神戸RANDOM句会

シニアの俳句仲間の吟行・句会、俳句紀行、句集などを記録する。

2023=みなとやま水族館句会

2023-11-20 | 吟行句会

コロナ禍の行動制限が解除され、3年半ぶりに自由が戻ってきました。

と、息をつく間もなく、アレよアレよと阪神タイガースが18年ぶりのリーグ優勝。オリックス・バッファローズもリーグを3連覇し、日本シリーズで第7戦まで激闘の末、阪神タイガースが38年ぶりの日本一に。

勝利が決まるや、つきひさんには「おめでとう」のメールがひっきりなしに届いたそうです。

11月23日には神戸と大阪で両チームの優勝パレード。

第39回神戸RANDOM句会は、かつて平清盛の邸宅だった小学校の廃校跡を再生させ昨年7月にオープンした人気のスポット「みなとやま水族館」を訪ねます。みなとやま水族館との出会いで、どんな名句が生まれるでしょうか。

三ノ宮駅集合

11月に入っても暑い夏が続いていましたが、11日に神戸で木枯らし1号。13日に氷ノ山初冠雪。と、あっという間に冬。この激変でメンバー2人が体調を崩され一風幹事長に欠席の連絡。

2023年11月16日(木)、JR三ノ宮駅改札口に午前9時15分が集合時刻。

天気は雲一つない快晴で、気温も暖か。晴れ男・一風幹事長の株がまた上がりました。

参加者は、つきひさん、どんぐりさん、へるめんさんの女性3名、男性は一風さん、見水さんの2名の計5名で、これまでの句会で最少人数。9時10分に全員揃ったので出発します。

一風幹事長が、待ち合わせ中らしい女性にシャッターボタンをお願いし、出発の写真。

駅のコンコースを出て、神戸阪急北側の市バス7系統の乗場へ。神戸阪急にはクリスマスツリー。三宮周辺は大規模再開発が進行中で、勤労会館と旧・中央区役所はバスターミナル建設のため姿を消しました。

9時18分発の市バス7系統に乗り込みます。

みなとやまをゆく―――――――――

バスに乗って

市バス7系統は中央区の西部(旧・生田区)と兵庫区の山麓を走るバス。NHK神戸放送局・トアロード・北野工房のまち・東天閣(旧・ビショップ邸)・神戸北野ホテル・海外移住と文化の交流センター・諏訪山公園…と、神戸の山手の風景が次々と車窓に流れます。

「トアロードの異人館街はマンションに建て替わっても煉瓦塀を残しています。この坂道には昔はブラジル移民の人達のための金物屋が多く並んでいました」

山本通でかつて約20年暮らし、このバスで通勤した一風幹事長は観光バスガイドに早変わり。

「神戸百景」を2度描いた版画家・川西英さんは、この近くにあった「海洋気象台」を美しい絵に残しています。

       

兵庫区に入ると六甲山系の低い山々と大倉山・会下山に囲まれ、南に港が開けた奥座敷のような街。水の科学博物館(奥平野浄水場)・東福寺・五宮神社・祥福寺など歴史的な建物や寺社が点在しています。通りを進むと有馬街道と交差する「平野交差点」。

有馬街道沿いに祇園神社と湊山温泉、交差点に若い清盛像が立っています。2012年放映のNHK大河ドラマ「平清盛」の松山ケンイチそっくり。

バスが進み、道沿いに「みなとやま水族館」の表示。小学校の雰囲気を残しながら生まれ変わった複合施設「NATURE STUDIO」です。三宮から約20分、9時40分に「石井橋」バス停に到着しました。

雪見御所

バスを降りると、歩道沿いの一画に「雪見御所」の石碑。明治41年に湊山小学校の校庭から礎石や土器が発掘され、記念に立てた碑を移設しています。碑の説明によると、清盛の邸宅はバス道の北側の湊山町からここ雪御所町に広がっていたようです。

一風さんが、ここで追加のうんちく。清盛の都や「平野」について語ります。

清盛は、日宋貿易のため大輪田泊を修築。当時「平野」には平家の邸宅が軒を連ねていました。

  長明も踏みし落葉や今平野  一風

鴨長明が方丈記に描いたように、清盛はこの地へ遷都を行い、より土地の広い南部の和田のあたりも新都の候補になりましたが、平家の邸宅のある「平野」に「福原京」の建設を進めます。しかし、各地で反平家の勢いが増し、やむなく半年で京に還都。清盛が熱病で急逝すると、源平合戦により「平野」は灰燼に帰します。

