内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

フランス、あるいはテロリズムの温床としての「未来なき大国」

2017-04-21 16:13:04 | 雑感

 昨晩、ブリュッセルから戻り、一息ついたところでテレビのスイッチを入れ、フランスでまたテロがあったことを知る。犯行現場はパリのシャンゼリゼ通り。犠牲になったのは警官。一人が亡くなり、二人が重傷という。殉職された警官の方には心からの哀悼の意を捧げる。重傷を負われたお二人の一日も早い回復も心より願う。
 犯人は単独犯で犯行直後に射殺されたが、内務省は他に関与した人物があると見て捜査中という。イスラム国は犯行後一時間ほどで犯行声明を下部組織の通信社からアラビア語で発表させている。
 今回のテロは大量殺戮が目的ではない。シャンゼリゼ通りというフランスの首都を代表する中心地で治安警備に当たる警官を標的にしたのは、テロリストたちによるフランスの官憲に対する公然たる新たな「宣戦布告」のように私には見える。もちろん、犯行時で三日後に迫っていた大統領選挙を撹乱するという意図もあっただろう。
 テロ対策は今回の大統領選の焦点の一つであるから、当然のこととして、極右政党の候補者は言うまでもなく、他の有力候補者たちも、昨日のテロを受けて、テロ対策の強化を施政方針とする声明をそれぞれに発表している。
 しかし、私が見るところ、このようなテロ対策の厳格化方針は、イスラム国の術中にはまることにしかならない。テロ対策が進めば進むほど、一時的にはテロを沈静化させることができても、結果としては、テロリストたちをさらに先鋭化させ、過激化させるだけだからである。
 誰も本当の問題を正面から見据えようとはしていない。本当の問題は、移民でもイスラム原理主義でもない。移民を排除しても、イスラム原理主義を撲滅しても、テロリズムはなくならない。法的措置や経済政策で解決され得る問題でもない。不均衡な社会構造が「他者」への差別と憎悪の生成・増幅装置であり続けるかぎり、テロリズムの「温床」はその社会内に保持され続ける。テロリストたちはそのことをよく知っている。同様な私見を2015年11月13日のパリでのテロを受けてその翌日の記事で述べているが、そのときから現在に至るまでフランス社会の構造に有意味な変化は何も起こっていないということである。
 大統領選挙の第一回投票が明後日の日曜日に迫っているというのに、有権者約4700万人の四分の一がまだ誰に投票するか決めかねているという。今回のテロが支持率に与える影響は限定的だろうと私は見ている。いずれの候補者のテロ対策も実現可能性・実効性の点で十分な説得力を持っていないからだ。
 だれが大統領になっても、フランスは変わらないし、変われない。確かなことは、よりよい社会にはならない、ということだけである。輝かしくも爛熟せる文明を二十世紀までに蕩尽してしまったこの国にもう「未来」はない。しかし、それでも人々は生きていく。私も「移民」の一人として。



 











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