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さて、予告のリーマン破綻一年前のクルーグマンの予言

2008年09月17日 04時09分28秒 | ポールクルーグマン
クルーグマン教授の経済入門

文庫本ですが、こちらの本で、経済の基本を抑えておくと、個別事象にあたふたしたり、いわゆる経済評論家などのその場しのぎのおもいつきコメントに翻弄されなくてすんだりします。経済の基本を抑えておくと、いろいろ役に立ちますよ。

とても恐ろしいこと By PAUL KRUGMAN 2007.8.10

1998年9月、巨大ヘッジファンドのLTCMの破局は、金融市場を崩壊へと導いた。ある意味では同じようなことが、今起こっている。98年の危機のときには、僕は連邦銀行高官による内密のブリーフィングに出席していた。高官はマーケットのさんさんたるありさまを説明した。「何ができるんだ?」参加者の一人が聞いた。「祈るだけです」高官はそう答えた。

われわれの祈りには、ご利益があった。当時の財務省長官のロバート・ルービンとFRB議長のアラン・グリーンスパンが、投資家にすべてがうまくいくと説得して、連邦銀行はLTCMを助ける調整を行った。

昨日、ブッシュ大統領は自分のMBAボキャブラリーを見せびらかすのと同時に、マーケットを安心させようとした。ただブッシュは、言わせてもらえば、少しばかり信頼にかける。一方、 誰がうまいことやれるのかは明らかではない。現時点では、われわれには救世主がいない。もっと悪いことには、われわれは救世主を必要としている。

ここ数日、金融市場に起きていることは、金融経済学者にとっては肝をひやすようなことだ。流動性がなくなってしまっている。つまりいつもは常にとりひきがある市場が、特に住宅債権を含む金融商品は、買い手がいないために取引が成立していない。

これだけならちょっとした恐怖にすぎないが、最悪の場合になると、債務不履行の連鎖反応が起きてしまう。

今回の金融危機の源は、ここ数年の金融における悪ふざけにある。今にして思えば、ドットコムバブルとおなじくらいばかばかしかった。住宅バブルは、その一部にすぎない。概して、人々は、まるでリスクがなくなってしまったかのように振る舞っていた。

今や、誰もがサブプライムローンの急拡大について知っている。そのおかげで、人々は通常の住宅ローンの資格審査なしに家を買うことになり、こうしたローンを含む証券を投資家は熱心に買いあさった。しかし投資家は高利回りの企業債券、つまりジャンクボンドにも飛びついた 。そのおかげでジャンクポンドと財務省証券の差は、記録的な小ささを示した。

そして現実がつきつけられた。すべて一度というわけではなかったが、一連の打撃がつぎつぎとやってきた。住宅バブルがはじけ、サブプライムが崩壊した。それからジャンクボンドに対して投資家は大いに動揺した。二ヶ月前、B格付けの企業債券の利回りは、財務省債券より2.45パ ーセント高いだけだった、今はその差が、4パーセントを超えている。

サブプライムローンの崩壊が、投資銀行のベアスターンズの2つのヘッジファンドを破滅に追いやり、投資家たちは慌てふためいている。それから市場はダウジョーンズが、3桁上下動し て、躁鬱病になったようだ。それがここ二週間の例外ではなく、通常起きていることだ。

昨日のフランスの大銀行のBNPパリバによる声明は、3つのファンドを打ち切るというものだったが、どちらかといえばもっとも不吉なものだ。バリパが言うには、「ある市場での流動性の完全な消失」のために、打ち切りは避けられないと。つまり、買い手がいないと言うことだ。

流動性がなくなれば、僕が言ったように、債務不履行の連鎖反応が起きる。金融機関Aが保有する住宅ローン証券を売れなければ、金融機関Bに対する負債を支払うための現金化もできな い。そして金融機関Bも、金融機関Cへの支払いができなくなる。そして現金をもつものは、 黙り込む。なぜならローンをちゃんと支払ってくれるか、誰も信頼できなくなるからだ。そう して事態は悪化の一途をたどる。

流動性の危機は、本当に恐ろしいことになる。政策担当者も流動性の危機の前では、ほとんど何もできない。

連邦銀行は通常時は、金利を切り下げることで経済問題に対応する。昨日の朝、先物市場は連邦銀行が来月末までに100パーセント利下げをすることを示した。それは現金が不足している金融機関に資金を供給することにもなる。昨日、ヨーロッパ中央銀行は(ヨーロッパにおける連邦銀行の役割を果たすところだが)、金融機関に130億ドルを供給し、必要ならばどれだけ でも現金を供給するとした。連邦銀行も24億ドルを供給した。しかし流動性がなくなってしまえば、通常の政策ではほとんど効果がなくなってしまう。だれ もお金を借りなければ、お金を借りるコストを減らしたところで、貸し手にとってはなんの意味もない。現金が銀行の金庫に眠ってしまうのであれば、大量の現金を銀行が保有していることを保証してもなんの意味もない。

連邦銀行や、もっと重要なことに、政府の行政機関にとって、もし通常の政策が機能しなくなったら、危機をおさえこむためにできる他のもっと風変わりな手段もある。しかし、さまざまな理由で、とくに現政権の無能さの記録をみても、むしろそういった手段はとらない方がいいだろう。

この危機が、1998年のときのようにすぐに過ぎ去ることを期待しよう。でも僕は、期待していないけど。

一年前にこれだけ言い切るんだものなぁ。そして期待しない理由の根拠は、繰り返しの紹介になるけど、こちらの本の「日本の危機の詳しい分析」あたりからくるんですかね。




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