森の中の一本の木

想いを過去に飛ばしながら、今を見つめて明日を探しています。とりあえず今日はスマイル
  

「ゲド戦記」

2006-08-30 12:13:52 | 映画
ゲド戦記 - goo 映画

世間では酷評の嵐だが、それでもずっと見に行きたかった「ゲド戦記」、友人とのスケジュール合わせでとうとう25日まで待ってしまった。前に予告編でテルーの唄とゲドの語りを聞いてぜひ大画面で見てみたかったのだ。

なんて素敵な歌だったのだろう。私は思いを募らせていた。調べてみると作曲は谷山浩子ではないか。歌の声も素敵だが、それだけじゃないじゃない。この歌がいいのはそこに谷山浩子の世界があるからだ。最初は隣町に住んでいた、ただそれだけで彼女を応援していた。だけどそのうち彼女の音楽の世界に引きずり込まれてしまっていた。

猫の森には帰れない、帰る道だって覚えてない
谷山浩子の音楽には、いつも心を透明にするなにかがある。

そして、期待を裏切らなかったテルーの唄。すべての音は止まり風だけが吹いている。唐突に始まりフルで聞かせるそれは、たぶん、この映画の一番の見せ場なのだ。私は、そのためにここに来たのだと私は本当にそう思い、主人公アレンのように涙がこぼれたのだった。

        テルーの唄

夕闇迫る雲の上  いつも一羽で飛んでいる
鷹はきっと悲しかろう
音も途絶えた風の中  空を掴んだその翼
休める事はできなくて
心を何にたとえよう 鷹のようなこの心
心を何にたとえよう  空を舞うような悲しさを

作詞は宮崎吾朗だ。この詩を書けるこの人の感性は素晴らしい。



が、しかしなぜこの素晴らしい感性の持ち主を、いきなりこの畑違いの土俵に引きずり出してしまったのだろう。

この映画は、ひたひたとまじめさが伝わってくる。「生」と「死」というテーマ。親殺し子殺しという世相の反映。素晴らしいではないか。だけど面白くない。信じられないくらい面白くない。何時面白くなるのだろう。最初は只管待っていた私だが、アレンとゲドがホート・タウンに着いたあたりからだんだん分かってきてしまった。この映画はずっと同じ感じで進むのだと。

素晴らしい雲が過ぎていく・・・
大真面目で語られていく美しく壮大な絵物語。そして物語はたんたんと、たんたんと、そしてたんたんと・・・・・・・あぁ。
又はべらべらとべらべらとべらべらと、みんなで語りつくして進んでいく。
う~ん。。。

ジブリではおなじみっぽいキャラの古着屋の女主人も、ハジアという怪しげな薬を売る男も、そしてウサギという敵の男もみんな弾けていなくて元気不足だ。だから、愛すべき小悪党という感じではなくて、ただのブータレタおばさんや、胡散臭い嫌な男にしか見えなくて消化不足になってしまっている。

ただ、クモはいい。田中裕子の声はぴったりだ。クモの周辺は怪しげで映画の「クレヨンシンちゃん」の世界みたいだ。

夏休みだからこその公開は、子供たちを狙ってのものだとも思うのだが、、狙いどおり多くの子供たちで、映画館は満たされていた。淡々と続く美しい絵物語は、子供たちにとって、拷問のようなものではなかったのだろうか。

だからアレンがクモと対峙し抜けなかった剣を抜いた時、子供たちから歓声が起こった。「やったー」「かっこいい」
―お待たせしました、子供たち。これでいいですか。―
おいおい、ネタバレしてますの注意もなくていきなり書くなよって・・・いやいや、剣の事は最初から誰でも予想はつくことなので。ただ、この先はとりあえず書かないことにする。

なんだかだんだん長くなってしまったが、まだ書いておきたいことは三つある。その一つは、タイトルについてだ。「子供たち」という言葉を書いて、ふと気がついた。頭の中で起きた連想ゲーム。「子供ー期待ーストーリーーイメージータイトル」


「ゲ・ド・セ・ン・キ」この音の響きはどうだろう。なんていうか、少年達の心にワクワクさせるものがないだろうか。少なくても私の中の少年の欠片は、そのタイトルに反応した。書きながら気がついたけれど、映画館で感じていた違和感は、タイトルと内容との微妙な違和感かもしれない。

