小林真一の作品を拾い読み きらめく星座社公式ブログ

2007年デビューの作家 小林真一の本が立ち読みできるブログです。

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【 『はぐれ狼が奔る』 俺が辞めたらいいんだろう より 】

2010-01-15 12:05:00 | はぐれ狼が奔る
はぐれ狼が奔る

はぐれ狼が奔る
価格:¥ 1,400(税込)
発売日:2007-12-01






・・・・・・・・『 はぐれ狼が奔る 【俺が辞めたらいいんだろう】 』 (P9~P11)より・・・・・・

牧山春彦は突然会社を辞めた。
辞表を書いたわけじゃない。書きたくても辺りには手頃な用紙
も筆も無かった。目の前のテーブルにあるのは、ウイスキーの
ボトルと水差し、いい加減な「おつまみ」の皿と幾つかのグラス。
夜の蝶とは呼べない蛾に似た女たちと三人の中年男。
「ボクが辞めればいいんでしょう」。そう叫んだ春彦自身が、
自分がいま何を言っているのかの意識が無かった。春彦の正面
に座っていた野川の顔が歪んで見えた。同席していた宮崎と
藤原からニヤケ面が消え、ポカ~ンとした間抜け顔に変貌した。

嬌声を上げていた女たちが、時刻が止まったように黙りこくった。
沈黙を破ったのは野川だった。予想もしなかった春彦の宣言に
一瞬驚きのあまり我を失ったが、日本の大手商社の一角をしめる
世紀物産の常務取締役の肩書を持つ自分が、今どう対処すべき
なのか、その立場を思い出したようだった。
「なんてことを言い出すんだ。今の俺が会社と社員との板挟み
でどれだけ苦しんでいるか、それを一番理解してくれるのが牧山、
お前だと思えばこそ帰国を急がせた。繊維部門を統括する俺の
片腕にとウイーンで活躍中のお前を、あえて指名したんだ。その
俺の思いが分らんのか」
「わかりませんねぇ~、それなら何故ここに、この二人が居るん
ですか。こいつらこそが会社を苦境に追い込んだ害虫でしょうが。
この場が本当にボクの慰労のための席だとしたら、害虫二匹を
なぜ呼んだんです」
女たちの眼前で害虫呼ばわりをされた宮崎が青ざめ、藤原の方は
逆に顔を真っ赤に染めていきりたった。
「なんだとぅ~、害虫とはなんて言い草だ」
「そのものズバリだろうが、お前がハンブルグで行った悪行の数々、
ようも今日までクビにならずに済んだことだな。常務、こいつを
駆除せよと言われるのならお受けしましょう。なんでこんな害虫
どもが、今回の肩たたきから免れて、ただ五〇才を越えてライン
から外れているという理由だけの理由で、七人もの先輩をボクが
首切り浅右衛門の役を果たさねばならんのです。いつから世紀物産
はそんな薄情な会社に成り下がったんですか。あの竹下の馬鹿が
社長になってからとは知っています。野川さん、貴方までが竹下の
言うなりになるとはねぇ~。世紀物産ももう終りですなぁ~。そんな
に首切りせなあかんほど会社が傾いたんなら、ボクも余計なもんで
しょうから、真っ先に辞めようじゃないですかと、そう言ってる
だけじゃないですか。どこか可笑しいとこありますか」
ここは北新地の本通りじゃないにせよ、堂島上通りにあるクラブ
「以志原」である。満席にはほど遠いにせよ、四組ほどのグループ
客も入り、声のよく通る春彦の怒りにまかせたぶちまけを、他所の
トラブルは蜜の味と言わんばかりに、興味深かげに耳をすましている。



