社会統計学論文ARCHIVES(人生という森の探索)

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近昭夫「オスカー・アンダーソンの時系列分解の論理について-階差法の基礎理論に関する学説史的一考察-」『北大経済学』第5号,1964年【その3】

2017-03-21 16:11:00 | 社会統計学・社会科学方法論アーカイブズ

 アンダーソンは上記の批判を受けて,”Uber ein neuss Verfahren bei Anwendung der ‘Variate-Difference’Methode”(1921)”Uber die Anwendung der Differenzmethode(‘Variate-Differencemethod’) bei Reihenausgleichungen, Stabilltatsunterauchungen und Korrelationsmessungen”(1926)を執筆し,一定階差において規則的に変化する「滑らかな部分」の存否を,チェビシエフの不等式にもとづく各階差系列の標準偏差の比較で判定する方法を展開した。しかし,この方法も依然として時系列が「滑らかな部分」と「ランダムな部分」の合成であるという仮説を前提とした。アンダーソンはこの前提の正当性を主張するために,”On the Logic of Decomposition of statistical Series into Separate Components”(1927)を著し,さらにその後,Zur problematic der empirisch – statisitischen Konjunkturforschung (1927)を公にし,矢継ぎ早に Die Korrelationsrechnung der Harvard-Methoden(1929)を発表した。これらではパーソンズの方法が徹底的に批判されるとともに,階差法理論が体系的に展開されている。もっとも,そこでは前提とされる仮説(時系列が「滑らかな部分」と「ランダムな部分」の合成であるという仮説)の正当性が繰り返し強調されている。   

 第2節では,アンダーソン理論の基礎にあるチュプロフの統計理論が概観されている。とりあげられているチュプロフの論文は,”Die Aufgabe der Theorie der Statistic”(1905)である。チュプロフは科学の研究では新カント派的な意味での「自然法則」の探求が目的であるとして,その目的を達成するための方法として帰納法と統計的方法をあげる。両者は「自然法則」の追求する点では共通であるが,その適用条件を異にする。統計的方法は,帰納法適用が不可能になったときに問題となる。筆者はこの区別に疑問を呈している。

 第3節では,スチューデントによって提起された階差法の基本的前提の正当性を,アンダーソンがどのように論証したかを跡づけている。アンダーソンの研究目的はスチューデントと同様に「時系列の非時系列化」にあり,そのための方法として階差法が有効であることを主張した。アンダーソンによれば,時系列解析は次の3つの理由で「ゆるい因果関係」の研究であり,したがって統計的方法の適用が必然的となる。(1)誤差項の必然性,(2)未知数の数と方程式数との不一致による原因の不可知性仮説導入の必然性,(3)仮説の任意性。時系列解析ではこれらの3つの問題を含むため,アンダーソンにあっては,帰納法が問題とする「厳密な因果関係」の研究が放棄され,統計的方法による「ゆるい因果関係」の研究に向かわしめることになった。筆者は,しかし,アンダーソンが行った階差法の機械的適用による「時系列の非時系列化」では対象の本質関係の把握に役立ちえないと断言している。アンダーソンの論証は不可知論と数学主義に基づき,論証は幾多の仮定の積み上げで成立し,その結果は時系列が必然性と偶然性とによって規定されている事実が数学的に証明されているにすぎない。このような時系列解析論では,時系列の方法論的基礎を築けない。確認できることは,時系列分析では具体的歴史的事実の研究が重要であるということである。   (終わり)

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