一条きらら 近況

【 近況&身辺雑記 】

ベルサール渋谷ファースト

2017年04月09日 | 最近のできごと
 初めて行った施設だが、特に行きたい場所では、なかった。必要に迫られて、行ったのである。所轄の確定申告会場だからだった。
 ネットで会場名を見た時は、ファーストなんて素敵と、都民ファーストという言葉を連想したし、どんな施設かしらと好奇心は湧いたものの、出かけて行くのが少し億劫だった。テレビの報道番組とワイドショーの録画を見ることに夢中の日々だったからである。都議会証人喚問や森友学園問題で、都議会や国会の中継など、特に何かがある日はリアルタイムでテレビを見るが、途中で電話がかかってくることもあるので録画もしておく。
 朝、昼、夕、夜と、報道番組&ワイドショーの録画ばかり見ていると、関連したようなシーンが、夢にまで出てくるほどだった。登場人物たちは真顔で問答しているが、それらを見て聞いてクスクス笑ったり噴き出したりが、この上なく楽しいのである。たとえば証人喚問されている人間が、「議員の質問は、的はずれだと思います」と真顔で答えた時など、噴き出した後、もう笑い転げてしまったほどだった。中継だけでなくワイドショーで同じようなシーンが放送されるたび、クスクス笑いが止まらなくなるのだが、もっともらしい分析をしている政治評論家だのジャーナリストだのが皆、真顔で真面目にやり取りしているのを見て、いっそうおかしくてたまらなくなる。
 そんな毎日だから、確定申告のために『ベルサール渋谷ファースト』へ出かけて行く時間が惜しいという気持ちなのだった。数時間ではなく半日間は外出していて、テレビを見られない。近所以外に外出すると、2つか3つは用事をすませる習慣である。その施設までは比較的短時間で行けるが、帰りに新宿のあちこちへ行った後、最寄り駅前スーパーで買い物して帰宅すると、長時間の外出になる――。その間、テレビ中毒気味の私はテレビを見られないのが残念で残念で、明日こそ来週こそと1日延ばし。スマホでテレビを見られないこともないが、小画面だし、断続的では、見た気がしない。やはり自宅でじっくりとテレビ画面で見てクスクス笑いたい。それにしても――。
(税務署って、何て不親切なの!!)
 わざわざ確定申告会場まで行くことになった理由に、毎日、精神衛生に悪いほどの憤りを覚えていた。
 さらに、その正確な理由を、会場で作成の申告用紙を提出した時に知った瞬間、気を失いそうなほどの驚愕とショックを受け、施設を出てからずっと頭の中が熱くなっていたほどだった。
 所轄の確定申告会場まで行かなければならなくなったのは、毎年、1月下旬に郵送されてきた確定申告用紙が、昨年も今年も郵送されて来ないからだった。e-Taxで送信する条件を満たしていないため、できないし、申告用紙をダウンロードできるパソコンにプリンターはつながっていない。
 昨年、2月になっても郵送されて来ないので、所轄の税務署に電話をかけた。すると――。
「来年は申告用紙の郵送は不要、という欄に、チェックが入ってると郵送しないんですけど、チェック入れませんでしたか?」
 電話の向こうで、男性担当者がそう言った。
「いいえ、チェック入れてません」
「じゃ、郵送します」
 ということになり、数日後に郵送されて来たのだった。
 それが、今年も、1月下旬に郵送されて来ない。所轄税務署に電話をかけたが、全然、繋がらない。1日に数回かけても、税務署には通じるが、「ただ今、混雑しているため、このままお待ちいただくか、あとでかけ直して下さい」という音声テープが、流れてくるだけだった。
 メーカーの問い合わせ電話でも、そのような音声テープが流れてくるのはよくあることで、そんな時は左手で電話子機を持ち、右手でパソコン操作してニュース・サイトを読んだりしながら、電話が繋がるまで待つことにしている。メーカーの多くはフリー・ダイヤルだが、税務署は電話代がかかる、という思いがチラッとかすめながらも、早く申告用紙を郵送して欲しい一心で、連日のように電話をかけては担当者に繋がるのを待った。
