もしかして自分は何かを表現できるのではないかと思えるようになった。

好きな作家や感銘を受けた書物に関する、大人の感想文を綴ったもの。文芸批評家の物まねがしたいのですが。

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

『実習生』8 ~ 嫉妬 ~

2016-10-31 00:13:13 | 日記
 実習は1週間を終えようとしていた、ある朝方、職員朝礼を終えて校長室に戻り、新聞を読んでいた蓮見のところに、ノックをして教頭の正田がやってきた。
「校長先生、すみません。ちょっと相談が…」
「何かね?職員朝礼の時に言えばよかったのに」
「はあ、それが。実は、教育実習生たちから相談がありまして」
「ほう、どんな?」
 蓮見は関心をもったような印象をもたれぬよう、新聞に目をやりながら、無機質な返答をした。
「実は実習生三人で飲み会をやりたいと。そこで自分たちが直接お世話になっている指導教員の先生方を誘っていいかどうか、という話なんですが…いかがでしょうか?」
「教頭さん、教育実習生の反省会は最終週の金曜日に行うことが一応の原則だが、何と答えたんだね?」
「はあ、まず校長先生の許可が必要だから、僕の方で聞いてみようと…そう三人には言ってあります。で、今相談しているわけですが。」
「それは原則と違うじゃないか。なんでダメだと言わなかった?」
「どうしてもお願いしますと懇願するものですから、それならばと、こうやって相談しております」
「前にも言ったはずだが、他の教育事務所管内の中学校で、教育実習生との懇親会でセクハラ事件が起こったばかりだ。君も県教委からの通知文はちゃんと読んでいるのだろ!?」
 蓮見の語気が荒くなった。教頭の正田は多少怖気づいたように恐縮した態度となる。
「で、どっちなんだ?飲み会をやろうといってるのは。数学の方か?それとも保健体育か?私が直接指導するから」
 蓮見の表情はかなり険悪なものとなっていた。その表情にますます正田は怯んだ。
「いや、それが言い出したのは、国語の神崎さんです。どうやら神崎さんが他の二人を焚きつけているみたいなのですが?私に相談に来たのも神崎さんです」
「あの女の子がか?ふん、飲み会よりももっと大切なことがあるだろが。実習は遊びではない」
「校長先生のおっしゃる通りです。神埼をここに呼びますか。ご指導お願いします」
 蓮見はちょっと考えた。ここに彼女を呼びつけて指導することは、蓮見の個人的な心情にそぐわなかった。心情というよりも欲望のようなものだった。
「分かった、もういい。今回だけは認める。指導教員の連中にはくれぐれも誤解を受けぬように、事前に釘を刺しておいてくれ」
「はい。この席には私も行きますので、しっかり見張っておきます。ただ、そのようなご心配は無用かと思いますが」
「いや、私は養護教諭の松嶋から聞いたんだが、国語の指導教員の海田が、毎日国語科の資料室でやたら熱心に神崎を指導しているらしいじゃないか」
「はあ、ちょっとそのような噂が、職員室の女性教諭の間で話題になっているようですが。これは神崎さんからの強い希望で、毎晩遅くまで資料室で、海田先生が学習指導案の書き方の指導をしているという話です。神崎さんからそう聞きました。私も生徒たちの間で噂にでもなったらまずいと思い神崎本人に聞いてみたのですが」
「それならいいが、海田はバツイチの33歳だ。もともと同じ職場の女教師と不倫して女房から三下り半を突き付けられたような男だ。信用できん」
「しっかり監視しておきます。ご心配なく」
 素っ気なく答えた正田は、この話題を早く切り上げ、職員室に戻りたいような態度をとった。
「で、君は自分から行くといったのかね」
「いえ、神崎さんから教頭先生もぜひ来てください、と言われまして」
 神崎早紀は教頭まで誘っていたことは、少なからず蓮見に不快感をもたせた。
「神崎が君にまで…そうか」
「それで私は神崎さんに、校長先生も誘ったら飲み会は大丈夫だよと言ったのですが。どうも校長先生をお誘いするのはあまりも僭越というものですから」
「それはそうだろな、女子大生の分際で実習校の校長に飲み会に来てください、と誘うのは。僭越ではなくて失礼というものだ」
「はあ、それで遠慮したとのことでした。 そろそろ職員室に戻ります。保護者から電話をもらう約束となっておりますので」
 蓮見は俯いたまま、右手を職員室の方を指し、速やかに校長室からの退出を命ずるような仕草をした。
正田が席を立ったのち、蓮見は校長室の中に置いてあるソファーセットの椅子に座り、ぼんやりと中空を見つめた。見つめたといっても、見つめる対象物があったあったわけではない。そしてみるみる表情を険しくしていき、くそっと小さく叫んだ。
 蓮見は頭の中で、思い浮かぶだけの怒りの叫びを、次々に無言で発してた。
(「言っておくが、あの神崎という女は俺の女だ」)
(「あの神崎早紀という女のからだを俺は知り尽くしている。5年前から肉体関係があったのだ。確かに1年後には援助という関係はなくなったが。それでも神崎早紀は、俺が金で自由にした女だ」)
(「あの女に不埒なことをした教員は許さん。海田はきっと下心があるはずだ。あの女にだらしない教員が神崎早紀に触手を伸ばすようなことがあったらただではおかない。教員として一生、うだつの上がらない立場に追いやってやる。覚悟しておけ!」)
 蓮見は怒りが立ち昇っていくのを抑えようとし、天井に顔を向けて静かに目を閉じた。
… 神崎早紀の、17歳の神崎早紀の、裸の姿が脳裏に浮かぶ。オプションを頼むごとに、彼女は俺自身を口に咥えて、ぎこちないが丹念に、丹念に愛撫し続けた。一定の時間を過ぎると、あっけなく俺は果てた。次は俺のオプションを彼女に試す。俺も、丹念に、時間をかけて、じっくりと彼女の秘部を口で愛撫していく。何度もだ。彼女は恍惚感を味わいながら、俺の愛撫の回数と同じだけ、昇りつめた。何度も果てて動かなくなった彼女のからだに覆いかぶさる。そして静かに彼女の中に入っていく。快感の頂点を何度も味わった彼女のからだは微動だにしない。自分だけが腰を激しく揺さぶりながら、最後の仕上げをする。無防備に横たわった彼女のからだは、どんなに激しく突き上げても全く反応しないのに、俺自身を挟み込んだ、甘美な両壁は、無意識に締め付けていく。そして俺は、快感の極みの地点で果てていく。
ある時は2つのオプションを同時に行う。最初は嫌がる神崎早紀だったが、何度も強要するようになって、その危険な味わいに喜びを放出するようになった。彼女の下半身を責められながら、俺自身を口で愛撫するそのシチュエーションそのものにも彼女は興奮の度合いを高めていく。絶頂に達したときに、俺自身から一瞬唇を離し、興奮した声を上げるが、すぐさま俺のものを口唇から含み、吸い続ける。右手で上下する動きもいっそう速度を増す。そして、また俺は勢いよく果てる。一度の逢瀬で、何度俺は果てたのだろう。
 こんな深い肉体関係を結んだ女だ、神崎早紀は。たとえ今の立場でも関係ない。5年前の二人の関係を取り戻す。何があっても ……
 蓮見にはもはや自制心というものが喪失したかのような心理状態であった。





ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 『実習生』7 ~ 偏愛 ~ | トップ | 『実習生』9 ~ 敵愾 ~ »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。