  雪見御所跡地に仰ぐ冬紅葉     どんぐり① …○数字は句会での得点

  紅葉濃き平家栄えし湊山       見水③

  秋惜しむ兵庫の歴史ひもときて   つきひ①

  露けしや栄華の夢の雪の御所    つきひ②

5年前の第28回湊川まちぶら句会で、湊川公園から東山市場、氷室橋、湊川隧道を歩き、氷室橋の上で一風幹事長が名調子の歴史ガイド。湊川隧道でだっくすさんが名句を残しました。

  行く秋のトンネルの先異界かも  だっくす

氷室橋からここ雪御所までは数百メートルですが、鉄道の駅から歩くには遠く、前回の句会会場の兵庫公会堂も廃止されたので、今回は市バス7系統で三宮からの往復にしました。

湊山小学校

湊山小学校の創立は1873年(明治6年)。当初は霊山寺の仮校舎でしたが、1875年に北側の湊山町に小野浜の神戸海軍操練所の建物を購入し移築して本校舎に。1899年(明治32年)に雪御所町に移築移転。海軍操練所の建物は1920年まで校舎に使われました。2015年に141年の歴史を閉じて廃校。同時に、平野・荒田・湊川多聞小学校も廃校になり、現在は、4校が統合されて子供たちは新設の神戸祇園小学校に通っています。

子供たちの成長を願う学び舎は、どの地域でも一番いい場所に建っています。

児童数が減って廃校になった小学校の跡地は、建物を撤去し、地域に必要な高齢者施設や公園などに転用されていますが、北野小学校は、既存の校舎や広い運動場を活かして観光バスの駐車場を併設した「北野工房のまち」に、吾妻小学校は、生涯学習支援センター「コミスタこうべ」に生まれ変わっています。

みなとやま水族館

みなとやま水族館は、湊山小学校再生のコンペで選ばれた地元の村上工務店が企画・運営する複合施設「NATURE STUDIO」の目玉の施設。村上工務店は今年4月にオープンした「アーバン・ピクニック」を掲げる東遊園地のリニューアルにも参画し、新設のカフェを運営。神戸の歴史が刻まれた名所を新生させる斬新なアイデアが「みなとやま水族館」にも詰まっていそうです。

「NATURE STUDIO」になった小学校には、保育園や学童保育コーナー、就労支援施設も開設していますが、校舎や体育館に明るいデザインが施され、ハーブ・ショップやビール醸造所、フード・ホール、ガーデン・キッチンに変身。校庭は駐車場と緑地になり、小道の奥に水族館。

水族館のそばの屋外には枝を広げた樹を中心にドーナツ型のニジマス釣りができるFISH POND。山が近く、天王谷川と石井川が合流するこの地は地下水が豊富で、マス池の水やビールの製造に利用しています。

清盛の雪見御所の庭園があった場所に、いまは元気よく泳ぎ回る虹鱒の群れ。アイデアマンだった泉下の清盛も驚いていることでしょう。

今後、西側の駐車場の場所には、高齢者福祉施設や医療機関、レストランの建物ができる予定で、地域のつながりを優先させながら魅力ある施設づくりを発信していくようです。

水族館の開館は午前10時。まだ時間があるので、本日の会費を徴収させていただきました。

午前10時になり、全員の入館料を支払って入館。館内は、小学校の校舎だったと思えないお洒落な空間。各水槽には効果的に照明が当てられ、色とりどりの魚が舞い泳ぐ姿をじっくり観察できます。水槽の前にはクッションも置かれています。

  水槽の龍宮城めく冬館     どんぐり③

  冬晴の廃校世界の魚集ふ    見水② は句会での特選句

平日の午前中ですが、幼児を連れた家族やカップルが訪れ、楽しそうに見学しています。スーツ姿の男性の二人連れも熱心に見学。視察の出張かな。

  魚の骨赤く光りて冬めける   一風①

  小魚が立ち泳ぎする神無月   一風②

  冬の日に水槽前に話し込み   一風

飼育のスタッフたちは忙しそうですが、つきひさんがいろいろ質問すると、親切で的確な回答。感激!

