天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

馳星周の沖縄 その2

2017-02-12 06:24:16 | 



馳星周『弥勒世』(2008/小学館)。
伊波尚友にくっついた美女、照屋仁美。
比嘉政信にくっついた美少女、當銘愛子。
恋や性愛といった要素をどう処理するのか読者は中盤で惑う。つまり主人公の二人の男にとって目的遂行のために女は邪魔でしかない、という流れの物語である。
けれど二人ともあまりにいい女で一時愛欲に溺れる。それがこの作品の唯一のオアシスか…。

二人とも孤児院育ちだが仁美は明日を信じられる向日性を持つが愛子は憎しみの塊。愛子が白人兵の犠牲になって死に、その仇を討とうと姉貴分の仁美が自分本来の道を踏み外して破滅する。
女二人が消えてから物語は暴力一途に加速する。

政信は尚友を「無神論者にして、アナーキスト、皮肉屋、そして、究極のロマンチスト」と評するが、究極のロマンチストであるのは政信も一緒。
さらにいえば、二人と運命を共にするヤクザの親分を設定したことが馳星周の技量といえる。
一般の人をいじめて収奪するのが仕事のヤクザを青っぽいアメリカ基地ゲリラ闘争に使う発想には驚いた。
これぞ究極の男のロマンである。
ヤクザの親分と孤児院育ちのはずれた青年という取合わせで行儀のいい基地反対運動より暴力を謳歌する。

馳星周の終盤の筆致はいつも密度を増すのだが本作品もまるで氷壁の中を疾走するボブスレーのように昂揚して死へ突っ込んで行く。

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沖縄は歌って踊ってすべてを忘れて何も変わらない、と作者は嘆くのであるが当地への思い込みは使った沖縄言葉の多さに表れている。
以下の本書に出たウチナーグチ(沖縄言葉)を示す。

「ちゅらかーぎーのほーみーいじってた方が楽しいぜ」
ちゅらかーぎー=美人
ほーみー=女陰

「ぬーいんちょんが。わってぇ全軍労やん」
なにを抜かしてる、俺たちは全軍労だ

「ちゅーやうみさちょーん」
今日も海が咲いてるねん

じりぐわ=娼婦
やなわらび=悪ガキ
アシバー=ヤクザ
ふりむん=愚か者、狂人 「悲しいふりむん」
どぅし=友達
毛遊び=性の宴→女遊び
まぶい=魂
まぶいぐみ(魂込み)=落とした魂を元に戻す
ブッシュマスター=照屋に出入りする黒人兵
政ぐわー=政ちゃん
ちばりよー=頑張れ
しらにくさん=憎い
アメリカーばったくるせ=アメリカ人を叩き殺せ
しなさりんどー=死なせるぞ
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