内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

「日本文化週間」企画準備学生ミーティング

2015-12-07 14:55:07 | 講義の余白から

 多数の学生を前にしての講義形式の授業で一方的に話すのも別に嫌いではないが、どちらかと言うと、少人数の演習の方が楽しい。学生たちとの距離が縮まるし、面白い議論になることもあるからだ。今年度前期は、学部の講義は古代史一コマだけで、あとはすべて修士の演習である。学生たちと議論しながら、こちらもあれこれと気づかされることも少なくない。
 それよりもさらに楽しいのは、学科カリキュラム外のプログラム準備である。これには試験もレポートもないし、成績も関係ない(と言うのは、実は、正確ではない。が、それについては、最後に書く)。もちろん、それゆえ、学生たちに強制はできないし、ちょっと誘ったくらいでは、彼らも乗ってこない。しかし、こちらの「熱心な」勧誘の結果、テーマに興味をもって乗ってくる学生たちは、積極的に参加してくれるようになる。
 今年の六月から、来年二月前半のストラスブール大学図書館企画の「日本文化週間」の準備を始めた。主催は図書館だが、日本学科の教員も、専任は全員、何らかの形で関わる。二人の同僚は、それぞれ自分の専門に関わるテーマで講演をする。私は、屋久島についてのドキュメンタリー・フィルムの上映とそのフランス人製作者とのパネルディスカッションのオーガナイズと、学生たちを動員しての俳諧と俳句についての展示の準備を担当している。
 今朝は、その展示に協力してくれる学部三年(フランスでは学部最終学年)の有志たちとの打ち合わせミーティングだった。最初は反応が乏しかった学生たちだったが、今では学年登録学生の三分の二に相当する十二名の学生がこの企画に参加してくれている。
 今日のミーティングでは、私の側からまず展示企画全体の枠組みと構成、参考文献等について説明した。大きく文学史的概説と作品論とに分け、前者では、江戸期の俳諧史、明治の俳句史、大正・昭和の俳句史の一側面、現代俳句の文化史的位置づけを提示し、後者では、江戸・明治・大正・昭和のそれぞれの時代の少数の代表的な俳人とその作品に限って、それらの鑑賞とそれぞれの成立の背景の説明に重点を置くことを提案した。
 私の説明と提案の後は、学生たちに自由に話し合わせた。これが見ていて楽しかった。冗談を言い合ったり、書記係がホワイトボードに書く字の汚さや誤字をからかったりしながら、それぞれ担当を仲良く決めていった。
 この企画は、あくまで大学図書館の企画であり、けっして学科の学生の学習成果を問うことが第一目的ではなく、積極的な参加を通じて、彼ら自身が楽しみながら、日本文化を紹介することがその目的である。とはいえ、彼らの作る展示パネルは、すべて私の監修の下で印刷に回される。それに、これが彼らにとってはとりわけ大事なことなのであるが、彼らの貢献は、彼らが後期で履修する私の担当講義「近世文学史」の成績に反映される(普段の授業の準備と試験勉強だけでも大変なのに、無償で協力を申し出てくれたのだから、それくらいは彼らに「恩賞」を与えないとね)。しかし、彼らの積極的な姿勢と楽しみ方を見ていると、そんなことは、いい意味で、二の次になっているように思われる。
 彼らがどんなパネルを作成してくるか、楽しみにしている。