社会統計学論文ARCHIVES(人生という森の探索)

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Ⅷ 確率基礎論(8-4)(社会統計学の伝統とその継承)

2016-12-28 00:25:46 | 社会統計学・社会科学方法論アーカイブズ

3-(1) 頻度説的確率論-R.v.ミーゼスの場合-

 是永純弘「確率論の基礎概念について-R. v. Miesesの確率論-」は,その頻度説にたつ R. v.ミーゼスの確率基礎論の批判的検討である。以下に,この論文の内容を紹介する。是永はミーゼスの確率論をコレクティフ概念の検討に重きをおいて検証し,この概念の発見が数学の一分野としての確率論の基礎,その適用範囲,客観的実在との関連解明の糸口を与えたと評価した(そのマッハ主義的限界を指摘しながら)[1]

  是永が参照したミーゼスのテキストは,Wahrscheinlichkeit, Statistik und Wahrheit, Dritte, Neubearb, Aufl., Wien,1951である。

 ミーゼスは確率概念を,集団現象または反復事象の一標識が無限回の試行中に現れる相対頻度の極限値,と規定する。この頻度説的確率論を支持する者は少ない。理由はそれが前提とする数学的意味づけの難しさ,あるいはその基礎にあるマッハ主義的認識論の観念性に由来する。是永はしかし,ミーゼスの確率論,とくにその基礎論を意味のないものと一蹴することはできない,と言う。確率とは客観的現実のどのような側面を反映する概念なのかという問題は,確率論の基礎づけにはもちろん,自然あるいは社会の諸現象にそれを適用する際には,当然考えておかなければならない課題で,ミーゼスはそのことを念頭に議論を展開しているからである。

  是永論文は「確率概念の基礎」と「ミーゼス確率論の意義と限界」の2つの節で構成されている。前者ではミーゼスの確率概念の定義,それと古典的定義との相違,ミーゼスの議論への批判に対する彼自身の反論を紹介している。後者ではミーゼスによる確率計算の適用可能領域の検討である。    

  ミーゼスの確率の定義は上記のようであるが,その対象として考えられたのは次の三種に限定される。第一は賭事や運任せの遊戯,第二は保険業務,人口現象などの社会統計,第三は統計物理現象である。それらにみられる共通性は,多数個体の一団である集団現象であること,何回も反復される同種または一個の個体の反復現象であることである。この集団現象あるいは反復現象は,ミーゼスによれば,確率が成立する不可欠の現実的前提である。

 確率が成立する「第一の前提」であるこれらの集団現象または反復現象を総称して,ミーゼスはコレクティフと名付けた。また,ミーゼス自身の言葉によれば,コレクティフとは各個体の観察メルクマールの相対頻度が一定の極限値に近づくだろうとの推定が正しいと思われるような集団現象または反復現象,要するに個別的観察の長い系列としての客観的性質(物理的性質)である。ここで重要なのは,この系列が規則性をもたないことである。すなわち,系列のなかのどの一部分を任意に取り出しても,この取り出し方が相対頻度の極限値を変えない性質つまり「無規則性」をもつことが確率の成立する「第二の前提」である。

 上記の2要件を満たすミーゼスの確率は,「確率とは事例の総数で好都合な事例の数を割った比である」(ラプラスによって定式化された古典確率)とか,「確率とは集合の数学的頻度である」(通説)とは一線を画する。



[1] 近昭夫「統計解析」『統計学(社会科学としての統計学-日本における成果と展望-)』第30号,1976年3月。

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