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没論理の新共謀罪法案

2017-05-18 | 時評

衆議院で可決間近となっている「テロ等準備罪」の名を冠した実質的な新共謀罪法案の趣旨説明は、改めて没論理的な思惑でもって立法が“粛々と”進むこの国の危険性を露呈している。

この法案の必要性について、政権は2020年東京五輪を睨んだ「テロ対策」として説明している。が、それならば、「テロ等」ではなく、まさに「テロ準備罪」に限定した縮小法案で足りるはずだ。なぜ「等」として、テロ以外の犯罪にも大幅に拡大するかの説明がつかない。

拡大の理由として想定されるのは、署名のみで批准が十年以上先送りとなっている国連組織犯罪防止条約の批准条件を整備するためという点だが、これについては、新法なしでも十分批准は可能とするのが専門家の大方の見方である。

とすると、いったい政府をしてこれほど新法制定を焦らせるものは何か。おそらくは捜査・処罰権限の一挙拡大という国家的思惑である。実際、専門家たちが懸念するように、新法が制定されれば、従来の刑法体系を一変させるほどの大改変が加わることになり、国家は原則として犯罪の実行行為を待たねば捜査を開始できないという法的制約から解放される。そして、それが可能なのはしかない。

そうした思惑を一般国民向けには「テロ対策」という餌で釣りつつ、拡大的な「テロ等」の矛盾を突かれると、批准・加盟自体には大きな異論のない条約を持ち出してフォローするという相互に矛盾する二段構えの理屈―細かくは政権与党が「テロ対策」、所管法務省は「条約」で役割分担しているようにも見える―で制定を急ごうというのが政権の計略のようである。

法案への賛否を聞く各種世論調査では「わからない」が相当に多い。「わからない」理由は、無関心からか無知からは不明だが、「わからない」人は少なくとも反対はしないわけで、国民がよくわからない間に法案をさっさと通過させるには絶好のタイミングであろう。

しかし、刑法体系をたった一本の法律で覆してしまう法案を没論理的な思惑だけで強引に成立させることは、将来に重大な禍根を残すことになる。せめて、「理性の府」参議院は否決する気概を示してほしいところである。

〔追記〕
期待も虚しく、参議院は否決どころか、委員会審議を打ち切る「中間報告」というウルトラ術策―緊急性という「中間報告」の要件自体も充たしているか疑わしい―を使って採決した。2017年6月15日は参議院が死んだ日付として記憶されるだろう。

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