 その電話番号が、納税相談受け付けの番号でもあると知り、他の番号がないか調べたが、ない。
「電話で納税の相談する人が多くて繋がらないみたいだけど、そういう相談する人が電話かけるのって、午前と午後と夕方と、いつが一番多いのかしら?」
 企業の納税に頭を悩ませた経験があるらしい友人に聞くと、
「午前もあるし午後もあるし夕方もあるだろう」
 という答えに、思わずコケてしまい、落胆。
 早く申告をしなくちゃと、ストレスになりそうな日々、ようやく繋がった。事情を話すと、
「申告用紙の発送は、もう終わりました」
 と、女性担当者の素っ気ない答え。税務所か納税相談の会場に申告用紙は置いてあるが、作成の場所はなく、提出もできない、申告用紙を持ち帰って郵送することになる、渋谷の会場では申告用紙もあり作成も提出もできる、という説明を受け、
「そうですか」
 と、不満の私。そこで女性担当者は、申告用紙を持ち帰って作成して郵送するのでは、交通費と郵送代がかかるから、渋谷の会場で作成して提出してはどうかとアドバイス。交通費と郵送代に気がつくのは、さすが女性だわと思いながら、例年のように申告用紙を郵送してくれれば半月間も繋がらない電話をかけ続けたり、わざわざ作成&提出会場まで行かなくてすむのにと、電話を終えても不満だった。
 それで、ついに、意を決して出かけたのである。
 確定申告作成会場となった『ベルサール渋谷ファースト』は、特に、特徴もない平凡な施設だった。
 会場の入り口前まで、かなり長い行列に驚かされた。相談やチェックが必要な人はどうとか、声を張り上げて説明している税務署員に、
「相談もチェックも不要で、作成して提出するだけなんですけど」
 と言うと、その長蛇の列に並ばなくてよいと教えられ、エスカレーターで会場内へ。
 予想以上に広く、人も多い。入り口の右手に、〈ご自由にお取り下さい〉と貼り紙がしてあり、申告用紙や添付書類貼り付け台紙や郵送用封筒などが積み重ねられ、何と医療費明細封筒まであり、その表の一面に医療機関名や金額を記入するようになっている。今まで私は医療機関から差し出された領収書や市販薬のレシートを、まとめて封筒に入れ、『医療費領収書』と封筒の表に書いて申告用紙郵送用封筒に同封して税務署に郵送していた。初めて見たその医療費明細封筒や必要な紙を手に取って、1つだけ空いていた席の椅子に座ると、WEB作成メモを見て〈申告書B〉に記入して行き、台紙に、出版社から郵送された源泉徴収票などの添付書類を、近くに置いてあった糊で1枚ずつ貼り付け、それから医療費明細封筒の表に、領収書を見ながら医療機関名と金額を記入した。
(郵送だったら、こんなの書かなくてすんだのに)
 チラッと思った。領収書は3枚。歯科クリーニング2回と、〈C1虫歯〉の詰め物修復で、合計5430円。風邪薬も胃腸薬も買わなかったので、薬局のレシートはなく、少額の医療費控除だが、5430円を省くと作成してきたWEB作成メモの数字が変わってしまうので仕方ない。
 すべての提出書類を、それぞれ確認して、椅子から立ち、提出するための行列に並ぶ。テーブル越しに10人ぐらい立って並んでいる税務署員が、書類を次々と受け取って、背後の台の上に重ね、「次の人、どうぞ」と手を高く上げて知らせるので、行列の順番が来たら、その税務署員の前へ行く。
(どうか、男性に当たりますように!)
 女性署員も少なくないが、概して女性は素っ気なく、男性はやさしいに決まっているから、内心、そう呟いて神様にお祈りしていた。
 待ち時間は5分ぐらいだった。順番がきて、手を高く上げた税務署員の前へ行く。
(あら、イケメン!)
 目からハート、というのは古い表現だが、本当に税務署員なのと言いたくなるくらい、甘い顔立ちの若い男性だった。
(ほうらね! 申告用紙を郵送してもらえなくて、わざわざ出かけて来たから、神様がご褒美に、イケメン税務署員に会わせてくれたんだわ!!)