  ネオンテトラ群るる水草薄紅葉    つきひ②

  造化とはシーアップルてふ海鼠かな  つきひ③

  小さき巻貝のいのちや秋うらら    へるめん

水槽を一巡し、次は靴を脱いで上がる展示室。愛嬌のあるミナミトビハゼやチンアナゴ、クラゲがゆらゆら。見せる工夫が巧みです。

よちよち歩きの幼児も、円柱の水槽でゆらゆら動くクラゲを不思議そうに見ていました。

  濡れ岩に飛鯊微動なく並び     へるめん②

  水中で師走を待つやチンアナゴ   一風①

  小六月首伸ばしたるチンアナゴ   どんぐり①

  秋思かな海月仰むき俯きて     へるめん④

隣の部屋には水琴窟や手を入れると吸い付いてくるドクターフィッシュ。

  ドクターフィッシュ十指まかせし小六月  つきひ①

  くすぐったいドクターフィッシュ冬隣   見水②

まだありそう、と進むと愛らしい2匹のコツメカワウソ君が水中を猛スピードで泳ぎ、泳ぎ疲れてちょっと休憩。ドアの外の屋外には錦鯉の池。自販機でエサを買ってエサやりもしました。

  秋の日のカワウソひとりあそびかな   へるめん①

おや、ここも、と覗くと上でじっと動かないナマケモノに大きなカメ、飛び回る小鳥たちも。水辺の生きものたちが平和に暮らしています。

迷路のような水族館を堪能して出ると、グッズショップ。飼育員さんが考案したオリジナルのぬいぐるみやタオルハンカチなどがあり、今回の句会の賞品はこのショップで購入しました。

都会の里山

水族館の外に出ても、一面の緑地は暖かな日差し。静かな郊外の里山でピクニックをしている気分です。しばし、本日の提出5句をまとめました。

  水族館出て小路の草の花       へるめん

  末枯のレモングラスのさゆれつつ   どんぐり

  しじみ蝶集ふハーブの庭小春     どんぐり②

午前11時15分、みなとやま水族館を後に「石井橋」のバス停へ。市バス7系統で三宮に戻ります。車窓から再び神戸の街の風景を楽しみながら十数分、元町に近い「三宮町2丁目」で下車。広東料理「良友」の入っている南泰ビルと貸会議室のあるセンタープラザ西館は目の前です。

食は広州にあり――――――――――

9月の句会の下見で、市バスを降りてからあまり歩き回らずに昼食と句会ができるよう探し、試食もして決めた昼食会場が広東料理「良友」。店名もわが句会にぴったり。今回は珍しく中華の昼宴会です。

午前11時50分に広東料理「良友」到着。

用意された席に着き、ビールを注文。料理が出てくると、阪神ファンお待ちかねの、

「38年ぶり日本一に乾杯!」

残念なのは大の阪神ファンだった播町さんの祝勝の弁が聞けないこと。1962年の優勝パレードでは紙吹雪を撒き、1985年には「ニューコロナ」で店にあふれるファン達と日本一の美酒に酔いしれた播町さん。今回は、蒼天からの高笑いが聞こえてきそうですが。

紙のランチョンマット(敷紙)や箸袋を見ると、さっき水族館で見たタツノオトシゴ。良友酒家のマスコットのようです。

昼のお手軽なランチコースですが、大皿でなく、1人分ずつ、前菜、スープ、メイン料理…と手際よく器が運ばれ、焼きそば、デザートまで約1時間。熱いウーロン茶のポットも出してもらい、料理もお茶も美味しくいただき、満腹になりました。

  良き友と食は広州冬温し  見水①

総勢5名の少人数なので、話題は個人的なことにも。

毎回熱心にテレビ観戦し、日本シリーズの第7戦で決着した38年ぶり阪神日本一に、アンチ阪神でオリックスファンの一風幹事長は不満そう。

「一風さんは尼崎出身なのに、なぜアンチ阪神?」と、つきひさんの突っ込み。

つきひさんは今春から朝日新聞の朝日俳壇への投稿を始め、3回も選に入りました。初めて選ばれた時には新聞社から確認の連絡があるそうです。

「つきひさんはいつから俳句を?」の質問に、

「中学生の時から。山陽中学生新聞で一席になり賞金を貰ったこともあるのよ」

「見水さんはブログをアップしているけど、書くことはもともと好き?」の質問には、

「就職して最初の担当が職員誌と広報。6年間、先輩や元新聞記者の係長、大阪の新聞記者OBの編集者らに仕込まれて、取材や原稿書き、写真撮影、イラスト描きが楽しくなりました」

播町さんが始めた句会のまとめの編集を2007年の第5回伊丹句会から、ブログへの入力を2015年の第21回弓削牧場句会から引き継いでいます。

大きなバッグからつきひさんが取り出したのは、たちばな句会の内田幸子さんの米寿記念句集「大根の花」。

「私もちょっとお手伝いしたので読んでみて」と、冊子をお預かりしました。

家に帰ってざっと拝見。わかり易い共感できる句が多く、あとがきの「現在の超高齢化社会に於いては八十八歳はまだまだ未熟者…」以下の言葉に頭が下がります。来年の夏はわが家庭菜園でも大根の種を蒔いてみたくなりました。

