映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

哥(1972年)

2016-12-15 | 【う】



 丹波篠山の旧家(?)森山家に妾腹の子として生まれた淳(篠田三郎)は、森山家の長男で弁護士の康(岸田森)夫婦の住む家に住み込みで下男として働いている。

 淳は、母親に「森山家をお守りしろ」と幼い頃から耳タコのごとく刷り込まれており、もう、体がその言葉を実践するようにできてしまっているかのような少年であった。毎日同じ時間に起き、同じ仕事をこなし、仕事を上がり、夜回りをする、、、。食べるものは米と味噌汁のみ、間食には麦こがしを湯で溶いてすするという成長期の少年とは思えぬベジタリアン。そして、熱中しているのが書。近所の墓石で拓本を取り、午後5時以降は書の練習に励むという、まるで仙人のような生活ぶりである。

 康夫婦は子がおらず、妻・夏子(八並映子)は欲求不満を抱えており、夫婦の間に流れる空気は微妙。また、康が雇っている書生の和田(田村亮)は一向に司法試験に受かる気配もなく女中の藤野(桜井浩子)と愛欲三昧の日々。そんな大人たちの欲望には見向きもせずに、黙々と下男として生活している淳。

 そんなある日、行方知れずだった森山家の二男で画家(?)の徹(東野孝彦)が、ある晩、ひょっこり康の家に現れる。これがきっかけで森山家に波乱の予感が、、、。そして、淳の行く末は、、、。


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 タイトルは「うた」と読みます。え? そんなんフツーに読めるわ? 恐れ入ります。私は読めませんでしたので、、、。


◆実相寺昭雄=「ウルトラマン」シリーズ、なんだよなぁ。

 篠田三郎出演作をコツコツ見て行こうと思いまして、今回は、『高校生心中 純愛』に続く第2弾。これは、かなり個性的な作品ですなぁ。こんな作品で主演していたなんて、意外でした。爽やか系のイメージが強いので。

 本作は、実相寺昭雄監督の『無常』『曼陀羅』に次ぐ作品として発表されたのだとか。『無常』も『曼陀羅』も見ていないのでどんなのか知りませんが、本作の方が前2作よりは分かりやすい、ということのようです。本作も、分かりやすいとは思いませんが、難解というほどでもなく、、、というか、ちょっとぶっ飛んでいる感じはありますねぇ。

 実相寺昭雄監督は、乱歩モノをいくつか撮っていますが、乱歩好きの私は、乱歩原作映画は怖くて見る気がしないので、どれも見ておりません。私的には、実相寺昭雄という名前は、ウルトラマンとかセブンのイメージが強いので、本作のような作品を撮っていること自体が新発見でした。他の作品も見てみたくなりました。


◆機械仕掛けの淳くん=篠田三郎

 さて、篠田三郎です。淳はおそらく、10代後半の少年という設定だと思われます。撮影時、篠田氏は、多分、23~24歳くらい? あの『高校生心中 純愛』の翌年制作となっているので、ほぼ同時期に撮影されたのでしょうが、ゼンゼン別人みたいに見えます。篠田三郎が演じていると知らなければ、淳を演じているのが誰か分からなかったかも、、、。

 淳くん、人間嫌いなのか、とにかく、必要最低限の言葉しか発しません。しかも無感情な棒読み。月並みな言い方だけど、ロボットみたいです。決められたルーチンは機械みたいに正確にこなすけれど、ルーチンから外れたことは頑なに拒み、もの凄い頑固というか、石部金吉で融通が利かないというか、、、。康が急な仕事で徹夜でこなさなければならない作業が発生しても、淳くん「5時以降は仕事はしとうないんです!!」と壊れたレコードのように繰り返す。

 その融通の利かなさは、森山家を守るという使命感の体現するシーンでもいかんなく発揮されています。夜中の12時に淳くんは一旦起きて、家の外と中を夜回りするのが日課なのですが、上記の徹夜仕事を康や和田らが必死でやっている部屋の前を懐中電灯を照らしながらパトロールするんですが、部屋の中から康や和田たちが窓越しに淳くんを見ている、淳くんにも彼らは見えているはずなのに、人間の顔には全く反応せず、家の外観ばかりを懐中電灯で念入りに調べる。「火事でも出したら大変なことになるんです!!」と言って、隅から隅まで見回るのに、窓から覗いている人の顔には目もくれない、、、。淳くん、君には彼らの顔は見えていないのか……?

