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吉田忠「【書評】竹内啓編『統計学の未来』」『統計学』第31号,1976年3月【その1】

2017-05-18 19:41:58 | 社会統計学・社会科学方法論アーカイブズ

吉田忠「【書評】竹内啓編『統計学の未来』」『統計学』第31号,1976年3月【その1】

 竹内啓編『統計学の未来』は,副題にあるように「推計学以降の数理統計学の発展」を展望した内容の著作で,統計学の基本的な理解で見解のことなる5名の統計学者がそれぞれテーマ別に基調報告を行い,それをめぐる討論を織り込む形式でまとめられている。参考までにテーマとその基調報告者を掲げると次のようである。「問題提起として(竹内啓)」「第1章:日本における推計学の発展とその問題点-戦時中からの十年間-(坂元平八)」「第2章:推計学批判と社会統計学(広田純)」「第3章:「推計学」以後の数理統計学(竹内啓)」「第4章:推計学と社会のからみあい-公害問題をめぐって-(吉村功)」「第5章:計量経済学の現代的意義(佐和隆光)」。

 本書の意図は,評者による引用箇所によると,戦後,推計学が登場したころには,この学問に関して論争がさかんだったが,その後統計学の基本規程にかかわる問題が論じられなくなり,その技術的な面だけがとりあげられている事情に鑑み,この状況を打破することにあるようである。評者はこの意図が成功したかどうか判断が難しい,としている。とりあげられた問題が多面的で,しかも焦点がはっきりしないから,というのがその理由である。論ずる5人の視角があまりにも多様だということもあったようである。

 評者は最初の3つの章に焦点を絞って,以下のようにコメントしている。まず竹内の問題提起が意味不明瞭である,との指摘がある。評者による竹内報告の要約をやや長くなるが引用する,次のようである。すなわち,竹内は「問題提起として」で,戦後の「推計学ブーム」以降の論争史ないし問題史を整理したあと,評価すべき業績として数学モデルと現実のデータの構造との関係をより密接にしようとする試み,複雑な大量データを整理縮約するための種々の手法の記述的な応用,社会的時代的背景においてとらえた統計学発展史研究の3つをあげ,今後期待されるべき方向として公害問題にみられるような統計的方法の社会的評価,統計調査における被調査者の主体性の保証,統計利用者と調査者の間の社会的距離のもたらす矛盾とくに調査誤差,統計的方法の政策ないし管理の手段としての利用の4つを批判的にとりあげるべきだとする。

 この報告内容が意味不明瞭と評者が言うのは,竹内が論争史整理の過程で,科学方法論ないし世界観と統計方法の問題をイデオロギーに関わるものとして斥けるという姿勢に関係している。論争が基本的な対立においてとらえられていないのである。また竹内の統計学観が「統計的なものの考え方」という主観的契機で構成されていることもある。

 ミーゼス,コルモゴロフ,ネイマンなどの統計観,数理統計観に関する竹内,坂元の議論には年季が入っている,と評者は書いている。エコノメトリックス批判に関する意見の差は大きくないようであるが,プラグマティズム批判という科学方法論レベルの議論になると安易な現状認識にすりかえられてしまっている。(続く)

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