 もう、ピョンピョン飛び跳ねたいくらい、うれしくなった。だいたい、税務署員にイケメン青年がいるなんて想像もしなかったこと。若くなくてもイケメンでなくても、男性署員がいいと思っていたのである。
 ネームプレートを見ると、隣区の税務署名である。手伝いに来ているのかもしれない。
 そのイケメン税務署員青年が、私が提出した書類をパラパラと1枚ずつめくって見ていき、うなずきながら確認したのを眼にして私は言った。
「あのう、毎年郵送されてきた申告用紙が、昨年送られて来なくて、税務署に電話したら郵送してくれたんですけど、今年も郵送されなくて、半月以上も毎日税務署に電話かけて、30分、いえ1時間近く、かけたまま待っていても担当者に全然繋がらなくて、ようやく繋がったら、もう申告用紙の発送は終わりましたって言われたので、今日、他の用事をキャンセルしてここに来たんですけど、来年から、また、ちゃんと郵送して欲しいんです」
 イケメン税務署員の、ちょっと同情を引くような口調を演じて、私は言った。
 すると、イケメン税務署員は、15日を過ぎると電話は繋がりやすくなるとか、提出の申告用紙へ眼をやって、〈来年は郵送不要〉にチェックを入れてないことを確認してくれたりしていたが、その時、隣に立っている中年男性税務署員が、
「還付だけだと郵送しないんです。郵送するかしないか、税務署で判断するんです」
 と、驚くべき言葉を口にしたのである!
「えええええっ!!」
 思わず驚愕の声をあげ、中年男性税務署員とイケメン税務署員の顔を、目をパチクリさせながら交互に見て、私は絶句。
「来年も、同じ申告用紙ですから、これ、持って行きますか?」
 と、中年男性税務署員が背後を向き、イケメン税務署員が台に置いてある新しい申告用紙を手にして、渡してくれ、「あ、台紙もですね」と、背後からもう1枚の紙を私に差し出した。さらに、
「郵送用の封筒は、あそこに置いてありますから」
 入り口の方向を指さして言った。
「ありがとう」と言って私は差し出された新しい申告用紙が、〈確定申告書B〉であることに小さく感心した。
 それは瞬間的な気持ちで、中年男性税務署員の「還付だけだと郵送しないんです。郵送するかしないか、税務署で判断するんです」という言葉と、その事実に、激しいショックを受けていた。
(少しでも所得税払ってたら、ハイ今年もちゃんと払ってねと、上部の欄に私の住所も名前もプリントされた申告用紙を郵送して来て、源泉徴収で先払いしてある税金を還付してもらうだけの人には、申告用紙を郵送しないなんて……!)
 と、愕然となり唖然となり茫然となり、もうショックでショックでうわのそら気分で歩きながら、その会場を後にしたのだった。私の人生、驚愕とショックの連続である。


交差点の横断歩道

2017年03月10日 | 最近のできごと
 先月、スーパーへ買い物に行くため、近所の道路を歩いていた時である。目的地の3軒のスーパーは同じだが、道順は毎回変える習慣。歩きながら、考え事をするか、通りかかる店々の窓や看板を見て行く癖がある。
 その日は、受信したばかりのメール文を、何度も思い返していた。メールの内容が気にかかるわけでは、なかった。よくあることだが、メール文の最初から最後まで一字一句を、頭の中で浮かべていたのである。あることに対する感想メールで、長文ではなく短文に近いメールだが、この言葉は先だったか後だったかなどと、正確な文章を思い起こすことが楽しいのだ。歩きながらだけでなく、家事をしながらも、よくそうするが、自分が送信したメール文を思い返す時もある。
 途中、幹線道路の交差点の数メートル前で、横断歩道の黄色の信号を眼にしながらもメール文を思い浮かべ、歩道の手前で立ち止まりながらもメール文を脳裡に浮かべていた。
 信号が変わる合図のメロディが流れたとたん、反射的に横断歩道へと歩き出した。メール文が浮かぶ片隅に、信号機が緑とインプットされてしまったのである。
 数歩、進んだ時、向かい側の横断歩道の手前で、自転車に跨がって停まっているジャンパー姿の熟年男性が、私を見て、道路に並行にした右腕を大きく左右に振っている。こちらの方向に車が走行するから、横断しては駄目だと教えたのだ。3車線の道路をはさんで、私の真正面に自転車の熟年男性は信号待ちしていたので、信号が変わる合図のメロディが流れたとたん、反射的に横断歩道へと歩き出した私を眼にしたようだった。一方方向へ大きく右腕を振るしぐさを見て信号機の赤に眼をやった私は、
(あっ、いけない!)
