ザ・コミュニスト

連載論文&時評ブログ 

共産論(連載第54回)

2017-07-15 | 〆共産論[改訂第2版]

第9章 非暴力革命のプロセス

(5)共産主義社会が始まる:Open the communist society

◇最初期共産主義
 移行期の一時的混乱を最小限に抑えることに成功し、この時期を無事に乗り切れば、いよいよ共産主義社会が始まる。この生まれたばかりの共産主義社会が「最初期共産主義社会」である。
 この時期は移行期を通過済みとはいえ、まだ不安定で、共産主義的な施策が本格的に推進されていく変動期のプロセスである。このプロセスにどれくらいの時間を要するかは難しい問題だが、少なくとも10年は見込んでおいた方がよいかもしれない。以下、この時期におけるメインのプロジェクトを項目的に列挙していく。

◇通貨制度の廃止
 最初期共産主義社会における経済革命のクライマックスと言えるのが、貨幣制度の廃止である。これは単にモノとしての貨幣を廃棄し、キャッシュレス化するということではもちろんなく、電子マネーのようなものを含めて交換手段としての強制通用力を与えられた通貨制度全般を廃止するということになるが、それだけにいくつか慎重にフォローすべき点がある。
 まず金融機関、特に銀行の総清算作業が不可欠である。この作業のために、中央銀行内に金融清算本部を設置し、各銀行の清算会社をすべて接収したうえ、全口座を整理する必要がある。
 これらの口座の預金はすべて中央銀行の管理下で封鎖・無効化されるが、まだ資本主義経済下にある諸国の外国人(法人を含む)名義の口座については引き出し・返還の手続きを進める。
 他方、革命が全世界に波及するには時間差が避けられず、まだ共産化されていない諸国との貿易を当面は継続する必要上、中央銀行は貿易決済に必要な外貨準備を保有していなければならない。なお、貿易に関しては、全貿易会社を統合したうえで一元的な貿易窓口機関となる暫定的な「統合貿易公社」を設立して対応する。
 ところで、通貨制度を廃止した場合に生じ得るリアルな難問は、まだ通貨制度が廃止されていない海外から、無償で物品を取得しようとする外国人のツアー客が殺到しかねないことである。
 これに対しては、さしあたり永住者や長期滞在者以外の外国人については、中央銀行が監督する一部の外貨決済商店でのみ物品の購買を認める特例をもって規制的に対応せざるを得ないであろう。
 従って、最初期共産主義社会においては、貿易の当面の継続と合わせて、対外的な関係ではなお商品形態が一部残存することになる。

◇計画経済の始動
 移行期に準備されていた包括会社が生産事業機構に転換され、経済計画評議会の発足と同時に最初の計画経済(第一次三か年計画)が始動する。計画外の自由生産制を採る分野でも、株式会社制度の廃止に伴い、新しい生産組織が続々と発足する。
 これに伴い、移行期の共産主義経済試行区は廃止され、全土的に共産主義経済が拡大される。

◇社会革命の進行
 経済分野以外でも、家族、福祉、教育、メディアなどの諸分野で、各章で見たような大規模な社会革命が進行していく。
 ただ、こうした分野の変革は経済分野以上に歴史的な時間を要することもあり、最初期共産主義社会のプロセス内では完了しない場合もあり得るであろう。

◇全土民衆会議の発足
 最初期共産主義社会における政治制度面の重点は、領域圏レベルの全土民衆会議が正式に発足することである。反面、移行期の革命中枢機関であった革命移行委員会はその名称を「革命参事会(以下、「革参会」と略す)と変え、役割も全土民衆会議に対する上院的なものに転換される。
 すなわち革参会は全土民衆会議の可決した案件に対する事後承認の権限を持ち、これを通じて同会議に対する目付的な役割を担うのである。革参会の議員は革命功労者の中から6年程度の任期をもって全土民衆会議が選出する。

◇政府機構の廃止
 移行期にはまだ残存していた中央政府機構が解体され、民衆会議による一元的統治が開始される。これに伴い、旧省庁の多くは全土民衆会議に直属する政策シンクタンクに転換されるが、財務省・国税庁などのように、通貨制度の廃止と運命を共にする省庁もある。
 なお、外務省は次章で見る世界共同体が正式に発足するまでは、全土民衆会議の外交機関(外交本部)として当面存続するが、世界共同体が発足した後は、現在のような主権国家間の外交関係自体が消失するため、世界共同体の出先機関である「世界共同体連絡代表部」に取って代えられる。
 また、この段階では市町村役場や都道府県庁といった旧自治体機構の廃止・転換も完了する。

◇軍廃計画の実行
 移行期に策定された軍廃計画が実行段階に入る。この段階で世界共同体における常備軍廃止条約が締結された場合は、条約上義務づけられた行程に従って、常備軍の廃止プロセスを進めていくことになる。

◇完成憲法の制定
 全土民衆会議は上述のような重要な工程が一段落したところで、その成果を踏まえつつ、かつこの段階では世界共同体レベルの憲法「世界共同体憲章」の内容に即して、完成憲章の起草作業に着手する。
 完成憲章は最初期共産主義社会に続くプロセスとしての「成熟期共産主義社会」に対応するもので、ここでの重要な改正点は革参会が廃止されて全土民衆会議に完全に一本化されることである。言わば上院が廃止されるわけで、これによって共産主義社会はいよいよ成熟期を迎えるのである。
 この完成憲章の最終的な確定のためには、領域圏民衆による直接投票で過半数の承認を経ることを要するものとすべきである。 

◇成熟期共産主義から高度共産主義へ
 この成熟期共産主義社会を経由して社会の全人口の大半が「資本主義を知らない世代」となった時に、発達した共産主義社会すなわち「高度共産主義社会」に入っていく。
 この時に初めて、第3章で展望したような純粋自発労働制の社会が実現するのかどうか━。これについては、未来世代の賢慮に委ねるほかはない。

ジャンル:
その他
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 共産論(連載第53回) | トップ | 農民の世界歴史(連載第52回) »

コメントを投稿