長く壮大な原作からのチョイスした切取り部分が、そこだったからというのは分かる。ただ、観たものが原作を読む義理はないわけなので、この映画にはサブタイトルがあった方が良かったような気がする。・・・「指輪物語―王の帰還」みたいな。

「セ・ン・キ」というので、違うイメージがあった。アレンが鎖で繋がれてしまっている予告編をみた時、捕虜だと思い、テルーが言う
「命を大切にしない奴なんか大嫌いだ!」というセリフにも共鳴する何かがあった。
が、しかしである。
特に、そのテルーのセリフは、この映画のテーマを担う大切な良いセリフだと思うが、何せ、唐突に出てくる。唐突過ぎて、説得力がない。

パンフレットの中に、「後半はシナリオなんてなくて」と宮崎吾朗が嬉しそうに語っていたが、だからなのかなあとか思ってしまった。

それでなのか二つ目は、ラスト。〈ああ、そうだ。次のセリフはネタバレ〉
「僕は国に帰って、自分の罪を償うよ。」軽い、軽すぎるよ。父親殺しの、しかも国王殺しの大罪だよ。

私は思う。なぜ、この話にわざわざ原作にもないこの父殺しの大罪をアレンに背負わせたのだろう。そういえば原作者もこのことを批判しているらしいが、どのような内容で言っているのか分からないので、同じ意見ではないかもしれないが、最後まで「なぜ」が引きずられてしまう。王は民を思う善き王で、その必然性が理解できない。

私の中では父殺しの重さと立ち直りの軽さのバランスが悪すぎて、ラストの穏やかな生活を映し出すエンディングが白々しく映ってしまう。

せめてクモとの戦いが終わった後、アレンに深い悪夢の淵から目覚めた人のように、父のようなまなざしのゲドにすがりつき泣き、叫び、許しを請うて欲しかった。

このシーンを「いける」と褒めている人もいる。「ゲド戦記」翻訳者の清水真砂子さんだ。
「若い人たちが生きにくく、呼吸困難になっている原因は、精神的な父親殺しができにくいことにあるような気がします。」

「精神的な父親殺し」というのは、わかる。またこの話を広げるとさらに長くなるのでやめるけれど、映画の映像というのは夕べ見た夢とは違うと思う。

私は、この原作にない部分が、巧くいっていると思った人には良い映画、未消化だなと感じたものには、少し残念な映画という風に印象が残ってしまったのではないだろうかと思った。

なんだか、世間の酷評の嵐の中の一筋の風を担ってしまったようなレビューになってしまったが、思ったことを映画に準じて淡々と語ってみた。

そして、最後三つ目。私は、この映画を見ている途中、ある想いにふと囚われてしまった。そして今も、願望として心の奥でそっと思っている。
ゲドのような大人でありたいな・・・・という想い      ゲドはとっても素敵な大人だった。




『映画』 ジャンルのランキング
コメント (13)   トラックバック (9)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 功名が辻第34回「聚楽第行幸」 | トップ | 美しい夢 »
最近の画像もっと見る

13 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
TBありがとうございました (ミチ)
2006-08-30 22:51:43
kiriyさん、こんばんは♪

たんたんたんたん、べらべらべらべら・・・まさにそういう感じでした。

テルーの唄は吾朗氏作詞、谷山浩子さん作曲だったのですね。

素晴らしい感性だと思います。

その感性は今回の映画にはそれほど生かされていなかったのかしら。

スタジオジブリも後継者問題など抱えているようですが、容易に先日まで素人だった吾朗氏を持ってきたことはどうなんでしょうか。

酷評というか、失望の嵐に私も巻き込まれております。
TBありがとうございます (ちんぺい)
2006-08-31 19:55:10
こんばんわ。

訪問&TBありがとうございました。

こちらからもTBさせていただきますね。



kiriyさんのレビューは自分の思ったことが、

いっぱい書いてあって素敵ですね。

私も見習わなければ!!