 慌てて踵を返し、羞恥とショックで顔が熱くなった。さっき耳にした信号が変わる合図のメロディは、別方向の車の走行が緑の信号、横断歩道を渡る歩行は、赤に変わったという意味だったのである。信号機を見ないで横断歩道を渡ることは滅多にないが、メール文の一字一句を思い返すことに夢中だったせいだ。日中で、道路は混んでいなくて、私の傍を走行する車はなかったし、クラクションも鳴らされなかった。
(あの熟年男性が教えてくれなかったら、交通事故に遭ったかも……!)
 運が悪ければ、その可能性もあった。長く感じられる信号待ちの間、ショックと羞恥の感情に支配されたまま、向かい側で自転車に跨がった熟年男性の顔を見ることもできず、さっきまで頭の中で反復していたメール文も完全に消えてしまった。
 やがて、信号が変わり、緑になったのを眼で確かめてから、歩き出した。
 正面の向かい側から、自転車に跨がった熟年男性が近づいてくる。またしても顔が熱くなるのを感じながら、すれ違う時、
「どうもありがとうございました」
 と、頭を下げながら礼の言葉を口にした。ジャンパー姿の熟年男性は、「いえいえ」と、やさしい笑みを浮かべながら去って行った。
(あ、似てる……!)
 近づいた時に見た熟年男性が、従兄にちょっと似ていたのである。年齢も同じぐらい、特徴のあるやさしいまなざしと笑みが、従兄を思い出させた。
 その従兄とは、昨年、実家の集まりの日に会っただけで、その後は忘れていた。実家の集まりに出ると、親戚の1割ぐらい顔ぶれが変わる。大叔父や大伯母からその長男や長女、伯父伯母からその長男や次男というふうに。海外旅行中や、体調不良が理由だったりで、代わりに出席する親戚も。
 その従兄とは子供のころ一緒に遊んだことはなく、初対面に近い。教師をしていた伯父の話になり、その従兄も中学校教師をしていた。
「担当科目、当ててみるわね」
「うん、当てて」
「え~とね、そうね、う~ん……数学!」
 チラチラと従兄の顔を見て雰囲気を感じ取って、答えた。
「当たった」
 従兄が少し驚いたように笑った。
「あら、ほんと!」
 当てておいて当たったことに小さく驚くが、英語教師という感じではなく国語教師という感じでもなくと、消去法で数学と答えたのだった。 
 集合場所から、最寄り駅まで送ってくれた車の中で、従兄はビートルズ・ナンバーをカー・ステレオで流した。私より少し年上の、ビートルズ世代だが、教師を定年後、保護司をしているというので、その話を聞いた。自分からすすんで行う役割と私は思っていたので、
「ボランティアでしょう? そういう活動をしたいなんて、偉いのね」
 そう言うと、
「いや、頼まれて……」
 断れない感じでと、従兄は微笑混じりに言った。その活動をしている人に会ったことがないので、興味深く話を聞いた。やはり少し大変なこともあるらしかった。
 その後はビートルズの話題。グループサウンズの話。昔、流行ったグループサウンズを、テレビで見たり聴いたりしても、私はあまり惹かれなかった。
「あのころのグループの歌手はね、ジャニーズのあおい輝彦とかフォーリーブズの江木俊夫が好きだったわ」
「アハハ、若いねえ」
「テレビで見て顔とか雰囲気とか、好きなタイプ、素敵、りりしい王子様みたいって」
 従兄がまたアハハと笑った。包容力のある、穏やかで、おおらかで、やさしい表情である。
(従兄にああいう人がいたのね)
 別れた後、新鮮な発見をしたような気分だった。
 赤信号の横断歩道を渡りかけた私に、駄目と教えてくれた熟年男性が似ていた従兄を思い出し、何となく心がふんわかとなったひとときだった。



流出被害

2017年01月30日 | 最近のできごと
 人生って、何が起こるかわからない。他人事(ひとごと)と思っていたことが、まさか自分の身に起こるなんてと、ショッキングな経験をした。
 郵便局からの書留の不在連絡票を見て、差出人が『イプサ』と書いてあり、
(イプサから……?)
