+さくら幹事によって、いっそう楽しい句会となりました。お世話いただいた、一風さん、さくらさんに心から感謝。

 次回の春の吟行は何処へ。もう待ち遠しいです。よいお年を! 

2014.12 写真/romantei 文/mimizu

 

   「太山寺句会(2014.11.28)」 会計報告 

収 入  会費(7,000円×10人)      70,000円

        繰越金                   7,870

    合 計                   77,870円 

支 出  「なでしこの湯」

    (料理、飲物、コピー代等) 53,400円

         賞 品                     8,050円

         案内状等郵送料              600円

         太山寺・安養院入山料       6,000

        合 計                   68,050円

次回への繰越                       9,820円

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1 コメント

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石と紅葉と小春日と (つきひ)
2014-12-06 14:43:54
素晴らしいまとめを早々に有難うございました。蕃山のことを知り
 幽閉の身にも紅葉の華やいで 見水  の句の採りこぼしに気づきました。今回の男性軍の躍進、特に一風さんに拍手。皆さん語彙が豊富になり、季題の活用も多様化してきました。次回春の句会が楽しみです。

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