天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

季語は四番打者である

2017-08-25 00:56:07 | 俳句

「雪・月・花」のオーラを放った永遠の四番打者、長嶋茂雄と王貞治


季語は四番打者である。四番打者にバントをさせるのは高校野球までである。
プロ野球で四番打者にバントをさせるような監督はあり得ない。俳句で季語にバントをさせる行為とは、季語をぐだぐだ説明することをいう。

広島カープの鈴木誠也は若くして(23歳)みごとに四番を張っている。優秀な緒方監督はこの青年が今年カープを引っ張る四番打者足り得ることを見通し、老兵新井に替えて抜擢した。
鈴木に監督がサインを出すことはあるまい。
鈴木はただ自分の判断で打つだけある。
高校野球では四番打者もしゅっちゅうベンチを見て指示を仰いでいるがそれは季語が季語として活躍していないこと。季語が十全に機能していない俳句ということになる。
プロ野球の四番打者に監督から指示がでることはないし熟練者は季語の説明はしない。

俳句の初心者はまったく効かない季語をつけたりする。
わけを聞くと「そこにダリアが咲いていました」という。返す言葉がない。「だって見たんです」といわれると頭を抱えてしまう。
これは打者が「球が来たから打ったんです」というのに似ている。
一塁に走者がいるのに君は最初に来た外角低めのボールぎみのスライダーを打ってみすみすセカンドゴロにしてしまうのか。
そういう選手はすぐ試合に出られなくなるだろう。
同様にそのへんにある季語をつけてしまうような人に上達は期待できない。

四番打者のすごいところは相手投手が打ちやすいところへ投げるように追いこんでしまうことである。
誘いのボールに手を出さない。王選手がそうであった。打ちにくいボールはファウルする。相手投手を追いこんで甘く投げざるを得ない状況で来そうなコースと球種を待つ。ゆえにヒット確率が高まるのである。

季語もそのように追い込む感覚が必要である。
あり得ない季語を外す。何を外して何を残すかは季語をしゅっちゅう見てインプットしておくしかない。つまり歳時記を毎日必ず読むこと。
例句を読んで研究する。
例句の中にもその季語の王道から若干逸れているものもある。そういった違和感のある句も意識することが季語の理解を深める。

四番打者であるが「つなぎの四番」といわれた選手がいた。
ロッテのサブロー選手で、2005年8月13日のオリックス戦でプロ入り初の4番に抜擢され、2試合連続本塁打を放つなど31年ぶりのリーグ優勝・日本一に貢献。
シーズンを通して107試合に出場。規定打席には届かなかったが、打率.313、14HR、50打点といずれも自己最高の成績を残し、「まったく新しいタイプの4番打者、つなぎの4番」と評された。
サブロー選手には申し訳ないが、かつての巨人・松井秀喜、広島・山本浩司、中日・落合博満などと比べると四番の威厳がほとんどない。
季語の後にそれをつなぐ言葉などない。季語はそのオーラを十全に発揮してポイントをゲットする役目、一句を決める立場にある。

俳句作者は季語の威厳を考えるべきである。
花の好きな人がガーベラだのマーガレットなどを季語だから使いましたという。それはまあいいのだが、それより先に、桜や梅や菊の句を書いたことがあるか問いたい。
NHK学園の添削をしていたとき11月になると最近はやりの「皇帝ダリア」を書く受講者が相次いで困惑した。丈が高くきれいということを書いても詩にならないし、季語としての権威がきわめて乏しいことを意識してほしい。
季語には威厳の序列があるのである。
本物の季語にまず挑戦すべきなのだ。
桜、梅、菊といった季語は松井秀喜、山本浩司、落合博満に該当するゆるぎない本物の四番打者である。
ガーベラだのマーガレットなどはサブロー選手なのだ。季語の本格的な威厳がない。いわんや皇帝ダリアなど。
したがってそれに代わりクロッカスが来てもスイートピーが来ても一句は成り立ってしまうようなところがある。サブロー選手よりもっと長打力や率を打てる打者がいたならば彼が四番でなくてよかったのだ。

季語性が低い季語でもいちおう俳句になって人を楽しませることはできるだろうが、自分の代表句にはならないだろう。
季語を知るということは季語の序列を知るということになる。それは大きな視点でいうと日本を認識することになるだろう。われわれが祖先から受け継いできた季語というものの伝統と威厳とは何であるか、本来の価値とは何かを考え続けることが大事である。

プロ野球の四番打者で誰が好きだったか、また誰がもっとも偉大であったか。
そのように考える意識で季語というものを考え、季語の威厳の序列を考えてみることは優れた俳句をものすうえで必須の要件ではなかろうか。



夕べこの文章を書いた後、広島VS横浜20回戦を見たら、鈴木誠也が欠場していた。右脛骨内果剥離骨折で今シーズン絶望とか。真の四番になるのは難しい。それでも彼は四番打者と信じている
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