 全く心当たりがなく、誤配ではないかと思った。『イプサ』とは化粧品メーカーの名称で、その時、『資生堂』を連想した。
 数日前に、ニュース・サイトの記事で、資生堂のオンライン・ショップの個人情報が流失、クレジットカードの不正利用の可能性があると、読んだことを思い出したのである。その時は、
(退会しちゃって良かった)
 と、安堵した。2年ほど前、資生堂のオンライン・ショップでいくつかの化粧品を買った。商品が配送されて開けた時、パッケージの箱や包装紙がきれいで可愛くて、
(さすが化粧品会社の通販は違うわね)
 他の通販の商品のパッケージや箱と段違い。いかにも女性社員が考えた女性客向けの、女性が喜び、好みそうな包装に感心したものだった。
 資生堂のサイトは商品宣伝だけでなく、メイク方法などの動画や図解もあり、どのページもきれいで、一時期はよく見ていた。当然、商品も見るから、その流れで口紅やアイ・ライナーなど買ったのだが、オンライン・ショップを利用したのは2回だけ。
 その後、いつものように伊勢丹の資生堂コーナーで買った時、
(やっぱり、通販より、店舗で買うほうがいいわ)
 そう思った。店員とお喋りしながら買うほうが、新商品の情報も得られるし、「お客様のお肌は白くてきれいだから、こちらのほうが」などとセールス・トークを聞きながらのほうが楽しい。
 資生堂サイトのページ数は多く、閲覧しているとキリがないこともあり、オンライン・ショップは退会したのである。
 それが2年ほど前だったため、ニュースで資生堂オンライン・ショップの個人情報流失を知った時は、退会していなかったら私の個人情報も流出していたのだと思い、
(ああ、良かった)
 退会したのは賢明だったと、自分で自分を褒めたい気分だった。
 ところが――。
 その資生堂を連想したが、イプサの化粧品を、買ったことはない。伊勢丹の1階の化粧品フロアで、デザイン化された『ipsa』の名は何度か眼にしていたが、店舗に寄ったことは1度もない。ウェブサイトを閲覧したことも、ないのである。
 郵便局の不在連絡票には、差し出しが、ipsaではなく、イプサと手書きされているから、化粧品メーカーではなく、同名の他の企業かともチラッと思った。
(それにしても、ダイレクトメールの普通郵便じゃなく、書留って何かしら? 何かの謝礼をもらえる心当たりはないし、何かのキャンペーンに申し込んだりもしてないし……)
(もしかしたら、住所と名前の個人情報がどこかから漏れて、私あてに郵送された?)
(もしかしたら、何かのセールスとか詐欺とか……?)
(書留にする必要性は、お金、商品券、金券、個人カード……)
 あれこれ想像したあげく、
(そうよ、普通郵便じゃなく、書留だから、何かの金券かも……!)
 うれしいナうれしいナ、何かもらえて得しちゃうんだわと、ピョンピョン飛び跳ねたい気分になった。
 ところが――。
 再配達された書留を見て、超ビックリ!
 何と、想像どおり、得しちゃったのである。千円のクオカード1枚が同封されていたのだ。
(わーい、千円得しちゃったわ! うれしいナうれしいナ)
 と、ピョンピョン飛び跳ねる前に、書面へ眼を落としたら、
 ――個人情報流出のお詫び――
 と、書かれている。それでもまだ得しちゃった気分が消えていなかったのは、イプサに会員登録したことは、ないからである。もしかしたら名前と住所の個人情報が、たとえば名簿屋とかから流出して、ノルマを課された社員が利用し、本人が個人登録したことになったのではないかと想像した。
 読み進めるうちに、飛び跳ねたい気分が次第に消失。
 ――この期間中に退会されたお客様にも、お知らせしております――
 ――クレジットカードの不正利用が――
 などと書かれ、
(クレジットの個人情報が流失って、退会されたお客様って……まさか!)
 嫌な予感がした。明記されたその期間に、資生堂のオンライン・ショップを退会している。
 伊勢丹の化粧品フロアの店舗に寄ったことはなく、サイト閲覧もなく、会員登録もしていないイプサって、
(ま、まさか、資生堂の子会社じゃないわよね!)
 千円のクオカード1枚得した気分は、完全に消え、慌ててパソコンに向かった。
 ネット検索して読んだところ――。まさかの悪い想像が当たって、何と、イプサは資生堂の子会社であり販売会社だったのである。
 購入した化粧品はすべて資生堂のネーム表示だった。けれど、書留の書面には、資生堂の文字はどこにもない。メーカーの判断と思うが、イプサから個人情報流出のお詫びの書面とクオカードが郵送され、そのオンライン・ショップも購入商品も資生堂というややこしさ。
(不正利用されたら、大変!)
