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ブログ中断のお知らせ

2012-04-10 | ことばとコンピューター
「ブログ中断のお知らせ」

現在、次のブログの内容を「工場のグローバル化とコンピューターシステム」として編集しています。

1.グローバル工場−−−ビジネスモデル 2011−12−11
2.グローバル工場−−−機能階層(1) 2011−12−25
3.グローバル工場−−−機能階層(2) 2012−01−09
4.グローバル工場−−−機能階層(3) 2012−01−24
5.グローバル工場−−−機能階層(4) 2012−02−10
6.グローバル工場−−−機能階層(5) 2012−02−25
7.グローバル工場−−−機能階層(6) 2012−03−11

編集作業を終えて、5月10日頃から当初の計画とおり「グローバル化への準備−−−英語化の分野」に進んで行きます。

以上

グローバル化への準備−−−時代の流れ

2012-03-25 | ビジネスと英語
1.時代の流れ
1960年代初めに実社会に出て今日まで、多くの国に出入りしてきた。その間に蓄積したさまざまな経験と記憶は、やがて一つの塊となって頭の中に定着する。ちょうど、珊瑚礁が成長するように、小さな記憶が一つひとつ積み重なって固定観念へと成長する。

ちなみに、固定観念を国語辞典で引くと「ある人の心中に潜在して、つねに念頭を離れず、外界の動きや状況の変化によっても変革することが困難である考え」(小学館言泉)とある。

先ずは、日米タイに結びつく筆者の固定観念を紹介し、その固定観念にもとづき今後の日本を考える。

(1)日米タイの印象
日本、アメリカ、タイをはじめ、世界各国の人口の男女比はほぼ半々である。しかし、過去の経験や記憶から筆者は、日本は男性社会、アメリカは男女均衡社会、タイは女性社会と見る。もちろん、これらの固定観念には、統計や客観的な調査による裏付けはなく、個人的な考えに過ぎないと断っておく。

1)日本:男性社会
1970年代初頭、転職先の大手企業で管理職教育セミナーに出席した。講堂には約150人の管理職が集まった。その中の紅一点は東京連絡事務所の女性課長だった。アメリカ系企業から転職した筆者にとっては、150人もの男性集団に紅一点は、異様な光景として今も頭に残っている。

日本では、1985年に男女雇用機会均等法が成立(施行86年4月1日)、しかし、現在でもグローバル企業の経営者、取締役や部長に女性が少ない。また、女性国会議員、日本大使館や領事館の日本人女性職員も少ない。

2000年から2009年にかけてバンコク周辺の日系工場に出入りしたが、工場の日本人駐在者は男性ばかり、女性の駐在者には会ったことがない。海外の日本ビジネスの第一線で活躍する女性、特に4、50歳代の働き盛りの日本人女性に出会う機会はなかった。これは、製造業という分野のためかも知れない。

さらに、バンコクでは筆者が講師となって生産管理などのセミナーを日系企業に無料で実施した。約20回のセミナーの参加者は製造業だけではなかったが延べ約600人、そのうち女性参加者は3人(会計関係)だけだった。

さらに、ビジネス以外の分野でも男性中心の考え方が強い。たとえば、女性国会議員の名前には「氏」付け、一般の女性には「さん」付け、「氏」と「さん」の使い分けに日本らしい考え方を感じる。このような理由で、日本は男性社会と考える。

2)アメリカ:男女均衡社会
1960年中頃から2000年まで、日本とアメリカと西ヨーロッパを行き来した。その間、アメリカ系企業や日本企業の社員、ウィーンの国連専門機関の職員、アメリカ多国籍企業へのコンサルティングなどを経験した。専門分野はコンピューターと生産管理である。

アメリカでは1964年の公民権法で「人種、皮膚の色、宗教、性、出身国」による差別を禁止した。当時の大学卒業生への就職案内には、会社名に△マークが付いていた(“△”は Equal Employment Opportunity=雇用機会均等を意味するマーク)。アメリカでは求職者を面接するとき、男女の区別がはっきりしない相手でも、性別を聞いてはいけないと人事担当者に教わった。そのうち、運転免許証の写真が白黒からカラーに変わり、白黒写真時代のWまたはC(W=White:白人またはC=Color:有色人種)の表記がなくなった。

話は変わるが、1960年代中頃、“A FORTRAN IV PRIMER(フォートランIV入門)" (E. I. Organick, Addison-Wesley, 1966)というプログラミング言語の入門書があった。その本は、高校2、3年生から大卒者を対象としたベストセラーだった。当時のテキサス州では、理工系学部や経営学部ではコンピュータープログラミングが必須単位、学生数1万人程度の州立大学でもIBMなどの最新型コンピューター4〜5台を設置し、学生にセルフサービスで自由に使わせていた。

この大学では、コンピューターサイエンス(学科)を専攻する学生の8割以上は女性だった。当時、引く手あまたのコンピューターの分野に多くの女性が進出した。ヒューストン郊外のNASA(航空宇宙局)では、1200人ほどのプログラマーが働いていると聞いた(男女比は不明)。

1970年代初頭、国際連合の専門機関(ウィーン本部)で働いたが、そこで働く欧米出身の専門職は男女ほぼ同数、途上国出身の専門職はすべて男性だった。もちろん、日本人6人の専門職は全員男性だった。国連は多言語社会だが、専門職の勤務評価の一部を一つの参考として後ほど【補足説明】で紹介する。

次に、1990年代初頭から2000年にかけてのアメリカ多国籍製造業2社の状況を紹介する。

2社のうち1社の社長は女性だった。女性の役員、生産管理部長、販売管理部長、経理課長、その他の女性主任は珍しくなかった。社内のシステムエンジニア、社外のコンサルタントも約半数は女性だった。

日本の子会社にシステムを導入するとき、アメリカ本社からの出張者やコンサルタントは半数以上が30代後半から40歳代の女性だった。子供が中学生や高校生などと言う年代の女性たちだった。残業や出張に男女の差はなく、女性の働き振りも男性と同等だった。

以上のような経験から、アメリカは男女均衡社会との固定観念が頭の中に定着した。オーストリア、ドイツ、カナダもアメリカと同じような状況だった。

【補足説明】
国連の使用言語(Working Language:公用語)は、英語や仏語など6つの言語だったが、主流は英語だった。ここでは「5.文章力」と「6.口頭表現力」に絞ってそれぞれの評価内容を紹介する。1〜4、7〜13の評価項目は自明のため、説明は省略する。なお、5と6は専門職以上の評価に適用するが、事務職(現地採用者)は除外する。(資料のオリジナルは英語、日本語は筆者が付加えた)

下のサンプルで、当てはまる評価の[ ]に“X”を記入する⇒[X]。

     

3)タイ:女性社会
2000年から最近までタイの日系工場に関与した。

日本人社員は別として、女性の経理部長や課長が一般的である。たまに男性の経理部長を見かけるが、その下はすべて女性というケースが多い。6社の経験では、男性の経理部員と男性通訳に出会ったことがない。また、購買、営業、受注/出荷、資材、生産管理の女性課長は珍しくない。中には、生産管理とシステム兼任の女性課長もいた。移民局や空港のパスポートコントロールでも女性職員が男性より多と思う。

働きながら大学で学位をとる女性たちがいた。2人ともMBA(Master of Business Administration)を取得した。女性部長で複数の学位をもつ人もいる。より良い仕事を見付けて、将来の安定を望む気持ちの表れだと思う。

女性管理職やシステムエンジニア(女性が多い)には英語が通じる。また、日系工場には有名大学出で優秀な女性の人材が多い。

事務所の女性管理職ばかりでなく作業現場、特に最終検査工程では女性が優勢である。組立工程などでも女性リーダーやオペレーターが活躍していた。

バンコクのビジネス街のランチタイムでは、女性が圧倒的に多い。ビジネス街には食べ物の屋台が多いが、殆どは女性の店である。生活保護どころか老いも若きも女性の生活力は逞しく、男性の影は薄い。近年は、生活水準の向上と第三次産業の発展が目覚ましく、ますます女性の社会進出が盛んになる。このような状況から、タイを女性社会と判断した。

(2)日本の潜在能力:男女均衡社会への期待
日本の現状は、いまだに男性社会、いわば片肺飛行といえる。国全体の持てる能力、特に女性の能力を発揮し切っていない。もし発揮すれば、日本の存在価値は今以上のものになる。一国の価値は、その頭数でなく質の高さで決まってくる。人口減少にあわてず、女性の能力開発に本気で取組めば日本の将来は明るい。一般に女性は戦争や暴力を好まない。頭数が多すぎて国家としてのコントロールを失うより、高度な文明社会を目指すのが筋であり、それが人類への貢献である。

ここで、すべての女性に持てる能力を出すようにと強要しない。その気のない人に何かを強要してもうまく行くはずはない。しかし、やりたいと思う人に門戸を開けば大きな可能性が開ける。それは「好きこそものの上手なれ」、当然ながら、やりたいことには情熱も湧いてくる。

もし、女性の100人のうち1人にやる気があって、門戸が開かれ、その人が能力を発揮して100人を意のままに動かすと仮定すれば、その人は百人力といえる。さらに連鎖反応が起これば、一騎当千も夢ではない。近くには「なでしこジャパン」の先例もある。あの業績に世界の誰もが感動した。

しかし、「やりたいと思う人」が「やりたいこと」に出会う、これは、洋の東西を問わず、きわめて難しい。能力があっても門前払いで芽を摘み取られるケースは数知れない。しかし、「柳に飛びつく蛙」のように「門前払い」を覚悟で、諦めずに門を叩く。絶望と希望は背中合わせ、諦めるとその場で失敗するが、諦めない限り必ず成功すると信じてトライする。これ以外に道はなく、これが一番確かな道である。

柳に蛙とはいえ、柳と蛙の距離が短い方がよい。世界という柳との距離を短くするために、男女を問わず次の3つの点を自らの方法と努力で磨いて欲しい。

 1)日本語と英語とコンピューターに強いこと・・・優先順位は、日本語、コンピューター、英語
 2)業務に精通していること・・・業務に精通すれば、英語は自然に付いてくる。
 3)単独行動ができること・・・自分の意思とことばで行動し、話す。

上の3つの項目を磨くために、人前で堂々と話ができるようになって欲しい。下のリストを参考に、世界に通用するA(90点以上)を目標にする。(資料のオリジナルは英語、日本語は筆者が付加えた)

     

【補足説明】
 1)場違いの服装はダメ。             
 2)頭髪、服装、靴をこざっぱりとする。
 3)ホワイトボードなどに張り付き、聞き手に背を向けたまま話さない。
 4)ポケットなどに手を入れたまま話さない。
 5)声の大きさを適切に、また下を向いてボソボソと話さない。
 6)会社員であれば、その会社のカラーを出す。日本人なら日本人らしさを出す。
 7)一点を見つめたまま、あるいはそっぽを向いて話さない。
 8)聞き手を話に巻き込む。また聞き手に質問を促して眠気を晴らす。
 9)ときどき余談を入れて、聞き手にリラックスして貰う。
10)聞き手を馬鹿にしたような話し方をしない。
11)質問には誠意をもって対応する。質問者を傷付けない。
12)幅広い知識・経験が必要。
13)必要ならば要点を事前に配布する。

今回は、筆者の経験談に始終したが、次回は客観的な視点で「グローバル化への準備−−−英語化の分野」に進んで行く。

グローバル工場−−−機能の階層(6)

2012-03-11 | ことばとコンピューター
前回のグローバル工場−−−機能の階層(5)の続き。

                         工場機能の階層図



(4)レベル3:原価・利益管理
このレベルは、個々の工場とグループ全体の製品原価と財務状況をコンピューターシステムで把握して、工場の利益をコントロールする。工場を管理する情報システムの単純化・統合がこのレベルのキーワードである。

ちなみに、レベル2と3のキーワードを比べると次のようになる。

  レベル2:工程管理のキーワード=整理・整頓=目視管理(目が見る視界)⇒生産性向上
  レベル3:工場経営のキーワード=単純化・統合=情報管理(頭が見る視界)⇒収益性向上

上に示す関係とは逆に、整理・整頓が行き届かず乱雑な工程では生産性が悪くなる。また、機能の追加を重ねた継ぎはぎの情報システムでは工場を適切に管理することが難しく、収益性も悪くなる。

特に、レベル3の情報システムは、目で見たり手で触ったりできないソフトウェアである。そのソフトが継ぎはぎだらけか否かを見極める評価眼が経営者や管理者に求められる。もちろん、レベル2と3の主役は人間、人の上に立つ人は自社、外注先の区別なく現場とそこで働く人々をよく知ることは言うまでもない。

1)レベル3の位置づけ
レベル3では、コンピューターシステムが重要な役割を果たす。管理者や経営者はシステムが提供する財務情報や生産実績や在庫情報を分析し、必要な措置を各部門に指示する。この意味でレベル3は、工場機能のトップに位置する指令塔ともいえる。

このレベルのシステムは、購買、在庫、販売、生産、会計を網羅する基幹システムで、かつ、統合システムでなければならない。また、この統合システムは状況の変化をすばやくキャッチする単純なシステム、できれば経営視界をオンラインリアルタイムで確保できるシステムが望ましい。

1998年頃に、アメリカの多国籍企業で全世界の事業所の状況をリアルタイムで把握する統合システムを経験した。システムの目的は、経営視界の改善(Improvement of Management Visibility)だった。

あのとき、システムの画面から白雪姫の“魔法の鏡”を連想した。童話では魔法の鏡だったが、そのときはコンピューターネットワークにつながるパソコン画面だった。その画面に世界のビジネス状況が映し出され、画面の一部をクリックすると明細が現れた。画面を切り替えれば、アメリカから東京の出荷ラインの待ち行列も見えた。このように、どこからでも世界の業務が丸見えになる。技術的には新規性があったわけではないが、単純なシステムで情報の屈折もなく経営視界は世界に広がった。

