天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

いつき組の元気な方々と吟行

2017-06-19 03:26:19 | 俳句


当ブログの記事「俳句甲子園へ出場する選手諸君へ」(5月15日)を流用させてほしいというていねいな依頼が来た。その方は「俳句ポスト365」の掲示板の管理人、比々きであると名乗った。ぼくは進取の気性を持つ彼女に好感を持った。
「俳句ポスト365」は夏井いつきさんを組長と仰ぐ俳句愛好家たちの拠るサイトであり、その掲示板はきのう、江戸東京博物館吟行を伝えていた。
飛び入り参加した。


「それ行けミーハー吟行隊関東支部」の方々


参加予定の方々は、ぼくのほかに、
比々き、かま猫、かをり、あつちゃん、葉音、ひつじはねた、せり坊、よだか、はずきめいこ、小市、由野、莎草、ふぢこ、さとう菓子(いずれも敬称略)の15名である。
彼らは「それ行けミーハー吟行隊関東支部」、通称「それミー」と称して盛り上げている。
「鷹」で俳号らしい俳号を見て育ったぼくには彼らは名前からしてミーハーで慣れるのに時間がかかった。
鷹中央例会で「ジャスミン」と名乗った女性に主宰は「フランソワーズ・ジャスミンでもいいですから姓を用意してください」と伝えた。ぼくもそれを穏当な要求と思ったわけであり、ファーストネームだかセカンドネームだかわからぬ名前にかなりうろたえたのであった。
映画「スターウォーズ」に紛れ込んだような名前の方々の中でぼくはキョロキョロした。

江戸東京博物館ははじめて。
江戸時代の風俗を伝える絵や模型、写真やら道具や什器等がたくさん陳列されていた。
俳句を作るとなると生きたものがなくて困った。
竹皮を脱ぐ展示物すべて過去
とやったが現実に季語が見えない不誠実さが気になった。それで、

暗がりに味噌樽のある涼しさよ
地下室の帆船模型梅雨深し
梅雨深し時間とどまる地下の樽


と、穏当な路線に転じる。
博物館の最低面を「地下」ととらえ、そこにある樽と帆船模型に梅雨をつける発想しか思い浮ばなかった。
こういう実直な句は発想力を重要視するいつき組の方々にはもの足りぬだろうと思ったが、吟行はまず見ることの訓練でいい。
さいわい三句とも点が入ったのは僥倖であった。

展示物と現実の自分との距離感で苦しんだぼくは次のような句をみて唖然とした。
両面に文字書く手紙登山宿 はずきめいこ
海底に息を殺して夏の月 さとう菓子
松の廊下汗の滴る掃除かな 莎草

「文字書く手紙」は仰々しいので「両面に書いて手紙や登山宿」としたほうが収まりがいいのだが、これは坂本龍馬の手紙を見ての発想らしい。登山は雨で濡れて紙が使えなくなる、それで一枚の紙を使っているのはリアリティがある。
海底の句がなにをもとにしたか知らぬがなにか海女さんの絵でも見たのだろうか。
松の廊下はそこで働く下女でも夢想しているのか。刃傷松の廊下は血という連想がはたらくところを汗に転じて俳諧味があっておもしろい。
これらの句はいずれも作者が展示物の表現する内容の中に入り込んで主人公になっている。つまり自分中心の物語をこしらえている。
見た物をもとにした物語をこしらえていいのならぼくは20句でも書けていただろう。それは小説家が短篇をこしらえるのと一緒である。
まっとうな俳句はそうではないので苦労する。
鷹へ入ってまもなく<息白く交してともに住まぬ人>を飯島晴子に見せたところ、「これは物語です。俳句は物語ではありません」と拒否されたことが鮮烈によみがえった。
川柳にも吟行があっていつき組の方々と同様な発想で物語を作る。俳人が物語に入るのはかなり危ないと思った。

しかし言葉が機能して詩情のあるものは採った。
上記三句も採ったし次の句もいただいた。
文化住宅並ぶ六軒猫じやらし かをり
隈取りの役者肌脱ぐ中村座 かをり
夏暖簾透く碧眼のツーリスト よだかん
肖像のその小さきに恋螢 あっちゃん

かをりさんは物を押えることができるセンス、俳句の基礎がしっかりある。ほかの方々がややドアスイングで当れば儲けものといった感じの中で、彼女はボールを見てその芯を狙うコンパクトなスイングをする。写生しているので率を残せる打者という感じがした。
「夏暖簾透く」はまだ情景を描くに言葉がきちんと機能していないがほかの人が物語を書くなかで実直に写生したところを買った。
「恋螢」は情緒纏綿したところが傷で「肖像のその小さきに螢かな」とすべきだが、上五中七の表現に屈折の味を感じた。

題詠句で目についたのは以下の句。
風涼し碁敵の顔赤くなる 小市
神主がまずはくぐれる茅の輪かな 比々き
バナナ手に四方をワニに囲まるる かをり
白藍の日傘の下のローレライ ひつじはねた

ひつじはねた君は明治大学3年生。「白藍の日傘」という情感を持っているし弁も立つ。「ローレライ」が妖女のことか歌なのかあいまい。このへんをきちんと物として描くようになると飛躍しそう。

