森の中の一本の木

想いを過去に飛ばしながら、今を見つめて明日を探しています。とりあえず今日はスマイル
  

同じ時代の船に乗る―ジャック・ワイルドの死を悼む

2006-03-11 14:23:20 | 同じ時代の船に乗る
 映画「オリバー・ツイスト」もまた映画館で見損なっちゃったな、と思っていたら、いろいろな方のブログの記事でジャック・ワイルドが亡くなっていたことを知った。

 私は子供の頃、彼が好きだった。やっぱりきっかけは「小さな恋のメロディ」。子供の時、この映画を見た人たちで、この映画を悪く言う人は余りいないのではないか。
 
 当時見たときは、トロッコで逃げて行った後二人はどうなってしまうのだろうなんて考えたりもしたけれど、後にテレビで放送された時に、今は亡き淀川氏が解説で「まるで蝶がひらひらと・・・・」と、大人のメルヘンと称していたような気がする。それで私は、その後の二人の心配なんかする必要がないことが分かったのだった。御伽噺のお姫様と王子様のめでたしめでたしの、その後を知る必要がないように。
 そして、美しい御伽噺のその中で、彼だけが現実の中の少年だった。マーク・レスターとトレイシー・ハイドの、セリフのほとんどない美しい映像の中で、演技力でこの映画を支えていたのは彼だった。
 孤独を秘めたようなまっすぐな瞳に、心ときめいた少女も多かったのではないだろうか。

 私もそのひとり。
 その頃やたら「小さな」が頭につく映画がはやった。マークの「小さな目撃者」、ジャックの「小さな冒険者」。「目撃者」の方は記憶にあるのに「冒険者」の方は記憶がない。その頃子供だったわけだから、片っ端から映画を見る環境ではなかったのかもしれないが、なんとなく残念だ。

 だけど、「別れのクリスマス」は見た。
まだ見てはいないのだが、「誰も知らない」という映画の予告をテレビで見るたびに、私はなぜか、その「別れのクリスマス」のことを思い出していた。
 母を亡くした14人兄弟の話で、何とか家族がバラバラにならないようにと頑張るジャック。この映画にもいろいろ感想もなくはないが、一番印象が残っているのは、福祉関係の役人が訪れて
「学校にも行かなくては・・」と、言うと、ジャックが子供たちの一人を呼び寄せて、
「ノートを見せてやれ。ほら、ちゃんと学校にも行ってる。」と言うシーンだ。
14人もいれば一人ぐらいは勉強好きの変わったのも(?)いる。そうじゃないだろ、と言う顔をする役人達に、そうだよねと共鳴するものの、なんとなくその時、私の中で人はみんな同じじゃなくていいじゃないと思えた瞬間だった。

 その後、彼の映画に触れるチャンスは無かったが、彼のイメージは私の中で「ささやななえ」のある漫画に引き継がれた。

 残念ながら、読みきりの短編で題名も覚えてないし、ストーリーも曖昧だ。ただ、イギリスの荒地にある孤児院が舞台だったような。作者も昔の「オリバー」を意識していたのかも知れない。だったら、イメージが重なっても当たり前だと思う。その中にとっても素敵な詩があって(余りにも昔なので忘れてしまったが)、私は、イギリスの荒地にあこがれた。その翌年だったかどうか、私は姉と高山と白川郷に旅をした。高山から白川郷に向かうバスの中から、蛇行する川とその向こうに広がる風景に思わず、憧れていたイギリスの荒地の風景が重なり、心ときめいた事がある。
 そして、そのときめきを誰かに伝えたくて、余り好きでもなかったのにイギリスに留学中の英語の先生に手紙を書いたのだった。
それが初めてのエアメールだった。

さよなら、ジャック・ワイルド。
あなたは、あなたの人生を生きただけ。でも、その時受け取ったメッセージの欠片を、私は私の人生の中で紡いでいったのよ。それは、たぶんあなたを好きだった人の数だけ同じような事がある。あなたは、53歳の短い人生でそんな事考えた事あるかなあ。




私達は「同じ時代の船」に乗っている。私は、心の中で敬礼し彼が「全ての始まりという名の海」に帰っていくのを見送ろう。
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4 コメント

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TBどもですー (よ。)
2006-03-12 00:25:52
TBありがとうございました。

TB先URLがないようなので、こちらからもTBさせていただきますねー。
TB有難うございます (ヤマザキ)
2006-03-12 14:07:05
TBありがとうございます。同じ年代の方々というのは、kiriyさんの今日のタイトルのように「同じ時代の船に乗って」いるのかもしれないな、と思いました。同じような思い出や思い入れがあったり、今回のジャック・ワイルド氏の訃報に関しても、同年代ならでは、の感慨深さがあるように思いました。トレイシーハイドさんは、女優のあとOLを経験し、今では結婚してフランスに住んでいるとのことです。
ヤマザキ様 (kiriy)
2006-03-12 17:13:47
そうですね、今回のジャック・ワイルド氏の訃報は、同年代ならではの感慨かもしれませんね。  本当に悲しいです、わたし。



ただ、私の感覚では今この時を一緒に生きている人たちは、みんな同時代のお仲間のような気がします。同じ時代をともに生きる事ができて嬉しいーそんな感じなんですよ。



でも、ここでは、ヤマザキさんが感じてくださったように同じ年代の人たちの同じ時代の船というほうがぴんと来ますね。・・・なるほど
よ。様 (kiriy)
2006-03-12 17:47:56
よ。さんの記事の中の写真で53歳のジャック氏に再会出来て嬉しかったです。確かに月日は残酷なほどその身に人生を刻んではいたけれど、瞳や鼻や唇は昔のままでしたね。頑張っていたのに残念でしたね。

 

 

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