杉原 桂@多摩ガーデンクリニック小児科ブログ

杉原 桂@多摩ガーデンクリニック小児科からの情報発信です\(^^)√
電話予約は042-357-3671です.

地震被災地での低体温症、水・感染症について

2011-03-17 | クリニック通信
日本登山医学会の増山医師より.

***************************

◎被災者の方へ低体温対策情報

日本登山医学会に所属する救急救命専門医・国際山岳認定医よ
り被災地の方へ向けた低体温対策の情報が発信されています。2005
年に発生したパキスタン地震では、避難している方々の多くが
低体温症により死亡しました。明日15日から気温も下がるので
、早めに対策と準備をしてください。室内にいても低体温症に
なる可能性もあります。

一般の人向け <避難場所での低体温症対策>
屋外に退避して救助を待っている方々、避難所でも十分な暖房
がなく寒冷環境にいらっしゃる方へ、低体温症にならないため
に、以下のような点に注意することをお勧めします。
○なぜ低体温症になるのか?
・ 低体温症は、体の外に奪われる熱と自分で産生する熱のバ
ランスで、奪われる熱が多いときに体温が維持できずに起こり
ます。従って、それほど寒くない環境でも、栄養が足りなかっ
たりすれば起こりますし、特に、お年寄りや小児などでは、起
こしやすいので注意が必要です。
○低体温症になりやすい人・なりやすい状態
・お年寄り、小児
・栄養不足や疲労
・水分不足 
・糖尿病、脳梗塞など神経の病気がある人
・怪我をしている人
○低体温症に気づくには?
手足が冷たくなったり、寒くて震えます。
体の中心の温度が35℃まで下がると低体温症ですが、震えは
中心の温度が37℃から始まり、体に警告サインを出します。
ここでのんびりしていると、本当に低体温症になります。震え
があるのは、熱を上げるエネルギーが残っている証拠です。こ
こで改善するのが一番安全で、早道です。
○低体温症の対応が遅れるわけは?
初期の低体温症は、心臓発作のように緊急性が高くないので、
もう少し・・と言ううちに、気づくと悪化してしまいます。
○体温測定は?
一般の体温計で体温を測っても低体温症の診断にはなりません

低体温症の体温は個人差がありますので、測定する必要はかな
らずしもありません。
とにかく、震えがあるか、意識がしっかりしているか、を確認
して下さい。
○震えが始まったら何をすればいいのか?
1。隔離  冷たいものからの接触をさけます。地面に敷物を
したり、風を除けたり、濡れた衣服は脱いで下さい。着替えが
無くても、濡れたものは脱いで、毛布などにくるまって下さい

2。カロリー補給  何よりカロリーで、体温を上げるエネル
ギーを補給することが大切です。
3。水分補給  体温が下がると利尿作用が働いたり、体内の
水分バランスが変化し、脱水になります。温かくなくてもいい
ですので、水分をとります。温かければ、さらに理想ですが、
まずは水分補給です。
4。保温・加温  体温を奪われないために、なるべく厚着を
して下さい。顔面・頚部・頭部からも熱の放散が大きいので、
帽子やマフラーなどで保温して下さい。毛布などにくるまる場
合は、一人でくるまるより2-3人でくるまった方が暖かいです
。特に、老人や小児など弱い人には、元気な人が寄り添って一
緒に包まれると保温効果があります。
屋外場合は、これ以上濡れないように、湿気から隔離できる衣
服やビニール素材などがあれば、くるまって下さい。震えがあ
る段階では、どんな温め方をしても大丈夫です。
○悪化のサインは?
震えがなくても低体温症になっていることもあります。
見当識障害(つじつまの合わないことを言う)、ふらつくなど
も、重症な低体温症の症状です。また、震えていた人が暖まら
ないまま震えがなくなって来るのは重症になっている証拠です

○震えがなくなったり、意識がもうろうとしてきたら?
緊急事態です。震えが止まってしまった低体温症は自分での回
復はできません。また、急速に悪化します。至急病院へ。でき
るだけ丁寧に扱って下さい。乱暴に扱うと、心臓が停止しかか
ることがあります。病院搬送が難しい場合は、丁寧に扱いなが
ら、保温につとめてください。
この場合の保温は、
1)上記の保温・温かい飲み物の摂取(むせないことを確認)
を徹底する。
2)ペットボトルなどに、お風呂の温度程度のお湯を入れて湯
たんぽを作り、脇の下・股の付け根・首の回りに当てる(42℃
を超えた湯たんぽは、長時間当てるとやけどをするので注意)


**************************

◎地震被災地で注意する水・感染症

登山医学会理事増山茂医師、堀井昌子医師からの提言

3月11日に東北地方を中心に発生した巨大地震は未曽有の災害
となった。震災後に発生する可能性のある感染症について簡単
に説明する。
地震や津波の直後は、外傷が問題となる。倒壊流出した家屋や
車両などによる。この傷口から侵入する感染症にまずは注意が
必要である。こうした感染症は傷をこまめに消毒すること、抗
菌薬で対処することで治療可能なものが多いが、「汚れた水」
しか得られないことも多いはずだ。完全な消毒は難しいという
前提で対処しよう。

「汚れた水」が明らかに生活排水を含んでいると思われるとき
は煮沸の手段がない限り飲まない。緊急避難的に化学的な消毒
の方法があり、手法としては、水1リットルに塩素剤(次亜塩
素酸ナトリウム6%の製品。「ピューラックス」)を3滴入れ
、よくかきまぜる。30分ほど放置してから使う。消毒した水は
その旨表示して飲料のみに使用する。ノロウイルスなどの感染
性胃腸炎に対する注意も大切です。

また、心配すべきは破傷風でありワクチンによる予防を要する
。大きな怪我を負った被災者は、救出後早めに医療機関で処置
を受けていただきたい。

震災後1週間程度してから発生するのが、インフルエンザや感
冒などの呼吸器感染症である。インフルエンザについては3月
になり流行が終息しつつあるが、避難所のように集団生活する
場所では新たな流行が発生する。とくに被災者は栄養状態の悪
化などで抵抗力が低下していることが多く、呼吸器感染症にか
かりやすい状態になっている。避難所では手洗いやウガイを励
行するとともに、マスクの着
用も必要に応じて実施すべきである。

この時期に発生するもう一つの感染症として経口感染症がある
。日本のように衛生環境が整備された国であっても、震災後に
は飲料水や食品が汚染されるなどして、食中毒や下痢症が多く
なる。とくにこの時期はノロウイルスが流行しやすい季節であ
り、水や食品は加熱したものを摂取した方がいいだろう。避難
所で飲食物を提供する自治体なども、この点には注意していた
だきたい。

震災後数カ月を経過した時点で流行する感染症として、発展途
上国では蚊に媒介されるマラリアやデング熱がある。これは、
水溜りで蚊が繁殖することに由来する。ただし、日本国内では
元々患者が少ないため、こうした昆虫媒介の感染症が震災後に
増加する可能性は低いと考える。なお、ゴミ処理の停滞でネズ
ミの数が増えると、それに媒介されるレプトスピラ症やハンタ
ウイルス感染症などが発生する可能性もある。いずれにしても
、震災後は衛生環境の整備に力を注ぐとともに、年単位にわた
りに感染症の発生を監視する必要があるだろう。

以上

最新の画像もっと見る

コメントを投稿