・・・・・・・・『 はぐれ狼が奔る 【俺が辞めたらいいんだろう】 』 (P9~P11)より・・・・・・

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【 『はぐれ狼が奔る』 運命の出会いより 】

2010-01-14 17:51:13 | はぐれ狼が奔る

はぐれ狼が奔る
 

はぐれ狼が奔る
価格:¥ 1,400(税込)
発売日:2007-12-01



・・・・・・・・『 はぐれ狼が奔る』 運命の出会い (P153~P157)より・・・・・・

ドクター・グランデル社はアウグスブルグに在るという。ミュンヘン中央駅から三十分ぐらいで行ける近距離だ。
ミュンヘンに留まっていてもやることもない。牧山はアウグスブルグに移動した。ハンブルグ駐在のころ、この町の外れにある紡績工場には、なんども足を運んだ事がある。当時利用したホテルに行くと部屋を用意してくれた。
フロントで、ドクター・グランデル社を知っているかと訊ねたら、もちろん知っているとの答えが返って来たのには驚いた。なんでも市で最も歴史の古い企業だそうである。このホテルからも近いらしい。市庁舎の裏手の通りにあるという。
例によって下見に行く。この町は石畳で出来ている。情緒はあるが靴で歩くのには適していない。カソリックの地域だから、どの町でも中心部に市庁舎がある。裏側に廻り何度か迷った末に漸く見つけた。日時計が社屋の壁にあり、それを見ると創業が西暦九八二年と記してあった。なるほど古い歴史がある会社なんだ。
市庁舎の真ん前に広場があり、季節柄テント掛けの屋外ビヤホールが店開きしていた。ビールの大ジョッキを注文し、ポテトサラダと焼ソーセージも頼むと腹いっぱいになった。

一夜が明けて九時になるのを待ち、昨夕確認したドクター・グランデル社を訪問した。プロトコールと呼ばれる受付で用件を述べると、すぐ隣の狭い部屋で待つように指示された。
やがて、がっしりとした体格の男が現われ、グロノスタイだと名乗り、三棟が続く一番遠い棟に案内された。そこにグロノスタイ氏の個室があり、彼が輸出の全般を仕切る課長だということであった。
いきなり、四冊のファイルを見せられた。美星堂、川之江製薬、五菱商事、旭光製菓の四社との往復書簡や会談記録が綴じこまれていた。
四社とも高名な企業である。これだけの有名企業が、すでに取引を申し入れて来ているのであった。なかでも、美星堂のファイルが最も分厚い。松岡という社長自らのサイン入りの書簡が多かった。松岡氏自身が三度訪れてもいた。
これは駄目だと牧山は諦めた。出遅れもいいとこだし、第一会社規模が違う。牧山は沖原と組んでスタートを切ったばかり。実績はゼロである。

呆然としていた牧山に、グロノスタイ氏が声をかけた。
「ヒルメシを食いに行こうぜ」
案内されたのは、すぐ近くの路地を入ったピザ屋だった。日本で言えば「うどん屋」といった感じの店である。
牧山はここでスパゲティ・ボンゴレを食べた。充分に美味であった。
グロノスタイ氏が聞く。
「人数は何人でやる」
「差し当たりはボク一人だ」
「使える資金は」
「せいぜい一千万円かな」
「どうやって売る。矢張り問屋を使うのか」
「いや、既存の販売ルートは使いたくない。今までの概念には無かったところを、新規に開拓したい」
「例えば」
「そうだな、例えば美容室だな」
オフイスに戻ったグロノスタイ氏は、やおら机の抽斗から、オレンジ色の箱を取り出して、
牧山に見せた。
「これはどうだ」
「これは何ですか」
「ウチが美容室専売品として出している商品だ。今さっきキミは美容室流通を考えると言っただろう。それなら、このビューティキャップなんかがぴったしの商品じゃないかと・・・」
「えっ、じゃあ、これをボクが扱っても良いのですか」
「やりたいから、ボクを訪ねて来たんじゃなかったのかい」
「それはそうだけど、いきなり四社、それも大手ばっかりのファイルを見せられて、ボクなんかの出る幕はないものと・・・」
「それがいいんだ。なによりキミは正直だ。差し当たり稼働人員は自分だけとか、用意した資金は一千万円だけとか、その場で即答してくれた。実に気持ちがいい。このファイルの連中は、何を聞いてもお互いの顔を見詰め合うだけで、その場でのイエス・ノーが無い。
すべては本社に持ち帰り、然るべくお答えするって調子で、何のために大勢で押しかけるのか判らん。いくら大企業か知らんが、ウチは大企業との取引は望んでいない。キミがやってくれるなら、最適のパートナーが出来上がることだろう」
「ここに、内面からヒフ・爪・髪を美しくするとありますが、そんなことが可能なんですか」
「それこそが、先代社長のグランデル博士のライフワークだった。内面と外面の双方が相俟って完全なコスメティックが出来上がる。ウチはドイツの美容専門サロン向けの、プロ用のスキンケア化粧品でもトップの座にある。そうだ、キミはシデスコって組織の名前を聞いたことがあるかい」
「シデスコ? いや、知りません」
「エステティックの意味は」
辞書を開いたら、審美とあったが、意味不明である。
「これからは、エステティックの時代だ。戦後すぐにヨーロッパの美容関係者が集まって、戦時中に女性たちが忘れさせられていた、美容の復活にポイントをおいた国際研究会が発足した。グランデル博士はその重鎮でもあった。今の国際組織の本部会長はウチの社員だ。来年は東京で、その大会が開催されると聞いた。その会長に会って見るかい」
「そりゃ、是非会わせてください」
グロノスタイ氏は、社内電話を掛けた。



