Kitten Heart BLOG -Yunaとザスパと時々放浪-

『きとぅん・はーと』でも、小説を公開している創作ファンタジー小説や、普段の日常などの話を書いているザスパサポーターです。

【小説】「パスク、あの場所で待っている」第31話

2017年01月23日 00時05分00秒 | 小説「パスク」(連載中)
 ナランと別れてから、更に西へと旅路を歩んだ。蓋名島を離れて、別の島に渡り歩いたが、成果を上げることはおろか、候補者を見つけ出せずにいた。得るものがなく、泣く泣く引き返すことにした。
 行きとは違うルートで進んでいたが、行くつもりがなかった北の海岸線まで出てしまった。潮混じりの冷たい風に当たりながらも、対戦相手を探し回った。結局は見付けずにいて、内陸の方へ逃れた。

 夜遅くまで歩き果てて、ここら辺で野宿することにした。あと一日あれば家に着くので、ここは節約しようと考えた。
 野宿も一苦労である。大概は安全な宿を探す。一般市民を巻き込んではいけないとあり、対戦を申し込まれることはあっても、奇襲をかけてくることはない。今夜は宿までたどり着けなく、ちょうど古びた小屋があり、拝借することにした。

 日の出前に、なんとなく目覚めた。日が上がってくると居場所を特定されて、奇襲を受けかねない。早めに動かないと……!
 この辺りは山々に囲まれた土地柄なのか、朝靄がかかっており遠くの方までは見通せなかった
 数メートル先すら見えない靄を用心しながら、かいくぐった。こういう時こそ、襲われやすい。いつでも戦闘態勢に入れるように右手は愛剣に手をかけていた。
 徐々に辺りが晴れてくると、平屋建ての民家が建ち並ぶ街が見えてきた。近づいて見ると人だかりが何かを待つように集まっていた。それが自分だとは気づかなかった。
「やあ、君がパスクさんかい?」
 自慢げに、なびかせていた金色の長髪を掻き分けていた。その男を取り囲むように若い女性が集まるのも、うなずけるルックスだった。
 そして、オレの名前を呼んできて、味方だった試しがない。特に選考会中なんて。
「だれだよ、お前」
 すぐにも愛剣を引き抜けるようにしつつも、相手の出方を見極めていた。
「僕は、ピーノ・リブロ・モンタニャ・エレガンシアだよ」
「……長いな。ピーノ……なんだよ?」
「ピーノで構わないよ」
 だったら、そう言えよ。
「だいたいに、オレに何の用だ?」
「決まっているじゃないか。君を倒すためだよ」
 いかにも余裕がありそうで、人を見下したしゃべり方もそうだが、風上に立つピーノから甘い香水が鼻を刺激して、余計不愉快に感じる。
「そういって、泣き面かいて帰っても知らん」
「それはどうかな? 君がそうなるんじゃないかな」
 これは挑発だ。簡単には乗らない。
「初対戦にしては、随分と余裕があるな」
「確かに、君とは初めてだ。けどね、いろいろ情報は掴んでいるからね」
 ガセネタばかり集めて、相手を動揺させる作戦なんだろう。
「せっかく集めても、生かせないと意味はないよな!」
「だったら、試してみます。一切手加減しませんよ」
「ああ! その黄色い歓声、悲鳴に変えてやるよ!」
「それは無理だね。だって君は……僕との相性が悪すぎるから」


≪ 第30話-[目次]-第32話 ≫
------------------------------

↓今後の展開に期待を込めて!
にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2017年開幕カード決定! | トップ | 【小説】「パスク、あの場所... »

コメントを投稿