2)原価管理
原価管理は、レベル0の品目テーブルとBOM並びに勘定科目別の会計データから仕掛品や完成品の原価を計算する。

製造業の主な原価は、実際原価と標準原価である。まれに製品開発に使用する目標原価と呼ばれるものもある。

実際に発生した費用で計算した実際原価は月次決算の在庫評価に、標準原価は利益計画にそれぞれ使用する。ただし、実際原価は棚卸在庫評価方法で金額に違いがでるので注意すべきである。具体的には、総平均法、移動平均法、最終仕入原価法など、法令で認められた方法がある。実際の評価方法は、各社の経理規定で定められている。

量産品の実際原価については、参考書に簡単な例題で説明したので省略するが、ここでは原価要素を説明する。

A.原価要素(Cost Element)
実際原価や標準原価の内訳を原価要素という。原価要素を大別すると、直接費(Direct Cost)と間接費(Indirect Cost/Overhead Cost)に分かれる。直接費は、直接材料費、直接労務費などの原価要素に分かれる。工場により異なるが、主な原価要素は次のとおりである。

 ◇直接費の原価要素:直接材料費、直接労務費、スクラップ費、金型費、治工具費、外注費など
 ◇間接費
  ・変動間接費の原価要素:光熱費、水道費、通信費、潤滑油、消耗品など
  ・固定間接費の原価要素:地代家賃、保険、レンタル料、間接人件費、減価償却費など

実際原価の直接材料費や労務費は実際に発生した費用である。同様に、間接費も実際の費用で計算する。直接材料や労務費は品目ごとに明らかになる。しかし、間接費の計算は、品目の生産数量で総額を原価要素ごとに配賦(配分:Allocation)する方法とABC(Activity-based Costing:活動基準原価計算・・・1980年代にハーバード大学が提唱)という方法がある。生産数量による配賦とABC法の詳しい説明は省略するが、間接費の計算には配賦法とABC法の2つの方法があるとの認識に留めておく。

B.原価管理の注意点
原価管理での注意事項を2、3挙げておく。

一つは、梱包資材の問題である。たとえば、完成品の外装箱を製品の直接材料費とするか、あるいは一般の包装材料(間接材)として経費扱いとするかで、製品原価が異なってくる。この種の問題は、製品の採算性に影響するので製品開発者の考え方や税法上の見解を注意深く検討する必要がある。

次に、専用機やロボットや金型など、高価な設備の償却費を直接費とみるか、あるいは間接費とみて全製品に配賦するかという疑問がある。生産高比例法(Unit-of-Production Method)で直接費としてこれらのコストを償却すべきか、あるいはABC(活動基準原価計算)を導入すべきか、多くの検討課題が残っている。

原価要素の設定で、たとえば縫製ミシンの手元照明用豆球の電気代を直接費に反映させるが、ミシンを駆動する電気代は全製品に配賦する。また、工程ごとに電力計を設置して電気代を直接費として原価に織り込む。また、日本の寒冷地発祥の企業がバンカーオイル(燃料油)を直接費みなすが、熱帯のタイではその原価要素が必要かどうか。これらの細かなどちらでもいいような問題が浮かび上がってくる。しかし、手抜きは禁物、システムのグローバル化をチャンスに、進出先の国情も考慮して原価要素の合理性とバランスを見直す必要がある。

直接材料と間接材料の入替えや原価要素の変更は、会計処理の“継続性の原則”に触れる問題である。会計監査に相談しながら時間的な余裕をもって検討すべきである。

3)利益管理
利益管理には、半年程度の短期利益管理、1年程度の中期利益管理、あるいはアメリカの石油会社のように20年にわたる長期利益管理もある。ここでは、計画期間が1年の中期利益管理、一般的な企業の会計年度単位の利益管理を説明する。

利益管理の中身は、翌年度の販売計画、生産計画、投資計画、人員計画、経費予算である。これらの計画から利益を計算する。もちろん、翌年度の為替レートや人件費動向は経理部門が各部に提示する。

経理部門は、会計年度末の2ヶ月ほど前に関係各部門に翌年度の計画書の提出を求める。次に、各部門の計画書から会社全体の利益を計算し、妥当な利益が確保できるまで各部門の計画を調整する。

目標利益を経営陣が承認したとき、そのベースになった販売計画、生産計画、投資計画、人員計画、経費予算が翌年度の目標になる。翌年度のスタートと共に計画と実績の管理がスタートする。営業部門は販売計画と経費予算、生産部門は生産計画と経費予算、その他の間接部門は経費予算をそれぞれ管理する。承認された投資計画は減価償却費、人員計画は人件費として各部門の経費予算に反映してある。

新しい予算に対する実績の差をチェックしながら自部門の活動をコントロールする。ここでまた経験談になるが、“予実差異プラスマイナス5%以内”を厳しく指導された。予算と実績の差が±5%以上は予算編成が甘かったとの理由で始末書を求められた。−(マイナス)5%は予算以下の出費だが、それは手柄でなく見積りが甘かったとみられた。予算に限らず±5%以上の推定誤差は、プロの仕事とは云えない。津波の推定はズブの素人の仕事だった。“想定外”の痛みは大きく長引く。ついでながら、プロは“安さ”と“経済的であること”を識別しなければならない(discern between cheapness and economy・・・"A Professional Guide," Engineer's Council for Professional Development, N.Y. 1949)

4)コンピューターシステムへの投資
ここで、予実対比による利益管理から日本の製造業全体の利益に目を向ける。

タイの日系工場の日本人を数えると、従業員500人規模以下の工場では多くても7〜8人、さらに大きな工場でも、20人以下だった。その割合は、多く見積もっても2%程度、つまり、数パーセントの日本人と九十数パーセントの現地人が工場で働いている。従業員一人当たりの付加価値率は別とするが、日本人数に対する総付加価値は非常に大きい。

しかし、それら工場の生産管理システムは1960年代のシステムが多い。もし、そこに合理的な生産管理システムを導入すれば、生産効率や利益率が向上し、そのメリットは非常に大きいと考えられる。そこには、未開拓の宝の山がある。

世界の流れはグローバル化である。ここで、世界に共通な生産管理ルールを考え、宝の山を開拓する戦略システムの開発、今その時期が来たと感じる。これで日本の陳腐化したシステムも蘇生される(右手が左手を洗うとき、右手もきれいになる イボ諺・・・When the right hand washes the left hand, the right hand becomes clean also.・・・Ibo Proverb)。

新しいシステムの開発には、時間とコストが掛かる。しかし、各国の工場がジョイントプロジェクトを編成し、知恵を絞り、開発費を分担すればそれほど実行可能と考える。また、新システムから生まれる各工場のメリットを合わせれば、魅力ある投資プロジェクトに違いない。

ここに、「戦略システムの開発」と題して筆者の日米の経験を一つの参考として記しておく。

「戦略システムの開発」
コンピューターシステムには、合理化システムと戦略システムの二つのタイプがある。合理化システムは業務の合理化や経費削減を目的に開発するシステム、戦略システムは新たなビジネス展開や会社の将来を開くために開発するシステムである。

たとえば、ある生産管理システムを業務の合理化目的で開発すれば、そのシステムは合理化システムといえる。しかし、同じシステムを、企業戦略として開発すれば、そのシステムは戦略システムといえる。

合理化システムは、開発コストとメリットを定量的に求めて、経済性を評価する。メリットがコストより大きければ、開発はゴー(Go:可)となる。これは意思決定でなく、単なる事務処理に等しい。

他方、戦略システムの開発では、そのメリットの金額計算は困難である。あえて金額的なメリットを計算しても、新システムが実現しない限り、机上の空論に過ぎない。

やるかやらないか(To go or not to go, that is the question: Go or No Go). それは、意思決定者の決断と責任の話になる。

ある時、アメリカで戦略システムを開発中に、業界の不況で会社が赤字になった。そこで社長は世界の事業所を一ヶ所ずつ回ってあらゆるコストの削減を求めた。その頃の社長はエコノミークラスで飛び回っていた。ビジネスクラスをエコノミーに変えた効果は疑問だったが、プロジェクトは継続した。赤字会社の社長がビジネスクラスでは様にならない。なお、戦略システムの開発は、6〜8年の長期に及ぶ。この間、いろいろな事が起こる。

戦略システムの開発には次のような共通点がある。
 1)戦略システムはトップダウンのシステムである。下から上に提案する合理化システムではない。
 2)経営トップは、開発費の承認には厳しいが、プロジェクトチームにメリット計算を求めない。
   プロジェクト担当者はメリットを計算するが、経営者はその数字で決断しているとは見えない。
 3)技術的、経済的、運用上の難問に出会っても、経営トップは途中でシステム構想を変更しない。
 4)システム開発費は大きいが、成功したときの金額的なメリットは、開発費よりはるかに大きい。
   しかも、そのメリットは一過性でなく、年月の経過とともにそのシステムの効果が広がっていく。

以上、日米で経験した4件(前回のヤマハ発動機も含む)の戦略システムの開発から得た印象を紹介した。

今回で6回にわたった「グローバル工場−−−機能の階層」の説明を終了する。

現在、日本はグローバル化と人口の減少という新しい局面に差しかかっている。この時代にわれわれがなすべきことを次回から考察する。

次回は「グローバル化への準備−−−時代の流れ」「英語化の分野」「−未定−」に進んで行く。

グローバル工場−−−機能の階層(5)

2012-02-25 | ことばとコンピューター
前回のグローバル工場−−−機能の階層(4)の続き。

                         工場機能の階層図


(3)レベル2:MRP、工程管理
このレベルでは、MRP(資材所要量計画)が作成する生産計画を工場で生産する、すなわち、計画と実行のレベルである。整理・整頓がこのレベルのキーワードである。

1)レベル2の位置づけ
レベル2のMRPは、レベル1が把握した在庫数を将来の需要から差引き、生産計画を立案する。その生産計画を生産オーダー(指示書)として工場に生産を依頼する。生産指示で出来上がった仕掛品や完成品の数量は、レベル1の在庫管理が把握し、次の生産計画にフィードバックする。同時に、工程管理は生産実績データをレベル3に引渡す。

2)生産計画
生産計画の計画期間と方法は業種で異なるが、ここでは日用品や機械製品などの計画方法を説明する。

一般に計画期間は当月、翌月、翌々月の3ヶ月の日次計画である。計画は月末に立案するので、カレンダー上の翌月を当月という。この当月を確定月、翌月と翌々月を計画月という。この3ヶ月計画は、仕入先、外注先、顧客(製造業が顧客の場合)に共通で、世界に広がっている。

次に、主な計画法を説明する。

A.MRP
MRPは、完成品(製品)の3ヶ月計画にもとづき、BOM(部品表)で生産に必要な資材の所要量(必要数)を計算する。その計算には、総所要量と純所要量という概念がある。また、生産オーダーの着手日と完成日を計算する。着手日と完成日を約束として、その“約束を守る”、これがMRPの原則である。約束は、自工程(自分の工程)と前後工程との約束である。ある日時に待合せを約束したが、自分の都合でその時間前に行って相手がいないと怒るのは、怒る方が悪い。

ここでMRPの総所要量、純所要量、着手日、完成日を例題で説明する。
 例:
 ある完成品(製品)または部品または直接材料をAとする。
 2月15日のAの必要数を100個とする。⇒Aの総所要量=100
 2月15日のAの在庫数を30個とする。⇒Aの純所要量=100(総所要量)−30(在庫)=70
 Aが完成品または部品のとき、生産オーダー⇒生産指示数=70、完成日=2月15日
  Aの製造リードタイムを2日(稼働日)と仮定すると、着手日=2月15日−2日=2月13日
 Aが直接材料のとき、購入注文書⇒注文数=70、納入日=2月15日
  Aの購入リードタイムを5日(稼働日)と仮定すると、発注日=2月15日−7日=2月8日
  (5稼働日+土日=7日)

 もし、着手日または発注日が過去日付、たとえば昨日であればこの生産計画は手遅れである。
 解決方法:2月15日の総所要量を30個以下にするか、100個はそのままで日付を先送りする。

以上がMRPの基本的な計算方法であるが、MRPは安全在庫を考慮しない。もし安全在庫が必要な場合は、材料や部品をMRPからはずして、在庫管理システムで在庫を補充する。たとえば、手配日数が3ヶ月を超える材料は、再発注点法や定期発注法で在庫を補充する。また、為替や気候の変動で価格が大きく変わる材料は、相場を見ながら購買部門の判断で発注時期と数量を決定する。

B.MRP以外の計画法
製品の製作工数を工程ごとに積算する方法や手持ち在庫を事前に用意して生産変動に対応する方法、製造リードタイムを短縮して受注即時生産で対応する方法など、千差万別である。

バンコク周辺の日系中規模工場6社の経験では、エクセル/アクセス(Access)の生産計画だった。担当者の勘と経験で多めの完成品を生産し、顧客からの注文に対応していた。この内、2社はMRPの導入を試みたが、在庫管理システムで失敗、MRPも断念した。これらのケースは、日系ソフトハウスの支援で在庫管理からシステム化に着手するが、在庫管理も一朝一夕で成功するものではない。根気良く諦めずに工場現場を指導して在庫の精度を改善する。在庫管理の精度が安定したとき、MRPの導入を検討する。“根気良く諦めず”の努力がなければ、高価なMRPパッケージは真価を発揮しない。

C.線形計画/マルチタイムピリオド計画(Linear Programming:LP/Multi-time Period LP)
筆者の経験だが、石油業界の生産計画は時間(Time Period)を考慮したマルチタイムピリオドLPだった。

