東アジア歴史文化研究会

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中国のアキレス腱、民族問題 (ペマ・ギャルポ)

2014-05-28 | 中国の歴史・中国情勢
中国のアキレス腱、民族問題

中国の暴走が止まらない。ベトナムと領有権を争う南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島周辺海域で、強引に石油掘削を始めたうえ、フィリピンと領有権を争うスプラトリー(同・南沙)諸島では、勝手に滑走路建設に着手したのだ。関係諸国は猛反発し、ベトナムでは反中デモが吹き荒れた。中国の覇権主義的本質について、中国に侵略されたチベット出身の国際政治学者、ペマ・ギャルポ氏が迫った。

最近、ある方から「中国は本当に沖縄県・尖閣諸島を奪いに来るだろうか」と聞かれた。私は即、「それは日本次第でしょう」と答え、さらに「日本が弱腰な姿勢でいたら、尖閣だけでなく沖縄全体も奪うでしょう」と付け加えた。

チベット出身の私は7歳の時から中国と戦い、それはいまだに終わっていない。チベット亡命政府の発表によると、これまでに約120万人のチベット人が、蜂起や処刑、拷問死、獄中死などで命を落とした。私は、中国の領土拡張の野望と覇権主義の実態を、身をもって知っている。

日本人はよく、「中国は大きい」というが、それは大きな勘違いだ。大きく見える中国の63%は本来、私の故郷・チベットや、東トルキスタン(ウイグル)、内モンゴルなどである。チベットの面積は約240万平方キロで、中国全体約940万平方キロの約4分の1を占める。

中華人民共和国が誕生した1949年、人民解放軍は東トルキスタンを侵略し、翌年にはチベットに侵入した。55年「ウイグル自治区」が成立し、10年後の65年に「チベット自治区」が成立した。

中国は、チベットを、チベット自治区と青海省、四川省、甘粛省、雲南省などに分断し、分割支配している。いまだに暴力行政を行い、言論、思想の自由などを奪い、人間としての尊厳さえも踏みにじっている。

毛沢東主席は53年、チベットのダライ・ラマ法王に対して、「チベットの改革・解放が完了したら、人民解放軍は引き上げる」と約束した。

しかし、中国は現在も約25万人の軍をチベットに駐屯させ、ほぼ同数の公安警察や武装警察、住民の数ほどの隠しカメラを配備・設置して、チベット人を監視している。ウイグルも同じような状況だ。「自治区」とは名ばかりで、そこに自治は存在しない。チベット自治区のトップである共産党委員会第1書記にチベット人が就いたことはない。

中国の胡錦濤前国家主席はチベット第1書記時代(88~92年)、無慈悲、無差別な大量虐殺に関与したといわれる。スペインの裁判所が昨年10月、この件について訴えを受理している。

ここで強調したいのは、中国がチベットやウイグルなどの本格的支配を始めたのは、わずか約60年前ということだ。そして、チベット人やウイグル人たちは、いまだに精神的に屈服することなく、必死に抵抗を続けている。

「政治犯」として獄中生活を強いられたチベット人は、拷問や虐待を受け、医療や食事もまともに与えられないという。罪状は冤罪といえるものが大半とされ、ある歌手は独立の歌を歌った罪、ある者は焼身抗議(自殺)を奨励した罪、ある高僧は証拠もないまま武器を所持し隠した罪に問われた。

チベット亡命政府によると、チベットでは4月16日までに、2009年2月27日から数えて131人目の焼身抗議者が出た。彼らのほとんどは「ダライ・ラマ法王の帰還」「チベットの団結」「チベットの独立」などを叫んでいる。インターネットに動画があるので、命をかけた訴えを見てほしい。

民族問題は、中国のアキレス腱になっている。中国の実像は、日本人が思うほど大きくも、安定もしていない。

中国は現在、南シナ海のパラセル諸島やスプラトリー諸島で、ベトナムやフィリピンの領有権主張を無視して、「力による現状変更」を試みている。中国が覇権主義国であり、領土拡張主義国であることは、チベットやウイグルを見ればよく分かるはずだ。

■ペマ・ギャルポ 国際政治学者。1953年、チベット生まれ。78年、上智大学国際学部大学院中退。80年、ダライ・ラマ法王アジア・太平洋地区担当初代代表。97年、拓殖大学海外事情研究所客員教授。2001年、チベット仏教ニンマ派総宗門顧問。05年、桐蔭横浜大学大学院法学研究科教授。著書に『中国が隠し続けるチベットの真実』(扶桑社新書)、『最終目標は天皇の処刑 中国「日本解放工作」の恐るべき全貌』(飛鳥新社)など。



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