神戸RANDOM句会

シニアの俳句仲間の吟行・句会、俳句紀行、句集などを記録する。

中作清臣第2句集『繭の坂』2014年4月

2014-03-20 | 句集

中作清臣第2句集

 

繭の坂 MAYU NO SAKA

 

 

早春の走り過ぐものみな光る

 

早春の膨らみしものみな匂ふ

 

こころよき疲れ職辞す弥生かな

 

定年や理髪屋多き町遅日

 

鶯の荒地に来たりすぐに去る

 

小さき春見つけて子らの列乱る

 

老いては子猫に従へ従いぬ

 

加齢とは劣化ぞ時に冴返る

 

古稀の春夢あわあわと語りけり

 

楢山も蕨野もなき古稀の春

 

釘煮の香播磨の春は厨から

 

ミサへ行く老嬢春の光浴び  ローテンブルク

 

春節の夜市歓喜の溢れ出づ  台北

 

春の雷夢見てるやうなままに逝く 悼・兄2句

 

揚羽きて兄かと思ふ戯るる

 

桜ふぶくわがロスタイム酔いの中

 

馬場さんの一蹴り千本桜散る 

 

花の下ねねに一筆まゐらせそろ   

  

 

酔うものに、花、湯、優勝、まさかの恋

 

 一の老二の老支へ花の坂 

  

 

老桜の水吸ふてなほ艶めけり

 

春昼のだれも遅るゝカフェテラス 

 

 

百獣の檻から檻へ花の塵

 

さきみちてさくらくらくらめくるめく

 

みみたぶもまぶたもタブー春の闇

 

落花しきりむかし雨夜の品定め

 

ひとひらは脱力系として落花

 

正装はセーターでよし風光る

 

四月尽カワイ、スゴイのほか知らず

 

振り払ふ春愁がばと顔洗ふ

 

網塵とブログを訳し万愚節

 

さうかさうかこれが余命といふ春か

 

 

 

 

風騒ぐなり新緑の濃く匂ふ

 

どの家も庭に子ら出て五月青し

 

お手上げの手で指切りやこどもの日

 

百人のダーウィン見上ぐ夏のキリン

 

木の上に木のあり塔も青葉して  須磨寺4句

 

葉桜や木の下のことはや悔やむ

 

五月雨や仏師座興の一弦琴

 

駅驟雨南天神北大師

 

美ら海の青七色に夏来る   沖縄2句 

 

    

下闇にひめゆりの塔やうやくに

 

母の日の母の字にある乳房かな

 

雨雫より生まれ落つ糸とんぼ 

 

あじさいの剪られて藍のさらに濃く

 

七色の嘘の終りの紅あじさい

 

鮎食へば川音高き鞍馬かな 

 

一見の客として酔ふ藍浴衣

 

素足なり水の地球を徘徊す

 

 

半日は蟻の行方を追つており

 

だらだらと生きて暑さを知りませぬ

 

ケータイの耳が勃起す梅雨じめり

 

汗ばみし街よカメラが作動中

 

川べりの竿どつと出る梅雨晴間

 

定年やまだ夏帽の定まらず

 

くしやくしやの夏帽ひろげ下りゆけり

 

待つといふやはらかきとき初蛍

 

奥入瀬のしぶき蛍となりて消ゆ

 

原発や夏の怒涛に真つ直ぐに  東北3句

 

仮設家といへど路地あり水を打つ

 

旱雲船攫はれて曝されて

 

サングラス噂を撒きにゆく途中

 

デ・ニーロへアル・パーチーノのサングラス

 

孤独とは加齢の深間蝉烈し

 

源氏の間の奥は闇の間蝉しぐれ  篠山大書院

 

風太郎日記全巻読破大暑

 

一球を見逃しにけり夏の空

 

すききらいすきうそほんとサクランボ

 

夕焼けをトマトに閉ぢこめ捥ぎにけり

 

夏雲や棋譜と楽譜を携へて  悼・義兄

 

津の道の風も佛も涼しくて  兵庫大仏

 

素裸の子らの飛沫や終戦日

 

玄関のノブに虫籠お昼寝中

 

晩涼の新町橡の紅明り   青森2句

 

いっそ涼し原発マネーのミュージアム

 

自転車のうねうねと行く百の瀑  奥入瀬2句

 

かなかなや既に避暑地の領域に

 

冷えすぎし麦酒よ切れし老人よ

 

遊船や締めはジェンカの総踊り  ホノルル

 

バイク百恋人二百夜涼かな   ホーチミン

 

九份の霖雨悲情といふ看板  台北

 

坊ちやんの間といふ道後夏座敷

 

四万十に足抛げ入れよ夏の果て

 

  

ここかしこ芭蕉さんいて伊賀の秋  伊賀上野2句 

 

二之町の辻にひと待つ秋驟雨

 

散るだけと知つて芙蓉の酔つて落つ  越中八尾2句

 

おわら果て暁に咲く酔芙蓉

 

木犀のこぼれし夜のスニーカー 

 

コスモスのどこにでも咲くから綺麗

 

寄り添ふといふ語疎まし秋簾  東北2句

 

攫われし船が陸路に無月かな

 

