Kitten Heart BLOG -Yunaとザスパと時々放浪-

『きとぅん・はーと』でも、小説を公開している創作ファンタジー小説や、普段の日常などの話を書いているザスパサポーターです。

【小説】「パスク、あの場所で待っている」第29話

2016年12月15日 14時23分56秒 | 小説「パスク」(連載中)
 ナランが選んだのは、ほぼ家の前。繁華街の通りで、綺麗に石畳が敷き詰められている。
一般市民を巻き込みたくないので、朝靄が立ち込める早朝を選んだ。冷え込むことはなく、日中になれば、気温も湿度もあがってしまい戦いづらい。この方がちょうどいいだろう。
 ナランは対戦経験もあるので、だいたい手の内は分かっている。それは向こうも同じことが言える。
「今回は、勝たせていただきます」
 自信ありげに構えたのは、かなり重量がありそうな大きな剣だった。細長く伸びた剣はナラン本人の背丈を超えていた。その大きさ故に基本は両手持ちだが、時折片手で持ち上げるので、そこまで重くないのかもしれない。
 オレの愛剣も長さはあり、重量もそれなりある。遜色なく戦えるだろう。
 風もなく静かだった。お互い構えたまま、しばらく静止した。
「いくぜっ!」
 ナランが蹴り出したのをみて、こちらも蹴り出し剣同士がぶつかり合い高い金属音が鳴り響いた。
 しばらく様子見といったところで、なかなか心中を見せない。
 一度間合いを開けて、離れたところで見合った。仕掛けてくる雰囲気はなかった。それはそうだろう。実力に差がほぼなく、持久戦になることは見えていた。だからこそ、お互いスキを狙っている。
「来ないなら、こっちから行くぞ!」
 じれったい空気感に耐えられず、蹴り出した。一瞬で間合いを詰め、振り抜いた。寸前のところで、交わされた。そして、また間合いを開けられた。
 オレも一気に詰める真似はしなかった。序盤から体力を無駄に消費したくない。それこそ狙い通りになってしまい、戦況を悪化されるだけだ。
「勝つって宣言した割には、随分と消極的だな」
「ここから……ですよ」
 やや不敵な笑みを浮かべる。
「じゃあ、見せてもらおうか!」
 右足を強く蹴り出し、ナランに向かう。乾いた石畳の上だから滑らず、かなり加速できる。勢いを殺さず、振りかざす。案の定、交わされた。わかっていた、どうせ避けるって。振り戻す力で、ナランに再び仕掛けた。
「……うっ」
 今度は避けきれず、胸元をかすめた。その軌道がナランの服に刻まれ、捲れ落ちていた。
「積極的に来ないからだよ」
 しかし、今のかすめただけ。追い詰めるには至っていない。
「では、本気を出しますか」
 それ、前に誰かが言ってきたな……。しかも、蓋名島出身で。
 今度はナランから向かってきた。小細工なんてせず、愛剣で受け流した。すぐさま切り替えて、再び斬りかかってきた。
 予想通りの消耗戦に移り変わっていった。これといった戦略があるわけではない。唯一の作戦は、いかに体力を維持できるか……。それくらいしかないだろう。
 それはナランも同様に見えた。できるだけ自分は使わず、相手を浪費させようと最小限で攻撃を図ってきた。
 力もお互い減り、限界が近づき始めていた。序盤、消極的だったナランが力を残した結果、押されてきてしまっていた。状況打開しようとしたが力も残されたいない。
 追い打ちをかけるように仕掛けられたとき、石畳の僅かな段差に足をかけられ、バランスを失った。
「そろそろ決着をつけさせてもらいますか!」
 ヤバい……。


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