通勤電車のなかで読むには松本清張の小説(文庫版)が一番。37分あっというまです。
昨日は『花実のない森』(文芸春秋、1975年)を読み終えま した。
ストーリーはだいたい次のとおり(重要な部分は、お愉しみのためにカット)。
所沢街道を田無方面に向かって車を走らせていた梅木隆介は、東京方面への足がなく困っていた夫婦らしい男女を同乗させます。すべては、ここから始まります。
新宿で彼らをおろし、帰宅後、車内を掃除すると落し物が・・。茶色の名刺入れとペンダント。後日、梅木はこれらを返却しにいくが、男女は夫婦ではなく、別々に暮らしていました。
男の名は石田。直後、失踪し、箱根で謎の死体に。女は「平井(偽名)」と名乗っています。彼女は引っ越して行方をくらましました。梅木は女に異常な関心を持ち(それを愛と言っています)、探し歩きます。
数日後、梅木は、新聞紙上のデザイナーの新作発表会ショウの写真に、例の女が写っているのを発見。彼女の近くに写っていた楠尾産業社長を訪れ、彼女の素性を聞き出そうとしますが、楠尾にすごい形相で追い返されます。
梅木はショウの主催者であった山辺女史に会いますが、そこでも彼女の正体はわかりませんでした。
梅木は執拗に彼女を追うが、追跡のなかで次々と怪死した男の事件(万葉公園など)に遭遇します。
ようやく、山口県の岩国で彼女の存在を突き止めますが、なんと彼女は酒蔵の女房でした。彼女は異常な性欲をもち、夫はそれが原因で憔悴しながらも離婚せず、彼女の隔月の上京と男関係を容認していたのでした。
楠尾社長は彼女の実の兄で、山辺夫人は叔母でした。最後の最後で大きな結末が・・・。
それにしても、このような複雑なストーリーをよく考え、小説に仕立てたものと感心させられます。
小説の底流で、下層に生きる人間の上流階級の人間への劣等感、嫉妬が色濃く出てきます。
1965年に映画化されています(未見)。ただし、原作とは細かなところがだいぶ違うようです。謎の女には、若尾文子さんが扮しているとのこと。
おしまい。