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岩崎俊夫「国民経済計算体系と女性労働」伊藤陽一編著『女性と統計-ジェンダー統計論序説-』梓出版社,1994年【その1】

2016-10-17 00:32:00 | 社会統計学・社会科学方法論アーカイブズ

岩崎俊夫「国民経済計算体系と女性労働」伊藤陽一編著『女性と統計-ジェンダー統計論序説-』梓出版社,1994年(『統計的経済分析・経済計算の方法と課題』八朔社,2003年,所収)【その1】

 本稿の課題は経済活動人口概念をSNA(国民経済計算体系)と結びつけて定義づけることの妥当性を、あるいはSNAによって女性労働を客観的に評価可能なのかを検討することである。筆者はこの課題を解決するためにまず、SNAの枠組みとその改訂の経緯(68SNAから93SNA)について説明し、次にSNAの基本性格にてらして、女性労働の経済的貢献をそこにどの程度反映しうるのかを整理している。

 構成は次のとおり。「1.問題の所在」「2.SNA改訂と女性労働統計改善との関わり」「3.SNAと経済活動」「4.93SNAの生産境界(家計における諸活動との関連で)」。

 「1.問題の所在」で確認されていることは、SNAにおいても女性労働をいかにとらえるかが1980年代前後から問題にされるようになったこと(ILO第13回国際労働統計家会議でSNAの生産の範囲と経済活動人口との関連が明示的に問われた)、SNAの生産の範囲の定義(全ての財の生産、市場で取り引きされるサービスの生産、ならびに他の経済単位に所得フローを発生するサービスの生産)、女性労働の特殊性を考慮に入れて経済活動人口を定義づけるならば、それをSNAの定義に一元的に収斂させることはできない、といった諸点である。なぜなら女性の労働は男性のそれに比して「家計(個人企業も含まれる)」という小規模な生産単位で断片的かつ非定型な仕事につくことが多く、そうした労働は無償で収入の見返りがなく経済活動とみなされないからである。

 「2.SNA改訂と女性労働統計改善との関わり」では、SNA改訂作業の経緯とそこに女性労働をいかに反映させるかという点に関する論議の流れが整理されている。前者の改訂作業 の過程では、国連が提唱した国際女性年(1975年)以降の国際諸機関による女性の経済活動に関する統計指標改善に向けた取り組みの成果が影響力をもったことが知られている。具体的には、女性の経済活動の貢献を、報酬があるなしに関わらずSNAに反映させるべきとしたナイロビ将来戦略会議(1985年)の勧告、SNAと女性の活動とくにインフォーマルセクターでの活動を討議の場にかけたINSTRAWの取り組みなどである。またILOは、既述のように、経済活動人口とSNAの生産概念とを調整すべきことを明確に打ち出し、その大きさをいかに正確に把握するべきかに努力するとともに、インフォーマルセクターの定義づけとそこでの活動形態の測定に関する調査研究を試みている(雇用と開発部門のスタッフメンバーであるR.アンカーによるメッソド・テスト)。

 「3.SNAと経済活動」で、筆者はSNAが経済循環のどの側面をいかに反映するかという原則について、女性による労働投入のウェイトが高い家計の生産活動に考慮して、紹介している。また「4.93SNAの生産境界(家計における諸活動との関連で)」では、家計の個々の活動がSNAでどのように扱われるかを紹介している。93SNAでは女性労働を評価する観点からコア体系での生産境界の見直しがある程度なされたが、女性が従事する労働の多くは体系全体の性格に由来する制約のため依然として経済的生産の境界から除外された。その労働は、サテライト勘定で補完されるべきというのがSNAの考え方である。「インフォーマルセクターにおける女性の収入ならびにその参加と生産の測定に関する専門家グループ」は、次のように指摘している。「経済的生産の境界に含められない家庭内活動についての『枠外』の勘定を定期的に編集することが必要」であり、「これらの勘定はできるだけ多くの国で定期的な作業として編集、できる限りSNAと整合的であるのが良い」と。

(続く)

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