変数(未知数)の数は約3000〜4000、数式(不等式)の数は約2500〜3500の連立方程式をコンピューターで生成し、最適解を求めていた。1970年代初頭の大型汎用コンピューターで1回8時間前後の計算、この計算を何回も繰返して生産計画を最終化した。LPはコンピューターを占有するので、会計などの業務処理が終わった深夜の仕事だった。

近年のスケジューリングシステムはどのように発展したか、興味がある。そこで、2003年秋にアメリカの大学で聴講を試みたが、結果は前回のブログの通りだった。

なお、参考までに述べると、MRPの着手日と完成日はカレンダー日付で時間を考慮していない。このためMRPの結果を実行すると、一つの工程に負荷が集中することもある。

負荷の集中を避けるためには、その工程の生産オーダーの開始時間を調整する。この調整でスケジューリングシステムが必要になる。しかし、一般にスケジューリング問題は未知数の数が数式の数より多く、LPによるシミュレーションや人工知能を援用すべき分野である。実際には、工場長や生産計画担当者の直感と経験で生産計画を調整する。調整した計画をMRPで再計算し、試行錯誤で実行可能解を見つける。

3)工程管理
今から40年前、生産管理の師と仰ぐヤマハ発動機製造担当、根本文夫専務から工場の本質を教わった。それは、定位置・定員・定速の原則だった。

加工物を機械の上で正確に“位置決め”をして加工する。これは定位置の原則である。正確な位置決めは、高品質製品の生産に欠かせない基本動作である。

次に、工程設計では、工程間の作業工数を均等化/平準化する。これは定員の原則である。一連の作業を分割して、自動化を促進する。また、人手作業では担当者の習熟度を高める。A.スミスの分業(1776年)やF.ギルブレスの動作研究(1911年)は、近代的な工程設計の先駆けとなった。

さらに、コントロールを失った機械の急加速や急減速は故障や事故に結びつく。これは定速の原則である。定速は加工時間のムラやブレを防ぐとともに、安定運転と無事故に必要な条件である。

この定位置、定員、定速の原則は、整理・整頓という形で工場のいたるところに見られる。また、異物の混入を避けるために清潔も大切である。加工物の位置決めだけでなく、あるべきところに“もの”をキチンと収納する。在庫品も決められた棚にキチンと格納する。工具やフォークリフトも使った後に元の位置に返しておく。これが、工場の基本動作である。

安全基準を満たす通路に立てば、前後左右の壁面まで見通しが利く。そこには視界を遮る障害物はなく、床にビスやワッシャ、切り屑などの異物もこぼれていない。人の動きも整然とし、服装は清潔、駆け出す人もいない。これとは反対に、通路に仕掛品がはみ出し、材料置き場も乱雑、人はあわただしく働いている。このような工場は、忙しいにもかかわらず売れ筋製品は欠品勝ち、財務諸表も複雑で収益性は悪い。この工場では、休憩所、トイレ、食堂など従業員の出入りするところも清潔とはいい難い。

この“整理・整頓”は工場や事務所だけの問題でなく、従業員一人ひとりのこころの持ち方、精神論でもある。制服のボタンをかけていなかったので機械に巻き込まれたケースもある。折角の五体を傷つける痛ましさと同時に、これで連続無事故日数がリセットされる。

日系工場は、どこの国でも整理・整頓と従業員の躾けが進んでいる。当然ながら、製品の品質も信頼に値する。この日本流の整理・整頓は、和歌や俳句などの無駄のない整然たる文章に端を発していると信じている。それらの作品に共鳴する日本人の感受性は、日本特有の玄関先の掃き掃除や打ち水にも通じるところがある。タイの現場改善でも、時々機械周りの掃除ができるこころの余裕を持つように指導してきたし、またオペレーター達はそれに応えてくれた。

整理・整頓・清潔の点では、日系工場はどこでも光っている、しかし、そこには影もある。その影について一言説明する。

確かに日系工場のハード面やものづくりの職人技は良好(Excellent)である。目に見えるハード面はさておき、現在の工場経営者は、目には見えないソフトと人材への投資を忘れている。特にタイで見た日系工場のシステムとIT部門は人材面が脆弱、これは日本本社の投影図である。本来は、日本本社がサポートすべきだが、本社の人材不足(頭数の不足でなく能力不足)と言語障害が重なって、支援の手を伸ばせず現地任せ、すなわち、放任になっている。

このような事情で、バンコクには日系ソフトハウスが多い。当然の成り行きだが、多くの日系工場は日系ソフトハウスに支えられているといっても過言ではない。言い方は悪いが、いつまで松葉杖で歩くのか?と問いたくなる。

ソフトと人材の開拓と生産管理システムの改善、これで材料のロスと従業員の作業時間のロスを大幅に改善できる。また、ここに着目すれば日本の製造業の将来も開ける。この点で、一つの参考として次の事例を紹介する。

4)MRPの開発事例
1970年代中頃のヤマハ発動機、当時の国連加盟国より多い166ヶ国に製品を輸出しビジネスは急速に拡大していた。この拡大に対処するため、経営陣はコンピューターシステムの刷新を決断した。

当時の欧米では、IBMのMRPパッケージが爆発的に広まっていた。そこで、アメリカのMRPユーザー数社を調査した。しかし、当時の欧米のパッケージは日本のきめ細かな生産管理にはピタリとは思えなかった。パッケージのカスタマイズか否か、答えは自社開発だった。

そこで、本社と関連工場を含む素材加工、機械加工、表面処理、最終組立のシステム再構築がスタートした。当時の国内工場は8000人程だったと記憶している。システム部門から約30名、工場部門や関連会社から約30名をプロジェクトに人事異動、合計約60名の社員がフルタイムで参加する混成プロジェクト(Joint Project)だった。メンバー達は、システム仕様と運用方法を固めるために現場に入り込み、文書管理の専任者もアサインした。むろん、日単位のMRPが目標だった。

プロジェクトの目的は、第一にシステム開発による工場の業務改革と次世代の工場を担う人材の育成、第二にオンラインデータベースやバーコードの利用による社内システムの近代化、第三に関連会社や主要取引先とのデータ交換による緊密な業務提携だった。

このようなプロジェクトが6年の歳月をかけて開発した日本初のMRPは、1980年頃、本社工場で稼動し始めた。その工程は、職場単位で新システムと旧システムの並行運用、職場の安定とともに旧システムの切り離し、まさに工場機能の階層ピラミッドのレベル0、レベル1、レベル2の階段を一歩一歩登る歳月だった。

システムが全面的に稼動したとき、仕掛在庫が半減した(会計監査報告)、素材加工から最終組立までの製造リードタイム(所要日数)が短くなった、生産計画の修正が容易になり機会損失が減少したなどの効果があった。さらに、製造リードタイムの短縮で、部門間の風通しが良くなったのは予想外の大きな副産物だった。やがて、工場は機動力を回復し始めた。

また、人材開発の結果、元システムエンジニアの生産管理課長、元生産技術のシステムエンジニアなどが生まれ、今も活躍している。

このプロジェクトは、日立システム事業部とアーサーアンダーセンの全面的な協力を受けた。特に、レベル0の構築にはアメリカのアーサーアンダーセンからBOM専門家1名とデータベース専門家1名を招き、世界トップレベルの技術指導を受けた。さらに、ヤマハ発動機の技術提携先、マーキュリーマリーン(Mercury Marine, Brunswick Corp, Fond du Lac, WI)のシステム部からMRP開発の経験にもとづく実務的なアドバイスを受けた。この話は、両社のトップ同士の話が発端、メンバー達は日米を行き来して非常に友好的な支援を受けた。

ちなみに、バーコード読取端末の開発と設置を含む数十億円の開発費は、システムのフル稼働で一年以内に回収した。また、MRPのネットチェンジ法とデータベースの処理時間の改善でレンタル料月額約4千数百万円の大型汎用コンピューターの追加導入を回避した・・・システムトラブルによる再計算を想定して、MRPの目標処理時間を最大12時間とした(1日は24時間、再計算で24時間が必要)⇒エラーによる工場の混乱防止策。しかし、この目標を達成したので追加導入は不要と判断した。これは、コンピューター技術の日米専門家たちの成果だった。

このような金銭的なメリットはある程度は予測したものだった。しかし、最大のメリットは、旧態依然としたコード体系とシステムという将来の暗雲を払拭したことだった。当時の経営陣の「コード体系を刷新したい」との願いに十年近くの歳月で応えた。

システム、原価企画、購買、生産部門連名の稟議書を、社長をはじめとする5人の経営陣に説明したときのことを今も鮮明に覚えている。承認に当たり、当時の小池久雄社長のコメントは「君たちは苦労して投資に見合うメリットをはじき出したと見たが、それはそれで良い。しかし、企業は目先のメリットだけを追うものではない。このプロジェクトはやるべきこと、自信をもって進めなさい」だった。このとき、戦略システムの開発に踏み切る経営陣の姿を目の前に見た。

この事例は、関係者に改めて敬意を表すために実名で紹介した。

次回は、レベル3の原価・利益管理の説明に続く。

グローバル工場−−−機能の階層(4)

2012-02-10 | ことばとグローバルシステム
前回のグローバル工場−−−機能の階層(3)の続き。


                         工場機能の階層図



(2)レベル1:購買管理、在庫管理、受注管理
このレベルは、左から右に流れる川に例えることができる。工場外から直接材料を購入して、社内工程で加工して完成品を作る。その完成品を製品として顧客に出荷する。淀みなく、かつ絶えることなく流れる川、これがレベル1の理想である。

1)レベル1の位置づけ
レベル1の購買管理、在庫管理、受注管理の主役は品物である。その品物の品目コードと名称は、すべてレベル0で定義したものを使用する。品物の仕入先と製品の販売先もレベル0で定義したコードと名称を使用する。品物を正確に特定することがレベル1の基本条件である。

レベル1で把握したいろいろな数量をレベル2の生産計画(MRP)に伝える。具体的には、購買管理が把握している発注済みの品物とその数量、在庫管理が把握している直接材料、仕掛品、完成品の在庫数、受注管理が予定している製品とその出荷数、これらをレベル2の生産計画(MRP)に引渡す。

レベル2はレベル1から受取った数量にもとづいて生産計画を立案し、その結果は後日生産実績としてレベル1に現れる。これはレベル1とレベル2の間のフィードバックシステムであり、どちらかが欠ければこのシステムは機能しない。

実際には、レベル1の流れは、図のように単純なものではない。図の左の材料購入は、世界の津々浦々を網羅するサプライチェーンである。工場内の仕掛品は社内工程と国内外の外注工場を行き来する。また、製品の出荷先も世界に広がる。

たとえば、多国籍製造業のレベル1をイメージすると次のようになる。製品戦略に合わせて米国、日本、シンガポール、英国に工場とハブ倉庫を配置する。世界各地から受注した製品を在庫のあるハブ倉庫で引当て、すばやく顧客に届ける。工場のハブ倉庫は空港のすぐ近く、駐車場の金網の向こうには駐機場が見える。製品は隣の空港から毎日定期便で世界各国に飛び立っていく。このような光景が目に浮かぶ。

2)在庫数量の把握
在庫管理には、品目コード、在庫場所、数量の3つの要件が必要である。ある製品Aがこの倉庫に30個あるといわれても、30個を探し出すのは難しい。小さな倉庫は別として、記憶で在庫を管理することは難しい。多くの担当者やロボットにとっては、倉庫の棚番Xに10個、棚番Yに20個、合計30個といった情報が必要になる。品目コード、在庫場所、数量の3点セットで在庫を物理的に把握することを実地棚卸という。

A.実地棚卸
実地棚卸は、月末や期末の会計報告のために実施する。この実地棚卸は工場を止めて従業員総出で品物の在庫を数える。直接材料、仕掛品、完成品、この他にダンボール箱や機械設備の補修部品などの間接材料の在庫も数える。この実地棚卸は、工場を止めているので、正しい在庫数を容易に把握できる。ここで把握した在庫数を金額に換算して、財務諸表に報告する。

B.生産管理に必要な在庫管理
生産管理に必要な在庫管理は、実地棚卸で確定した品目別の数量を起点に、生産開始とともにその品目の入出庫数を加減して最新の在庫数を計算する。この計算した在庫数を理論在庫という。実地棚卸のたびに理論在庫を修正し、生産開始とともに再び最新の理論在庫を計算する。もちろん、理論在庫と実地棚卸の差異はゼロが望ましいが、実際には差異がある。この差異が大きければ理論在庫は使い物にならない。

経験から得た目安であるが、従業員500人ほどのタイの日系工場であれば、生産管理用の理論在庫は工夫をすればエクセルで問題なく管理できる。【グローバルシステム−−−現状分析6(2011-11-26)の事例を参照】

500人以上の規模であれば、オンラインリアルタイムの在庫管理システムが必要になる。オンラインシステムでは、少なくとも直接材料の倉庫、工程の各職場、完成品の倉庫と出荷場にワークステーション(端末)が必要になる。このシステムでは、入力ミスを防ぐために品目コードはバーコードで入力するのがベストである。

3)トラブルの例
ふたたび経験論になるが、国や業種に関係なく多くの工場は理論在庫の管理にさまざまな問題を抱えている。その原因は単純ではないが、最も多い原因はレベル0が軟弱、次に現場担当者の運用に問題がある。また、システムの機能はオンラインシステムが望ましいが、オンラインシステムでもレベル0や運用に問題があれば、在庫管理は失敗する。

ここでは在庫管理の典型的なトラブルを紹介する。ただし、紹介する例は、あくまでも過去に筆者が直面したトラブル、現在の話ではないと断っておく。また、必要に応じてトラブルの背景などを補足する。

