神戸RANDOM句会

シニアの俳句仲間の吟行・句会、俳句紀行、句集などを記録する。

2008=石山寺句会

2013-02-23 | 吟行句会

源氏千年紀・近江惜春紀行





春風やつきひさんの句の本届く    りっこ
春らんまん満を持したる初句集    だっくす


 つきひ先生が初句集「俳句の時間」を出版。RANDOM句会の各メンバーにも送っていただきました。
第6回RANDOM句会は、句集出版の祝賀会を兼ねた吟行です。

さくらさんとだっくすさんのお世話で、近江・石山寺が開催地に選ばれました。今年2008年は源氏物語が世に出て千年にあたる記念の年。各地でイベントが始まっています。紫式部が物語の想をねった石山寺なら、いい句ができるのでは、と期待がふくらみます。

薄雲の巻 

――― 近江からはじめましょう(司馬遼太郎「街道をゆく1)



4月19日(土)朝、「午前9時13分石山駅着新快速の前から3両目に乗ること」の案内どおり乗り込むと、いました、いました。神戸から1時間で着けるのは楽ちんです。この春に定年退職した某氏と定年談義に花を咲かせているとあっという間にJR石山駅に到着。

 雨の心配はないものの青空がほとんど見えない曇り空。駅前から石山寺まではバスです。
「こういう天気が一番好き」とつきひ先生。そうかなあ、もっとカラッと晴れてくれへんかな。今回の参加者は女性軍が4名、男性軍が7名の計11名。早やいつものごとく男性軍がコテンパンに負かされる予感。

春なのに裸になって百日紅    ひろひろ

源氏物語千年紀のノボリが並ぶ石山寺への道で、ひろひろ氏が早速、さるすべりを発見。季語が3つも重なっています。「季寄せを贈りましょうか」とつきひ先生。
仁王がにらみあう鎌倉初期建立の大門の前で全員集合写真。

行く春の近江のみほとけ頬ゆるめ  播町(1)

(○印の数字は句会獲得点数)




花散る里の巻 ――― あけぼのはまだ紫にほととぎす(芭蕉)


山門をくぐれば若葉身もみどり りっこ
石山寺若葉満面山萌ゆる    ひろひろ


 石山寺散策は、午前11時までの1時間20分。入山料と豊浄殿(紫式部展)入場料、源氏物語千年紀「源氏夢回廊」入場料のセット券(大人1,000円)を買って、石段を登ります。



 まずは石山寺の由来となった天然記念物の奇岩「硅灰石」を拝観。

神鎮(しず)む石山の上散り桜  弥太郎(1)
石山寺落花の巻の花ごよみ つきひ(1)
落花しきり寂聴源氏巻の三 播町(1)
メモの上桜の萼(がく)が鎮座した ひろひろ



 わが阪神間の桜の名所、生田川、夙川、武庫川そして有馬などは、1週間前に桜は終わっていますが、ここはまだ落花の最中。石の上、苔の上など一面にハラハラと桜が散っています。

 奇岩を拝観した後は、左手本堂へ。滋賀県下最古の木造建築物。虫食いにも歴史を感じさせます。中は平安中期のもの、外は淀君の修復とか。本堂を参詣して山に向かおうとすると、「源氏の間」が現れます。





春風を背に源氏の間覗きみる 見水(2)

 1004年夏に1週間、この部屋にこもって本尊の観音菩薩に創作を祈願。瀬田川の対岸の山から月が昇り、その風情を眺めて、須磨、明石の巻の筆をとった、との説明。
 メンバーたちも大いに創作意欲が沸いたようでした。

新緑に紫式部(しきぶ)の思い今もなお     一風(4)
千年も語ることあり春の寺      蛸地蔵(1)
春惜しむ式部の夢を思いつつ     蛸地蔵(3)
式部の間憂ひの君は春の野へ     りっこ(1)


 山に登る道は手入れされ、お寺巡りというより、植物園で森林浴をしているような爽快さです。

石山寺の石に若草しっとりと    一風(1)
山(みつば)つつじ愛しき人にどこか似て  一風(2)
清らかにたたずみさくや山つつじ  蛸地蔵(1)
鳥語浴び石山寺の春深し    さくら(1) 


 青空がだんだん広がってきて、小鳥のさえずりがあちこちから聞こえます。

 

どこからか、ご詠歌も…

ご詠歌にうぐいす唱和石山寺  りっこ(3)
樹々を縫ひ洩れ来る読経春深し つきひ(4)
春風に御詠歌聞こゆ光堂    弥太郎(1)
見上げればしだれ桜にご詠歌が  ろまん亭
石山のしだれ桜に間に合ひし  だっくす


 しだれ桜満開の豊浄殿は源氏物語図屏風や蒔絵などの宝物を展示していました。



         (本堂手前の蓮如堂の源氏物語図屏風-模造-)

