社会統計学論文ARCHIVES(人生という森の探索)

社会統計学に関する論文を要約し、紹介します。
休憩タイムでは、本、映画、音楽、絵画、演劇、旅、お酒を楽しみます。

「ヘッドライト(Des Geno Sans Importance)」(アンリ・ヴェルヌイユ監督、フランス、1956年)

2017-07-11 20:22:31 | 映画

             

 
親子ほどにも年が違う男女にも愛は生まれます。その愛は純粋そのもの。何の打算もそこにはありません。それにもかかわらず、社会、家族の制約は超えられないのです。束の間の幸せは、長続きしなません。不幸がはりついている一時の幸福。


  人生は万人に平等ではなく、不公平にできてはいないでしょうか。貧しい者には、幸福を味わうことも、限られた範囲でしか認められないのでしょうか。

 この映画は、初老のトラック運転手ジャン・ヴィアール(ジャン・ギャバン)と街道の宿屋を兼ねた居酒屋「ラ・キャラバン」の若い娘クロことクロチルド(フランソワーズ・アルヌール)との哀しい愛の物語です。原題は「取るにたりない奴ら」。

 物語はこの運転手、ジャンの回想から始まります。ボルドーに近い街道沿いの「ラ・キャラバン」で仮眠をとる彼の脳裏に、今は亡きクロチルドの面影がちらつきます。二年前のクリスマス・イブの夜、同僚のベルティと長距離運転で立ち寄ったそこにクロチルドがいました。

 ふたりは親子ほどにも年が違いました。ジャンには長年の貧乏暮しで生活疲れした妻と生意気盛りで女優を夢見る娘ジャックリーヌ、それに二人の男の子がいました。家族は夜勤の仕事から戻っても愛想もなく、荒んでいました。妻はイヴに帰って来なかったことを怒りましたが、ジャンの会社の仕事はそれほど大変なのです。

 陰鬱な生活、厳しい労働から逃れたい寡黙なジャン。母と義父は自分を受け入れてくれず、自活していかなければならない若いクロチルド。孤独という点での共通項はふたりを結びつけました。この関係はジャンにとっても、クロにとっても心地よいものでした。パリとボルドーを往復していたジャンは週に二度、クロに会い、クロも彼が来ると心が揺れました。深夜のトラック運送のオアシスです。

 5ヶ月がたりました。ジャンは、クロのところに必ず寄りました。愛情が強く通い合うほど、クロは立ち寄るだけで、ろくに話しもできないジャンに不満を向けるようになります。「愛じゃなくて、習慣よ。習慣にしたいの?」と。「妻子を路頭に迷わせることはできない」と現状を壊して新しい境地を見出そうとしないジャンに、クロは腹をたてました。

 クロとのボルドーへの二人だけの旅行の計画が実現できそうになったとき、ジャンは仕事の路線をパリとボルドーの往復から別のルートに変更されてしまいます。ボルドーの路線でジャンが気ままに、女と過ごしていたのを知った会社が故意に決めた配置転換でした。ジャンは、このことから生じた諍いで会社を辞めてしまいます。収入源が絶たれてしまいました。それは、ジャンがクロの待つ店に行くもできなくなったことを意味しました。

 クロは、そのとき既に妊娠していました。ジャンから音沙汰のないことに心を痛め、会社のジャン宛に手紙を出しましたが、手紙は首になったジャンには届きませんでした。彼女は思い余ってパリに出て、ようやくジャンとその家族に会いましたが、妊娠を打ち明けることはできませんでした。ジャンはそのことを後日、会社から家にまわって来たクロの手紙で知りました。

  しかも、この手紙は娘のジャックリーヌに先に開封されて読まれてしまっていました。そこには妻もいあわせました。クロとの仲が家族に知られるところとなったジャンは、「今は用無し」と家を出ました。クロはパリの連れ込み旅館の女中として仕事を得ましたが、妊娠で思うように体が動きませんでした。女将のマダム・バコーは気さくな人で、そんなクロを追い出すでもなく、費用までくれて、堕胎を勧めます。

 かつての同僚に勧められた新しい運転手の仕事。ジャンはクロチルドを連れだし、トラックに同乗させてボルドーに向かいました。クロは堕胎手術後の経過が思わしくなく、衰弱。ヘッドライトをつけたトラックは夜の降りしきる雨の国道をひた走りましたが、途中、道を間違えたばかりか、濃霧で視界が悪く走れなくなりました。ジャンはトラックから降り、近くの家から電話で救急車を呼びました。その救急車も霧で到着が早朝にまで遅れ、担当員の手当ての甲斐もなくクロチルドの命は、はかなく消えてしまいました。余りにも悲しい結末でした。底辺で生活する人は、この世に生まれて幸せをつかむ資格がないのでしょうか。可愛そうすぎるクロチルド。

 ジョゼフ・コスマのメロディは、貧しい生活者の人生のはかない喜びと哀しみを切々と訴えるように流れます。

ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 「カビリアの夜(Le Notti Di... | トップ | コンスタンティン・コスタ・... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む