東アジア歴史文化研究会

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「斬首作戦」がおこなわれた場合、シールズ部隊が北に潜入する(宮崎正弘国際ニュース早読み)

2017-03-28 | 北朝鮮関係
報復手段にサリン、VXなど化学・生物兵器を北は大量に抱えている
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3月7日、朝鮮中央通信は「在日米軍攻撃用の弾道ミサイルの4発同時発射訓練に成功した。金正恩朝鮮労働党委員長が立ち会った」と報道した。もし在日米軍を攻撃対象とすれば、米国は「北はレッド・レインを越えた」と判断することになるが、金正恩の強気の姿勢は変わらない。

トランプ政権は「戦略的忍耐」という前オバマ政権が採用していた、意味不明、曖昧模糊の作戦は終わったと宣言し、「あらゆる選択肢を考慮する」と方針を転換させた。

3月17日にソウルを訪問したティラーソン国務長官は「オバマ政権がとってきた『戦略的忍耐』をやめる」と記者会見したが、その足で最前線の板門店を視察しているのである。

米国の言う「あらゆる選択肢」に含まれる「斬首作戦」に関しては別に新基軸というわけではなく、2016年の米韓合同演習でも行われている。そのうえ、特殊部隊シールズの「チーム5」は韓国に常駐している。

sealsとはse(海)a(空)l(陸)から取られた複合組織だが、SEAL(アザラシ)に引っかけられている。

米海軍最強を誇り、二つの特殊線部隊、8チームからなる。歴史は古く第二次大戦中の水中破壊工作班が前身で1962年のベトナム戦争対ゲリラ特殊線に備えて正式に発足した。

▼北のドン斬首作戦は実施されるか?

2011年五月、パキスタンのなかに潜伏していた国際テロ組織「アルカィーダ」の首魁オサマ・ビン・ラディンを特殊ヘリコプターを飛ばして殺害した「実績」が有名だが、ほかに数十の特殊作戦に従事し、何回もハリウッド映画のモデルとなった。

ラディン殺害ではタリバンから報復を受けてアフガニスタン渓谷を飛んでいたシールズの武装ヘリが撃墜され31名のシールズ隊員が犠牲となる事件もあった。この米軍特別チームが次に北朝鮮に潜入し、金正恩ひとりを殺害するという軍事作戦が視野に入った。

問題は隠れ家を転々と移って常に居場所を秘密にしている金正恩だ。地下150メートルの要塞に潜むという金正恩をいかに見つけ出し、特殊部隊が地下へ潜り込んで始末するか。現実に米韓合同軍事演習に特殊部隊が投入されており、そのシナリオに沿っての訓練を行っていることは周知の事実である。

「斬首作戦」によって独裁体制のトップが不在となれば北朝鮮の指揮系統は乱れ、誰も命令を下せなくなって、中国の介入を待たざるを得なくなるとするシナリオに基づく。

独裁国家においては指揮系統がなくなれば混乱と無秩序になり、国家崩壊へ雪崩を打つことは過去にもサダム・フセイン、あるいはカダフィ大佐の実例がある。イラクはサダム・フセインが不在となった直後から中核のバース党が行政も兼ねていたため国家は自動的に崩壊した。

サダムは部隊同士の横の連絡を取らせず、つねに一人で命令系統を掌握したため、軍事的に効率の悪い軍隊だった。北朝鮮軍隊のシステムもそうなっている。

しかし北朝鮮を想定した場合、もし斬首作戦に成功しても、それ以後、軍の指令系統が生き残り、北朝鮮の一部の軍高官が報復を宣言して軍事的行動にでた場合、非武装地帯(DMZ)から僅か40キロしか離れていないソウルは猛攻撃を受けて「火の海」となり、およそ百万人の犠牲がでるとするシミュレーションが存在するため、いざ実行という決断がなされるのはよほどの場合であろう。北はDMZに総兵力102万人のうち、三分の一を配備している。

米軍のピンポイント爆撃は引き続かなければならず、北朝鮮のおよそ700の攻撃目標への空爆は、在韓米軍に加えて在日米軍基地、日本海洋上の艦船ならびに在日米軍所属の潜水艦などから行われる。空爆のあと精密な戦果の測定が偵察衛星やドローンを駆使して行われ、繰り返しの空爆が続行されるため、最長で二ヶ月の時間を覚悟しなければならない。

▼北の化学兵器の貯蔵地は秘密のままである

その事態に遭遇したとき最悪のシナリオとは、北朝鮮が化学・生物兵器を平然と使用し、世界中どこへでも出向いて化学兵器による報復テロを惹起する危険性が高い。

米軍は北の核施設や軍事基地は偵察衛星で把握しているが、化学兵器の貯蔵庫を発見していない。幾重ものトンネルが重なった、まるでベトコンの地下基地のような迷路の果てに化学兵器は貯蔵されているとされ、VXのほかにサリン、タブン、ソマンなど匂いのない、透明な液体やガスがたっぷりと貯蔵されている。

マレーシアにおける金正男暗殺はVXガスが使われた。どうやって持ち込まれたのか?

おそらく外交行李で運ばれ、税関をフリーパスしたに違いなく、今後も意思さえあれば、欧州や国交のある国々に持ち込める。そこを経由地として米国での報復戦争に打って出るという悪夢のシナリオも米軍は想定している。

そもそも化学兵器は1950年代に英国において開発され、米国が化学兵器の生産を始めたのは1961年である。しかし人道上の配慮から、化学兵器は使えない手段とされ、備蓄の削減、全廃が開始され、2009年には米国も化学兵器を保有しないこととなった。

もっか、トランプ政権にとって軍事行動の優先はIS退治にあり、マティス国防長官もマクマスター大統領補佐官も、北朝鮮は後回しとすることで合意している。

であるとすれば、米国がいきなりの軍事行動を採るという事態はしばらく考えにくい。「戦略的忍耐」から「あらゆる選択肢」に切り替えた、その中味のなかの他の選択肢である。

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