国が捨つ紅葉且つ散る村しんしん  福島

 

夕焼けは昭和の空ぞ秋刀魚焼く

 

長き夜の時計しずかに狂ひ始む

 

長き夜の指が記憶を反芻す

 

夕月の湯にこぼるるや山の宿

 

秋風裡生一本をぶらさげて

 

秋時雨ほんまやねんなと喪服きる   悼・友2句

 

汝ひとり新酒酌む世へ我も途上

 

川といふ天高くする装置あり

 

天高したじろがざるものに石舞台  明日香2句

 

柿一つ空に残して明日香村

 

鯔跳ねて兵庫運河に清盛像

 

単線に乗換へてより黄落に

 

紅葉も黄落もなく朽ちにけり

 

母の骨納め亡父と呑む新酒

 

日々些事に喜びのあり温め酒

 

溺るるものなき身の釣瓶落しかな

 

秋草の名一つ覚え一つ買ふ

 

鵯鳴いて山のあなたは空ばかり  六甲2句

 

のぼり吐息くだり溜息山粧ふ

 

フライトの邦字紙灯火親しみて

 

 

 冬めきて小刻みに鳴るランドセル

 

木守りや八年先の村のこと

 

小春日や御簾の奥なる太子像

 

小春日の塵なき地へ子ら攫おうか  福島

 

俳句にも加齢臭ありそぞろ寒

 

三三五五一二一二七五三

 

別れやうか店畳まうか一葉忌

 

コンビニから派遣村見え一葉忌

 

凩一号君の妻より喪中につき   

 

凩の来るか煮大根はふはふと

 

逆上がりせよと囃されかいつぶり

 

百の樹に百の虚飾の聖夜かな

 

大丸を出て汽笛きくクリスマス

 

サンタさんいらつしやいと貼りすふすふ

 

母一人棲むに炬燵の間で足れリ

 

歳末のむかし新年特大号

 

賭けやうか酔はうか寒暮の三叉路に

 

昼の部はね京霜月のかまびすし

 

師走きて無い袖も振り棒も振り

 

隣席に亡きひとの坐し日向ぼこ

 

腸を掴みて喰らふ榾火かな

 

冬耕に良き日でありし母のゆく  悼・義母2句

 

寒紅やかへらぬひとにそつと差し

 

マスクはづしてワンコインだけの暖

 

闘魂の病なりけり冴返る  悼・兄

 

引いて割り足し算もして四温かな

 

三寒の鰭酒四温の生ビール

 

桂宇治木津の三川四温かな

 

恐竜の骨背伸びする春隣

 

短気怒気嫌気の棄て場日向ぼこ

 

ぐち、ぼやき、こごと、ためいき、日脚伸ぶ

 

六甲におもてうらあり裏は雪

 

嚔して眼下に富士の現はるる

 

数へ日の部下のメールのずかずかと

 

もういくつ寝るとあの世で凧あげて

 

望郷の晦日や貨車の音やまず

 

加除訂正したき噂の晦日かな

 

歌枕のやうな太宰のみぞれの地  津軽

 

夢の中に釣糸垂れて去年今年

 

去年今年貫く棒のふにやふにやに

 

元旦の一族と云へ小家族

 

年玉を父あるときの父のやうに

 

揺さぶればまだ余地のあり年迎ふ

 

従心のたくらみあまた書初に

 

写メにしか孫現れぬ御慶かな

 

印南野の平かにして凧一つ

 

この世への礼状あまた春の風   辞世候補

  

     

  繭(まゆ)というハンドルネームだった。それは句会だったから、俳号というべきかもしれない。インターネットがまだ普及していなかった90年代に、パソコン通信での句会に参加していた。

  初心者なので包み込んで保護する覆いのようなものが欲しい。すなわち繭の由来である。繭は、蚕が羽化し、やがて蛾に。いやきっと薄羽白蝶に。意表をついて巨大なモスラに変身するのもいい。ところがいっこうに上達せず、繭の下に位置する意味で繭々(けんけん)と改名した。さらに転げ落ちれば繭三(けんぞー)としようと思ったが、そのころにはネット句会は消滅状態になった。

  2001年に、50代の1000句のうち300句を集め、図々しくも第1句集『水の家』を編んだ。その後、高齢予備軍の遊び探しの一つとして年来の友人たちと初心者ばかりで句会を試みた。師を持たぬ句会は、年2回の吟行、句会、宴会という3点セットで今も続いている。

  当方の句を年代順に並べてみると劣化著しく、このあたりが潮時かとおもい、句集以後の60代の約1400句のうち160句を選んでネット上で編み、第2句集とした。タイトルを『繭の坂』としたのは、蝶やモスラにならず繭のまま坂をゆるやかに転げ落ちるのをイメージした。 

 

*

中作清臣 1941年1月、兵庫県生まれ。1990年から句作。1995年からネット句会に参加。2001年1月、句集『水の家』(ふらんす堂、ISBN:4894023819)。

 

*****************

句集 MAYU NO SAKA

繭の坂 

著者:中作清臣

Illustration:Junya Daisaku

2014年4月1日

発行 KOBE@RANDOM

naka.kobe@nifty.com

 

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