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森博美「指定統計調査」『統計法規と統計体系』法政大学出版,1991年【その2】

2017-04-20 17:02:25 | 社会統計学・社会科学方法論アーカイブズ

 それでは、指定統計の実際はどのように展開していったのだろうか。「重要な統計から順次指定し,逐次その範囲を広げる」とはどのようなことなのかは、この過程を跡づけることで知ることができる。「統計法」施行の翌日、すなわち昭和22年5月2日に、国勢調査と事業所統計調査が指定統計第1号、第2号として指定される。以降、指定統計は、定期性調査と一回限りの調査とで、この論文が執筆された年まで137件の統計が指定統計とされた(「定期性調査」[91件]と「一回限りの調査」[46件])。定期性調査はそのほとんどが昭和20年代に指定された。一回限りの調査は、指定時期にそのような集中傾向はない。あえて言えば、昭和45-49年の16件が目立つ程度である。筆者は以上のことを指摘した後に、指定統計の実施機関、分野別実施状況、調査の実施方法、対象属性、調査対象の選定方法、調査対象数、調査の規模(実施機関別)、調査票の配集・記入方法、調査の実施頻度などについてとそれぞれの特徴を浮かび上がらせている。

  結論として、次の特徴づけを与えている(246-7頁)。第一に、統計の指定状況に関して、統計専門機関である統計局への顕著な集中の事実はない。指定統計に関して、通産省をはじめとして農水省や運輸省のような諸官庁では、統計局とほぼ同数あるいはそれ以上の調査件数を所管している。厚生省、文部省といった非経済官庁による指定統計調査の所管数も多い。実施機関における統計局の地位の相対的高さ、さらには実施機関が承認、届出統計ほど偏在的でない。第二に、調査対象の属性では、企業・事業所を対象とする調査が個人・世帯に関するそれを大きく上回る。第三に、調査規模の面では、センサスをはじめ大規模調査が多く含まれ、無作為抽出標本調査として実施されるものもその6割は対象数1万以上の調査である。第四に、実査面で指定統計が基本的に自計式の記入方式を採用しているが、調査票の配集については自計式調査も含め、全体の約3分の2が調査員依存型である。

  「統計法」は、その条文の多くが指定統計調査に関する諸規定からなる。これらの条文は、目標とする指定統計の精度確保との関わりでいくつかのタイプに類別できる。形式的・技術的要件、実質的要件、制度的要件である。筆者はこれらの観点から、指定統計の精度確保の法論理を考察している。

  「形式的・技術的要件」は、適切な調査計画の立案と関わる。「統計法」第7条は、指定統計の審査過程で統計調整行政の遂行機関である統計基準部が調査企画レベルで統計の精度確保に関与するという意味で、その「形式的・技術的要件」を構成している。

  「実質的要件」は調査協力の「強制」的要請を内容とする。具体的には申告義務(第5条)と立入調査権(第13条)である。これらに付加して、調査対象の実質的調査協力を誘導するの秘密保護条項がある(第14条)。第14条に掲げられた秘密保護規定は、第15条の1(目的外使用禁止規定)、第15条の3(記入済調査用などの調査関係資料の適正な管理)さらに罰則条項として設けられた第19条の2第1項で具体的に再規定される。また、調査結果の公表規定も指定統計の精度確保の実質的要件のひとつである。

 「制度的要件」には、人的要件、法的要件、総務庁長官の調整権限が含まれる。人的要件に関しては、第10条の各項で調査事務従事者の配置、業務内容、資格要件が、第12条で調査員の配置がそれぞれ規定されている。法的要件としては、指定統計調査の実施に関して「統計法」が唯一の根拠法規となることが規定されている(第3条第1項)。総務庁長官の調整権限は、指定統計調査の審査・承認権限(第7条第1項)、承認済の指定統計調査の中止や変更にあたっての再承認ならびに指定統計調査の実施、中止、変更勧告権限の行使(同条第2,3項)、指定統計調査の実施状況の監査、改善勧告の権限(第9条)が規定されている。

  筆者は最後に調査実施機関が指定統計調査の申請を行う契機として、予算面での優遇措置とともに、統計の質の保証を「統計法」の法論理、すなわち被調査者に対する調査協力要請の統計法規的強制にもとめることがあると指摘している。「『統計法』に規定された指定統計に対する調査協力の法的強制は、調査実施者と統計原情報の関係の面からも、また調査の内容の点においても、調査に対する協力が最も誘引し難い調査について、それを促す唯一の方策として特徴づけられる。見方をかえれば、申告義務並びに立入調査権により原情報の精度が法的に保証される指定統計とは、現実にはそれに依存することなしには調査精度の確保が最も困難な調査なのである」(257頁)。

 (終わり) 

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