・・・・・・・・『 はぐれ狼が奔る』 運命の出会い (P153~P157)より・・・・・・

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『逆転 「関ヶ原」』 ~徳川家康の実相より~ 

2009-11-03 18:09:00 | 逆転「関ヶ原」

Gyakuten01_6



・・・・・・・・『逆転 「関ヶ原」』 ~徳川家康の実相~ (P262~P266)より・・・・・・

 この本は行数の殆どを史実を語ることに費やしている。「イフの世界」は、
残念ながら最小限に留めてある。(本当は、もっとイフの世界を描きたい)

 慶長五年九月十五日、それも午前中の戦闘だけで、後世に名を残す
「関ヶ原」の合戦は終了した。戦ったのは「豊臣軍A」と「豊臣軍B」だけで、
要は「豊臣軍」だけが紅白戦を行ったようなものであった。勝ったのも
負けたのも豊臣家中の諸将であり、徳川は観戦しただけの存在であった。
 当然のことながら、これを以て「徳川の天下」なんぞ、生まれたわけもない。

 慶長六年の正月賀詞の儀も、慶長七年のそれも、家康は大坂城本丸に
秀頼を訪れ、頭を垂れて下座からの挨拶を行っている。「関ヶ原」に
従軍した紅白戦の勝者たちも、先ず秀頼に賀詞を述べた後で、
二の丸の家康への挨拶を行っていた。「関ヶ原」の時点で、秀頼はまだ
八歳であった。
 ここらの詳細を間違えている人々が多い。「関ヶ原」から二年経っても、
まだ家康は秀頼に臣下の礼を取っていた。更に慶長八年正月の有様も、
前項で描写した。

 上杉景勝と直江兼続の主従が、大坂城にまかり出て、家康に降伏の
儀式を行なうのも、慶長六年も七月に至ってからのことである。
上杉の降伏を家康に斡旋し、自らもその座敷に同席したのは、
他ならぬ結城秀康であった。
半年をも越えるこの長期間を、家康政権なるものは、奉行のひとりを
も派遣できず、放置せざるを得なかったのである。
 
中央集権とはウソっぱちで、奥州では諸将が勝手に「戦争ゴッコ」を
愉しむことが出来た。
 毛利こそは、毛利家中の人材不足のおかげで、百三十万石の中国の
覇者を、防長二州に封じ込めることができたが、島津の場合は
手も足も出なかった。徳川ファンには耳の痛い話であろうが、仮に
家康が真の天下人であり得たなら、毛利と同様に島津にも敗者の
レッテルを鮮明にし、その証明として領地のいくばくかを、取り上げて
見せる必要があった。それが出来なかったのだから、京大坂の町人たち
だって、内心では徳川をバカにしたであろう。

 土佐の長宗我部は、盛親が二十五歳と若年であり過ぎた。父元親が
期待もし信頼もしていた、長男の信親が、薩摩攻めでの討ち死にが
なかったならば、土佐は一領具足の者どもが決起し、山内一豊の
手勢ごときの一人たりと、上陸を許すはずがなかった。惜しむらくは
長宗我部一族を束ね得る将に人を欠いた。

