社会統計学論文ARCHIVES(人生という森の探索)

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松川七郎「ペティの経済学的統計学的方法の社会的基盤-その測量論を中心とする一考察-」有澤廣巳・宇野弘藏・向坂逸郎編『世界経済と日本経済(下)』岩波書店、1956年【その4】

2017-06-18 20:36:17 | 社会統計学・社会科学方法論アーカイブズ

松川七郎「ペティの経済学的統計学的方法の社会的基盤-その測量論を中心とする一考察-」有澤廣巳・宇野弘藏・向坂逸郎編『世界経済と日本経済-大内兵衛先生還暦記念論文集(下)』岩波書店、1956年【その4】

  共和国地価のアイルランドでペティが主宰した土地測量・没収地分配事業は、クロムウェルによるアイルランド征服と土地収奪と直結している。このクロムウェルの政策は、12世紀以来の絶対主義国家の対アイルランド植民政策を承継し、新しい社会的基盤で完成させるものであった。具体的にはアイルランドにおける反徒の土地没収、イングランド人新教徒の移住によるヨーマンリの創設である。しかし、クロムウェルやアイルトン将軍の麾下の将兵として反乱鎮圧に従軍した独立社会教徒に支払われるべき給与は反徒からの没収地で贖う措置がとられた。反乱鎮圧のための軍資金を政府に前貸したロンドンの投機者も、反徒からの没収地で政府債務の償還をうけることになっていた。このためにアイルランド王国の不動産の大規模な登記制度が要請され、ペティはこの仕事(アイルランド王国の財産[土地]の計測と評価、償還の実施[没収地の分配])を委託された。ペティはオックスフォード大学における解剖学の正教授をやめ、この仕事に4年間従事した。それは自然研究の方法を経験的実験哲学に基づいて社会諸科学の研究に適用すべきことを推奨したF.ベーコンの教えにも従うことであった。

  ペティの土地測量は、実測してその結果を地図の形にlaying downするというもので、Down survey と名付けられている。この調査には約1000人の兵士が使役され、測量器具・使用に徹底した分業の原理を適用するという大規模なものであったが、測量実施上の最大の困難は土地の良否の識別、その結果に貨幣表現を与え、地価を算定することであった。実際のところはきわめて恣意的な方法で行われた、とある。Down surveyおよび没収地分配事業は当初の目的をそのまま成就することはできなかったが、アイルトンにおける近代的土地所有制度の大規模な創設の基礎的前提をなす事業として、基本的にはその目標を達成した。そしてペティはこの事業を担当するという社会的実験を行うことで、自然研究の方法により社会的現象の解明に拡充した。その際に彼が経験的実験哲学を基調とした「自然体」に関する科学(数学・幾何学・解剖学)は、アイルランドという「政治体」をくぐることでpolitical な性格をもつようになり、後年の政治算術に発展する契機となった。(続く)

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