中小零細ファミリー企業版 『長寿幸せ企業』の実践経営事典2017

『長寿幸せ企業』を目指す中小零細ファミリー企業経営者の社長就任から引退までの様々な迷いを解いてくれる「経営人生の参考書」

(5)戦術は部下に任せる

2016年10月17日 12時12分12秒 | 第1章 経営理念・行動規範のつくり方

第1章 経営理念・行動規範のつくり方

 (5)戦術は部下に任せる

 「戦術」とは、「戦略」を達成するための、最適の道具や手段・方法を選択することです。
 「戦術」のいちばんの目的は、それらを使って、決められた期限までに、マイルストーンごとの目標数字(売上高、粗利益高、営業利益高、事業数、社員数など)に到達することです。


 上図のスタート(現在地)から①の登山口(ゼロ地点)まで到達するためには、必要な装備や服装を決定し、交通手段も選択しなければなりません。この場合、なんでも選択できるのではなく、参加メンバーの技術や体力も考慮しなければなりませんし、使える資金も上手に配分しなければなりません。


 前図で「第1期中期経営戦略」は既にマイルストーン①(登山口)として明確になっています。ここまで3年計画で到達するのですが、1年毎にたてるのが「短期経営計画」でしたね。 1年目のが計画通りにいっていればいいのですが、当初の戦術では3年目の到達期限から大幅に遅れる場合は、2年目の「短期戦術」においては、参加者のメンバーを変更したり、装備や服装、食料計画まで見直さなければならないかもしれません。

 「経営目標(ターゲット)」の戦略が決定したら、具体的なやり方を決めるのが「戦術」です。
 どのようにして達成するかをはっきりさせる「戦略」は、経営者の仕事「経営者専権事項」ですが、戦術は経営者が口出しせず、部下に任せる度量が必要です。


 松下幸之助や出光佐三1など名経営者と言われる人はこれが実にうまいですね。中小企業の経営者は「何処へ行くのか」だけではなく「どのようにしてそこへ行く」のかまで自分で考え、自分でやろうとしてしまいます。ですから人が育たないのです。

 

 幸之助翕は部下に対してこう言っています。

「戦術は君の自己流で自由にやったらいい。そのほうが君の個性が出てきて面白い。しかし、経営理念や哲学は違うで。経営理念や経営哲学をどこに求めるかで起業の命運が決まる。社長の人生観、企業観、事業感が問われるのや。」2

 

 「出光レポート2014」の「創業者のことば」で出光佐三は「独立自治」についてつぎのように言っています。

一、仕事の上においても、私のみが独立しているのではありません。店員各自が、その持ち場持ち場において独立しているのであります。換言すれば、自己の仕事の範囲では全責任を負い、完全に事務を遂行すべきであります。
一、私生活に公生活に独立自治の大精神を体得し、ここに鍛錬強化された店員が、店全体の方針の下に一糸乱れず一致結束し、団体的総力を発揮するのが、すなわち出光商会であります。

 第(6)節で出光グループの「行動指針」については再度取り上げますが、そのなかの「自己完結」に「任された仕事は、自らの責任と誇りにおいてやり遂げる。」とあります。つまり、つまり、経営理念の下に「戦略」を決定し、その「戦略」の下に、独立自治の精神で各課、各店が知恵を搾り出して「戦術」を考え、「ここに鍛錬強化された店員が、店全体の方針の下に一糸乱れず一致結束し、団体的総力を発揮する」ということです。

 また、名経営コンサルタントといわれた一倉定3はこう記しています。

 [社員というものは、何か命ぜられると、二言目には「できません」と言う人種である。
 これに負けたら、企業間競争に負けるのだ。あくまでも要求し続けなければならないのである。

 このときに気をつけなければならないのは「できません」と言われた時に「そんなことはない、できる筈だ」と言ってはならないということである。できるかできないかは主観の問題であって、勝負は絶対につかないからだ。

 社員は「できない」と思っているのに「できる筈だ」といっても始まらないのである。社員が「できない」というのは、実は責任逃れの伏線なのである。
つまり、社長に命ぜられたことがもしできなかった時に「だから、あの時できないと申し上げた筈です」と言うためである。

 だから、初めての時には「できるかできないかは、やってみなければ分からないではないか」という説得が肝要である。もしも、以前に試してみてできなかったことをやらせる時には「もう一度新しい工夫をしてみよ」と言ってやらせるのである。

 もう一つ、社員が社長の命令をはねつける伝家の宝刀がある。それは「ムリですよ」という言葉である。これに対しても「ムリではない」というのは、明らかに社長の負けである。ムリかムリでないかは完全な水かけ論であって、決着は絶対につかないからである。

 社員は伝家の宝刀を引き抜いて身構えているのだから、まずこの宝刀を叩き落とさなければならない。これは以外と簡単である。「そうだ、社長もムリと思う」と言えばよい。社員の主張を社長が認めてしまえば、社員はもう何もいうことがなくなるのだ。宝刀を叩き落としたら、今度は、こちらから切り込むのである。「社長もムリを承知で頼むのだ。やってくれ」と。

 これで完全に社長の勝ちである。社長にムリを承知で頼まれたら、もう何も言わずにやってみる外はないのだ。社員が「ムリですよ」というのは、これまた、できなかった時の予防線なのである。それを「ムリではない」といえば、それは「できて当たり前、できなければボンクラだ」といっているのに等しいのである。それでは社員はたまったものではない。「ムリだ」という主張を変えるはずがないのだ。

 「ムリだ」と社長が認めるときには、できなくて当たり前、できたら手柄になるのであるから社員としては精一杯やってみようという気になるのである。ここのところの「心理」を知らなければ、人を使うことはできないと心得ておくべきであろう。]

 経営者が予算を作成する際、「経営目標(ターゲット)」から各事業ごとに中期、短期の戦略を説明し、それをどのような「戦術」で達成するのかを部下に考えさせ、上がってきた数字を元に再度、短期戦略→中期戦略→長期戦略→「経営目標(ターゲット)」→「目的地(ビジョン)」につながるかをを確認しなければなりません。
 その「戦術」から上がってきた予算が戦略達成にかなわないようなら、再度、各責任者に「戦術」を練りなおして貰う必要があるのです。

 このように、使命やビジョンなど経営理念、戦略、戦術そして行動規範は、ばらばらで存在できるものではなく一体の身体、一本の樹木を構成するするものです。これを確立することができなければ、「長寿幸せ企業」はもとより、「優良企業」であり続けることも不可能なのです。

1出光商会創業者 

2木下親之 「松下幸之助 叱られ問答」 致知出版社 p95

3わが国における経営コンサルタントの第一人者といわれる 一倉定の社長学 第6巻 「内部体制の確立」より

 

次週は
(6)「信条」と「行動規範」は経営者と社員の行動の判断基準「モノサシ」
  企業の不祥事は、「信条」と「行動規範」で防げる
です。

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