なお、トラブルの国名としてタイが多いが、タイばかりでなく日本、アメリカ、ヨーロッパ、シンガポール、オーストラリアなどでもトラブルは多い。

A.品目コード付与のトラブル(タイ)
現状分析の結果、日本の本社工場とタイ工場の共通材料の一部で品目コード(品番)が違っていた。担当者は変換テーブルで輸出入の書類を処理していた。

担当者からのヒアリングによると、新しい品目コードの付与方法は、前任者から口頭で引き継いだが、付与ルールの書類や日本本社からの指導はなかった。当然の結果だが、実地棚卸や期末決算報告は月単位で遅延していた。工場では、受注を見た上での生産だったが、それにもかかわらず、デッドストックは年商額に対して非常に多かった。このような状況が続いていたが、会計監査からの指導はなかった。

現状改善の第一歩として、生産工程の改善と生産基礎情報の整備、従業員の教育とまともな管理職の採用から着手した。

B.品目テーブルの内容トラブル(タイでよく見る例)
ある工場で生産指示書は手書き、割り込み生産、仕掛品の放置、当然ながら在庫管理は混乱していた。品目テーブルを分析すると品物の本名(本当の品目コード)、又の名、仮名、通称、昔の名前、入力ミスの放置、メーカー側の名前などが混在していた。購買、生産計画、受注の担当者達は、自分が担当する品目の在庫を独自のデータで自分自身のエクセルで管理していた。

このような状況のもと、各担当者は自分の在庫だけは正しいと信じていた。しかし、組織的な管理が不在、在庫の精度は低く生産計画や購買に使えるデータではなかった。日本の親会社から導入した生産管理システムは、長年稼動することなく眠っていた。

本社のデータベースや設計図面を手掛かりに約半年を費やして品目テーブルを整理し、エクセルの在庫管理を組織的な仕事として定着させた。エクセルの次は本社ITの支援を得てコンピューターによる在庫管理、その次は生産管理へと段階的なシステム化を計画した。

C.NG品、スクラップの在庫管理(タイ)
社内工程のNG品やスクラップ、外注工程に無償で支給した材料から生じるNG品やスクラップも在庫として管理する。細かい話だが、これも基本的な仕事、手抜きをすればやがて大きなトラブルに結びつく。

在庫管理の現状分析でスクラップの売却は経理を含む特定の社内関係者と業者の裏取引と分かった。数量と金額は僅かだったが、組織的な不正を黙認すると禍根を残す。

関係者から事情を聞いたところ、その動機に理解できる点もあった。経営側と関係者が意思の疎通を欠いた点も一因だった。話合いの結果、非は非として認め、全員が納得する再発防止策を取り決めた。会計監査はこの問題を看過していた?よく分からない。

D.部門間の連携不足による過剰在庫とデッドストック(タイ)
3000人規模のある工場は、素材加工、材料加工、最終組立の3つの部門で編成していた。大きな工場にもかかわらず、コンピューターシステムは貧弱だった。在庫は棚札とエクセルでの管理だけだった。

さらに、この工場は日本企業数社とタイ資本の寄合い世帯、部門間の競争意識、全体をまとめる経営者不在など、かなり複雑な背景があった。

エクセルの在庫情報を部門間で共有することは物理的に不可能、おまけに部門間の連携は希薄、各部門内の生産計画(エクセル)は存在するが全社的な生産計画不在の状態だった。

詳細は省くが、仕掛品在庫がストックルーム、通路、空きスペースに所狭しと、時には山積みになっていた。塵も積もれば山となる。3000人規模の工場から生じる塵は馬鹿にならなかった。財務データからは億円単位の過剰在庫や不要品やデッドストックがあちこちにあると分かっていたが、改善の動きは見られなかった。BOI免税の関係もあって【補足参照】、デッドストックの処分も先送りになっていたようだ。

事態を憂慮したタイ人女性経理部長の要請で現状分析を実施した。四面楚歌での現状分析、しかし、現場従業員の協力で分析を完了した。分析の結果、日本人管理職達の意識改革、コンピューターアレルギーの解消とシステム化への協力が必要との結論に達した。この課題を一つひとつ改善するためには、長期戦を覚悟した。そこで、日系ソフトハウスにレベル0の再構築とシステム化を依頼した。

なお、現状分析を始めたとき、日本人社員達は口も利いてくれなかった。しかし、後に日本人管理職から業務改善のコンサルティングの打診があったが、断った。理由は、日本人の経営陣の顔が全く見えず、不気味にさえ思えた。コンサルティングを引受けても、糠に釘だと思った。

ここで日米の比較だが、米国のベンチャー企業2社と7、8年コンサルティングで付き合った。2社とも経営陣と同じテーブルに就いてあれこれ議論した。時にはアメリカ本社のITや生産管理担当者の採用の面接も頼まれた。経営風土はオープン、創始者でも気軽に物事を教えてくれた。

【補足説明】
タイのBOI(Board of Investment:投資委員会)は「輸出製品用の原材料の輸入税免税」を認めている。しかし、免税された原材料で作った製品をタイ国内で販売または廃棄したときは、その免税額を税務当局に支払わなければならない。

E.日本とタイの連携不足によるデッドストック(タイ)
ある工場で数億円以上と思われるダンボール詰の不用品の山が倉庫からはみ出し、スコールにさらされていた。中身は良品だが、日本側の発注ミス、そのままタイ工場に品物を送り続けた。しかし、ある日、デッドストックの山がなくなっていた。ようやく処分に踏み切ったと思ったが、見苦しいので外部倉庫を借りて保管したとのことだった。

【補足説明】
タイ国内で焼却すればその費用とBOI免税分の支払が必要になる。しかも、焼却処分は法規制で簡単ではない。国外で売却すれば、焼却費とBOI免税の支払ともに回避できる。対症療法だが、周辺国で叩き売るプロジェクトの編成を提案した。これは誰でも思い付く案だが、誰かに言われてはじめて実行するのでなく、その前に会計監査と相談の上で行動して欲しかった。

その後、在庫管理を含む生産管理システムの導入プロジェクトが発足した。

なお、この工場の現状分析では、人件費が安いので日本ではやりたくない作業をタイに押し付けていることも見聞した。日本は不良債権やデッドストック(一種の不良債権)だけでなく“やりたくない作業”の“飛ばし”にも手を染めていた。

以上、典型的なトラブルを説明した。事例紹介はこの辺りで打ち切る。

日本はあらゆる面で空洞化が進行している。しかし、日本を脱出すればみなうまくいくとは限らない。海外に出て水を得た魚のように成功する会社がある反面、そうでない工場もけっこう多い。

海外でうまくいく工場は日本本社もうまくいっている。人材も厚く管理もしっかりしている。また、経営陣の顔がよく見える。しかし、目的は分からないが、中には海外に“できの悪い”人材を送り出す会社がある。そのような会社の海外工場は間違いなく傾き、その立て直しに時間が掛かる。

一般論では指摘できないが、海外工場に明白な問題点がある、経営者はなぜ気付かないのか、気付いていても確信犯のように黙殺するのか、とあれこれ気を揉むことが多い。時には日本人として残念に思うこともある。

学生の頃、先生から“君達は前途有望、ということは、現在はまだまだ駄目だということだ。頑張れ!”と背中をポーンと叩かれた。海外の日本の製造業には未完成な点や改善の余地が多い、逆説的に見ると日本の製造業はまだまだ前途有望、夢と希望がある。

その夢を叶えるには先ず、日本で襟を正して、改善すべきは日本で改善し、その上で進出すれば効率的である。海外でのトラブルは、多くの場合は日本に起因している。

“意思決定者不在の成行き経営”“郷に入れば郷に従え⇒良きに計らえ”“タイ人があきれる無能管理者”が海外に増加すれば、進出先の経済発展とともにその会社の採算性は悪化する。その時、会社は物理的には海外に存在するが、経済的には空洞化したといえる。海外のそのような実態を看過すると、日本は国内外での二重の空洞化に陥る恐れがある。これは想定できる危険性、決して忘れてはいけない。

以上、蛇足ながら一言付け加えておく。

次回は、レベル2のMRP、工程管理の説明に続く。

グローバル工場−−−機能の階層(3)

2012-01-24 | ことばとグローバルシステム
前回のグローバル工場−−−機能の階層(2)の続き。

                         工場機能の階層図


2)取引先情報
はじめに「情報」の意味を説明する。ここで説明する取引先情報の情報は、コンピューター上の「テーブル」や「マスターファイル」を意味する。たとえば、エクセル(Excel)のテーブル、サーバーや汎用コンピューターのマスターファイルとデータベースなども情報と呼び話を進める。

取引先の情報をグローバルに通用させる場合は、英語を標準語、日本語、西欧諸語、タイ語などを現地語とする。すでに前回の2)多言語データベースで日本語化の方法を説明したが、同じ方法で次のデータ項目を英語と日本語で登録する。
 取引先名称、敬称、住所、担当者名、敬称、役職、部門、取引銀行名、支店名、口座種別、名義
 注1:敬称と口座種別は多言語コード表で対応すれば、日本語の入力は不要
 注2:英語と日本語の名称はそれぞれ名称1、2、3に分けて入力:多言語データベース参照
 注3:英語と日本語の住所はそれぞれ住所1、2、3に分けて入力

日本語化する取引先のデータ項目は以上のとおりである。同様にタイの取引先をこのデータベースに登録する場合は、名称〜名義までのデータ項目は英語とタイ語(現地語)で入力する。

次に、取引先を顧客と仕入先に分けて説明する。もし顧客であると同時に仕入先の場合は、必要な情報を顧客情報と仕入先情報に登録する(顧客コードと仕入先コードは同じ)。さらに、顧客の配送先(配送センターやエンドユーザーなど)も顧客情報に登録する。

A.顧客情報
顧客テーブルの必要最小限のデータ項目は参考書のサンプルに示した。この顧客テーブルは、レベル1の右の受注管理と完成品売上に必要なテーブルである。

製品にもよるが、エンドユーザーに販売した製品のアフターケアが必要な場合がある。たとえば、大規模な機械設備、輸送用機器、ソフトウェアはアフターケアが必要になる。製品のアフターケアとして、エンドユーザー(個人または法人)をサポートするために、専用のデータベースとアプリケーションを開発する。たとえば、ソフトウェア製品の顧客サポートシステムを要約すると次のようになる。

先ず、エンドユーザーに出荷した製品とその製造番号を出荷システムから受取る。販売店に出荷した場合は、販売店がエンドユーザーに出荷した時点で、その情報を顧客サポートシステムに引渡す。

全世界のエンドユーザー(数十万件)が購入した製品と製造番号を一つのデータベースで管理する。その管理内容は、販売したソフトのバージョンアップ(Upgrade)情報をエンドユーザーに通知する。エンドユーザーが希望するとき、その改訂版を出荷システムから発送する。また、電話やE-mailでの問合せにも対応する。当然であるが、このデータベースは個人情報を記録しているのでデータの機密保護には十分な対策が必要になる。

以上、顧客サポートシステムの概要を説明した。他にもマーケット分析システムなど、さまざまなシステムが顧客情報から派生する。

B.仕入先情報
仕入先は、直接材料と間接材料に分けて管理する。直接材料の仕入先には加工外注先を含めて管理する。他方、間接材料の仕入先には工場内の工事や清掃を依頼する会社も含めるので、仕入先の数は多くなる。ここでは直接材料の仕入先に限って説明する。

直接材料の仕入先情報は、レベル1の購買管理に必要な情報である。この情報は、直接材料を広く国内外の業者に発注、納入品の受入検査、代金の支払に使用するデータである。言い換えれば、仕入先情報は、グローバルなサプライチェーンの基礎データである。この意味で、仕入先情報はグローバルデータベースに登録すべきデータである。

仕入先の納期と品質に関する実績データおよび金型や治工具の支給履歴は、それぞれ別々のデータベースで管理する。これらのデータベースは、各工場が管理すべき情報である。

3)品目情報
品目情報は、直接材料、仕掛品、完成品(製品)、補修部品(サービスパーツ)および参照品(治具や金型など)を一元的に管理するテーブルである。量産品と受注生産品の品目が混在しても問題はない。一般論であるが、品目情報で多言語化が必要なデータ項目は品目名称だけ、他のデータ項目は英数字記号で表現できる。もし、品目名称を英数字記号だけにすると、品目情報の多言語化は必要ない。ただし、画面は多言語に対応する。

品目情報の主な内容は、共通情報(品目コード、名称、計量単位など)、技術情報(図面や改訂情報など)、生産管理情報(生産リードタイムやロットサイズなど)、在庫管理情報(在庫管理の要不要など)、購買情報(手配リードタイムや発注単位など)および原価情報(標準原価と実際原価)である。

直接材料の購入単価は仕入先別材料テーブルに登録、完成品(製品)の販売価格は顧客別製品テーブルに記録する。当然であるが、購入単価や販売価格には現地通貨で表示する。

工場や製品開発部門を戦略的に世界各地に分散する場合、品目テーブルは本社で一元的に管理すべきである。この本社での一元管理には、次のような取決めが必要である。

 ◇ローカル品目を設定、たとえば品目コード頭1桁=9を設定、この品目の管理は各国の工場に任せ
  て、本社は関与しない。
  例:現地工場だけで使用する材料と製品、現地営業所などの限定販促品(キャンペーン品)など
 ◇品目データのメンテナンスは、数日以内で完了し、世界各地の事業所にリリースする。
  例:本社に申請した特別価格は2営業日以内に承認(オンラインデータベースの場合)
  注意:最新情報のリリースに要する時間は、システムのオンライン化以前に本社の事務処理の効率
     化で大きく短縮できる。

