天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

舟を編む

2014-04-28 16:29:09 | 映画

馬締光也役の松田龍平

映画「舟を編む」をテレビで見た。
国語辞書の編纂という出版のなかで一番根気と忍耐力の要る地味な仕事。それに携わる対人関係の苦手な口べた編集者の予想外の恋物語をからめたセンスが光る。
まじめな編集者馬締光也に松田龍平、彼が恋心を寄せる林香具矢に宮あおいが扮する。

いろいろな賞を受賞した松田の訥々とした感じは秀逸。
この生真面目ぶりに配したチャラチャラした口八丁の同僚(オダギリジョー)の働きぶりもいい。
松田とオダギリは万歳のボケとツッコミのようにハーモニーを奏でる。
この二人はとにかくおかしい、おもしろい。笑って涙が出る。

一方、馬締と香具矢の関係は『大渡海』ふうにいえば「潤いのある間合」。
板前香具矢が料理をつくっては邪魔にならぬよう差し入れする間合にはうるうるする。

実は小生も出版社勤務時代にファッション用語関係の辞書をつくったことがある。
『大渡海』編集の終盤、時間に追われて主人公たちが職場に泊り込むシーンがある。小生は泊り込みはしなかったが毎夜タクシーで深夜帰宅したものだ。
それが1年ほど続いた。どの言葉を容れてどの言葉は容れないか…それは泥沼であがいているような感じだ。
映画では馬締が単語カードの散乱する水の中で溺れるシーンがあるが、あんなに透明感のある水ではないような気もする。

『大渡海』の発行の日、「明日から改定作業だ」という主人公のセリフが身にしみた。
はっきり言って辞書の初版は買うな、といわれている。間違いが相当あるからだ。
小生の辞書編集を振り返ってみて、あの辞書は今でも店頭にあるので、大きな声では言いにくいのであるが、「ああ辞書を世に出してしまった……」という思いである。あれから何回か改訂はしたのだろうな…改訂しない辞書は恥部をさらして大通りを歩くようなものである。
小生が関与した辞書がとても馬締たちほどのエネルギーを傾注したとは言い難い。
内心忸怩たる思いであった。
言葉に携わるのは恐ろしいことである。

できた辞書を使うのは楽しい。ミスを見つけるのも含めて。
要するに本の好きな人は編集者にはならぬほうがいい。できた本を読んでいるのがいい。
まあそれくらい本を、辞書をつくるのは骨が折れるのだ。


板前の香具矢役の宮あおいと松田龍平
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