 島津の抵抗に、何の対策をも取れなかった愚将家康が、土佐の
長宗我部をも、その独立を見過ごすとなれば、上杉の降参もまた
なかったはずである。
 伝えられるところによると、上杉景勝は極めて無口な人であったらしい。
己の才能についても、謙信公に遥かに及ばないと悟り、政治も
軍事も一切を、直江山城こそ謙信公を受け継いだ者として、思い切り
よく任せていたという。
 この山城守は、奇しくも石田三成と同年の生まれであった。共に
永禄三年である。
 人の好悪が露骨なほどに明確であった三成が、この上杉の執行者とは、
妙にウマが合ったというのに、同年齢という偶然があったのではなかろうか。
ついでに述べると,義によって死んだ大谷吉継は、一歳年長の
永禄二年生まれで、三成同年とも言えそうである。

 家康が発したイチャモン状に、小気味よく対応した「直江状」なるものは、
江戸も中期から後期にかけて、徳川の家臣から、町人にいたるまで、
敬意と喝采をもって読まれたという。
 「直江状」は、何度呼んでも、いい気分にさせられる。この「直江状」が
偽物だとする説が有力だと聞く。あれはニセモノだと、奉行所を通じて
通達でも出さねば、直江に手玉に取られる家康の無様さが、町人どもの
手前も、格好がつかなかったのであろう。
 歴史は後世、勝者に都合よく、いか様にも書き換えられる。日本にとって
不幸な時期としか言えない徳川時代は、二百六十年もの長きにわたって、
日本に一大停滞期をもたらした。この間にロクな将軍が出なかった。
 家康は十五代、十五人の将軍の中では、まだ最もマシな男であった。
徳川とは偽の姓であるが、本来の松平として見て、家康は父も祖父も共に、
家臣に殺されたという、極めて不名誉な家の出である。家康自身が
大勢の家臣に叛かれ、その家臣団が加わった、一向一揆の勢いの前に、
あわや生命を何度も奪われかけた。徳川家康なる者を、徹底解剖すれば、
所詮はその程度の男に過ぎない。およそ「徳」の無い家系であるが故に、
近衛前久に大金を積んで、「徳川」なる姓を購った。そんな下等なヤツと、
その子孫たち、十五代にわたって、日本民族はその指揮命令下に置かれた。
不幸なことであったと思わないか。



・・・・・・・・『逆転 「関ヶ原」』 ~徳川家康の実相~ (P262~P266)より・・・・・・

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ニュースval.12 ご 『逆転「関ヶ原」』についてのご感想

2009-11-02 17:41:36 | 逆転「関ヶ原」


みなさんこんにちは!
今回のきらめく星座社ニュースは、『逆転「関ヶ原」』に
お寄せいただいた感想を掲載させていただきました。
無難な歴史解説とは違ったこの作品は、歴史好きの方から
してみるとたまらない1冊。

今までだれも書かなかった歴史感がこの1冊にはあります。
そして歴史好きの方をうならせること間違いなしです!

まだ、お読みでない方はぜひ書店で手にとってみてください。



                 Newsvol_12_m

              きらめく星座社 一同 

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【 炎の商社マン(下) 第十二章より 】

2009-10-31 14:00:00 | 炎の商社マン(下)

炎の商社マン (下巻)

炎の商社マン (下巻)
価格:¥ 1,500(税込)
発売日:2007-10-01





・・・・・・・・・・・・・・・・・・『 炎の商社マン(下) 第十二章 』(P116~)・・・・・・・・・・・・・

黒服がワインはどうしますかと聞く。
「専務は、赤白に拘る方ですか。魚介だから白とか」
「いや、そんなこだわりを持つほどのワイン通じゃない。せっかく
だから東ヨーロッパのワインがあれば、思い出になるな」
中原が黒服に訊ねたら「雄牛の血」の名で知られるハンガリーの
銘酒があった。
武田がOKしたから、それをオーダーする。
エグリ・レイカベルはハンガリー人が誇りとする歴史的事実に
基づく名前である。オスマントルコに東南欧が席捲されたとき、
ハンガリーの勇士たちが孤城に籠もり、激戦の末に遂に城を
守り抜いたという歴史である。勇士たちを称えるべく「雄牛の血」
という名が与えられ、その名がそのまま銘酒の名前とされている。
日本人が聞いたら、ちょっと気持が悪い名だが、オーストリーでも
ドイツでも、エグリ・レイカベルは名高い。

