天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

句会へ処女のようにびくびくと

2017-07-16 02:04:42 | 俳句
きのう田無公民館で行われたひこばえ句会にいつき組から5名を迎えた。
その中で、水間澱凡(みずま・おりぼん)さんがどんな人であるか最大の関心事であった。いつき組のどの方の俳号も意表を突くのであるが、特に「澱凡」を見てずーーっと考え込んでいた。

澱…液体の底に沈んだ滓。
凡…並み。凡人。

どう見ても二つの字はマイナス志向。
俳号にこんな後向きの命名をするだろうか。
ほかのいつき組の方の名前は突飛であるものも向日性の印象を与えるのに対してこの人は沈んでいる、どう見ても。

けれど掲示板に書いている文章の印象は暗くない。むしろおっちょこちょいの感じ。
特に、ひこばえ句会へ来るために「短冊」が必要と聞いて、あの6㎝×30㎝の固い、句を墨書するのを買い、「短冊が物凄く大きく見えます。これに自分の句を書くのかと思うと気おくれします」と能天気なことを書いている。
しかし句会が近づくにつれ不安が高じたのか、「何方か田無駅辺りでご一緒させて頂けないでしょうか?」と同行者を募っている。



彼女のいろいろなアンバランスがぼくの思考をあちこちへ走らせたのであった。
田無駅改札ではじめた会った澱凡さんは、「ぽちゃカワ」系であった。
渡辺直美と森公美子をミックスしたイメージで年齢は後者に近い。ルックスのことはさておき、ぼくは句会で本能的に自分の隣に彼女を置いた。
なにか爆弾のきなくささを感じていたのだろうか。

それは最初から炸裂した。
ハイ、ハイ、手を挙げて喋るのである。
どうやら黙ってはいられない性のようである。「活発な発言が句会をつくる」とブログに書いたから発言するなとはいえないがこのお喋りは句に関係するのか。はじめは危惧した。
しかしその発言は多少回り道をするがいいところへ着地する。
たとえば、<炎昼や檜一面天にまで>という句に対して、
ぼくは「一面」が檜と合わないと思っていると澱凡さんは「檜が切り倒されて切り口があらわになっているように見える」と「一面」を読む。この読みは奇抜だが結局この句の表現の粗さを突くことになる。
そういうふうにして眼前の句を裸にする読みは貴重なのである。
また、5点入った<靴幅の橋のたはみや糸蜻蛉>に、「板を渡した橋を感じる」という。ぼくは「靴幅の橋」が言葉の精度不足で見えにくい、吊橋なら吊橋といえばいいと思っていたので、澱凡さんの読みはぼくを支援した。
言葉数の多い人の話は急所を外すが澱凡さんはやがて核心へやって来る。

しかしそのうち喋らなくなった。
句会後にそのわけを聞くと「あの調子で私が全句に喋っていたら句会が時間内に終わらないと思った」というではないか。
空気を読んでいる。
心身に困難な時期があり3年ほど家人以外の人と会わない生活をしたという。この句会へ出て人と話すのは久しぶりとのこと。
喋って自分を思いきり発散させることと、喋ることで全体の中で自分が浮き上がることとの間の葛藤が彼女の心身に影響したのかもしれない。困難な人生を送ってきたかもしれないと思った。

ひこばえ句会に思わぬ論客が出来した。
合評を充実させる起爆剤になることは確かである。澱凡さんの影響か、今まで自分の採らなかった句に対して発言しなかったNさんが口を開いた。

発言して発散することで澱凡さん自身の健康状態が向上することと、発言が句会のほかの方々に寄与することとの調和をぼくが図ることになるだろう。それが主宰者の役目である。
ぼくが採った澱凡さんの句。

深大寺青葉時雨の匂う道 澱凡
気温三十五度ずんだ氷菓を立ち喰ひす 澱凡
薄暑光じゃぶじゃぶ池は明日から 澱凡

落ち着いた句、エネルギッシュな句、そして音感を楽しむ句と間口が広い。おもしろい人材がやって来た。

句会が始まると処女のようにびくびくしていなかった。
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1 コメント

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物怖じしない?句会処女σ(^_^;)? (水間澱凡(みずまおりぼん))
2017-07-16 18:43:17
天地わたるさん、ブログでご紹介をありがとうございました。
酒は飲んでいないのに、二日酔いの気分です。
「鷹」の皆様、会場のお世話をありがとうございました。
全部セッティングして頂いて、貴重な経験が出来ました。
ハイポの皆様、初めましての挨拶が済むともう私は、仲間入りしていました。
俳句という興味が、磁石みたいでした。
句会が始まり、私がドギマキしてなさそうでしたか?
その一番の理由は、
天地わたるさんが隣の席に呼んで下さったから(’-’*)♪でしょう。
そのあとは、「発言せよ」との、指令に集中しました。

それから、私は物怖じしないように見せるのが上手いのです。それあると思うのですが…。
エピソード1
結婚式の披露宴で入場の時。
夫は身長があまり高くないので、高島田の私より、低く成ります。
介添人に、五歩くらい前を見て屈み気味に歩くように言われました。
もともと姿勢は大変良く、目立つ程なのです。
私なりに、屈みました。
物凄く、ドキドキしていました。
しかし姑は、息子が小さく見えるが嫌だったのでしょうね。
「あんな!威張ったお嫁さん初めて見た!」と、言われました。
(;o;)(;o;)(;o;) ………(-_-;)
私の母は、「男物のハイヒール無いの?」と、
衣装室で聞いちゃうし(´д`|||)
本人は気にしてないから、(´~`)

因みにその頃の私は、渡辺直美&森公美子系の体型ではないです。
身長162センチ
体重47キロ
( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆

なので、体型の横幅で威張って見えた訳じゃないです。
エピソード2
同窓会の帰り道に酔っ払って、送ってもらいました。独りで帰れたけど…。
タクシーから降りる、
不意にキスされたときも!!!
内心ドッキドッキなのに、
「やだぁ、ずっと好きだったのぉ…、早く言ってくれたら良かったのにィ!?」
と、アホなことを口走り、物凄く、物凄く、大後悔しています。
今でも!

あぁ!また、自分話でしたσ(^_^;)?

私のイメージが、わたるさんのブログで決まると告知されて抵抗感半端ないですが…。
自分の事は分かりませんよね(^^)v

今後とも、呆れるほどの人材ですがどうぞ、よろしくおねがいします。

澱凡m(__)m

夫は、私の俳号を知りません。
句会で頂いた採点用紙?
を見せたら、
この「澱」の印は何だ?
と聞くので説明するのがめんどくさくなりました。
オモシロ夫婦話、山ほど有ります。

7月29日 袋回し
申し込みました。

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