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マルキシストとの論争―「自由な共産主義」をめぐって―(27)

2016-11-20 | 〆マルキシストとの論争

27:教育について④

マルキシスト:今日は私から問題提起をさせていただきます。コミュニストさんの『共産論』には、教育に関して一章が充てられていますが、その中に障碍児教育についての論及がありません。「自由な共産主義」にあっては、健常者教育だけが想定されているのでしょうか。

コミュニスト:決してそうではないのですが、考えがまとまっていなかっただけです。逆質問になりますが、マルキシストさんの障碍児教育に関するお考えを伺ってよいでしょうか。

マルキシスト:実は、マルクス主義においても障碍児教育に関しては十分考察されてきませんでした。私は、そうした反省に立って、マルクス主義においてこそ障碍児教育は充実させなければならず、またそれは可能であると考えています。

コミュニスト:具体的には?

マルキシスト:就労訓練と結合した特別教育機関の設置が最も効果的でしょう。

アナーキスト:やはり学校化か。障碍児教育こそ脱学校化の最前線たるべきではないかね。

コミュニスト:私は「脱学校化」という表現は使用しませんが、学校での集団教育は障碍児教育にそぐわないと思います。

マルキシスト:学習に当たって特別な配慮と援助が必要な障碍児教育にはコミュニストさんご提案の通信教育化や、アナーキストさんの私塾教育はそぐわず、集中的な学校教育が不可欠でしょう。

コミュニスト:いいえ、障碍児教育こそ、学校での集団化ではなく、一人一人に合わせた家庭での個別教育が不可欠なのです。ヘレン・ケラーは学校の前に家庭教師によって救われたことが想起されます。その点、私は通信教育を障碍児にも適用しつつ、それをサポートする障碍児教育専門の家庭教師制度を正式に設けるべきだと考えています。

マルキシスト:障碍児一人一人に家庭教師を派遣すべきだというのですか。

コミュニスト:資本主義のようにコスト計算をしなくてよいのですから、その気になれば十分可能でしょう。

マルキシスト:しかし、ヘレンも後に盲学校に通学し、名門女子大学も卒業していますよ。

コミュニスト:たしかに。しかし、何と言っても最初に教えを受けた家庭教師アン・サリヴァンの存在が決定的だったことは否定できません。学校を健常者向けと障碍者向けに分けるのは、人種別隔離教育と同じやり方なのです。

マルキシスト:たしかに隔離教育は問題であり、可能な限り統合教育を目指すべきだと考えますが、障碍児にはその特性に応じた特別教育の必要性も否定できないでしょう。かつ、障碍者の社会参加を促進する職業訓練への橋渡しが必要です。

コミュニスト:障碍者の社会参加は否定しませんが、問題は参加の仕方です。労働参加ということだけにこだわると、障碍者に職業訓練を施して底辺仕事をさせようという資本主義的「社会参加」の道に合流することになるでしょう。

マルキシスト:しかし、産業社会の現実として、障碍者も教育・訓練を受けて職に就かねば生計が成り立たず、生涯施設暮らしということになってしまいます。むしろ、障碍者を労働不適格者として施設に押し込むことこそ、悪しき資本主義的排除です。

コミュニスト:「産業社会の現実」と言われますが、それは社会の仕組み次第です。労働と生活が直結している社会か、それとも労働と生活が分離されている社会か、ということです。ここで問題は教育から生活経済の領野に移ることになりますので、次回以降はこの問題を討議することにしましょう。

※本記事は、架空の鼎談によって構成されています。

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