喫煙を考える

「喫煙」という行為について共に考えましょう。
タバコで苦しむのは、喫煙者本人だけではありません。

第11回日本禁煙学会学術総会に参加しました

2017-11-06 15:54:03 | 日記

11月4日(土)・5日(日)に京都テルサで開催された
第11回日本禁煙学会学術総会に参加しました。
昨年の第10回では、実行委員としてもお手伝いし
シンポジウムでの発表もあり、売店で本の販売もしました
ので
怒涛のような準備期間を過ごしました(円形脱毛症になってしまいました)。
今年は何のお役もないので、思う存分情報収集に専念しました。

こちらは、会場の京都テルサ。
プログラムの選択によっては、東館と西館を行ったり来たりしますが
会場は設備も環境も大変整っていて、素晴らしい施設でした。
学術総会準備に携わられた京都・滋賀の皆さん、ありがとうございました。


シンポジウムなどの会場が5つに分かれていたため
時間帯によっては5つのプログラムが同時進行しており
拝聴したい発表がそれぞれ違う会場となると、どれを選択するのか非常に苦しみました。
そのなかで、日本禁煙学会として、またかなり多くの発表者が
加熱式タバコを含む電子新型タバコに対して危惧を覚え
新型タバコによる影響がはっきりしていない段階であるにも関わらず
タバコ会社の巧妙な販売活動によって、日本国内において急速に普及していることに
早急な規制や対策を考えなければならないと発言されていました。
新型タバコに関するセッションでは、多くの質問が飛び交い
参加者の皆さんも調査資料が乏しいなかでの現段階での対策について
いろいろと模索されている様子や、警告を発しておられる様子が窺えました。


私が、自身の経験上興味深く拝聴した発表は
一般口演2『喫煙対策と新型タバコ』での
森田純二氏「禁煙外来にて遭遇した特異的なCT症例について」です。
私の父は特発性間質性肺炎(特発性肺線維症:CPFE)とCOPDを併発し
タバコを吸いこめなくなったことで総合病院を受診したところ
それらの病気に罹患していることがわかりました。
森田氏は、禁煙外来を受診した患者に対し
胸部X線写真ではチェックできない早期のCOPDを、CT検査によって診断し
早期診断・早期治療が可能になることを、画像症例を紹介しながらお話しされました。
X線写真では、肺がそれほど損傷を受けているようには見られない患者でも
CT撮影を行うと肺がスカスカで、40歳代という比較的若年者でも罹患が稀ではなく
CPFEとCOPDの併発患者のCT画像は、まさに父の画像を見ているようでした。
森田氏は、COPDの認知度を高めようと言われて久しいものの
まだまだ認知度が高まっているとは言えないとしたうえで
禁煙外来の受診者にスパイロ検査による閉塞パターンのチェックとCT撮影を行うことで
COPDの早期治療を開始し、CPFEの拾い上げにも寄与することを強調されていました。
私は、父の闘病の苦しさを目の当たりにしているので
禁煙外来を受診された方が、ただタバコをやめられればそれで良しとするのではなく
長年の喫煙によって傷つけられた度合いをチェックすることができれば
その後の生活の質を著しく低下させるようなことがないのではないかと考えています。
森田氏の提言が、多くの医療機関で行われることを期待しています。


また、シンポジウムⅣ『SNSを活用した禁煙活動』では
「新聞報道からみる「受動喫煙対策」へのまなざし」を発表された
ハフポスト日本版記者の錦光山雅子氏と
「マスメディアとSNSの関わり」を発表された
毎日放送ニュースセンター報道部長の奥田信幸氏には
発表内容にも、質問に対する回答にも、考えさせられるものがありました。
両者とも、タバコ問題を取り上げることに対して
タバコ企業、もしくは所属企業の上層部から圧力を受けたことはなく
タバコ会社の広告費との兼ね合いで、これまでタバコ問題が取り上げられなかったのでもなく
あくまで話題性の問題であるとしたことです。
つまり、タバコ問題単体では「視聴者や購読者の食いつきが悪い」のだそうです。
オリンピックと絡める、神奈川県条例と絡めるなどしないと話題性に欠け
タバコのみの記事では耳目を集めることができないということでした。
ただ、錦光山氏によると、受動喫煙に関する初記事を執筆された2012年当時は
通常であれば取材から1か月ほどで記事掲載になるところ
社内で揉めて、掲載まで3、4か月かかったそうです。
何を揉めるかというと、タバコの記事を掲載することによって
「喫煙者が傷つくのではないか」とか「喫煙者の攻撃を受けるのではないか」
ということを懸念して、上司とも相当話し合いを重ねたとのことでした。
2012年から5年を経た現在では、かなり日本でもタバコ問題に対しての潮流が変化し
記事を書けば掲載されるようになり、大手新聞社からネットニュースの記者になったことで
さらに自由度が増したというお話もされていました。


奥田氏は、タバコ問題はたとえどんなに正しいことを言っても
それを視聴者が納得して受け入れるかというとそうではないので
皆が納得してもらえるようなところを探るということが大切で
正しいことを伝えるだけが報道の仕方ではないと考えている、とのお話がありました。
奥田氏の発表に対する私の誤解かもしれませんが、大いに違和感を覚えました。
タバコ問題は公衆衛生上の問題であり
個人の価値観や自由を盾にして判断するような性質のものではありません。
アスベストや有機水銀などの有害物質は
「便利だから」とか「安価だから」とかの理由で使用することはできないですし
伝染病や食中毒に罹れば
「熱がないから大丈夫」とか「休めないから」とか「行きたいから」といって
隔離病棟から出ることや、学校や職場などに行くことが出来ないのと同じことです。
これらの有害物質や伝染病などに対する市民の考え方は
医師や自治体の啓発をはじめ、正しい知識が報道されてきたことにより確立されてきました。
しかし、初期段階で多くの市民の理解や納得が得られない時点における対応として
規制されなくとも問題が生じないかというとそのようなことはなく
問題を放置しておくと公衆衛生上の大問題が生じ
多くの人々の健康と命が脅かされることが判明しているため
理解や納得以前に規制が必要であり、速やかに実行されてきたものなのです。
タバコ問題も同様に、これ以上の犠牲者を生み出さないための対策が必要です。
タバコ問題に関して報道に求められていることは
「正しいことを報道しても受け入れてもらえないから皆が納得するところを探る」のではなく
「正しいことを、正しいこととしてまず伝える」ことであり、その次の段階で
「正しいことを正しいこととして皆が納得するように繰り返し伝える」ことではないでしょうか。
「正しいことを正しいこととして」受け入れられない側に問題があるとは思いますが
受け入れてもらえるような方法やアプローチの仕方を、伝える側は工夫しなければなりません。
多くの皆さんにお話しする機会や、書いたものでお伝えできる機会を与えられた私も
肝に銘じなければならないと、強く感じた出来事でした。


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