食事をすませ、心身ともに疲れたからと武田が部屋に引き取るのを
見送り、中原は寝るにはまだ早いし、バーカウンターに移って
ブランディをロックでと注文。
ちょうど武田と入れ替わるように二人連れが食卓に着いたが、
バーカウンターに座り背を向けている中原は気づかなかった。

二人連れは誰あろう、アリババと小沢吾郎だった。7階にそれぞれが
取ったスイートの、アリババの部屋で昼前からトーセン株の処置に
ついて、今まで話し込み結論が出ないままに夕食を摂りに降りて
きたのだった。エレベーターを出たところで武田の姿を認めている。
アリババは武田を知らないが小沢は実質上のトーセンのオーナー
だけに、役員全員の顔写真を見ているし、主な経歴も頭に入っている。
お互いの相関関係はもちろんのことだ。それだけじゃない。誰が
人望があり、誰がどんな手腕の持主であるかも心得ているし、
主な社員の人事情報もある。

ちらっと見た瞬間、武田だと確信した。例の騒ぎで「週刊日常」
に大きく写された顔だから間違いはない。こんな所に潜んでいたのか。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・『 炎の商社マン(下) 第十二章 』(P116~)・・・・・・・・・・・・・

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【 炎の商社マン(上) 第一章より 】

2009-10-31 11:50:00 | 炎の商社マン(上)

炎の商社マン (上巻)


炎の商社マン (上巻)
価格:¥ 1,500(税込)
発売日:2007-10-01



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『 炎の商社マン(上) 第1章 』(P7~P8)より・・・・・・・・・・・・

昭和四四年(一九六九)一月のある昼下がり、一人の男が大阪・中之島
にある中央公会堂の階段に腰をおろし、長い間座り込んでいた。

一月の割りには暖かい日ではあったが、それでもオーバー・コートを
着ることもなく、頭を深々と下げた格好で身動きもしないのは異常な光景
といえた。

ホームレスにしては、身だしなみが良すぎるその男、高木源一郎は、
名門商社トーセンのハンブルグ支店長兼欧州繊維部長という要職にあった。
そんな立派な肩書きを持つ男が、なにゆえに冬空の下、オフイス街を

離れた場所に、オーバー・コートもなく座り込んでいなきゃならんのか、
当の高木自身がサッパリ分かっていなかった。「カクさんまでが……」と、
高木がつぶやくのを場所柄耳にする者は誰もいない。

ようやく顔をあげた高木の両目は充血していて、まだ涙の跡が光って見える。
いい中年の男がひとしきり泣いたものとみえた。顔には深いシワが何本も
刻まれ、苦渋のさまがより際立っていた。

中央公会堂前の広場のかなたに、木村長門守重成殉忠の碑が建っている。

ふと我にかえった高木が、自身のあり様を不審げに辺りを見回したとき、
目に飛び込んできたのが、この碑であったが、はて木村長門守ってのは
何者だったかそんなことは今の高木にとっては、どうでもよいことであった。
「オレはどうして、こんな所に居るんだろう」
ぶるっと震えた高木は、あらためて自分がオーバー・コートを着用していない
ことに気づき、頼りにしていた光柳専務から、「今はお前のことなんぞに
関わりあってる暇はない。出て行ってくれ」と、冷たく言い放たれてそのまま
会社を飛び出し、足の赴くままに堺筋を北上して、中之島公園にまで
夢中でやってきた、自分の足取りを反芻していた。
「すべては、あん畜生のせいだ。とんでもない疫病神を抱えこんだものだ」
「それにしてもトーセンも変わってしまった。合成繊維の連中がいつの間に
あんなに鼻息が荒くなったんだろう。それにひきかえ綿糸布部門の沈滞
ぶりは情けないほどだ」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『 炎の商社マン(上) 第1章 』(P7~P8)より・・・・・・・・・・・・

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今、『炎の商社マン』が熱い!!

2009-10-30 18:59:27 | 炎の商社マン(上)


山崎豊子さん「不毛地帯」ドラマ化で・・・

     Kira_pic_01

実在の商社(伊藤忠商事)をモデルに書かれた今話題の小説
『不毛地帯』がドラマ化され、第一話の放送開始直後から、
『炎の商社マン』のお問い合せが連日続いています!
 