4)BOM(製造部品表/材料表)
専門語で説明したが、BOMはレベル2の生産計画(MRP)とレベル3の原価計算に必要な情報である。BOMに存在する直接材料や部品(仕掛品)や製品は、必ず品目テーブルに存在しなければならない。この意味で品目テーブルとBOMは一対の情報である。BOMは品目情報と共に本社で管理すべき情報である。

なお、BOMは親品目(コード)と子品目(コード)と子品目の必要数量を定義するテーブルである。このため、BOMには多言語化すべきデータ項目ない。

5)工程順序情報
たとえば、ある電子部品の最終検査工程が、目視検査⇒電気特性検査⇒耐熱検査だったとする。この目視、電気特性、耐熱の3つの検査を検査工程の順序、つまり工程順序という。この検査工程に、1000個の電子部品を投入して、初工程の目視で3個がNG(不合格)、電気特性で10個がNG、耐熱で2個がNG、NGは合計15個、合格品は985個となる。もちろん、15個のNG品にはDefect Code(不良品コード)を付けて原因を明らかにする。

各工程の作業内容は、作業指示書(Manufacturing Instruction)に部品のカラー写真を付けて、各部の作業内容とチェックポイントを現地語で説明する。

工程順序テーブルはレベル2の工程管理に必要な情報である。この工程順序テーブルから直接労務費と金型・治工具費を積算し、品目テーブルの原価データに記録する。このため、レベル3の原価計算には品目テーブルとBOMが必要だが、工程順序テーブルは不要である。BOMと工程順序テーブルの関係は、参考文献の22〜23ページに簡単なサンプルで図解したので参照されたい。

稼働中の機械設備が故障した、あるいは生産計画の結果で1台の機械の生産能力を超えるといったトラブルが発生する。このとき、即座に代替の機械や作業の外注で対処することが大切である。大規模なトラブルでは、代替工程を海外のグループ工場に求めることもある。

予期せぬトラブルに直面しても、常に工場の安定稼動をはかる。このために、工程負荷の平準化と生産のスケジューリングはどこの工場にとっても大きな関心事である。余談になるが、2000年初頭からソフト業界がこぞって売り出した「スケジューリングシステム」が日本で話題になった。

当時、画期的なシステムとの触れ込みで、スケジューリングシステムは高価で緻密なパッケージソフトだった。しかし、実際には高度過ぎて使い勝手に問題とのこと、筆者は導入例を聞くが成功事例を耳にしたことがなかった。なぜ、成功例が話題にならないのかと疑問をもった。

余談になるが、2003年秋に筆者は、アメリカのある大学で「スケジューリング」の講座を見つけた。早速、E-mailで聴講(Auditing)を申込んだ。3日後に「More than welcome(大いに歓迎)」との返信を得て、早速、大学直営のホテルを手配した(大学のホテル・レストラン管理学部直営のキャンパス内のヒルトン)。

開講直前に残念ならが「実績に疑問があるトピック(主題)ため開講中止」を知った。しかし、折角のチャンス、「スケジューリング」を「Computer Aided Manufacturing」に変えて、他の講座と合わせて合計5講座、2ヶ月間、フルタイム(Full-time)の聴講を無料で終えて帰国した。

筆者の知る範囲だが、アメリカの大学では、机に空きがありかつ講座の先生の許可があれば四年制/大学院を問わず聴講可能、学歴不問、65歳以上は無料、ただし大学により州内居住者の65歳以上に限り無料とか条件は異なる。私大は不明。市民と大学の距離は短く、この制度もアメリカらしくおもしろい。「門をたたけ、そうすれば、あけてもらえるであろう(Knock, and the door will be opened)」(7−7、マタイによる福音書、新約聖書、Matthew, Oxford/Cambridge Press, 1970)

以上、余談を交えてレベル0の生産基礎情報をグローバル化の観点で説明した。

この生産基礎情報はコンピューターのハードとソフトに依存している。この意味でレベル0を支えるシステムに求められる要件は次のとおりである。

 ◇システム障害の回復手順とバックアップ体制
  例:本社IT部門が中心になって現場を指導、時には現場への人的支援を実施(アメリカ)
 ◇自然災害への対策
  例:コンピューターのオペレーションを山奥の岩盤上の専門会社に委託(アメリカ)

次回は、レベル1の購買、在庫、受注管理の説明に続く。

グローバル工場−−−機能の階層(2)

2012-01-09 | ことばとグローバルシステム

前回のグローバル工場−−−機能の階層(1)の続き。

2.機能階層図の説明
下の図は、工場機能の階層図である。この図は、単独の工場や国内外で稼動している工場群にも当てはまる。図に示すレベル0はレベル1の必要条件、レベル1はレベル2、レベル2はレベル3の必要条件になる。このピラミッド型の階層図で、階層の上下関係や中身に誤りや欠陥があるとき、工場の運営にトラブルが起きる。

レベル0や1の管理が不十分にもかかわらず、いきなりレベル3の原価・利益管理を目指して高価なパッケージソフトを購入し、導入に失敗した。このようなトラブルはタイの日系工場でよく見かけるケースである。パッケージソフトは高級だが、自社の運用体制がそのソフトウェアーに付いて行けない、いわば砂上の楼閣が失敗の原因である。ソフトウェアーを買う側と売る側双方の判断ミス、結果として双方ともに大きなダメージを受ける。

このようなトラブルを避けるため、国内外の長年にわたる経験を下に示すピラミッド型の図形に要約した。ここでは、日本の製造業の健全なグローバル化を願って、失敗例を示しながら各レベルの内容を説明する。

                         工場機能の階層図


(1)レベル0:生産基礎情報
レベル0の情報は工場管理に必要な基本的な情報である。レベル0は、工場の土台に当たる部分であり、このレベルなしにレベル1の機能は成り立たない。

1)コード表
先ず、上の図の右端のコード表から説明する。

コンピューターに関係なく、昔からコード表は、製造業、商社、金融業、学校、官公庁など、あらゆる組織にとって最も重要なデータだった。コード表があってはじめて、それぞれの組織に必要な基礎情報、言い換えればデータベースを構築することができる。

製造業に必要なコード表は、国コード、通貨コード、材質コードなど、その種類は百近くになることもある。これらのコード表は次のように分類できる。

A.社外のコードを活用するコード表
この種のコードは、ISOやJISの国コードや通貨コード、計量単位コードや産業分類コードである。世界で広く使われているJPNやUSA、m(メートル)、kg(キログラム)などは、そのまま利用できる。これらのコードは略語や記号であり、国コードの国名は英語の公式名である。

ISOやJISの他に、EDI(Standard for Electronic Data Interchange)のコードも国際的なコードである。また、NAICS(North American Industry Classification System)の業種分類コードは、顧客や仕入先の業種分類に利用できる。

ここで忘れてはいけないことは、これらのコード表はグループ企業の共通コード表という点である。日本の視点だけでなく、アメリカやタイ工場の顧客や仕入先の国コードや通貨コードも登録しなければならない。このような点でも、グループ企業のグローバル化は単なる工場の分散ではなく、本社の管理責任も重くなる。

B.社内で決めるコード表
大多数のコード表はこの種類のコード表である。製品分類コード、材質コード、顧客分類コード、顧客注文タイプコードなどは、グループ企業の技術規定、品質基準、会計基準、人事規定など、社内のルールとして定義するコード表である。

新しい素材、製品、事業の展開にしたがって、新しいコードが発生するのでコード表のメンテナンスも忘れてはいけない。

C.外国の法制度を反映すべきコード表
社内で決めるコード表の中には、関係国の法制度や商習慣を反映すべきコード表がある。典型的な例として、グローバルな勘定科目一覧表(Chart of Account)を説明する。

海外の子会社を含むグループ企業の連結決算をできるだけ自動化したいとき、グローバル勘定科目コードを導入する。全社共通のグローバル勘定科目コードを導入すれば、システムの工夫によって関係会社の財務状況を任意の時点で照会することができる。これにより、グローバルな経営視界の改善(Improvement of Management Visibility)が可能になる。平たく言えば、グループ企業の財務状況が丸見え、いい方は悪いが相手のポケットに手を入れることができる。

実例では、経営視界の改善を目的とした勘定科目のグローバル化で、海外子会社の月末締め処理と本社への決算報告作業が激減した。人員削減が目的ではなかったが、結果的には25%も人員が減少した。このケースでは、会計の人員を無理に削減したというより、やることがなくなったといった感じだった。アメリカ本社への報告は、月末恒例の徹夜に近い作業だったが、その作業が殆どなくなった。ねじり鉢巻で頑張ったあの作業は一体何だったのか?との思いもあった。一方、タイの日系企業では、月末のねじり鉢巻は今も続いている。

グローバル勘定科目の導入では、たとえば進出先がアメリカやタイの場合、勘定科目もその国の法制度に対応しなければならない。たとえば、アメリカの場合では「給与−陪審員休暇:Salary - Jury Duty」や「給与−軍事徴収休暇:Salary - Military Leave」などと日本では使用しない経費の勘定科目コードが必要になる。

経費関係ではさまざまな残業手当、日本特有の住宅や通勤手当など、資産勘定ではWrite-off/Write-up(ライトオフ/ライトアップ:資産の消却/資産の評価増・・・いずれも日本では認められなかった)など、さまざまなケースへの対応が必要になる。実際には、科目コードの頭1桁で国別のブロッキング、または、勘定科目毎に「日本では不使用」とのコメントで対処した。

また、個々の勘定科目コードの中身については各国固有の法制度や商習慣があるので、その国の専門家のアドバイスが必要になる。たとえば、タイでは、税法上の固定資産は「1年を超えて使用する資産はすべて固定資産とする」となっており、減価償却も日割り計算である。厳密にいえば、事務用の鋏やカッターナイフも減価償却の対象になる。これでは、固定資産の管理が複雑になり混乱する。このような問題については、現地の公認会計士のアドバイスと他社の動きを参考に対処すべきである。同時に、今後の勘定科目の設計では、国際会計基準(International Accounting Standards)を視野に入れて検討すべきである。

さらに、グローバル勘定科目のタイトル(名称)は、多言語化すべきである。日本本社の連結財務諸表は日本語だけでも通用するが、アメリカやタイ進出した工場が現地法人として官公庁に提出する書類は現地公用語でなければならない。

 Account Number  Account Title   勘定科目名  Account Usage    
 4010015        Expenses: Water 経費:水道   Monthly water bill, Bottled water

上のサンプルでは、Account Number=グループ企業共通勘定科目コード(番号)、Account Tile=名称(英語)、勘定科目名=日本語名(現地公用語)、Account Usage=使用方法(英語)を示している。進出先国の官庁への決算書類は、英語/現地公用語の対応表で対処できる。

上のサンプルのAccount Usageは、グローバル企業の場合、英語だけで十分と考える。

D.英語だけのコード表
実用上、コード名称の多言語化が困難なコード、必然的に英語だけのコード表がある。

どこの工場でも、工程ごとに仕上り品の品質を判定する。不良品の場合は、不良品コードを付けて生産管理部門に報告する。ここでは、その不良品コードをDefect Code(デフェクト コード)として説明する。

加工した部品や完成品の不具合、たとえば傷(Scratch)やひび割れ(Crack)は、職場別に定義されたコードである。機械加工、表面処理、塗装、最終検査などの工程別の不良を示すDefect Codeは、多種多様、コード表に登録する不良品コードの数は多い。また、それらのコードは、工程を担当する誰もが理解すべきコードである。

タイの場合は、外注工程はタイだけでなく近隣諸国に広がる。このため、コードは短い英数字、名称はどこの国でも通じる簡単な英語になる。一般に、Defect Codeの多言語化は不要、それは英語だけのコード表である。
(もしDefect Codeを多言語化すれば、タイ工場の場合はタイ語、マレーシア語、カンボジア語、ベトナム語などが必要になる。たとえば、Scratchという意味の一意性を保つためには、英語を標準語として押し通しても問題はない、またその論拠にも一理あると思う)

E.コード表の管理
顧客の注文タイプコードや支払条件コードやDefect Codeなどは、その業務の新人が最初に覚えるべきコードである。ひとたび覚えればコードは空気のようなもの、コード自体は日常の仕事で必要だが、その名称は英語・現地語ともに担当者にとっては冗長である。

この意味で、日本企業の本社はコード表を世界の標準語(英語)と日本語で定義するだけで十分である。この英語と日本語の原本を本社が一元的に管理し、他の事業所ではそのコピーを使用すればトラブルは起こらない。ただし、勘定科目の英語/現地語対応表の管理は、その国に任せるのが自然の流れになっている。

ここまで、コード表の要点を説明した。レベル0の取引先、品目、BOM、工程順序の説明は、次回に続く。

グローバル工場−−−機能の階層(1)

2011-12-25 | ことばとグローバルシステム
1.工場機能の階層構造
前回のビジネスモデルを機能別に展開すると、下に示すピラミッド型の階層図になる。この階層図は理論的な機能構造を示すと同時に、その運用には経営戦略が必要になる。

今回は、このピラミッドのレベル間の理論的な関係、グローバル戦略とタイの日系工場でよく見る失敗例を支障のない程度に交えて、各レベルの内容を説明する。

先ず、階層図に出てくる専門語とコンピューター用語を簡単に説明する。

(1)専門語の説明
1)部品表:BOM(Bill of Material)
  部品表は外国ではBOM、日本ではBOM、材料表、製品構成表、まれにレシピ(フランス語:工場で
  は金属部品の脱脂液などの成分表を意味する)などとさまざまな呼名がある。
  部品表は、機械製品や加工食品などを1個作るために必要な材料や部品の数量をリストにしたもの
  である。このリストでは、製品を親(Parent)、製品に必要な材料や部品を子部品(Component)と名付
  けて、親子の関係とその材料と子部品の必要数量を示している。
  さらに、子部品を親としてその部品1個を作るために必要な材料や子部品の数量をリストにする。一
  つの製品を親として、次々と子部品に展開(分解)して、すべての子部品が材料になるまで展開した
  ものをBOMと呼ぶ。部品表は製品ごとに作成するので、親子の関係が数十万件のBOMもある。
  BOMは、製品の生産計画と原価計算に使用する。