いつき組の方々が飛び入りのよそ者の意見を熱心に聴いたのには感動した。知識へ向かって砂漠が水を吸い込むような切実さがあった。

月涼し明日会ふ人の見目形

これはぼくの比々きさんへの挨拶であった。



1時半から6時半までカラオケルームで句会をする。一人約1000円で飲み物自由。
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7 コメント

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お世話になりました! (かま猫)
2017-06-19 05:52:30
天地わたる様
昨日はお忙しい中お運びくださりありがとうございました。
もっと偉そうな初老の紳士かと思いきや、お若く動作も言動もキビキビとされ親しみやすく安心致しました。
隊長、比々きさんのたゆまぬ探究心からわたるさんのような方が吟行参加してくださることに驚いています。
初心者の多い仲間で来年1月松山で開催の「まる裏俳句甲子園」に行こう!というコンセプトの中、比々きさんの提案であれこれ対策しているところですが今回のディベートの仕方、正にセンセーショナルでした。
個人としてはとにかく俳句の構造、季語の知識、文法を勉強して一から出直したいと猛反省しております。
本当に素晴らしい1日をありがとうございました!
ありがとうございました (小市)
2017-06-19 06:52:01
天地わたる様
いろいろなお話を聞かせていただき、とても勉強になりました。
耳が遠くて聞き漏らしてしまったこともあったと思いますが、「俳句とは何か」についてとても貴重なお話でした。
ありがとうございました。
勉強になりました (葉音)
2017-06-19 07:27:53
天地わたる様
昨日は楽しい1日をありがとうございました。
ややもすると馴れ合いの話し合いに流れがちになってしまう中、「取らなかった理由を積極的に言えるように」背筋がピンと伸びました。
「生活に関する季語は人間のみに使う」「俳句は物に託す詩である」「『かな』の前は切らない」「俳句では思ってはいけない」・・・
今まで、書物を通して、わたるさんのブログを通して、何回も目にしてきたはずなのに、改めてずしんと捉えることができました。
「俳句と楽しく付き合っていければそれでいい」そう思っている私ではあるのですが、俳句に失礼がないように、基本をしっかりと学んでさらに真摯に付き合っていきたいと思います。
素敵な刺激をありがとうございました。
またおいでください (かをり)
2017-06-19 13:18:26
天地わたるさま
昨日はお世話になりありがとうございました。
わたるさんがご参加下さり、忌憚のないそして分かりやすいご意見をいただけたことは、メンバーにとって大きな喜びだったことと思います。
また、過分なお褒めのお言葉をいただき、恐縮ですが励みになります。2年目で写生しか出来ないというのが実情かと思いますが…
それミーメンバーにはNHK入選者の方も多く、必ずやわたるさんを唸らせる句に出会えることと思います。これに懲りずにまたどうぞお運び下さい。
とり急ぎ御礼まで
ありがとうございました! (比々き)
2017-06-19 20:00:10
昨日は素人がメインの吟行句会に参加して頂き、貴重なご意見をありがとうございました。

目が覚める思いでした。

素人考えでやっていたので、俳句のルールも十分に知らず、闇雲に句らしきものを作って、どこがどうダメなのか、ある程度のことは言えても、肝腎要のことは誰もはっきり指摘できずにいました。

わたるさんの、ご自分の句にも突っ込みを入れる態度、そういう選者目線で自分の句を客観的に見れなければ、自分の句を改善しようがないこと、他の人の句を採るにしても、採らないにしても、「なぜ」採ったのか、「なぜ」採らなかったかを明確に言えなければ、せっかくの機会が互いの向上の機会にならず、ただの親睦会で終わってしまうこと、などなど、学ぶことが本当に多かったです。

いつき組は結社ではないので、個々人への組長の直接指導が無く、組長の天・地選と講評が手掛かり。
ベテランの人たちも「直接指導」を差し控える傾向があり、どちらかといえば模範を示して、そこから学ぶ「間接指導」、自学自習がメイン。

殆どの人が、なぜ自信作が採られず、自分ではさほどと思わない句を組長が採るのか、もやもやしたものを抱えながら手探りで作句を続けてきたので、「なぜ」こっちがよくて、「なぜ」こっちはダメなのか、俳句をよく知っている人の明晰な分析と助言に飢えていたのだと思います。

わたるさんには、これからもアドバイザーとして、時々活を入れに来ていただければ、と思っていますが、いかがでしょうか。

向上心と聴く耳だけはあるつもりの私たち。
いつでも大歓迎です!
ありがとうございました。 (莎草)
2017-06-19 21:20:16
天地わたる様

はじめてお会いして、伺うお話の数々に、知的好奇心が満たされていくことを実感し、とても刺激的な一日になりました。
また、己の傾向や、嵌ってしまっていた何かにも気づくことができ、目から鱗がいくつ落ちたことでしょう。
まだまだ学ばなくては!
またの機会がありますことを切に願っています。
ありがとうございました。
勉強になりました!!! (小川めぐる)
2017-06-21 01:04:04
天地わたるさん、はじめまして!
「ハイポ掲示板」から来ました、小川めぐると申します。
25日(日)に初めての吟行句会を迎える「それミー吟行隊・関西支部」にとって、大変重要な記事であると思い、記事をリンクさせて頂きました。
その時、何故かコメント欄が開かなかったので、挨拶が遅れましたことお詫びいたします。
まだまだ俳句の入り口でオロオロしているばかりの私たちですが、真の句友として絆が深まっていくことを期待しています。
本当に有難うございました!!

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