春闌けて屏風絵の金剥落す  つきひ(3)

 



月見亭まで下りてくると、眼下に瀬田川が望めます。川の“上流”に目を走らせると、はるか先に琵琶湖が見え、比叡、比良の山々が青くかすんでいます。

ゆく春や瀬田川眼下風温む   ひろひろ(1)
瀬田の橋重なる果ての春の湖 見水(4)


 集合時刻までの時間が少なくなってきました。源氏物語千年紀「源氏夢回廊」の会場にいそがなくては。




花舞ひし源氏夢回廊潜る  さくら
行く春の近江に源氏甦る  だっくす(1)
王朝の紅の色外は春    だっくす(1)
歴日の夢回廊の残花かな つきひ(4)

                     
 ベニバナで染め上げた真紅の布をはじめ、植物で染めたと思えない鮮やかな青・黄・紫などの布で源氏物語の世界を表現する「吉岡幸雄襲(かさ)ね衣展」では、女性たちが熱心に説明を聴いているのが印象的でした。

春惜しむ縁なき源氏に花咲かせ  播町(2)  
お聖さんの直筆原稿春のどか   見水(4)


「田辺聖子源氏物語文学館」は、お聖さんの講演のテープが流れ、鉛筆書きの直筆原稿なども展示。“昔の女学生”のような几帳面なきれいな字でした。
午前11時過ぎ、待機をしている「あみ定」のマイクロバスに全員乗り込み、なごりを惜しみつつ石山寺を離れました。

垂るるや桜の紅の瀬田川に  さくら




浮舟の巻ーーーまづ頼む椎の木もあり夏木立(芭蕉)


 送迎のマイクロバスは数分ほどで、料亭「あみ定」に到着。「あみ定」は瀬田の唐橋のたもと、琵琶湖から流れ出る瀬田川に浮く舟のような細長い島の上に位置しています。
 投句までの残り時間はあと30分。めいめい唐橋見物をしたり、水辺に腰かけてあたりを眺め、句材を探します。



唐橋と戦の歴史花曇      弥太郎(1)
唐橋のたもとに龍神馬酔木咲く  弥太郎
ボート部のオール煌めき夏近し  つきひ
瀬田川の水面が光る初夏の風   一風
オール光り空にはトンビ瀬田の川 ろまん亭(1)









 午前11時50分が一人5句の投句の締切時刻。眺望抜群の「あみ定」の座敷に一人また一人と戻ってきて歳時記を片手にメモ帳とにらめっこ。なかなか投句用の色短冊には手がのびません。

春憂や四苦八苦する五七五   りっこ

「漢字忘れた、辞書かして」
 締切時刻にせかされてやっと投句し、お茶とお菓子で一服。
 11名5句ずつ55句と、投句で参加の波平船長夫人・富子画伯の1句の合計56句を順不同・作者不明で清書し、コピーを配付。各人10分間で5句ずつ選び、うち1句を特選句として2点に換算のルール。総点数66点の争奪戦です。

千年をたずねる人や柿若葉   富子

 三木のお宅の柿若葉は美しいんでしょうね。
 あわただしく各人が選句を終え、つきひ先生進行で選句の発表が始まります。
「とてもいい句が出来ているように思います」と、つきひ先生。今日は進行を速めるため、各人が付けた点数だけを順に報告して獲得点数を集計し、受賞者を決めてから、食事の時間まで、高得点句や自信作の講評をすることに。


 まずは獲得点数の結果発表。
優勝=蛸地蔵氏・つきひ氏・ともに12点
 3位=見水氏・10点、4位=播町氏・8点、5位=一風氏・7点
 ブービー賞=ジャンケンによりひろひろ氏

 総点数66点のゆくえは、女性軍4名で24点、男性軍7名で42点。予想に反し、女性軍・男性軍は平均点で偶然にも同点、めでたく引き分けでした。今回の句会のとっておきの高得点句2句と選んだメンバーの講評は以下のとおり。


観音も少し艶めく春の寺  蛸地蔵 (7)

「春らしくて、観音、艶めく、春の寺、とホンマ色っぽい」(笑)
「石山寺の本尊の観音さんは秘仏で見れない。想像で詠んだ句やね」
「近江は昔から観音信仰が盛んで、人がやさしいんやな」
         
「石山寺はご詠歌も流れてるけど、抹香くさくなく明るいイメージの寺。そやから観光地にもなって若い人もやってくる」




若葉風艇の掛け声唐橋に  さくら (5)

「さわやかな風に吹かれてボートを漕ぐ若者の景色が見える」
「若々しくてええな」
「ボート、しか言葉が出てこんかった。艇、が素晴らしい」 
「瀬田の唐橋に大学のボート部員の元気な声が響いている感じがする。われーは、うーみのーこー…、琵琶湖就航の歌やったかな」
 句会が終わり、昼食の用意ができるまで、しばし休憩。さわやかな陽射しと心地よい風の中、ボートや新緑に見とれてしまいます。