2)資材所要量計画:MRP(Material Requirements Planning)
  MRP(エムアールピー)は資材所要量計画の略称である。日本や諸外国の工場では、略称のMRP
  で通じる。
  MRPは、1960年代後半にアメリカで開発された生産計画の技法である。当時、IBM社が発表した
  MRPのパッケージソフトは、コンピューターの高速化、BOMのデータベース化、通信技術の発達と
  ともに、欧米の製造業に爆発的に広まった。以来、MRPは生産計画の代表的な技法として世界の
  製造業に定着している。理路整然としたMRPを超える技法はまだ出ていない。
  MRPは、製品の日別生産計画をBOMで材料の所要量に変換し、その加工日程を作成する。

3)利益計画と利益管理(Profit Planning and Management)
  工場では、翌年度の販売計画、設備計画、人員計画、経費計画(予算)、為替レート(予測)、製品原
  価(予測)にもとづいて、利益計画を立案する。
  経営陣が利益計画を承認したとき、販売計画や設備投資と経費予算も承認されたことになる。承認
  された計画と月々の実績を対比し、工場をコントロールすることを利益管理という。

4)連結決算(Consolidated Accounting)
  親会社と子会社を一つの企業グループとして決算することをいう。具体的には、各社の財務諸表
  (損益計算書、貸借対照表など)を合算して連結財務諸表を作成する。連結決算の会社間に発生す
  る売上と仕入れは相殺される。
  日本では、1977年度から連結決算が導入された。83年度からは上場企業については持株比率
  20%以上の関連会社も連結することになった。詳しくは、会計の専門書を参照されたい。

(2)データベースと文字コード
今回は、生産基礎情報で多言語データベースということばが出てくる。ここでは、データベースに関係する用語を簡単に説明する。

1)コンピューターが取り扱うデータ
  コンピューターが取り扱うデータは、数値と文字に分けることができる。数値は世界共通、しかし、文
  字データは言語によって異なってくる。
  文字データ、たとえば、日本語の顧客名に含まれる文字は漢字、平仮名、片仮名、アルファベット、
  数字(数値でなく文字)である。
  これらの文字は、一つひとつ異なったコードで管理されている。たとえば、A=41、a=61、ア=A7、
  ア=B1は文字と番号(16進数)を示している。この文字と番号の一覧表を文字コードという。
  コンピューターの内部では、さまざまな文字コードが使われている。もちろん、文字コードは互いに重
  複しないようになっている。主な文字コードは次のとおりである。
  ◇ASCII=アスキー:アメリカの文字コードで128の英数字、記号、制御文字を設定
  ◇シフトJIS=日本工業規格の文字コードで漢字、平仮名、片仮名、数字、ローマ字、記号を設定
  ◇ISO−8859−1=ラテン−1と呼ばれる西欧諸語(フランス語やドイツ語)の文字コード
   他にISO−8859−2(中央東欧諸語)、3(南欧諸語)、、、16(ルーマニア語)がある。
  ◇Unicode=ユニコードは世界の文字を網羅しようとする文字コード。アップル、IBM、マイクロソフト
   が提唱、ISO(国際標準化機構)が1993年に標準化、現在も文字を追加中、絵文字も含む。

2)多言語データベース
  多言語データベースとは、複数の言語から成立つデータベースである。具体的な例として顧客名で
  説明する。
  前提:標準語=英語、現地語(ローカル言語)=日本語と西欧諸語
  データベース項目=顧客名1、顧客名2、顧客名3および敬称の4つを定義
  ◇顧客名1(Cus. Name 1)=英語名(正式な英語名がないときはローマ字で会社名を入力)
  ◇顧客名2(Cus. Name 2)=日本語名(漢字、平仮名、片仮名、アルファベット、記号で入力)
   ドイツ語やフランス語の顧客名は、西欧諸語(ラテン-1)で入力
  ◇顧客名3(Cus. Name 3)=振り仮名(片仮名で入力、顧客名の検索とアイウエオ順の表示用)
   顧客名が英語、ドイツ語、フランス語の場合は、このデータ項目は空白
  ◇敬称(Salut.)=敬称:Salutation(御中、殿、様を漢字で入力)
  顧客の種別(個人、法人など)、個人の性別、関係(家族、系列など)は別のデータ項目に入力する。

  多言語データベースにおいて、どのデータ項目を多言語化するかは要件定義で決定するが、日本語
  化するデータ項目は少ない方が良い。たとえば、製品カタログで製品名を英数字だけ(ASCII)にすれ
  ば製品名は世界共通になる。したがって、製品名の日本語と西欧諸語は不要になる。

3)ISOコード(イソ、アイソ、アイエスオー・コード)
  JPやJPNは日本を意味する国コード、また、JPYは日本円を意味する通貨コードである。これらのコ
  ードは、ISO(International Organization for Standardization) が設定するISOコードである。近年で
  は、多くの日本企業はISOの国コードや通貨コードを利用している。
  他方、日本にはJISコード(Japanese Industrial Standards Code)がある。JISはISOと整合性を取っ
  ている。しかし、国コードと通貨コードともにJISとISOの一部に違いがあるので要注意である。

                         工場機能の階層図


以下、次回の「グローバル工場−−−機能の階層(2)」に続く。

グローバル工場−−−ビジネスモデル

2011-12-11 | ことばとコンピュータ
1.工場のビジネスモデル

(1)グローバル化の流れ
1990年代から日本の製造業は、「安い人件費」を求めて盛んに東南アジアや中国に進出した。ちょうどその頃、筆者はアメリカの多国籍企業の統合システム(Integrated Business System:日本流にいうとグローバル業務システム)の開発に参加していた。システムの目標は、「アメリカの本社で世界の状況をリアルタイムで把握する=経営視界の改善(Improvement of Management Visibility)」だった。(「生産管理の理論と実践」の「試し読み」の96ページ参照)

ふた昔前の話はさておき、今日では世界の製造業の背景は大きく変化した。日本では少子高齢化、他方では地球人口は70億人を突破すると共に途上国の経済情勢も一変した。日本の製造業も「安い人件費」から「戦略的な海外工場管理」の時代、今流にいえば、「グローバル化の流れ」に対応する時代に至った。

そこで、先ずグローバル化時代の工場のビジネスモデルを説明する。

(2)専門語の説明
1)マテハン
  マテリアルハンドリング(Material Handling)をマテハンと略称する。工場内で材料や品物を加工
  したり移動したりすることをいう。品物の取り扱いを意味する。

2)見込み生産と受注生産(Production-to-Stock/Production-to-Order)
  見込み生産=販売予測数を生産し、在庫した製品を販売する。量産品の生産形態である。
  受注生産=顧客から受注した製品を生産する。注文生産といい、在庫は持たない。
  製品の販売数量に応じて、見込み生産と受注生産を併用する工場が多い。 

3)加工外注
  材料や部品の加工を外部(外注先工場)に依頼し、加工賃またはサービス料を支払う。
  典型的な例:メッキや塗装など。国によっては、サービス業への法規制があるので、要注意

(3)モデルの説明
下の図は、工場のビジネスモデルを示している。このモデルは、機械、電気、化学、食品、繊維、薬品、家具など、あらゆる業種の工場に当てはまる。また、生産形態として、見込み生産と受注生産に対応している。

図において、受注部門や倉庫部門、あるいは工場自体が国内外の各地に分散しているケースがある。事業所が分散しているケースでもこの図は成り立つ。同様に、図に示す顧客は国内外の個人、販売会社、工場、官公庁などを含み、仕入先は国内外の販売会社、商社、工場、加工外注先などである。

同時に、この図はコンピュータシステムの機能を示している。このコンピュータシステムは、分散型の事業所を集中的に管理する統合システムである。事業所は分散、システムは集中、これがこのモデルの考え方である。

特に、生産基礎情報は一元化データベースでなければならない。したがって、このデータベースには、日本語と英語(共通語)ならびに現地語が共存する。このため、システムは英語を標準語とする多言語システムになる。ただし、現地の官公庁に提出する財務諸表などは、その国の法規と現地語で作成する。

次に、図に示す番号にしたがって、それぞれの機能を簡単に説明する。

     工場のビジネスモデル・・・「生産管理の理論と実践」の「試し読み」の1ページ参照


1)見積
  新規顧客の場合は、基礎情報に登録をする。世界レベルの法人価格契約や販売制限をチェックす
  る。顧客名称、住所、氏名(代表者や担当者名)、役職は日英現地語で登録する。

2)受注
  注文書(文書)、Fax、電話、データ伝送、インターネットによる注文に対応する。

3)生産計画
  グローバル生産計画で各工場の生産枠を設定、各工場は大枠に沿って3ヶ月計画を立案する。
  グローバル生産計画は、各国の受注と内示と予測を反映し、工場間の生産負荷を平準化する。

4)購買
  顧客と同様、新規仕入先は基礎情報に登録する。名称や住所や支払先(銀行名なども含む)は日英
  現地語で登録する。
  どこの国にどのような製品がいくらで調達できるかといった購買データベースを作成する。このデータ
  ベースで国内外の代替仕入先を開拓し、緊急事態に強いグローバルサプライチェーンを構築する。

5)購入品在庫
  海外から購入する特殊品(特殊な化成品や素材など)は十分な安全在庫を持つ。

6)加工工程
  手作業から完全自動化工程まで、あらゆる種類の工程を含む。工程の種類にかかわらず、工場の
  基本は整理整頓清潔である。この点では、進出先の従業員の躾けが重要な課題になる。  
  また、他工場を含む代替工程の準備は、政変、自然災害、突発事故に対応できる柔軟なサプライ
  チェーンの構築に不可欠である。この点は、船団方式を好む日本企業の今後の課題である。

7)最終工程
  加工工程と同じであるが、最終工程(または最終検査工程)を終えた品物を完成品または製品と呼
  び、完成品倉庫に移動する。

8)完成品在庫
  完成品または製品の在庫である。

9)出荷
  完成品を顧客に出荷する。進出先の国内顧客への出荷と売上の計上については、国別の商習慣
  や税法を考慮しなければならない。
  製品や国にもよるが、代金引換(Payment on Delivery)の出荷もある。

10)その他
  会計処理では、世界共通勘定科目にもとづき日本本社と進出先国の財務諸表を同時に作成する。
  国際会計基準(International Accounting Standard)またはグローバルな社内会計基準が必要に
  なる。

次回は、このビジネスモデルを機能の階層図に変換して、議論を進める。

グローバルシステム−−−現状分析6

2011-11-26 | ことばとコンピュータ
3−2 業務改善の事例
工場では、品物の入庫はプラス(+)、出庫はマイナス(−)、それぞれの残数を在庫数という。その計算は足し算と引き算に過ぎないが、在庫数を正確に把握することは意外に難しい。

ここでは、製品在庫を正確に把握できるようになったタイの日系工場の事例を紹介する。

(1)専門語の説明
1)直接材料と間接材料・・・「生産管理の理論と実践」の「試し読み」4ページ参照
  工場で使用する材料は、直接材料と間接材料に分けて管理する。
  直接材料=素材、化成品や電子部品など、製品の材料として使用する購入品である。
   直接材料は、半製品(仕掛品)を経て製品(完成品)に仕上げられる。
   直接材料、仕掛品、完成品の在庫数と金額は生産計画や財務諸表の基礎データになる。
  間接材料=潤滑油、工具、包装材や事務用品など、工場に必要な資材である。副資材ともいう。
   間接材料の在庫は必要に応じて管理する。在庫管理が必須でないので、ここでは議論しない。

2)品目テーブル
  品目テーブルは、完成品、仕掛品、直接材料の一つ一つの品目の名称、品目コードや価格情報
  などの一覧表。このテーブルは完成品受注、材料購入、生産計画、在庫管理に利用する。
  一覧表のデータ件数は、小さな工場で数千件、大きな企業では70万件を超えるケースもある。

(2)事例の説明
この日系工場の製品は機械部品、生産量は月当たり数百万個だった。会計処理はパッケージソフト、在庫や生産管理などの業務はエクセル(Microsoft社の表計算ソフト)で管理していた。

毎月末の棚卸で完成品、仕掛品、直接材料の数量と金額を把握する。したがって、会計処理には問題はなかった。しかし、月末だけの在庫把握は、生産管理にさまざまな弊害をもたらした。たとえば、不要不急の完成品を作り過ぎる、計画的な前倒し生産で工程負荷を平準化することが困難などの問題だった。

現状分析の結果から、トップマネージメントは次のような手順で製品在庫の精度改善に乗り出した。

改善策
1)品目テーブル(約5,000件)のクリーニング
  正体が不明な品目、過去の試作品、生産打切りで在庫が存在しない品目などを隔離した。
2)現場担当者の協力
  生産現場のオペレーターと倉庫の担当者一人ひとりの協力なしには、在庫の精度は向上しない。
  理由を説明して、全員の協力を要請した。
3)在庫の一元管理
  工場内には、直接材料や完成品の在庫テーブル(エクセル)があちこちに分散していた。しかも、
  どれも信頼できるデータではなかった。
  そこで、在庫テーブルをサーバーに集約し、特定の担当者が定時に入出庫データを入力した。
4)完成品、直接材料、仕掛品の順序で在庫精度を改善
  完成品は顧客に出荷する製品、その出荷数が正しくなければ工場の信用問題になる。
  先ず完成品在庫に焦点を絞って改善する。次に直接材料、最後に仕掛品の在庫を改善する。
  (完成品、直接材料、仕掛品の在庫を同時に改善しようとすると失敗する・・・経験則)

