the Blue Period ~out of the aEther

蒼き時代はエーテルの彼方へ。このブログ、閲覧・御意見無用也。

虐殺器官

2017-02-05 16:26:51 | 本と雑誌
伊藤計劃 著

虐殺器官を読んだ。

読む前に知っている事は、
作者はもう居ない、という事。

常々思うんだけど、
小説というものは今ここに在る一冊、
要するに書かれている内容だけで
評価されるべきだと思う。
・・・し、僕はそうやって本を読んできた。

さて、

僕は一人称小説は好きな方だ。

この小説、前半はなかなか話が進まない。
一人称の独白的進行が仇となる程に。

全体に渡って母親の死の選択のくだりが
事ある毎に繰り返され正直かったるい。

その割に他の部分の薄さ浅さが目立つ。
もしかしたらこれは対照表現なのかな。

全般に於いて状況説明に引用が多いのは残念。
僕は引用=作者の力量不足と考えている。
結局その情景は読書にネットを漁らせる事になるから。(僕のキライな第三者介入)

細々としたSF小道具は
やはりどこかで読んだものばかりで
しかも浅い。
リミックスはもうこの時代、仕方ないんだろうな。

・・・うーん、と。

小説、取り分けSF小説で大切なのは
ずばり「何か新しい事」や「突き抜けた何か」
じゃないだろうか。

優れた小説は皆、心に突き刺さる何かを、
例外なく持っている。

なんかこの本、薄いんだよな。

・・・と。


これは主人公がジョン・ポールを、
そしてその大量虐殺の方法の謎を追う。
そうゆう話だ。
SFミステリーっていうのかな。

だが肝心の虐殺の方法については明かされない。

読みながら・・・
ここは例え大嘘だとしても、SFなんだから
何がしか説明がないと納得いかないだろう。

でも、と。

虐殺器官というタイトル通り
ここではその方法よりも、
器官、つまり人間の脳がそれを生み出す
その事実の方が重要で、だから(頭を指差して)地獄はここに在る、という描写が何度も繰り返されるのだろうな、と。

虐殺器官とは人間、その存在自体を
指しているのか。

そう考えると
特に虐殺の文法とやらは重要事項から外れるのか
さして気にならなくなる。

なれば尚の事、この作品が持つ「広く浅く」の
部分が惜しい。

新版、的な加筆修正バージョンになれば、
とも思うが
これが一冊の本になっている事実は、
手直しの必要可能性は無いと解釈する。

小説は読み手によっても大きく違う意味を持つ。
他人の評価は当てにならない。

僕の感想は、惜しい!の一言に尽きる。
こんだけウダウダ抜かした割には。








コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« JOE | トップ | 希望の選択を。 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