社会統計学論文ARCHIVES(人生という森の探索)

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森博美「指定統計調査」『統計法規と統計体系』法政大学出版,1991年【その1】

2017-04-19 16:52:55 | 社会統計学・社会科学方法論アーカイブズ

 筆者は本稿で,「旧統計法(以下,統計法と略)」制定過程における指定統計をめぐる論議,実際の指定状況,精度を支える法論理という3つの角度から,指定統計の特質に接近している。

 全体の構成は,次のとおり。「はじめに」「Ⅰ.『統計法』の制定過程と指定統計」「Ⅱ.指定統計の指定状況」「Ⅲ.指定統計における制度と制度」「むすび」。

 指定統計は承認統計,届出統計とともに政府統計を構成する3つの統計ジャンルのうちのひとつである。その法的根拠は,統計法である。とはいえ,統計法では,指定統計に関して第2条で統計の作成過程並びに指定の手続きに関する2つの制度的要件を定めているだけである。指定の対象や種類,指定される統計そのものの特性に関しては何の規定もない。

 戦後の統計法の制定作業では,指定統計の規定,その性格づけ,適用範囲について種々の見解が存在した。統計法制定のために設置された統計委員会で練られた「統計法要綱」案で,影響力をもった有力な見解は,指定統計を重要統計とするものである。「統計法要綱」案にコメントをもとめられた第一次統計使節団副団長P.スタップは,法の適用範囲を,政府ならびに地方公共団体が作成するものに限定する必要があると指摘した。 

 
重要統計の定義については,それを蒐集調査の範囲が2府県以上にわたるものと規定する(調査の実施範囲)見解,あるいは各種施策の基礎資料を得るためのものと統計の利用目的から接近する見解などがあった。スタップはこの点に関して,重要統計の定義が狭すぎるとし,それを「統計委員会にとって重要であり,法律の規定によるものであると指示され公表されるすべての社会および経済統計」としたほうがよいと示唆した。スタップの意見が取り入れられて書き改められた「統計法要綱案改正案」では,指定統計を「社会,経済及び文化に関し,国民生活にとって重要な統計で,統計委員会において指定し,公示したもの」とされた。重要統計は指定統計と呼称変更され,後者は何が重要であり何が重要でないかを問わない,価値判断から自由な純粋の手続き規定として設定できる統計として位置づけられることになる。もっとも条文修正の伏線には,スタップのコメントだけでなく,策定作業における「重要統計指定準則」をめぐる議論が存在した。準則の制定をめぐる動きは,スタップのコメントに基づく「統計法要綱案」改正案に先行していたのであり,改正案で指定統計の名称が比較的容易に受け入れられた背景として見逃せない。

 
結局,指定統計の対象範囲については,あらゆる分野にわたることが予想されるので,とくに限定せず,実際の実施過程でとくに重要な統計から順次指定し,逐次その範囲を広げるという実情にそくした処理をとることで,委員会は合意をみた。

(続く)

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