下の図は、ステップ1で完成品、次に直接材料、最後に仕掛品の在庫改善へと進む方針を示している。

ステップ1:完成品の在庫精度改善
       完成報告の品目と数量で完成品在庫(+)
       出荷報告の品目と数量で完成品在庫(−)
ステップ2:直接材料の在庫精度改善
       具体的な方法は図に示すとおり
ステップ3:仕掛品の在庫精度改善
       具体的な方法は図に示すとおり

               製品在庫の精度改善

結果
1)平均百数十万個の完成品在庫で月末棚卸の誤差が100個前後になった。このような精度が6ヶ月
  以上続き、管理体制も定着した。“やればできる(can-do spirit)”という自信と誇りが、現場の人々
  に芽生え始めた。
2)完成品在庫(エクセル)をサーバーに一元化したので、各担当者が抱えていた在庫テーブルは不要
  になった。担当者たちは、在庫管理から解放され、本来の仕事に専念できるようになった。
3)在庫数を正確に把握する。それは、最終目的ではなく、臨機応変かつ的確な生産活動の基本条件
  との認識が工場に広がった。それは個人プレーでなく、組織的な行動ではじめて実現すると人々
  は実感した。
4)完成品在庫での自信は直接材料を改善しようという意欲に繋がり、職場が明るくなった。

今回で改善事例の紹介を終え、次回から日本の製造業のグローバル化に話を進めて行く。次回は、先ずグローバル化の前提となる工場のビジネスモデルを再確認する。

グローバルシステム−−−現状分析5

2011-11-12 | ことばとグローバルシステム
3−1 業務改善の事例−−−標準品と非標準品
効率的な生産活動は工場の至上目標と考えられ勝ちだが、必ずしもそうではない。時には、効率化はNG(No Good/No Go:エヌジー:だめ)というケースもある。

よくある話だが、オペレーターチームの努力で生産設備の稼働率が上がった。そこで、そのチームは改善提案制度の努力賞を受賞した。しかし、期末棚卸で、その工程で生産した製品が多量に売れ残っていることが判明した。その原因は生産計画のミスだが、これでは、せっかくの努力賞が気まずいものになる。

このように、製品の売れ行きが悪ければその製品を減産し、最悪の場合は生産を打切る場合もある。

かつて、米国系の工場で採算性が悪い製品を打切ったケースがあった。すでに時効ともいえるが、この話の現状分析の結果と改善策は特異だったので、ここに簡単に紹介する。

(1)専門語の説明
1)顧客満足度(Customer SatisfactionまたはCustomer Satisfaction Index)
  自社に対する消費者の評価を、次の項目について調査する:営業担当者と技術者の対応、アフター
  サービス、製品、販売方法、購入手続きなどの過去、現在、未来の評価
2)顧客ニーズ(Customer Needs and Wants)
  顧客のニーズ(要望)に関する興味深い文章を次に紹介する。
  "The customer is always right if she thinks she is right."(お客様が、自分は正しいと考えている
  限り、お客様は常に正しい)・・・シカゴの百貨店Marshall Field社の従業員マニュアルより
  出典:P.11, Philip Kotler, "Marketing Management," Prentice-Hall, New Jersey, 1967
  筆者注:"The customer is always right,,,"この文章が“お客様は王様(神様)”の原典のようだ。

(2)事例の説明
この事例は、アメリカのグローバル企業の日本工場の話、製品は電子部品だった。

日本で生産する製品は標準品だったが、顧客ニーズに応えて追加加工と細かな性能検査を必要とする非標準の特別仕様品も生産していた。この性能検査には数週間の耐久テストも含まれていた。

また、非標準品の中には、過剰品質と思われるものもあった。しかし、それは顧客の要望であり、要望に応えることがメーカーの務めという考え方が強かった。当然、非標準品は、顧客満足度の向上には貢献するが、手間が掛かる割には、収益性は良くなかった。

そこで、製品を大きく標準品と非標準品に分けて、売上高と作業量を分析した。分析の方法は省略するが、過去1年のデータから工場、営業と技術部門の作業量を推定した。分析の結果、下のグラフに示すような事実が明らかになった。たったの4%の売上に対して、30%もの工数を費やしていると。

                 標準品と非標準品の違い
     

非標準品は、手間の掛かる製品との認識が社内にあったが、その度合いを数値で表したのは初めてのこと、誰もがこのグラフにショックを受けた。

この結果について、さまざまな議論が日米で起こった。もし非標準品を提供しなければ、顧客満足度が低下する。その影響は4%の売上げ減に止まらず、非標準品が入手できなければ、標準品も買わないという負の相乗効果が働き、売上げが10%以上減少するとの悲観的な予測もあった。

改善策
1)改善策は、業務改善ではなく、非標準品の削減に焦点を合わせた。
2)営業と技術から顧客に代替標準品の説明、また十分な時間的な余裕をもって標準品への切替え
  を要請した。この要請は、顧客に不利をもたらせるものではない。また、工場が手抜きするため
  の要請でもない、この2点に理解を求めた。
3)アメリカに出荷検査の強化と新しい高性能の標準品の開発を要望した。

結果
1)少しずつであるが、非標準品が在来の標準品と新製品に切替えられ始めた。
2)それにともなって非標準品に必要な機器と作業が減少、作業スペースにも余裕がでてきた。
3)やがて、標準品の性能も向上し、数年後にはほぼ標準品だけになり、総売上高も以前より増加
  した。

次回は、業務改善には改善の順序があることを示す簡単なタイの事例を紹介する。

八重山再訪

2011-10-28 | 地球の姿と思い出
1.珊瑚礁への憧れ
少年のころ海賊船をまねて、帆船を作り近くの池で遊んでいた。材料はすし折の側面、マストや帆桁は割り箸、船側の曲線出しはローソクの炎、船底の防水は溶かしたロー、帆は白い端切れ、すべて身近な素材を利用した。あの頃は、電気機関車やラジオも自作する時代だった。

カリブ海の珊瑚礁やインド洋を独り空想しながら、風に流される帆船を追っていた。やがて空想はエメラルドグリーンの海への憧れとなり、商船大学を出て航海士として「ほのるる丸」に乗り組んだ。当ブログ冒頭の「ほのるる丸」参照

その後も、エメラルドグリーンの海と紺碧の水平線の彼方への憧れは変わりなく、このブログになって今も続いている。

「ほのるる丸」は、欧州からの帰路、台湾の南端から最終寄港地、釜山を目指して北上した。八重山諸島からトカラ列島まで、中でも「ひょっこりひょうたん島」のような島(トカラ列島の横当島)は今も鮮明に記憶している。晴れた日は紺碧の黒潮、白い雲と小さな富士山のような無人島は、まるでお伽話の世界だった。ただし、これらは50年も昔の記憶である。

時代を現在に戻すと、2000年春から今夏まで、バンコクに至るこのルートを頻繁に行き来した。冬の強いジェット気流に乗れば、時速1,200キロを超えるスピードで台湾南端から成田まで2時間半、帰国の喜びが重なるうれしい海域だった。

すっかり馴染みになったこの海域、いつかはこの足で訪れたいと思っていたが、今その夢が実現する。

以下、写真にしたがって今回の八重山旅行を紹介する。

2.八重山再訪・・・石垣島、竹富島、西表島、波照間島、与那国島など、10の有人島と22の無人島
             を八重山諸島という。尖閣諸島(無人島)も八重山諸島の一部、住所は石垣市

(1)珊瑚礁の海

            石垣市離島ターミナル
            

石垣市離島ターミナルは、西表島や竹富島などの八重山諸島への高速船が発着する岸壁である。ホテル眼下の海の色は写真のとおり、横浜港とは比較できない。雲泥の差とはこのことだと思った。

青い海、白い航跡、にぎやかな岸壁に「元船乗り」の心が久しぶりに踊りだした。それは、「太陽に燃え上がる港・・・水平線に踊る帆柱」(A.カミュ異邦人、窪田啓作訳)を想像するこころの躍動だった。

スポーツ用の自転車を抱えて乗込む若い女性、手荷物一杯の年配の女性、団体ツアー御一行様、ダンボール箱の小荷物など、さまざまなお客や物資を乗せて朝8時から夕方6時頃まで、30分毎に高速フェリーボートが八重山諸島を行き来する。

ただし、夕方6時頃から翌朝8時までこの離島ターミナルは、発着もなく静まり返ることをここに付記しておく。

(2)石垣島一周定期観光バス
   (注)文中に(観光)とあるのは、観光バスなどのガイドさんから聞いた話を示す。

            川平湾の全景
            

上の写真は、石垣島北西部の川平(カビラ)に向う途中、観光バスの車窓から見た光景である。その昔、パナマ運河のガトゥン湖から眼下に広がるエメラルドグリーンのカリブ海と同じ光景だったので、思わずシャッターを切った。再訪を願う場所の一つである。

             石垣島川平湾の珊瑚礁
             

日本百景の一つ、川平湾を訪れた。太陽光の加減で変化する海の色は絶妙だった。岡本太郎画伯も、長期滞在にもかかわらずついにこの海の色をキャンバスに捉えることが出来なかった(観光)。当ブログ「海の色−−−世界の美しさ」参照

この珊瑚の海に魅せられて観光バスで訪れた翌日、ローカルバスで川平湾を再訪した。

5時間のバスツアーで、民謡が上手く博学なガイドさん(石垣島唯一人の男性ガイド)からいろいろ興味深い話を聞かせてもらった。

(3)石垣市立図書館

            石垣市立図書館
            

ガイドさんの話で八重山諸島をもっと知りたく、ホテルから歩いて5分の石垣市立図書館を訪れた。図書館は、広々とした敷地と赤瓦の立派な建物、建物自体がこの地方をよく表していた。

内部には、整った書棚とゆったりとした閲覧スペースがあった。さらに、職員の方々の親切な手助けで、効率よく欲しい資料を収集できた。

            八重山地域情報センター(石垣市立図書館)
            

館内で八重山地域情報センターを見つけたので、許可を得て撮影した。興味深い資料があふれていたが、2回の閲覧で切り上げた。

(4)八重山での雑感
初めての八重山で得た情報と昔の記憶を織り交ぜて、過去、現在、未来に対する雑感を箇条書きスタイルでここに記す。

1)八重山の明和大津波(1771) Edited by Kamewada 050123(石垣市立図書館)
明和8年(1771年)4月24日午前8時頃に、石垣島南東40キロの沖で地震(M7.4)が発生、津波が海抜85.4メートルの地点まで駆け上がった。宮古島も36メートルの津波に襲われた(観光&図書館)。

当時の八重山諸島の人口は2万9千人、その32%(9,313人、内石垣島8,335人)を失い、石垣島の40%(8,000町歩)が潮に洗われた。

この大津波の記録は古文書に記録されており、津波で打上げられた津波石(最大約700トン)やシャコ貝(1メートル以上)の島内分布図とも一致している。

2)石垣合衆国と結(ゆい)
明和大津波の後、八重山諸島は80年にわたり飢饉、疫病、マラリアがたびたび発生し、集落の消滅と外部からの移住を繰返した。ある村は宮古島からの移住者、隣の村は沖縄や九州、四国からの移住者、集落ごとに言葉と風習が異なった。このためこの島は石垣島合衆国ともいわれている(観光)。また、自然災害だけでなく人頭税にまつわる悲しい話−−−生まれるこどもを減らす話(観光)は、この島のつらい歴史を物語っている。

しかし、過酷な天災と圧制にもかかわらず石垣島にも日本「本土」と同じ相互扶助の風習が存在した。サトウキビの収穫や農作業、家屋の建設、かやぶき屋根の葺き替えなどにおける親族や隣近所の共同作業である。八重山地域では、この風習を「結(ゆい)」あるいは「ゆいまーる」といい、今日も健在である(観光)。なお、「まーる」は輪番を意味している。

3)おおらかな社会
大津波や台風という自然災害、人頭税という圧制、石垣島合衆国と呼ばれる特殊な社会構造、これだけの条件がそろえば、集落間の「反目」があってもいたし方がない。にもかかわらず、「結」の風習でこの島の人々は「助け合い」の方向に舵を切った。

それは、今回の観光、食事、ホテル、コンビニ、図書館などで接した人々の親切心や気遣いにあらわれていた。食事の種類と味は良く、価格も適正で楽しく過ごせた。そこには、対立や紛争とは関係のないおおらかな生活があった。

今回の旅で、世の中は人々のこころの持ち方次第でおおらかになるという事実を知り、日本もまだまだ捨てたものではないと、ある種の希望が湧いてきた。

4)国際規約
話は変わるが、この珊瑚の海域を高速フェリーボートで行き来するうちに国際法を思い出した。

1962年頃は第三次台湾海峡危機の時代、台湾近海では「ほのるる丸」の前後のデッキ(ハッチの上)に一辺10メートル前後の日章旗を広げて航行した。国籍を明示して誤爆を避ける、それは教室で学んだ戦時国際法や船舶法(国旗掲揚権)の実践編だった。

ここで注意しておくが、戦時国際法は一つの法律ではなく、戦争法や中立法、具体的には、さまざまな法規や条約(例:ジュネーブ条約=傷病者や難船者保護条約など)などで成り立っている。

また、戦時国際法に対して平時国際法がある。これは平時の国際法や規約や条約を意味する。たとえば、1890年に明文化されて以来、改正が続くヨークアントワープ規約(York-Antwerp Rules)は共同海損を処理する国際規約である。当ブログ「ことば(5)−−−世界共通語」参照