戦後の商社を舞台に、国内外のビジネスを纏め、
毅然と黒い権力にも屈することなく自らの信念を貫く主人公。

あの時代をビジネスマンとして生きてきた方にとって、
熱い時代を思い出させる一作であり、また商社マンにとっては
眠っていた商社マン魂が刺激され蘇る作品でもあります。

現役ビジネスマンの方にとっても、熱い主人公の存在が、
憧れであり、究極の理想像として映っているのではないでしょうか。

              きらめく星座社 一同



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きらめく星座社ニュース 第11号!!

2009-09-03 16:53:32 | きらめく星座社


 みなさんこんにちは!
 今回のきらめく星座社ニュースは、7/30に発売の週刊新潮
 に掲載された書籍の紹介記事がきっかけで、特別展開を
 して下さった全国の書店さまの特集です。

 

       Newsvol11_sam_waku_2

             ニュースを読む≫


 
 記事には『炎の商社マン』と『逆転「関ヶ原」』の2作が紹介
 されています。
 書店さまによっては、昨年に掲載された(週刊新潮)の記事も
 一緒に貼って下さっているところもありました。
 

  お近くの書店へぜひ一度足をお運び下さい。
   ⇒ おすすめの本屋さんリスト ≫

 
 毎回、同じ台詞になってしまいますが、ご協力くださった
 店長さま、ご担当者さま、本当に本当にありがとうございます。

              きらめく星座社 一同

 

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週刊新潮で小林真一氏の紹介記事が掲載!

2009-08-11 14:49:47 | きらめく星座社


2009年7月30日(木)発売(8月6日号)の週刊新潮に、
小林真一氏の紹介記事が見開き2ページで掲載!

 Shinchosyakiji090730_sam_waku

                         拡大サイズで記事を読む≫

記事には『炎の商社マン』から新刊『逆転「関ヶ原」』までの7作が
全て紹介されています。その中でも特に小林真一氏の処女作でもあり、
また代表作でもある『炎の商社マン』と新刊『逆転「関ヶ原」』の
読みどころが紹介されています。


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週刊新潮でまたまた記事が出ます!

2009-07-17 18:59:50 | 逆転「関ヶ原」


著者・小林真一のインタビュー記事が
週刊新潮でもうすぐ掲載されます!
インタビューも無事に終わり、あとは記事の
出来上がりを待つばかりとなりました!
実は今回、週刊新潮でインタビュー記事が
掲載されるのは2回目なんです!!


Sintyo080131  


上記の昨年のインタビュー記事と同様、
今回も見開き2ページで掲載される予定です。
インタビューの中で主に話題になったのが、
小林真一の代表作『炎の商社マン』と、
4月に発売された新刊『逆転「関ヶ原」』についてです。

『逆転「関ヶ原」』の読みどころは、小林真一の描く
史実にはない「~たら、~れば」の世界の中で
戦国武将達が戦う仮想・関ヶ原の戦い、「イフの世界」。
また、日本を代表する歴史上の人物である
徳川家康を「詐欺師」呼び、家康を中心に
豊臣秀吉やその他の戦国武将、さらには武将達を
影で支える女性達について書かれているところなど、
その他にも読みどころ満載!

今回のインタビュー記事が掲載されている
週刊新潮は7月30日発売予定です。
お楽しみに!!




☆ みなさんの書評大募集! ☆


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きらめく星座社ニュース 第9号!!

2009-06-23 15:49:21 | きらめく星座社


 今回のきらめく星座社ニュースは、前回号に引き続き
 『逆転「関ヶ原」』のディスプレイ特集in関東編です。

    Newsvol9_sam_waku_2    

             ニュースを読む≫
 
 前回ご紹介させていただいた文教堂渋谷店さん同様、
 既刊本から引き続き応援して下さっている福家書店さんでは、
 「発売から今までずっと続けて売れているのですから
 ロングセラーと言えるんじゃないですか!」と、とても
 嬉しいお言葉もいただきました。ありがとうございます。

 7月の初めには、週刊新潮の記者さんのインタビューがあります。
 また、この記事がきっかけとなって大きな動きにつながれば
 と期待しています!

