金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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なりすまし。(114)

2017-01-04 18:00:53 | Weblog
 怒り顔で向かって来る男はどう見ても三十代。
粗末なズホンとジャケット。
腰のベルトには短剣を下げ、大股で歩を進めてきた。
醸し出す威圧感はただごとではない。
人を殺すのには慣れているソレだ。
時代背景から察するに、戦場慣れ。
 俺の鼓動が速まった。
怯えではない。
双子の怪物の時は心底から恐怖を味わったが、それとは明らかに違う。
今を敢えて表現するなら、ワクワク。
強い相手を迎え撃つことへの、ワクワク。
 着替えを手伝ってくれるという金髪娘が素速く動いた。
長い金髪を振り乱し、俺と男の間に入った。
両腕を広げて、「おやめなさい」と男に言う。
 それを上回る速さで動く者がいた。
隣の小さな身体がダッシュした。
座敷童子。
男が前に踏み出した足に組み付いた。
 男の足が止まった。
表情が怒りから困惑に変わった。
眉間に皺寄せて金髪娘と座敷童子を交互に見遣った。
 興が削がれた。
男に助け船を出した。
「喧嘩ならいつでも買う。
その前に着替えさせてくれないか。
これでは俺も妹も風邪をひく。
・・・。
ついでに腹も減ってるから、何か食わせてくれると助かるのだが」
 金髪娘が男に言う。
「スグル殿、失礼ですよ。
お二方は客人です。
召喚祈祷には失敗したようですが、間違えて呼び寄せたのは我等。
お二方には何の咎もありません。
・・・。
着替え終えたら食事にします。
皆の者もお腹がすいたでしょう。
大広間に用意させなさい。頼みましたよ」
 スグルと呼ばれた男は、渋々といった態度で一礼すると引き下がり、
地下室から重い足取りで出て行った。
 金髪娘が振り返って俺に言う。
「うちの者が失礼しました。
悪気はないのです。許してやって下さい」
「気にするな。
それよりお前はこの国の姫様なのか」
「はい、アリスと申します」
 アリス姫。
ここは不思議の国なのか、いや、どう考えても違うだろう。
 アリス姫は俺から視線を外さない。
期待する目色。
俺の名乗りを待っている気配がした。
ここで小一郎は拙い。
この場には相応しくない。
アリスがア行なので、次はカ行、と思った。
「俺はカルメン。妹はキャロル」口を衝いて出た。
 実に有り触れた名前。
カルメンにキャロル。
アリスに負けず劣らずだ。
 座敷童子が、「妹、キャロル、妹、キャロル」呟き、俺に頷いた。
 アリスも満足そうな顔。
「カルメン様にキャロル様ね」
 愛らしい表情で俺とキャロルを見遣った。
このアリス姫、身長は周りの女達よりは高く、俺よりは低い。
年の頃は十代の後半。
高貴な身分にしては、くだけていた。
自分は礼儀正しいのだが、他人にはそれを求めなかった。
「私のことは姫ではなく、アリスと呼んでね。
分かりましたか、カルメン、キャロル」と言う分けだ。
 アリスの指示で女子供が俺とキャロルの着替えを手伝ってくれた。
キャロルには年相応の衣服があった。
アリスが子供時代に身に着けていた物だ。
「もう妹が生まれることもないでしょうから、キャロルに着て貰いましょう」
 問題が一つあった。
キャロルの訛りが誰にも理解されないのだ。
するとアリスが身振り手振りで意を伝えた。
それで問題が解決した。
キャロルが首を縦か横に振って答えたのだ。
そうなると楽しいのか、キャロルは首を振りながら訛り言葉を連発した。
これに子供達も加わった。
騒ぎながら大袈裟な身振り手振りでキャロルと会話した。
 一つ問題が解消したと思ったら新たな問題が発生した。
俺。
アマゾネス体型なので似合う物がなかった。
それにスカートやブラジャーの問題も。
とても身に着ける気になれなかった。
悩んだ末、アリスに頼み込み、男物を持って来てもらった。
彼女が持って来たのは兄の衣服だった。
「礼服ではなく、普段着だから気にしないで」
 真新しいズボンにシャツ、ジャケット。
 着替え終えるとアリスに階上に案内された。
地上三階、地下一階。
 城は切り出された石材と焼き上げられた煉瓦で建てられていた。
どうやって運び込んだのかは知らないが、
目を剥きたくなるような大きな岩も見受けられた。
 一階の回廊を行く際、直射日光があたる箇所があった。
俺は思わずキャロルを振り返った。
座敷童子は陽射しに弱い。
ところがキャロルは平然としたもの。
俺の不安を察したのか、ニコリと笑みをくれ、普通に陽射しの下に入った。
何も起こらなかった。
キャロルの足取りは平然としたもの。
これも新しく得た身体の影響なのだろうか。
 杞憂に終わり、ホッとしていたら意外な物を目にした。
フルーツ。
庭一面に色とりどりの実が生っていた。
イチゴ、リンゴ、ミカン、ブドウ、カキ、モモ、ナシ、マンゴー、スイカ、パイナップル。
品種名を知らぬフルースも散見された。
 よく考えてみたら季節がバラバラ。
おかしい、ここは欧州のはず。
城はまさに中世欧州そのもの。
地下室にいた者達も白人種。
けれどだ、地域からすると、有り得ないフルーツが多い。
熱帯亜熱帯でしか生育しないものも混じっていた。
それに、今さらだが、日本語が通じた。
召喚祈祷も存在した。
ここは本当に中世欧州か。




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