社会統計学論文ARCHIVES(人生という森の探索)

社会統計学に関する論文を要約し、紹介します。
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ルイ・マル監督「恋人たち(Les Amantes)」(フランス、1958年)

2017-07-15 21:27:09 | 映画

    

 とかく、人生は不可解なことがある。何が起るか分からない。女と男の関係はなおさらである。一人の青年との出会いから結婚して八年、倦怠期にある三十歳の人妻ジャンヌ・トウルニエ(ジャンヌ・モロー)の生活が思わぬ方向へ進む。愛が仕掛けたその顛末を、女性の心の動きと行動で表現した異色の作品。

 ジャンヌは夫アンリ(アラン・キュニー)、娘エレーヌとディジョンの田舎に住んでいた。アンリはブルゴーニュの地方新聞社の社主で、多忙。夫の勧めもあって、彼女は月にニ度、パリの幼な友達マギー(ジュディイト・マーダル)を訪ね、大都会の独特の雰囲気を楽しんでいた。パリ滞在のおり、ジャンヌは社交界の常連であるポロの選手ラウル・フロレス(ホセーリ・ド・ヴィラロンガ)との逢瀬も楽しむようになった。夫には相手にされなかったが、彼女はいつしかそれがひとつの解放感になっていた。パリでの滞在は頻繁になり、滞在期間は長くなっていた。ジャンヌは、ラウルのことを夫には友達マギーの恋人だと偽り、とても優しく、頭のいい人と紹介していた。

 ジャンヌの行動、ラウルとの関係にしだいに疑惑を持つようになったアンリは、マギーとラウルを邸でのパーティに招待するよう、ジャンヌに提案した。ジャンヌは彼らを案内するためにディジョンから一人車でパリに向かったが、途中、エンジンが故障、車を乗り捨てする羽目になった。通りがかった青年考古学者ベルナール(ジャン・マルク・ボリー)は、車の故障を直そうとするが、拉致があかなかった。ジャンヌは、ベルナールに邸まで送ってもらうことになった。ジャンヌは夫アンリの甥であるこの青年に何か惹かれるものを感じた。成り行きでベルナールもパーティに参加することになった。一同、食事をとるが、会話ははずまず、陰鬱な気分のジャンヌ。団欒の後、マギー、ラウル、ベルナールは、トウルニエ夫妻の邸に泊まることになった。彼女はこの時すでに、自身の世界が崩れて行くのを読み取っていた。耐え難い夫アンリ、滑稽になっていた恋人ラウル。ジャンヌは、これまでとは違う別の人間になりたかった。

 ラウルは彼女を部屋に誘うが、彼女は応じない。ジャンヌは、眠れないまま入浴の準備をするが、その前に首飾りをはずし、それを飾り棚の上のワイングラスに入れた。カチカチと乾いた音がなった。この響きはこの後のベルナールとの逢引きで使われたウイスキー・グラスのぶつかり合う音の布石である。

 ジャンヌは気分を変えるつもりで、白いネグリジェのままウイスキーのグラスを持って月明かりの庭に出ると、ベルナールがそこに現れた。最初「恋人気取りはやめてちょうだい」と彼女はベルナールを拒否した。そのうちに二人は池の辺で互いに瞳を見つめあい、ウイスキーのグラスをあわせた。この時のグラスを打ち合わせる音が、漆黒の闇のなかに象徴的に消えた。彼らは水車小屋からボートへと散策する。「恋はまなざしから生まれる」のであり、ジャンヌはこの時「恥じらいの消える思いがした」。

 家のなかに導くジャンヌに、ベルナールは「君の家に入りたくない、出て行こう」と誘った。「着替えをしたい」とジャンヌは部屋に彼を導き、寝室に入った二人は裸身になり、激しい抱擁に惑溺した。情事のあと、バスタブで無邪気に戯れる二人。「いつも一緒に眠りましょう。私の人生はあなたのもの。私たちは素敵、今に分かるわ」とジャンヌ。

 この幸福のまま、永久に過ごしたいと思ったジャンヌは、翌朝、唖然とする夫と「何てこと、驚きだわ」と言うマギーの前を通りぬけ、ベルナールとともに車で家を出て行く。この先、彼女はどうなるのであろうか。不安な思いを抱きながら夜明けの危険を潜り抜けた彼女は、新しい人生に向け出発したのだった。三十歳の人妻は一人の女になり、顔を硬直させながらも、確信を持ってその行動に自らの運命を賭けたのであった

 月夜の庭での逢引きのシーンでバックに流れるブラームスの「弦楽六重奏曲」の扇情的なメロディとアンリ・ドカイエの官能的映像美は、この作品の評価を不動のものにした。

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