『テルーの唄』のシーンは、

純粋な気持ちになれる美しいシーンでしたね。
僕のブログをやめる件について (sinrinkun)
2006-09-01 00:01:09
kiriyさん

コメントどうもありがとうございます。

こちらの記事に不適切な書き込みとなりますが、どうかお許しください。



僕は、ブログをやめる気持ちは以前からありました。

今は、自分自身や、見てくださる人にとって、

一番良い方法とは何かということを考えてみたいと思います。

すいませんが、すぐに決められそうにないので、結論までは少し時間がかかりそうです。



また何かありましたら、

僕のブログでご報告させていただきます。

どうもありがとうございます。
なるほど♪ (ぴえる)
2006-09-01 00:01:52
こんばんは。

私も当初,ゲド戦記を見に行こうかと思っていましたが,あまりにも酷評の嵐だったので,結局「パイレーツ・オブ・カリビアン」の方を見に行ってしまいました…

いずれDVDになったらじっくり見てみたいと思います
ミチ様 (kiriy)
2006-09-01 01:18:18
今晩は、コメントありがとうございます。



なんとなく耳に入ってきてしまいますよね。―誰がやっても潰される。もう吾朗しかいないと。

後継者問題はその囲みの中では深刻なのかもしれませんね。でも、いきなりって言うのは信じられないし、いきなりと言うのなら、遠慮なく、もっとセリフを練ったらとか言えるようなアドバイザーとかいなかったのでしょうか。



いきなり大舞台に引きずり出さないで、前座的な小作品を作らせて自分のくせを分からせてあげたらよかったのですよね。・・・まあ、余計なお世話と言われてしまいそうですが(笑)



失望の嵐・・・なるほど~。巧い事おっしゃいますね。
おやすみなさい (kiriy)
2006-09-01 01:22:04
ima ,isikigatonnzyaimasita

ねぼけっちゃったみたい・・・また明日、もう明日ですが、おしゃべりさせてくださいね
ちんぺい様 (kiriy)
2006-09-01 09:57:58
おはようございます。



もともとがおしゃべりなので、すぐ長くなってしまうのですね。自分のためには、忘れないようにという意味もあるのですが、読む人のことを考えたら、長い文には工夫がいるのかもしれませんね。



・・・そういう技術は、何時までたっても磨けそうもありませんが。



「ゲド戦記」の公式ページで一番だけですがテルーの歌が流れているので何回も聴きに行っているんですよ。CD買えばっていいのにって言われているんですけど、なんかケチっているんですよ。そのお金で、次の映画行こうかなとか思っちゃって・・(笑)
sinrinkun様 (kiriy)
2006-09-01 10:32:09
夕べsinrinkunの所に、お邪魔して戻ってきたら、コメントが書いてあったので、少し驚きました。そして「ほら、やっぱりね。」と思ったんですよ。何がって? 前に書いたじゃない、漢字バトンか何かの時、

sinrinkunは「愉」の人だけど本当は繊細な人。まじめなんだと思いますよ。



信じられないかもしれないけれど、実は私も同じタイプなんですよ。だから、なんとなく分かるような気もするのですね。(勘違いかもしれないけれど)



それに、引き止めるようなことではないとも思うのです。だって、自分の楽しみのためにやっていることが、自分のストレスの原因になってしまったら「何やっているんだ、自分」って思いますものね。



ただ本音はね、「やめないでね、寂しいから」というところなんですよ。
ぴえる様 (kiriy)
2006-09-01 11:03:45
おはようございます。・・といってもお仕事中ですね。



パイレーツの記事読んでいましたよ。私も、キャー、素敵ーみたいなハイテンションで記事書いているので良かったら読んでみて下さいね。



二者選択なら、絶対に「パイレーツ・オブ・カリビアン」で正解だと思いますよ。



ただ、「ゲド戦記」は見る価値ないかというと、そうでもないですよ。いろいろな意味で・・。それに、家でDVDで見たら、感情移入がしやすくて、映画でみるより感動するかもしれません。稀にありますよね、そういう映画。



私も見るかもしれません。その時号泣してたりして・・・
kiriyさんコメント&TB有難うございます (hide)
2006-09-07 22:47:49
『映画と秋葉原とネット小遣いと日記』のhideです

kiriyさんコメント&TB有難うございます

若干、夏風邪気味で亀レスに成ってスミマセン。

(*^^*)/★☆゜・*当ブログの《ゲドの2箇所の記事》も読んで頂いて有難うございます

kiriyさんの感じられた事は正当な事だと思いますよ。

いいか悪いか別にして、ディズニー作品は創業者の考え方を継承するノウハウを確立しているとは言えると思うのですが。ジブリは完全に失敗している印象を持ちました。

宮崎パパと鈴木プロデューサーだけの個人商店のようですね。(優秀なスタッフ陣も居ないのでしょう)