 人生で初めての経験である被害を実感し、クレジット会社に電話で連絡した。不正利用の可能性の通知が来たと話すと、オンライン・ショップ名を質問された後、担当部署が変わった。停止の手続きですねと、担当者から念を押すように言われたので、事情を話した。クレジット会社では不正利用を絶えず監視し、チェックしていると、以前、報道番組の特集で知ったことを、その担当者から説明された。カードの不正利用に関してと利用停止についての説明もされた。
 他人事と思っていた個人情報流出。調査会社では簡単に調べられるらしい、名前と住所と電話番号の個人情報は流出を防げないと聞いたことがあるが、クレジットカードの個人情報流出なんて私の身には起こらないと、ずっと思い込んでいた。ネット通販は限定してあるし、あちこちに登録してないし、大手だから信用できると、そんなことが理由だが、やはり流失のリスクはあるのだと知った。
『危険がいっぱい』というフランス映画のタイトルを思い出す。インターネットに関する危険をわかっていたはずだが、生きて行くって本当に危険がいっぱいである。


新年のご挨拶

2017年01月01日 | 最近のできごと

1個の電球

2016年12月27日 | 最近のできごと
 今年は電化製品に振り回されることなく終わりそうと思っていたら、そうではなかった。
 電球は、電化製品というより電気製品だろうか。電球は電化製品でなくても、それをセットされる器具は、電化製品と言うらしいから、やはり今年も振り回されてしまったということになる。
 玄関の、ダウンライトの電球である。切れたのではなく、LEDの昼白色に替えることを決めたのだった。
 急に思いついたわけではなく、以前から何となく気になっていて、替えるつもりでいたのである。
 廊下の3箇所のダウンライトがLEDの昼白色、その先にある玄関のダウンライトが、ややオレンジ色の電球色で、統一されていない。4箇所のダウンライトをすべて点灯させるのは、常ではなく、時々だから、そう、しょっちゅう気になっていたというわけではなかった。
(そのうち、あの電球、切れるかも)
(切れたら、他のと同じLED昼白色電球に替えよう)
(見るたび、気になるし、やっぱり替えようっと)
(玄関を出入りする時、昼白色のほうが明るくて気分が一新するわ)
 ついに意を決して、予備のLED昼白色電球を取り出し、踏み台の上に乗って、交換しようとした。
 踏み台に乗るのは慣れている。カーテンレールが標準より高いため、カーテンの洗濯や掃除の時に取りはずすたび、踏み台に乗る。クロゼットの上段や、押し入れの天袋に、物を出し入れする時もだった。
 踏み台の3段目である、一番上に乗って立つと、ちょっぴり怖い。一瞬、誰かに頼んだほうがいいという思いがかすめる。
 すると――。
 その踏み台の上から転落し……という不運な事故は起こらなかったが、何と、玄関のダウンライトの器具に、予備のLED昼白色電球が差し込めないのである。
(えええっ、は、入らない! 入らない! サ、サイズが違う~!)
 踏み台の上に立ったまま、私は焦った。気が動転し、重心を失って転落しそうだった。
 そこで、電球色電球と予備のLED電球を右と左の手で持ち、2つの差し込み口を見て較べてみると、明らかに形もサイズも違うのである! 激しいショックを受けたあまり、またしても踏み台から転落しそうになった。
 今までは、切れた電球を取りはずして店へ持って行き、
「これと同じのを下さい」
 と言って買って来た。けれど、玄関の電球は切れたのではないし、買いに行って帰宅した時に暗いのは嫌なので、電球の上部にプリントされた記号などをメモして行き、家電量販店へ行った。
 店員に、メモ紙を見せ、差し込み口のサイズが合うLED昼白色電球を買いたいと言うと、商品棚を見て探してくれた。パッケージは捨ててしまったため、そのメモには、差し込み口のサイズは書いていない。店員は、記号のメモだけで現物を見てないので、商品棚から、なかなか探せない。
 しばらくして、相談コーナーみたいなテーブル席に案内され、椅子に座ると、テーブルの向こう側で店員が、私の店舗カードで数年前のLED電球の購入履歴を調べ、それから、渡したメモの記号を入力して商品を調べた。
「あ、アマゾン。メーカーのサイトじゃなく、アマゾンで調べるのね」
 覗き込んで言うと、店員が、私に見えやすいような向きにパソコン画面を向けた。
「アマゾンは商品の説明を詳しく書いてありますからね」
「私も、買う目的じゃなく、アマゾンで何かの商品のことを調べる時、よくあるわ」
 そう言って、ちょっぴり、うれしくなった。店員が調べた結果――。
「この電球、差し込み口が、E24です。お客様が2年前に買ったLED電球は、E26です。だから差し込めなかったんです」
 店員がそう言い、差し込み口が『口金E24』のLED昼白色電球60ワットの商品を、商品棚から持って来た。
 それを買って帰宅。翌日、電球色電球をはずし、買って来たLED昼白色電球を、ワクワク気分で差し込んだ。
(ピッタリ、バッチリ、今度こそ……差し込める……差し込めた……点く……えっ、点く……はず……つ、点かない! えええっ、どうして?!)