午後1時15分、昼食会終了。「良友」を出て、句会の会場のセンタープラザ西館まで歩き、午後1時20分に予約していた6階の貸会議室15号室に到着。

良友句会―――――――――――――

昨秋の句会でも利用した貸会議室15号室は、窓から六甲山が望めるゆったりした部屋。人数分の座席を作り終えると、各自5句を完成させ短冊に書きます。提出期限は午後1時45分。

集まった短冊をばらして手分けして清書し、選句表に貼り付け。午後2時10分に選句表を人数分コピーして全員に配付。各自、自作以外の気に入った6句を選びます。特選1句2点、その他5句は1点で、各人の持ち点は計7点。参加者5名の総点数35点の争奪戦です。

午後2時30分、つきひさんの進行で、特選句から順番に選んだ理由も挙げながら発表。25句全部に点数が付けられて作者が明かされました。

午後3時30分、句会は終了。つきひさんの差し入れのお菓子をいただきながら、会議室に用意されているお茶で一息。今回は高瀬舟羊羹とみるく饅頭、和風スイートポテトをいただきました。

みるく饅頭とスイートポテトのメーカーの本社は愛媛県八幡浜市保内町川之石。つきひさんの姪御さんが川之石に嫁がれ、お子さんは川之石小学校の卒業生。小学校の先輩に、俳人の富澤赤黄男がいて、校内に句碑もあるそうです。

まだ時間がたっぷりあるので、つきひさんは富澤赤黄男の資料を紹介。

  蝶墜ちて大音響の結氷期  赤黄男

いま、ロシア-ウクライナ戦争に加え、イスラエルのガザの惨禍に、世界中の人々が心を痛めています。日本が戦争の泥沼へつき進んだ80年前、富澤赤黄男は召集で出征し、戦場から多くの句を送りました。資料には、凄惨な戦場での俳句が並んでいます。

「代表句の『落ちて』ではなく『墜ちて』をよく見てね」と、つきひさん。

「当時、戦場からよくこんな句を送れたな」と、一風さん。

二度と戻りたくない時代です。

「次の句会は春やね」

桜の名所やまだ行ったことのない名刹もいろいろ浮かびますが、

「やっぱり近場かな」

今回のような、誰もが楽しめる近くの穴場を探しましょう。

高得点句

本日は4点獲得句が1句と、3点句が3句ありました。再掲します。

 秋思かな海月仰むき俯きて            へるめん④◎

  円筒形の水槽の中でゆらゆら寝返り。

 造化とはシーアップルてふ海鼠かな  つきひ③◎

  なんとも不思議な生き物ですね。 

 水槽の龍宮城めく冬館                どんぐり③

  静かで幻想的な深海にいるよう。

 紅葉濃き平家栄えし湊山              見水③

  源氏は白旗、平家は赤旗でした。    

表 彰

午後4時、獲得点数によりいつもは表彰式ですが、少人数なので皆で写真を撮りました。

優勝は、つきひさん(9点)、準優勝は見水さん(8点)、第3位はジャンケンでどんぐりさん(7点)。第4位はへるめんさん(7点)、第5位は一風さん(4点)。出句5句すべて得点のパーフェクトはつきひさん。賞の命名は見水さんです。

女性軍3名対男性軍2名は23点対12点でした。

  

午後4時15分、部屋を片付けて退室。

センタープラザ、サンプラザ、マルイを抜けて、交通センタービルへ。午後4時半に解散。

好天に恵まれ、句友との吟行と食事、句会で楽しく遊んだ時間はあっという間でした。

下見の一風さん、蛸地蔵さん、見水さん、句会運営のつきひさん、賞品選びのへるめんさん、どんぐりさん、おつかれ生でした。

今年は、播町さんが望んでいた「花の大中遺跡句会」が奥様のご協力で実現し、3年半のコロナ禍が終結し、阪神タイガースの岡田監督の「アレ」も、「アレのアレ」も実現しました。

  六甲颪神戸の街を吹きぬける  見水 

来年のたつ年、2024年・令和6年の願いは、一つ。

ウクライナとイスラエル・ガザの惨禍を1日も早く終結させ、人々が平和で明るい未来に向かって歩みを進めること。

自由で遊び心いっぱいの神戸RANDOM句会がいつまでも続きますように。よいお年を。

2023.11 写真・文/mimizu

 

 

 


 

 

コメント (3)
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