 突如帰って来た徹に疎ましがられ、「飯を食うな」と言われたら、本当に絶食してしまう淳くん。ひもじくてのた打ち回るのに、食べない。口に入れるのは水だけ。そして、もう、力が入らず立ち上がることもままならなくなるという、、、。驚いた徹に「前言撤回する、食べても良い」と言われても、「一度口にしたことを取り消すとは何事か」(セリフ不正確です)とか言って絶食を貫く。ここまで来ると、なんかもう、勝手にしろ、って言いたくなるキャラです。背中にゼンマイついてんじゃないの?

 こんなクセモノ淳くんを、若い篠田三郎は、かなり巧みに演じています。こういう役は、大根が演じると目も当てられないので、とても難しいと思う。


◆ヤバい森山家の人々

 康はどうやら不能のようで(イマイチ明確には分かりませんが)、それで妻の夏子は欲求不満で、こともあろうに、寝ている淳くんの上に覆いかぶさって欲望を満たす、なんてこともしています。その時の描写がかなり笑えるというか、、、。淳くんは身じろぎもせず、、、つまりマグロ状態で、夏子さんは一人で喘ぎ声をあげているのですが、どう見ても気持ち良さそうじゃない。すごい、滑稽なシーンで面白い。

 そんな康なのに、夏子が淳くんと関係していると知ると、突然夏子の身体を舐めまわし、挙句の果てに、バイブを突き立てる。その後の、ぐったりと虚しげな表情の夏子が印象的。

 康を演じる岸田森がイッちゃってて面白すぎです。岸田氏は、ルックス的に腺病質っぽいのですが、それが如何なく康を演じるのには発揮されております。

 突如帰って来る二男の徹とか、もう、見るからにキモいオヤジなわけで、東野孝彦は実にハマり役。

 八並映子さんとか、桜井浩子さんとかは、見る人が見れば嬉しい女優さんだそうで。私はお二方とも今回初めて知ったんですけど、八並さんは非常に欲望に正直な気怠い感じがよく出ていたし、桜井さんはノーパン・ミニスカートの女中という面白すぎな設定で大胆に脱ぎまくり、田村亮との濡場もなかなかでした。

 まぁ、こんだけ濃いキャラをよくぞ1つの家の中に入れたもんです。そこに明らかに異分子の淳くんがいる。、、、ううむ。

 丹波篠山は保守的な土地柄なんでしょうか、映し出される景色や背景が、森山家という家の雰囲気を象徴している感じで、暗いし、ちょっと不気味。そしてあのラスト、、、。康と徹が、森山家の土地を切り刻んで我がものにしようとしていると知った淳くん、何とか森山家本家に知らせようと、力の入らないはずの身体で、本家前にある長い階段を匍匐前進(と言っていいのか?)で登り切ったかと思った矢先に階段上から真っ逆さまに、、、、。

 ラストショットは、血だらけになって白目を剥いている淳くん、、、。嗚呼。


◆見終わって書きたい感想がまるで浮かんでこない作品、、、

 本作は、モノクロなんですが、所々、画面が暗すぎてよく見えない部分もありました。

 面白くない訳じゃなかったんですけど、あんましピンと来なかったし、特に湧いてくる感想もない作品だったんですよね、、、。出てくる人物も、演じる役者も、皆、それぞれ魅力的だし、ストーリー的にもそれほどひどいわけじゃないんだけど、、、。

 こういう作品、たまに出くわすんですよねぇ、、、。そんなに悪い印象はないのに、なぜか書きたいことがゼンゼン浮かんでこない映画。感想がものすごく書きにくい映画。本作はまさにそれ。

 かといって、また見たいと思うわけでもないし。多分、もう二度と見ないとは思うけれど、記憶には残るでしょう。

 、、、というわけで、分かりにくい内容紹介と愚痴みたいな駄文を書き連ねてしまいました。、、、嘆息。







画面が暗すぎて見えないシーン多し。




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