窓はなち新幹線に山みどり ろまん亭

 りっこさんは、座敷の前の水辺の小さな広場で四つ葉のクローバーを見つけました。



花の宴の巻 
――― 木のもとに汁も鱠(なます)も桜かな(芭蕉)







 昼食の膳が並び、ビールで乾杯のあと、句会の表彰式。優勝者2名、3位、ブービー賞者に、特産品などの賞品を贈呈。

柳風唐橋たもと祝い膳  ろまん亭

 いよいよ、本日のメインイベントです。「俳句の時間」出版祝賀会。さくらさん・だっくすさんがつきひ先生へのお祝いに選んだのは、句集の装丁に合わせた藤色の日傘。句集には日傘の句もありました。

                    

寄り合うて草の名を聞く日傘かな つきひ
浜風に日傘何度もとられさう   つきひ
日傘たたむ桂信子のポスターに  つきひ


 つきひ先生から、出版のいきさつや作品の選び方、出版社の行き届いた配慮、本のタイトルは当初「姫新線有情」を考えたが迷ったすえ「俳句の時間」としたこと、など句集づくりの楽しかった苦労話をお聞きしました。




 つぎに、各メンバーからお祝いの句の披露。
 お祝い句は色紙に寄せ書きしました。

咲き初めし藤の気品や初句集   さくら
刻々と古希の上梓や桜鯛     どんぐり
瀬戸は凪里は新芽と雉の声     波平
ガーチャンの出した句集が春めくる 一風
ときかさねおもひでのうたきみが春 節雄
満開の桜に映る初句集       ろまん亭
虫の声聞こえる旅路姫新線     弥太郎
春先に四季折々の俳句便      ひろひろ
春風に思い吹き寄せ初句集     蛸地蔵
大毛虫「俳句の時間」に赤面す   見水
夏立つや風の色濃き近江瀬田    播町(4)



 播町氏は、本日できたてほやほやのつきひ先生お気に入り特選句を、お祝い句として捧げました。りっこさん・だっくすさんのお祝い句は冒頭に紹介しています。

 各自一番気に入った一句の披露、は最初から脱線。
「いちひんもく…がいい」、「それそれ!」と句への賛辞をはじめるや、
つきひ先生、「いっぴんめ、ですけど」。

一品目全員一致冷奴       つきひ

「どこそこにあるあの安い居酒屋。いつ、なんのときで、いっしょに行ったのはだれそれで…」とつきひ先生の元気のいい解説が続く。全員一致でふんふん。
 ついでに人物を彷彿とさせるあの句この句のモデル明かし。「あの句はだれそれで、この句はだれそれよ」。「やっぱり」もあり「へー、そう」もあり。

句に詠まれゐること知らぬ大毛虫 つきひ

 句集巻頭句の絶賛が続くと「最初のページしか読んでくれなかったのかしら」。



トロ箱のべらに氷の容赦なく   つきひ   
自づから起承転結蝉しぐれ    つきひ
有馬まで各駅停車春惜しむ    つきひ
菜の花を洗ふ浮力を押さへつつ  つきひ
打ち水といふもてなしも加はりて つきひ
デジカメも不慣れサングラスも不慣れ   つきひ
ねぢ花の幼きはまだねぢれずに  つきひ
  
                
 各自一番気に入った句は、選んだ人の人柄が出るのかしらん。

滲む墨かすれる墨や梅雨館    つきひ

 りっこ(書家・風子)さんは、この句を色紙にしたため、つきひ先生にプレゼント。
 つきひ先生大感激。
 少しビールがまわってきました。

花宴今も昔も踊る阿呆   ひろひろ

 しばらくぶりの出会いに、積もる話がとびかいます。
 弥太郎氏は「私の百人一句」のコピーを用意して紹介。いにしえの俳人から現代の有名人、友人、ご親戚…自分の好みでアトランダムに句を選び、A4紙2枚に。「短歌」や「詩」でも試みているとか。歴史研究の余技なんでしょう。われらド素人の駄句も入っているので、ほろ酔い気分で盛り上がることしきり。

句座果てて瀬田あみ定のしじみ汁   播町



 瀬田の唐橋は近江八景の「瀬田夕照」で有名。まだ午後4時前ですが、メンバーの顔は夕照(?)に染まってまっ赤。後ろの船着場では、夕方に出航するのでしょうか、屋形船の宴席準備に大忙し。食材を積み込み中の「あみ定」のお兄さんにお願いしてシャッターを押してもらいました。
 今回の吟行のしめくくりはこの句しかありません。

行く春を近江の人と惜しみける(芭蕉)

 お世話いただいたさくらさんとだっくすさんに心から感謝。

2008.GW 文:mimizu/芸術的写真:romantei/☆説明的写真:mimizu


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