鈴木Pの結論が、世襲で、しかも宮崎パパの味付けは守らなくて良いと言う事のようですから。がっかりしますよね。
こんにちは (カオナシ)
2006-10-13 17:46:26
TBとコメントありがとうございました。

テルーの唄自体はすばらしかったのですが、

もう少し工夫があってもよかったのかなと思いました。
hide様 (kiriy)
2006-10-14 21:19:39
アレ、なんでいただいたコメントにお返事書いていないんだろうと思ったら、思い出しました。

そちらに書いた私のコメントのお返事でしたね。でも、やっぱりこんな風に後で見ると、お返事ないのが不自然で、勘違いしてしまいますね。

hideさん、これからも宜しくお願いいたします。
カオナシ様 (kiriy)
2006-10-14 21:26:25
こちらにもコメントありがとうございました。

そうですね。工夫は全体的にあっても良かったですね。この、新しい監督の今後の課題ですね。

あわせて読む

9 トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
映画「ゲド戦記」 (ミチの雑記帳)
映画館にて「ゲド戦記」 アーシュラ・K・ル=グウィンの「ゲド戦記」シリーズを、スタジオジブリが映像化したファンタジー・アニメ。 原作は未読です。なので、全ストーリーのどのあたりを映画化したのか全く分かっていない上での感想です。 世界の均衡が崩れ始 ...
『ゲド戦記』 (京の昼寝~♪)
  いのちを大切にしない奴なんて、大嫌いだ!     ■監督 宮崎吾朗■脚本 宮崎吾朗、丹羽圭子■原作 アーシュラ・K.ル=グウィン(「ゲド戦記」シリーズ)■キャスト(声) 岡田准一(アレン)、手嶌 葵(テルー)、菅原文太(ハイタ ...
ゲド戦記 (Akira's VOICE)
深みに欠ける部分はあるけれど, 絵画的な背景で展開される人間ドラマが, ゆったりと心地よく,LOHASな気分に浸り, 響くメッセージは胸を打ち,二カ所で涙。
「ゲド戦記」 (KASHIWA一市民)
宮崎吾朗監督、お父様の存在が相当重荷だったことでしょうね。 「ゲド戦記」という世界三大ファンタジー(未読ですが)を扱うのも、 監督としての力量を測るには、壮大なテーマ過ぎたかな? 人の住む地に竜が現れるようになり、 世界には厄災がふりかかり、人の ...
『ゲド戦記』2006・7・30に観ました (映画と秋葉原とネット小遣いと日記)
?2006 二馬力・GNDHDDT 『ゲド戦記』   公式HPはこちら ←クリック ●あらすじ ある日、西の果てに棲む竜が人間の住む東の海に現れ、同時に人間界にさまざまな災い起こるようになる。災いの源を探る旅に出てる大賢人ゲド(通称ハイタカ)(菅原文太)は ...
『ゲド戦記』2回目・8月6日に観ました (映画と秋葉原とネット小遣いと日記)
『ゲド戦記』2回目・8月6日に観ました (^_^;)何の因果か、今回は、『千と千尋の神隠し』や『もののけ姫』並みの期待感を抱いてしまって、前売り券を2枚買ってしまいました(笑) まず1回目観た当ブログの記事はこちら ←クリック 載せ忘れたのですが、 ...
ゲド戦記 (PLANET OF THE BLUE)
夏休みに従妹と一緒に観てきました。 アニメ作品は今年初です。 監督  宮崎 吾朗 声  岡田 准一  手鷲 葵  菅原 文太  田中 裕子  香川 照之    風吹 ジュン  内藤 剛志  倍賞 美津子  夏川 結衣  小林 薫 ...
竜の化身なの (藻、たくさんの日々。)
今日は映画を観に有楽町へ。 午後から雨があがったので、一大決心をして映画を観に行くことにしたのです。 観たのは、「ゲド戦記」。 ネット上で酷評されていますが、ジブリシリーズだし、 やっぱり一度は観ておきたいなと思っていました。 もうピークは ...
「ゲド戦記」 熟成度が足りないワインのような・・・ (はらやんの映画徒然草)
「ゲド戦記」観てきました。巷では評判あまりよろしくなかったので、やや期待度低かっ