油屋種吉の独り言

オリジナルの小説や、随筆をのせています。

いやな予感 その4

2017-06-22 23:06:23 | 小説

 突然、屋根の上が騒がしくなった。
 ドタドタと何かがかけまわっている。
 「ちょっとイサム。怖いわ。いったい何が
いるんだろね」
 ミホが天井を見つめ、不安を口にする。
 「体が重そうだから、からずじゃなさそう
だしね。まるで人間の子がふざけてるみたい
だな。とにかくちょっと様子をみよう。山の
中だし・・・・・・。今外に出るとあぶない
めにあうかも」
 「玄関の扉があけっぱなしだったわ。何か
わかんないけど、入って来るかしんないや」
 ミホが泣きそうになる。
 「そのときはそのとき。ぼくがたたかう」
 イサムは近くの棒きれを拾い、右手にもち
かえた。
 屋根の上はすぐに静かになった。
 キキキッ、キキッ。ギャ。
 玄関のあたりで、けものの鳴き声がいっせ
いにあがったがすぐにやんだ。
 一匹じゃなかったらしい。
 「ひょっとして、猿だったかもしれないね」
 イサムが声をひそめた。、
 「おさるさん?ああいやだ。何匹もに襲わ
れたんじゃ大けがするわ。動物園でけんかす
るのを見たことあるけどすごかったわ。眼を
つりあげたり牙をむきだしにして、相手を威
嚇するのよ」
 ミホは涙をこぼした。
 「やつらは食べ物がほしいだけさ。屋根の
上でいさかいを起こしたんだ、きっと。こち
らには何にも持っていないないから、そんな
ことはないよ」
 「行ってしまったんじゃ、もう帰りましょ。
こんなジャングルみたいなとこ、タケルがい
るなんて考えられないわ」
 「暗くなっちゃうしな。ここまで来たけど
予定変更だ。タケルのことはあきらめよう」
 ふいにひたひたと足音が近づいてくる。
 「しっ、誰かくるぞ」
 「ええっ?」
 ミホがあやうく大声を出しそうになり、み
ずから両手で口をおおった。
 ミホはイサムの指示どおりに動き、引き戸
わきの大きタルのかげに隠れ、身をかがめた。
 ビニル袋をひとつ左手にさげた、ひとりの
少年が玄関の方からあらわれ、ゆっくりと歩
いた。
 あたりはうす暗い。
 よくは見えないが、イサムはその服装に見
覚えがあった。
 ただ、やたらに汚れ、あちこち破けている。
 彼は四畳半の部屋の上がり口で、ドサッと
すわりこむと、ハアハアあえいだ。
 「タケル、タケルじゃないか」
 思わずイサムが叫ぶと、その少年の体がビ
クッと震えた。
 イサムが彼の眼の前にとびだした瞬間、彼
は、ああとうめいた。
 「お金だってそんなになかったんだろ。食
べ物や飲みものはどうしてたんだ」
 「こっちへ来る時買いだめしてたんだ。心
配かけてすまなかった」
 タケルの声は震えたが、イサムを見て安心
したのか、顔はほころんでいた。
 「どうして話してくれなかったんだ?」
 「心配かけるだけだし、要するに俺自身の
問題だからな」
 「問題ってなんだ」
 「そ、それは・・・・・・」
 タケルが言いよどむ。
 「ちょっとちょっとふたりともやめて。イ
サムくん、ほらタケルくんの手から、血が出
てるみたいよ」
 「さっき、玄関さきで猿の親玉にやられた
んだ。もう一袋あったんだけど、やつらに持
って行かれてしまった。ミホちゃん、よくこ
こまで来てくれたね。ありがとう」
 とにかく傷の手当てをしなくては、と、三
人は暗い道をゆっくりとくだった。
 
 
 
 
 
 
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