この絵本は、こどものためというよりは、自分のために購入したものです。子どもの成長をとおして、絵本の世界を知り、この分野の奥行きの深さに浸った時期がありました。多くの絵本に接しているうちにわかったのは、絵本はなにも子どものためあるのではなく、大人もいろいろな意味で絵本と向かいあえるのだというとでした。
もっともこの本をもとめた目的は、そういうことよりも、わたしが好きな相撲の世界に関する本だったからです。
この本は、小島貞二さんと、三宅充さんという相撲のことが詳しい方によるもので、小島さんが新たに新作の「相撲甚句」を書き、三宅さんが解説をするというように、二人三脚で出来あがっています。小島さんは相撲の錦絵の収集家でもあり、絵本の画そのものは錦絵が利用されています。
相撲甚句というのは、引退相撲とか、地方巡業、花相撲のおりに歌われるもの(甚句を歌う力士が土俵の中央に立ち、それを数名の力士が囲み歌に合の手をいれておこなわれる)ですが、小島さんは相撲の世界がわかるように子どもむけに、この世界の魅力がわかるように、この本のために書き下ろしたようです。
甚句のなかには、「稽古」の模様、櫓太鼓、相撲をうたった川柳、土俵入り、支度部屋の様子、顔ぶれ言上、立ち合いの呼吸、取り組み、弓取り式、化粧回しのことなどが歌いこまれています。三宅さんがそれに解説をつけているのですが、たとえば、「稽古」の模様の箇所では、「もうしあい」「三番稽古」「ぶつかり」があること。櫓太鼓の箇所では一番太鼓、二番太鼓、はね太鼓があり(現在二番太鼓はない)、呼び出しがこれをたんとうすること、などかなり詳しく書かれています。
また、甚句の内容にそくして、豪華な錦絵が掲載され、迫力があり、見事です。筋骨隆々の力強い力士の身体、華麗な化粧回し、錦絵だけでも見ていて愉しいですね。
この本を読むと相撲とは、単なるスポーツではないことがよくわかります。
家族みんなで楽しむ大型絵本シリーズのひとつです。
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