ここで共同海損を簡単に説明すると次のようになる。ある商船が荒天に遭遇、積荷の一部を投棄して沈没をまぬがれたとする。このとき、積荷を投棄された荷主だけが損害を被るのでなく、救われた他の荷主を含む利害関係者が損害額を分担するという取決めである。日本では、商法第3篇海商(一般に海商法と呼ぶ)に共同海損(General Average)の規定がある。日本は、万国海法会(CMI, Comite Maritime International)に加盟しているのでヨークアントワープ規約に準拠して共同海損を処理している。

ここで共同海損や「結」を云々する積りはないが、その考え方に注目する。その考え方は、利害関係者の「相応の負担」である。これは、合理的な考え方である。

ふたたび話は変わるが、台風や地震・津波のたびに、新築の家屋を失ったがローンだけが残ったという問題が起こる。そこには、家屋を失った個人と残ったローンを取立てる銀行がある。難解な二重ローン解決策では銀行の「相応な負担」が明快でない。

未曾有の天災を機に日本の生まれ変わりを望むならば、法改正にも踏み込む冷静な勇気と行動力が必要になる。そこに、業界からの献金やしがらみを超えた公正な二重ローン解決策が実現する。しかし、「金を隠した、隠さない」と金まみれの政治家にとっては、自分の首を絞めることになり兼ねず、公正かつ誰もが納得する解決策は難しい。したがって、これは懸案事項として先送りとなる。

また、50年前は不穏な海域を抜け出し、台湾の南端で北に変針すれば八重山諸島、そこには美しく穏やかな海が広がっていた。しかし時代が変わり、「何でもあり」の中国に接する尖閣諸島の周辺は不穏な海域に変化した。これも、先送りの懸案事項になる。

さらに、日本のグローバル化への対応も、今後数十年はかかると考えるが、それまで日本がもちこたえるかといった深刻な懸案事項である。

この日本国、多くの懸案事項で前途多難だが、なすべきことをなせば希望もある。しかし、なすべきことを挙げれば切りがないので、ここで一旦この種の議論を打ち切る。

今回の八重山再訪は、グローバルシステムから脱線した。次回は話を元に戻し、少し毛色の違った業務改善を紹介し、さらに先に進んでゆく。

グローバルシステム−−−現状分析4

2011-10-08 | ことばとコンピュータ
3.業務改善の事例
実際の改善提案の内容は千差万別だが、ここではタイの日系工場の事例を紹介する。

(1)専門語の説明
事例の紹介に先立ち、この説明に出てくる生産管理用語を簡単に解説する。
1)単独工程
  1台(セット)の機械または装置で材料を加工し、部品や製品を生産する工程をいう。
  例:鉄板から部品を打ち抜く工程
2)連続工程
  複数の工程を連結した工程をいう。初工程に材料を投入し、最終工程で部品や製品を仕上げる。
  途中の工程で別の材料を投入することもある。例:鉄板を投入⇒切断⇒穴あけ⇒仕上げ
3)サイクルタイム(Cycle Time)
  単独工程や連続工程が1つの部品や製品を仕上げる時間。機械部品の場合は秒単位が多い。
  例:サイクルタイム=30秒 ならば 30秒に1個の部品や製品が仕上る。
4)生産基礎情報
  品目テーブル(材料、部品、製品などのデータ)、部品表(使用材料のデータ)、工程順序表(加工順序
  やサイクルタイムなどのデータ)などの総称で、工場のデータベースである。
  
(2)事例の説明
現状分析の結果、主力製品の生産性に問題があることが分かった。生産性の問題と同時に、当時、材料の高騰と為替レートの悪化で製品コストの削減も急務となっていた。

そこで、主力製品の一つに的を絞って、生産指示数、サイクルタイム、オペレーター達の動作など、「人、もの、情報」の流れを分析した。この工程は製品ABCの最終組立てラインで、見直し作業にはオペレーターも参加した。

説明が長くなるので詳しい内容は省略するが、問題を要約すると下の図のようになる。図の黄色の部分は「Before(改善前)」、緑の部分は「After(改善後)」を示している。

生産性改善の事例---改善前と改善後



上の図に示すとおり、改善前の工程は朝8時−20時の作業で1,200個の製品ABCを生産していた。「プリセット」「組立て」「塗装/乾燥/検査」の3つの単独工程で編成したこの組立工程を4人の女性オペレーターが担当していた。

改善策
1)3つの単独工程を1つの連続工程に変更、この変更に伴う生産基礎情報の見直し。
2)改善前の作業効率は、サイクルタイムベースで68.4%だった。
  工程の連結とその運用を改善し、サイクルタイムを22秒に短縮した。
  試算の結果、余裕率を考慮しても製品ABCの生産は17時頃に終了すると判断した。
3)“効率68.4%は、100点満点の70点程度、これはCクラスの仕事である。
  せめて80点前後のBクラス、できれば90点以上のAクラスを達成し、世界の工場に向かって胸を
  張って欲しい”とオペレーターのプライドに訴えた。

結果
1)約2週間の試行錯誤で、図の緑色に示すように作業時間を約30%短縮した。
2)昼食時間の半数交替はオペレーター達の発案、これにより塗装乾燥装置は連続運転になった。
3)女性オペレーターの自発的な改善は、サイクルタイムベースで91.7%とAクラスに到達した。
  生産性は非常に高いが、時どき機械周りを掃除・整頓する余裕が残っていた。
4)工程の連続化のために設備を移動しただけで、他のコストは発生しなかった。
5)この改善は工場全体に知れ渡り、自分たちも“やればできる(Can do)”という自信を持つと同時に、
  “Kaizen”への関心が高まった。
  (注:単純化のため説明を省いたが、実際にはこの製品ABCを21時から翌朝6時まで引続き生産
  していたので、改善の効果は大きかった)

この改善が引金となって、全社的にサイクルタイムや生産指示数の見直しが始まった。やがて、他製品の生産性の見直しに波及し、増産への道が開けた。また、新しいデータにもとづく原価分析で、顧客・工場の双方が納得できる価格交渉が成立した。

次回のグローバルシステムは休み、代わりに石垣島旅行を10月末に掲載する。

グローバルシステム−−−現状分析3

2011-09-25 | ことばとコンピュータ
2.現状分析と改善提案
ここでは、現状調査で見つけた問題の分析と改善提案の方法をサンプルで説明する。

(1)問題の整理と分析
ヒアリング中に見つけた問題(Issue)は、業務フローの右端の摘要欄にその内容を説明する。すべての調査を終えたとき、業務フローから問題だけをエクセル(Excel)でコピーして一覧表にまとめる。下の表は一覧表のサンプルである。

                問題の一覧表(サンプル)

サンプルの左端に示す「分野」「Issue No.」「問題の内容」は業務フローからコピーしたものである。右端の「原因機能」は問題の原因になっている機能である。サンプルに示した原因機能の他に必要な機能があれば追加して良い。

たとえば、上のサンプルのIssue 1-1(問題1-1)は、「基礎情報」「見積り・受注」「原価計算」の不備による問題と仮定する。したがって、これらの欄の○印を付けた。この要領ですべての問題の原因を特定して、該当する機能に○印を付ける。

(2)改善提案
すべての問題の原因を特定し終えたとき、類似した問題をグループ化して、改善策を検討する。このとき、原因機能別の○印の数をサンプルに示すようなグラフにして、今 工場で起こっている問題の傾向を読み取る。また、工場の整理整頓や従業員の態度なども参考にする。

さらに、ヒアリング中に頭の中で模索していた改善案を、ここに整理した情報にもとづいて具体的な改善提案へと発展させる。

具体化した改善提案に番号を付けて、下の表に示すような「改善提案の一覧表」を作成する。この表は、改善提案とその提案が解決する問題を示している。また、それぞれの改善提案の具体的な内容、改善に必要な日数の推定、期待効果、推定コストをA4版用紙2〜3ページにまとめる。このとき、改善提案を業務改善とシステム改善に分けておく。

                改善提案の一覧表(英語版のサンプル)

外国での現状分析は、サンプルのように現地社員も理解できる英語で記述するのが望ましい。英語で記述すれば、日本語から現地語への翻訳の手間とコスト、さらに誤訳なども防止できる。

次に、改善提案の優先順位を決定する。この決定には関係者全員が参加する。

これは経験則になるが、業務とシステムの改善からそれぞれ3つの改善を、優先順位の高い順に選択する。改善提案を6つに絞り、担当者(業務と兼任)を指名して、正式なプロジェクトとして提案を実行する。残りの提案は、関係者の課題として自発的な改善活動に委ねる。

以上、現状分析の手順を簡単に説明した。この方法は、工場に限らずあらゆる業界に応用できる。

最後に、過去の経験から次の点をアドバイスする。
1)現状分析は、最初から最後の改善提案までを一人の分析者で実施するのが望ましい。
  理由:
  1.複数の分析者が分業すると判断に個人差が生まれ、現状分析の一貫性が損なわれる。
  2.その日のヒアリングをその日中に業務フローに仕上げるのは困難、作業効率が低下する。
  3.チームワークの報告書は分厚く、かつ総花的になる。しかし、中身の切れ味は悪い。
2)ヒアリングは工場と事務所の直接作業者からだけ、管理職からはヒアリングしない。
  ただし、実務をこなす管理職からのヒアリングは実施する。
  理由:
  1.現在のあるがままの姿を調査するのが目的である。むろん結果は管理職に知らせる。
  2.日本では、本音と建前を注意深く識別する。
  3.ヒアリングでは、自由回答型質問(Open-ended Questions)を多用しない。
  例:あなたはどう思いますか?

次回の現状分析4は、タイの日系工場の改善事例を紹介する。

グローバルシステム−−−現状分析2

2011-09-09 | ことばとコンピュータ
(2)調査の方法
ここでは、工場(製造などの直接部門)と事務所(生産管理や経理などの間接部門)を例にとって説明する。

まず、各職場の管理職とリーダークラスの人々に現状調査の方法を、次のように説明する。
1)ヒアリングを受ける作業担当者は、現状だけを説明する。(今後の目標や計画の説明は不要)
2)ヒアリングのための資料作成は不要
3)製造現場の作業担当者からのヒアリング時間は、5〜10分程度
4)必要に応じて、使用中の帳票を1枚だけコピーする。
5)翌朝、昨日のヒアリング内容を業務フロー(業務の流れ図)で確認する。所要時間は、5〜10分程度

工場の作業だけでなく、製品データの管理、売掛/買掛や原価計算なども調査する。

(3)業務フローの作成
工場内でのヒアリング調査は、直接材料から仕掛品、仕掛品から完成品に向う流れに乗って進める。枝葉の流れにはあまり時間を費やさない。受注や経理処理などの間接部門の作業は、帳票の流れとシステム処理(入出力作業)にしたがってヒアリングを進める。

ヒアリングで得た業務の内容を、エクセル(Excel表計算シート)に展開する。エクセルシートは、A4縦、上辺幅5分の4のスペースを業務フロー作成に使用、右端5分の1のスペースを摘要欄に使用する。業務フローのスペースの中央に、ボックス(箱型の枠)を描き、その中に作業名を書く。たとえば、「電話による受注」や「最終組立て」などのボックスを作る。

ボックスの左側に使用する材料や帳票(Input:インプット)、右側に作業で作成した品物や帳票(Output:アウトプット)を矢印で示す。ボックスの替わりに業務システムの画面でも良い。

そのボックスの下に次の作業のボックスを書き、下向きの矢印で連結する。次の作業では、新しい材料や帳票、あるいは上のボックスのOutputの一部が、下のボックスのInputになる場合もある。

ボックス(作業)の順序を、できるだけ上から下に流れるように配置する。また、各作業のInputとOutputの流れを左から右に流れるように配置する。もちろん、作業の都合で逆方向の流れも起こりうる。他のページに続く時は、結合マーク(Connector:野球のホームベースの形)に記号を記入して、続き先に結びつける。このような作業や帳票や物の流れ図を、ここでは業務フローと呼ぶ。

必要に応じて、作業で使用したり作成する帳票を1ページだけコピーし、参照番号(Ref. No.)を付与する。参照番号付きのコピーは、参照資料として別冊にまとめて現状分析報告書に添付する。

もし、InputやOutput(帳票や品物)や作業の内容に問題があるとき、問題がある箇所の真横、摘要欄に問題の内容を簡単に説明する。問題の場所と摘要欄の内容説明を問題番号(Issue No.)で結びつける。問題がある部分と説明文に色付けして、視覚で関連付けることもできる。また、黄色と水色を交互に使い分けると、問題の混同を避けることができる。

                業務フロー(英文)のイメージ

摘要欄の説明は短く、長くても50字を超えないように配慮する。後程、問題番号とその内容を一覧表に整理して、現状を分析する。

業務フローを作るとき、次の点に注意する。
1)ヒアリングは15時頃に切上げる。残りの時間で、明日までに業務フローを仕上げる。
2)帳票のコピーが必要なとき、そのコピーを手にするまで、次のヒアリングに移動しない。
  「後で下さい」ではなく、その場で入手する。(業務フロー作成に必要)
3)些細なことでも、気がかりな点は、問題番号を付けて右の摘要欄にメモする。
  職場の雰囲気や整理整頓、作業環境の気掛かりな点も記録する。
4)今日中に作成したフローを翌朝一番に、ヒアリングした人に確認する。
  口頭でなく業務フローで確認するので、短時間で終わる。
5)海外工場の場合は、業務フローを英語で作成する。業務フロー(英文)のイメージ参照
  英文による問題点の説明は、メモ書きのように英単語を並べるだけでも良い。(長文は禁物)
  (注)たとえば、タイでは技術系の「英/タイ辞書」は語彙も多く充実している。
  このため、現地社員にとっては和文より英文の方が辞書を引きやすく、また理解し易い。

現状調査の分析方法や注意事項は、次回の現状分析3で説明する。