 器具に差し込めたのに、電球は点灯しないのである。スイッチのOFFとONを、何度繰り返しても、駄目だった。
 メーカーに、問い合わせ電話した。30代か40代の女性担当者が説明してくれたところによると――。
 マンションで断熱材施工されていると、点灯しないが、その器具に対応する別の商品があるということだった。
 数日後、電車に乗って、家電量販店へ交換に行った。点灯しないと言い、メーカーの説明を伝えると、30代に見える女性店員が、商品棚から探して取り出した箱のパッケージを私に見せ、
「ここに、断熱材施工器具対応と表示されてますよね。この電球で大丈夫です」
 そう言ったので、その表示を見て私も確認した。ああ、良かったと安堵した。
「差し込み口のサイズは同じね、24ね」
 念を押した。
「はい、同じです」
 女性店員はパッケージを確認しないで言ったが、最初に見ていたのかもと思った。
 それを買って帰宅。翌日、電球色電球をはずし、LED昼白色電球を差し込んだ。
(今度こそ、バッチリだわ、今度こそ、今度こそ……!)
 今度こそ、という言葉を、人生で何度口にしたことだろうと、ふと思った。
(ピッタリ、バッチリ、今度こそ……えええっ、は、入らない! 入らない! ど、どうして?!)
 泣きたくなった。明らかに、差し込み口のサイズが違うのである! 差し込めなかった予備のLED昼白色電球を取り出し、パッケージを見ると、『口金E26』の表示、買って来た電球も、『口金E26』なのだった。女性店員はパッケージを見て確認しなかったのである。断熱材施工器具対応、だけが頭にあったのだ。
(あれほど何度も、差し込み口のサイズは同じね、口金E24ねと念を押したのに!!)
 憤りで頭の中が熱くなった。最初に、買いたい商品説明の時と、店員が断熱材施工器具対応の表示を見せた時と、箱を受け取ってレジへ行く前と、何と3回も確認したのである。
(だから女性店員て駄目なのよね)
 家電量販店で商品のことを聞く時、私は絶対、男性店員のほうがいい。イケメンなら、なお、いい。
 数日後、電車に乗って、家電量販店へ交換に行った。1週間に3度目の来店。1度目は、用事で外出した帰りだったけれど。
 照明器具コーナーにいた男性店員に、商品を渡し、器具に差し込めないので交換したいと言った。差し込み口のサイズが『口金E24』の電球を、店員が商品棚から探し始めた。男性店員でホッとしたが、電球に関して不信感の塊になっていた私は、自分でも探した。今度こそ、サイズが『口金E24』でLED昼白色電球で断熱材施工器具対応と表示されたパッケージの商品を、買うつもりだった。店員とは言え他人は信用できない、自分の目で確認しなくちゃ、と意気込んでいた。
 ところが――。探しても探しても、商品が、ないのである。店員は商品棚だけでなく倉庫へ探しに行ったが、やはり、ない。『口金E24』でLED昼白色電球で断熱材施工器具対応、その3つが表示された商品を、時間をかけて探しても店にないのである。
 そこで、返品することになった。落胆しながらエスカレーターに乗り、他のフロアで、プリンターのインクなど買って帰宅した。
 結局、現在も、電球色電球のまま。切れたら、はずして近所の店へ持って行って買う予定である。洗面所と浴室とキッチンの天井とシンクのライトは、切れたら、それを持って買いに行く店が近所にある。ただし、居室の蛍光管は、私には無理。交換できない。取りはずすのもセットするのも誰かにしてもらうし、居室の蛍光管は比較的高価なので、近所ではなく家電量販店で買う。すべてLEDだから、当分、交換の必要はない。
(来年は電化製品に振り回されませんように)
 暮れが近づき、そう呟いた。