 既に、西日本最大の書店「ジュンク堂書店那覇店」さんでは
 新刊『逆転「関ヶ原」』導入と共に、あの話題作『1Q84』より
 広いスペースを使って小林真一氏の既刊本全7作をど~ん
 と並べてフェアー展開して下さっています。 
A_btn040

 那覇店さんのこのお気持ちに感謝し、また全国に第2第3の
 那覇店さんをつくろうじゃないかときらめく星座社スタッフ一同
 奮い立っております  皆さん、応援よろしくお願いします。

 

  お近くの書店へぜひ一度足をお運び下さい。
   ⇒ おすすめの本屋さんリスト ≫

 
 今回も同じ台詞になってしまいますが、ご協力くださった
 店長さま、ご担当者さま、本当に本当にありがとうございます。

              きらめく星座社 一同

   次回ニュースでは、週刊新潮さんのインタビューを
    お届けします!お楽しみに!

 

 書籍の感想・書評も募集しております。
 皆様のご応募お待ちしております。
                  



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沖縄初!上陸! ジュンク堂書店 那覇店さんより

2009-06-10 12:07:00 | きらめく星座社


海の向こう沖縄から嬉しいニュースが届きました


Blog

4月にオープンされたジュンク堂書店 那覇店さん

「ついに沖縄に本物の本屋さんが出来た!」
1階から3階までの3フロアー、総面積1500坪120万冊。
もちろん西日本最大級
7月からは、「アウルHON急便」というネット書店も始まり、

本が好きなのに近くの本屋さんは品揃えが・・・
と嘆いてられる方にはおすすめ。

今、話題のこのお店に、小林真一コーナーが
入り口入ってすぐのフェアコーナーで、
なんと20冊×6作品 = 120冊が


「沖縄の方にも元気におすすめします」 とご担当頂いている
Y氏から声援もいただきました。

本当にありがとうございます。

                  フィガロ



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きらめく星座社ニュース 第8号!!

2009-06-09 12:03:00 | きらめく星座社


 今回のきらめく星座社ニュースは4月の新刊
 『逆転「関ヶ原」』のディスプレイ特集です。

    Newsvol8_sam_waku   

             ニュースを読む≫
 
 既にたくさんの有名書店さまでご展開いただいています。
 中には、司馬遼太郎先生のおとなりでご展開下さって
 いるお店もあります。
 その他にも、既刊本6冊と共に棚を一段まるまる使って
 「小林真一コーナー」を作って下さっているところも!

 
 店長さま、ご担当者さま本当に感謝の気持ちで
 いっぱいです。ありがとうございます。

              きらめく星座社 一同 

 書籍の感想・書評も募集しております。
 皆様のご応募お待ちしております。





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きらめく星座社ニュース 第7号!!

2009-05-25 11:59:00 | きらめく星座社


きらめく星座社ニュースの第7号ができました!!

今回は、小林真一代表作・炎の商社マンの
本屋大賞の発掘本への推薦コメントを掲載しています。


  Newsvol7_sam_2 

             ニュースを読む≫

ジュンク堂書店梅田ヒルトン店のFさんからの
痛快なコメントで、読みたくなること間違いなし?!

その他、4月に刊行された新刊・逆転「関ヶ原」の
おすすめのポイントをご紹介!
これで歴史が苦手なあなたも歴史好きになるかも?!

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本の雑誌社『本屋大賞』 掲載!

2009-05-08 19:36:14 | 書評


全国のプロの書店員さんたちが「売りたい本」を投票をして
得点と順位をつけ、最も得点の多かった本に贈られる
オープントーナメント形式の文学賞、「本屋大賞」。
そんな本屋大賞受賞作品や、投票作品を紹介する
本の雑誌社増刊「本屋大賞」に、なんと小林真一の
デビュー作『炎の商社マン』が紹介されています!

『炎の商社マン』が紹介されているのは、書店員さんが
沢山の本の中からジャンルや知名度を問わずオススメする
特別企画「発掘本」。
ジュンク堂書店梅田ヒルトン店のFさんより「興奮本」として
紹介されていました。
主人公中原について、
「ビジネスで世界をひっくり返し、ダニ上司をブッつぶす。
こんな社員になりてぇ絶対。」
と、とてもエネルギッシュな感想を書いてくれたFさん。
名門商社にはびこる怠惰な上司に喝を入れる姿に
興奮すること間違いなし!
愛社精神あふれる中原の姿に、忘れかけたフレッシュな気持ちを
思い出す人も多いのでは?


Honya_pop



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