社会統計学論文ARCHIVES(人生という森の探索)

社会統計学に関する論文を要約し、紹介します。
休憩タイムでは、本、映画、音楽、絵画、演劇、旅、お酒を楽しみます。

木村和範「ネイマンの標本調査論」『経済論集』(北海学園大学)第48巻第3・4合併号,2001年3月,(同『標本調査法の生成と展開』北海道大学図書刊行会,2001年,所収)【その1】

2016-12-13 20:28:48 | 社会統計学・社会科学方法論アーカイブズ

木村和範「ネイマンの標本調査論」『経済論集』(北海学園大学)第48巻第3・4合併号,2001年3月,(同『標本調査法の生成と展開』北海道大学図書刊行会,2001年,所収)【その1】

  ネイマンが1934年に書いた論文「2つの代表法」("On the Two Differet Aspects of the Representative Method: the method of Stratified Sampling and Method of Purposive Selecyion,”JRSS, Vol.97,1934)は,標本調査論の「分水嶺」と言われる。この論文が公にされて以降,ネイマンの標本調査論は一部調査のための指導理論として支持されるようになった。本稿はそのネイマン理論の特質を,先行研究との関連で検討し,理論史上に位置づけたものである。

 最初にネイマン以前のこの分野での研究動向が概括されている。筆者は次の5点を確認している。(1)全数調査を理想的な統計調査とみなす見解が淘汰されていた,(2)典型調査が「一般化」にふさわしい統計調査ではないとの合意が形成されていた,(3)大標本にもとづく推定方式が完成していた,(4)乱数表(ティペット表)が公刊されていた,(5)ベイズの定理によらない区間推定理論が形成途上にあった(ミロー,ウィルソン)。

  これらの諸点を確認して,筆者はそれぞれについてパラフレーズしている。要点はネイマンが登場するまでには,有意抽出法であれ任意抽出法であれ,代表法(標本調査)の有効性が国際的に統計学会で認められていたことである(キエールの問題提起,イェンセン・レポート)。他方で,典型調査が「一般化」を目的とした統計調査には不適格であるという評価が定着していた。ネイマンは数理統計学の理論と実際の両面で国際的に学界をリードしていたイギリスで,代表法の有効性を検討した。すでに1912年にはボーレーが初めて任意抽出法を社会研究に適用し,経費と労力を節約して意味のある結果を得ることができることを示し,任意抽出法は新しい一部調査法として注目され始めていた。ネイマンの上記論文が公表される前年,農業と工業の分野で数理統計学,とくにとくに統計的推論を深める目的で王立統計協会に研究部会が設置された。

 ネイマンは1934年論文で,推奨すべき代表法が任意抽出法であり。有意選出法には欠陥が多いと主張した。この論文は有意選出法を批判し,議論を任意抽出法の理論的進化に方向づけることであった。ネイマンはこの論文で,一方でジーニの有意選出法を批判しつつ,他方でボーレーの推定論を検討し,いわゆる「ネイマン割当」の理論を定式化した。具体的には,(1)有意選出法の前提にある仮説(もとめるべき特性値とコントロールとの間の線形関係)を実際に見出しうるか,(2)その仮説が当てはまらないときに有意選出を行えば,どうなるか,(3)有意選出法に優る方法はないかを検討した。これらの問いに対する回答としてネイマンが主張したのは,(1)一般に有意選出法の前提条件は確保されないこと,(2)前提とする仮説が成立しないときに有意選出を行えば,高い精度は期待しえないこと,(3)層別による任意抽出が有意選出に優ること,であった。(続く)

 

ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« Ⅶ 推計学批判(7-7) (社... | トップ | 木村和範「ネイマンの標本調... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む